東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

法人グループが共通の理念・方針のもとで保育関連事業を全国に展開している。一体的な管理体制のもと、本社がエリアごとに各事業所の運営をサポートしている。当事業所は隣接する病院の院内保育所として2013年に開設し、現在も一般の保育とは別に院内保育専用の定員を設け、24時間体制で運営している。施設長は開設以来、特殊な形態における園の運営責任者として、法人の理念・方針に基づき、統合的な保育の展開と課題の解決に取り組んでいる。今回の利用者調査及び職員自己評価の結果をていねいに読み解き、改善につなげることが期待される。

法人共通の枠組みの中で、年度末の職員会議において当年度の振り返りをもとに次年度の事業計画を検討している。事業計画書には園の基本方針に続いて年度の重点課題が記載され、施設長が特に力点を置く項目が表示されている。人材育成の取り組みとして、職員の参画意識や他者理解を高め、職員間のコミュニケーションの活性化を図る園内研修の実施を謳い、事務室に『園内研修の目的』や『園内研修のルール』を掲示している。職員に求める問題意識や心構えが記されており、施設長のリーダシップに加えて職員の運営参画を推進する取り組みがうかがえる。

法人が目指す保育の基本理念や目標については、写真や解説が加えられたパンフレットやホームページ等に明示している他、入園時の面談や年2回開かれる保護者会、行事等の機会に保護者に説明している。今回実施した保護者アンケートの結果では、回答率が50％に満たない中で、総合的には3分の2程度の保護者が満足と回答している一方、自由記述欄のコメントからは園の保育のねらい等の説明については改善の余地がうかがえる。その原因を冷静に分析したうえで、保護者の目線に合わせた、よりていねいな説明方法の工夫に向けた検討が期待される。

法人のマネジメントシステムにおいて、保育サービスに関連する法制度についての情報収集は施設長の役割となっているが、実際には本社が中心となって、関連する法制度の改正や社会・経済環境の変化、業界の動向等に関する情報の収集を行い、幹部会議における分析結果を毎月の施設長会議や研修等の場で職員に伝えている。園では、保護者との日常的なやり取りの中でニーズの把握に努めるとともに、法人全体として年1回実施するアンケートを通じて保護者の意向を集約し、保育の振り返りと継続的な改善に活用している。

法人のフォーマットに沿って単年度の事業計画書を作成しており、その最後に「3か年計画」として、各年度の目標を一文で謳っている。年度ごとに作成する事業計画書とその対となる事業報告書について、園の運営管理の仕組みの中でどいういう役割を果たすものなのか、付表を含む保育の全体的な計画との違いや関連を整理したうえで、必要な内容を吟味することが期待される。事業報告書においては、事業の実績報告と併せ、計画に照らしての一年間の取り組みの評価及び分析をおこなったうえで、次年度の事業計画につなげていくことが期待される。

各園における書類の整備状況や日々の職員配置の状況等について、法令の要件を満たしているかを本社が一元的に管理する仕組みを整えている他、法人全体として独自の点検項目に沿って3か月ごとに内部監査を実施している。また、職員一人ひとりが日常の子どもに適切に対応しているかを共通のチェック項目で自己点検する取り組みを年2回実施している。以前より整備してきた法人全体の内部通報制度を職員がより利用しやすい形に改め、園内での法令違反や子どもに対する不適切な対応が疑われるケースに早期に対応できるように努めている。

家庭での子どもの虐待が疑われる場合は、法人役員の指示に基づき、関係機関と連携して対応する体制を整えている。また、園からの依頼により、市の児童発達・相談支援の総合センターの職員が年4回定期的に来園し、特に配慮を要する子どもの様子を観察しながら、園の職員に個別の支援方法について助言している。その他、保育士養成校等からの実習生や近隣の小・中学校の児童・生徒によるボランティア等の受け入れなどを通じて、外部の目が園内に入る機会は多く、今後、客観的な視点からの気づきを運営に活かす仕組みを整えることが期待される。

法人全体として、保育の全体的な計画に基づき、地域の子育て家庭を対象に、園での制作活動や公園での集団遊びを親子で体験する中で、遊び方のヒントを学んだり、日頃の育児の悩み等を保育士に相談することでストレスの解消に役立ててもらう取り組みの全園での展開を目指している。当園でも予定表を作成し、昨年度は新たな取り組みとして、出産を迎える親を対象にした学習会を実施した。今年度は職員を対象とした保育のスキルアップ講座を一般公開し、保護者や地域の子育て家庭にも参加を呼び掛けている。

利用者の個人情報は、クラウドサービスによりデータ管理され、アクセス権限を設けることにより管理されている。また、保護者との連絡事項も専用のアプリを活用し、タイムリーに情報を伝達できるようになっている。事業所にとっては、登園や休園の管理、各種情報の発信など利便性や効率を考慮した仕組みとなっており、画像の取り込みや発信も行えるため正確な情報収集や伝達も行える記録となっている。

不審者の侵入を想定した訓練について、警察官の指導を受けながらロールプレイをおこなったり、ノロウィルスの吐瀉物処理について豆腐を使用した訓練を実施するなど、実践的な状況で研修をおこなっている。事務室には食物アレルギーのある子どもの顔写真とアレルギー物質及び対応方法が一目でわかるような掲示を貼り、職員の注意を喚起していた。また、子どものアナフィラキシー反応に備えて、職員に救急救命講習を受講させるなど、子どもの命を守るための知識・技術の習得とともに、細やかな対応と緊急時の対応整備に取り組んでいることがうかがえた。

毎月１回、年間計画に基づき、火災や地震等の災害の種類や発生の場所、時間帯等の想定の条件を変えながら避難訓練を実施している他、水や食糧、ミルク等の備蓄や非常設備の点検など災害や非常事態に備える取り組みをおこなっている。なお、当園は隣接する病院の院内保育も担っていることから、今後は病院とも連携しながら、大規模災害が発生した際の事業継続計画の策定に向けた検討を進めることが期待される。

法人として職員の確保と定着を最重要課題に据え、保育士については新規学卒者の定期採用を軸に本社が一括して募集等をおこなっている。開設5年目を迎える中、職員集団の経験値を高めていくことが課題となっており、チームワークの向上による組織力の強化に取り組んでいる。

法人の職員として望ましい職務遂行行動を冊子にまとめ、全職員に配布している。専門職としての倫理や子どもの権利擁護、保護者の立場の尊重等に力点を置いた内容となっており、それに基づいて職員一人ひとりが自身を振り返る時間を毎月の職員会議の冒頭に設けている。法人の理念・方針に連なる行動特性について、職員が日々の業務に引き寄せながら継続的に振り返りを行う中で自身の強みや課題を認識し、自己成長を促す取り組みとなっている。

年2回、職員と施設長の個別面談を実施し、一人ひとりの仕事に向かう意欲の向上と成長を支援している。キャリアアップに対する本人の希望や考えと施設長の期待像をすり合わせたうえで具体的な目標や研修計画を立て、一年間を通じて継続的に支援する仕組みとなっている。法人の人事考課制度に加えて園独自で工夫している部分もあり、職員の育成に対する施設長の強い責任感がうかがえる。事務室には職員一人ひとりが年度初めに自身で宣誓した事柄を顔写真とともに掲示しており、目標の達成を相互に後押しする効果をねらった取り組みとなっている。

グループ全体のホームページを通じて、共通の保育理念や方針、保育目標等を案内している。系列園での子どもの実際の活動や生活の場面を撮影した動画や写真画像を使う他、必要に応じて英語及び中国語の表記への切り替えを可能とするなど、ユーザーの多様なニーズに配慮している。ホームページの問い合わせフォームから利用希望の園を指定して資料請求や見学希望のオーダーを送ることもできる。昨年度リニューアルしたホームページの内容に関し、保護者の感想や意見等を集約して、さらなる充実に活かしていくことが期待される。

見学の問い合わせは電話等で随時受け付け、都合の合う日程を調整したうえで、施設長または主任保育士、事務職員が当日の案内を担当している。なるべく子どもたちの実際の姿を見てもらうように時間の調整をしながら、パンフレットに沿って法人が目指す保育の理念やその実現に向けて力を入れている取り組み等を中心に説明している。パンフレットには写真画像が多く取り込まれ、子どもたちの生き生きした姿を伝えるレイアウトの工夫が見られる。法人では、すべての職員が自分の言葉で保育の理念等を説明できるようになることを目標に掲げている。

利用の希望を受けても定員に空きがなく、すぐに利用できない場合は、待機者リストに登録するかどうかの意思を確認のうえ、空きが生じた時点で、申し込み順に並んだリストの上位者から順次案内している。また、必要に応じて地域の子育て家庭を対象に実施している保育所体験等の事業の案内をしている他、市内にある系列の認証保育所を紹介することもある。利用希望者や見学者から育児に関する相談が寄せられることもあり、主に施設長が対応している。

利用契約の際に書面による重要事項等の説明と契約書類の取り交わしを行うとともに、保護者から保育に必要な情報の提供を受けている。子どもの食物アレルギーや健康状態を含め、子どもや家庭の状況について、専用のアプリまたは所定の書面を通じて提供された情報をもとに、施設長が保護者との個別面談をおこなっている。また、保護者が育児において気になっていることや保育に対する要望等を確認し、統一した記録用紙に記入して、職員間で情報を共有している。

新入園の乳児には、なるべく特定の保育士が関わるようにし、子どもとの愛着関係を築く中で園の生活に慣れるよう配慮している。慣れ保育は必須とはしておらず、保護者の状況や要望に応じて対応している。標準的には2週間程度かけて段階的に保育時間を延ばしている。法人全体として迎えの際にその日の子どもの様子を保護者にていねいに伝える取り組みに力を入れている。連絡帳に代わるスマホアプリを介した双方向の連絡ツールの活用により、保護者が子どもの園での様子を携帯端末で確認できることで安心感につながっている。

年長クラスの子どもが卒園する際は個別の指導要録を作成して就学先の小学校に提供している他、特に配慮を要する子どもに関しては、対面または電話等の手段により小学校の教員に引き継ぎをおこなっている。途中での転園等の場合、必要に応じて子どもに対する個別の配慮事項等を所定の様式に記述し、保護者の同意のもとで転園先に情報提供する仕組みを法人として整えている。その他、園の行事等に卒園児を招くことで、馴れ親しんだ場所に帰って来られる安心感を子どもと保護者に提供している。

法人本部より毎年2月初めに次年度の全体的な計画と年間指導計画のひな型が各園に配信され、園の職員会議で当年度の振り返りをもとに次年度の計画を検討、作成する流れが明示されている。各クラスで月間及び週間の保育計画を作成のうえ、０～２歳児クラスと3～5歳児クラスのそれぞれのグループごとの会議で調整や見直しをおこなっている。法人の方針のもと、異年齢の子どもたちの育ち合いを保育の基本に据える中、日常の保育はクラスの垣根を超えて展開されており、今後は異年齢保育の計画作成等により、さらなる連携の強化を図ることが期待される。

各クラスの月間指導計画を踏まえて個別の月案または週・日案を作成し、日々の保育記録をもとに振り返りを行い、次期の計画につなげる仕組みを整えている。また、毎月すべての子どもの発達状況を児童票の項目に沿ってチェックするとともに、子どもの姿の変化等を個別に記録している。法人の方針のもと、保護者からの開示請求を前提に質の高い記録を残すことを目指しており、法人全体の研修等でスキルアップに取り組んでいる。今後、日々の記録が個々の保育のねらいに沿ったものになっているかを検証のうえ、さらなる改善につなげることが期待される。

専用のアプリや送迎時のやり取りを通じた保護者からの連絡事項を職員が所定のノートに記入し、クラス内での共有を図っている他、朝の活動開始時及び子どもの午睡時間中の会議で子どもの状況を報告し、全体で確認している。職員間の協議により、今年度から午睡中の乳児クラス・幼児クラスのグループごと及び合同での会議を開く曜日を固定したことで話し合いの効果を高めている。毎月の全体職員会議ではクラスごとの状況報告の他、子どものケガや事故等の防止対策や保護者からの意見・要望等に関する対応方法などを検討している。

子ども一人ひとりの状況の把握について、家庭環境や健康状態などは児童票に記録され把握されている。個々の発達の様子は、連絡帳や、保育日誌などから担任が毎月、個人記録に記載しており、毎月の会議でも各クラスから報告され、職員全員が共有している。0歳児クラスから2歳児クラスまでは毎月、個別のねらいが示されており、個々のねらいに応じた保育に努めている。3歳児クラスから上は年齢別の月のねらいに基づいて保育が行われ、個別の配慮にも心掛けている。

法人の理念でもある「人間力」と、子どもが「自分で考え、行動する思考」を身につけるためには、子どもが自分の意思で自分の遊びたい場所を選べる環境が必要として、法人全体で“ゾーン保育”に取り組んでいる。園舎のどこでも子どもが自由に行き来でき、自分の好きな場所で、好きな保育士や様々な年齢の子どもたちと関わりながら生活することを目指している。職員間で子どもの様子を見守りながら遊びの環境構成を話し合い、室内に専用のコーナーを設けたり、園庭に可動遊具を置いて子どもたちが自由に遊びを発展させる工夫に取り組んでいる。

小学校との連携については、年間連携計画表に基づいて交流の機会を設けている。近隣の小学校の運動会や作品展、通常の授業風景の見学などを通して、年長児が小学校生活の様子を知り、入学に向けての不安を軽減すると同時に期待や憧れを持つことをねらいとしている。小学校への訪問は、年長児が小学生と交流し、一緒に遊んだり、ランドセルを背負わせてもらうなど、小学校が身近に感じられる機会となっている。保育士と小学校の教員との交流も行いながら、小学校の教員が年長児とともに遊ぶ機会も設けている。

朝7時から開園し、8時頃までは0歳児から5歳児まで合同で過ごしている。連絡帳アプリを通じた保護者からの情報と併せ、朝の受け入れ時は早番担当の保育士が子どもの健康状態等について視診や口頭での確認をおこなっている。子どもの在園確認のために、受け入れ時に子どもに名札を付け、降園時に外して園で保管している。保護者からのクラス担任への申し送り事項がある場合には、早番担当が「伝達ノート」に記入し、担任が出勤の際に確認し、共有している。職員全員に周知されるべき事項は昼礼などで改めて報告され、全体への周知を図っている。

その日の日中の保育の様子について、専用のアプリを通じて写真画像に簡潔なコメントが付され、5時頃には保護者全員に配信されている。各クラスではその日の子ども全員の様子が伝わるように写真の選び方等に配慮している。施設長は、写真に付されるコメントに関して、子どもの発達状況や保育のねらい等に沿った、より専門的な内容にしていく必要があると認識している。保護者に伝言がある場合には、担任が「伝言カード」を子どものカバンにつけ、伝達ノートに内容を記入し、確実に遅番が伝えられるようにしている。

もともと雑木林だった広い園庭には自然の樹木が所々残され、子どもたちが登って遊んだり、太い枝から吊るされた手作りのブランコは人気の遊び場になっている。ほぼ中央に位置する1メートル程の高さの土の築山は格好の泥遊びの舞台にもなっており、水を流して滑り下りる遊びに全身泥だらけになりながら興じている。自分で歩けるようになった小さい子どもたちも、職員に見守られながら自分の背丈より高い築山に自力で這い上がろうとしている。その他、可動式の古タイヤやバスマットなどを使って、子どもたちが自分たちで遊びを工夫し、発展させている。

幼児クラスでは、年長児がリーダー的存在となり、異年齢の集団生活における様々な場面で年下の子どもたちの手本となっている。毎週金曜日には「がんばりデイ」と称して、年長児が集まって話し合う時間が設けられている。参加の子ども全員の顔が見えるように車座になり、一人ひとりの意見を聞き合えるようにしている。その後、みんなで一緒にゲームをしたり、自分のロッカーの整理をしたりと年長児の活動が行われている。また、作品展に向けての話し合いや制作の過程を通じて、皆で作り上げる楽しさや喜びを分かち合えるように取り組んでいる。

園の周辺には保全林があるなど緑に恵まれ、四季折々の草花や樹木の変化を感じながら近隣の公園に散歩に出かけている。小さい子どもたちも職員に見守られながら自分で身支度を整え、靴を履き、友だちや職員と手をつないで、公園までの距離を歩いている。広い野原のある公園では、子どもたちが自然と駆け出し、伸び伸びと遊ぶ姿が見られた。園庭でも春にはプランターで育てている花が咲く、夏には畑の野菜が成る、カブトムシの幼虫を見つける、秋にはどんぐりや枯れ葉がたくさん落ちてくるなど、子どもたちが身近に自然を感じられる環境となっている。

秋の運動会と年明けの生活発表会が園にとって2大行事となっている。運動会では、子どもたちにどんなことをやりたいかなど意見を聞きながら、演目の内容を決めている。日常の保育の中で取り組んでいる活動の中から子ども自身が「やってみたい」と思い、頑張った姿を披露できるよう工夫している。演目の一つとして、2歳児から5歳児までが同じ道具や器具を使い、それぞれの子どもができる動きでサーキットを完走した。タイヤや梯子、鉄棒、跳び箱等で一人ひとりが自分に合った目標を設定し、それぞれが頑張っている姿を披露した。

運動会でのリレーやダンスなどは、子どもたちの意見も聞きながら、年長児を中心に皆で協力して頑張る姿を披露した。その他の行事や日頃の活動においても、子どもたちが協力してやり遂げる場面を多く設けている。畑で育てた野菜を皆で収穫したり、プランターで育てた稲を刈って協力して脱穀し、おにぎりにして食べるなど、畑の活動は皆で楽しみながら力を合わせ、食への関心にもつながる経験となっている。2月に予定されている発表会でも子どもたちの意見を聞きながら日常の生活の様子を皆で話し合い、劇にしていく予定である。

年間の行事計画表を年度初めに保護者に配布して日程を知らせている他、その都度、専用のアプリや書面の通信によって行事の内容等を事前に案内している。保護者の行事への保護者の参加率は高いものの、以前実施されていたお泊り保育や銭湯の日の行事がなくなったことを惜しむ声の他、きょうだいが市内の系列園に通っている保護者からは、行事の日程が重なることに対して改善を求める声が寄せられている。保護者が主体となって開催される園のおまつりでは、子どもたちが楽しめるように保護者と職員が企画づくりや当日の運営で力を合わせている。

夕方4時半頃から合同保育となり、全員の子どもが同じ部屋で過ごしている。夕方からの保育室の環境構成は保育士が話し合って決めており、ホワイトボードに玩具やコーナーの配置が示され、職員が共通認識をもって準備や保育に当たっている。一つの部屋をいくつかのコーナーに分け、動と静の遊びのバランスも考慮している。さまざまな年齢の子どもが一緒に過ごす中、2歳児から5歳児までは日常的に活動を共にしているので、自然に関わり合いながら遊んでいる。夕方以降の時間だけ遊べる玩具もあり、それを楽しみにしている子どももいる。

夕方からの合同保育では異年齢の子どもたちが一つの部屋で過ごしており、人数の多い時間帯は賑やかになる。遅番の職員は全体を見ながら安全管理にも気を配っており、職員の声も大きくなりがちになる。日中の活動量が多いため、保育時間が長くなると疲れが出てくる子どももいるが、そうした時に静かに落ち着いて過ごせる場所の確保や環境設定に課題を残している。園では子どもが疲れた時にくつろげる空間を用意したいと考えており、子どもの個別の状況に応じて、より適切な対応が行われることを期待したい。

0～2歳児クラスの子どもたちは保育室で、3歳児クラス（秋の運動会後は2歳児クラス）から上の子どもたちは食事ルームで、園内で調理された給食を一緒に食べている。ランチタイムは12～13時前後に設定され、遊びが終わった子どもから配膳コーナーで自分の食べられる量を盛り付け、トレイに載せて自分の好きな席まで運び、食べ始めている。子どもたちが「ここ空いてるよ」と声を掛け合い、異年齢の子どもたちが一つのテーブルを囲んでいる。食物アレルギーのある子どもの席は決まっており、職員がいちばん先に配膳して、誤食の防止に努めている。

法人として「美味しく楽しく食事を摂る」「食欲がある」「旬を味わう」「国内産・高品質の食材」「日本人らしい食事」を大切に考えている。栄養士が月ごとの献立表を作成し、子どもの喫食状況を毎日確認するとともに、月1回の給食会議で振り返りを行い、献立や調理方法等の改善に活かしている。おやつも手作りを基本とし、シソやおかかのおにぎり、甘納豆蒸しパン、揚げパン、おからドーナツなど、午後もしっかり活動ができるように、ボリュームのあるものとなっている。食物アレルギーのある子どもには医師の診断書に基づいて除去食を提供している。

年間食育計画を基に、子どもたちの食への興味・関心を育む活動に取り組んでいる。畑やプランターで野菜を育て収穫することから、自分たちが給食で食べる食材の簡単な下処理や調理へと経験を広げている。また、夏にはアイスづくりを行ったり、秋にはさつま芋掘りをした後に園庭で焼き芋を、冬には畑で採れた大根を園庭で煮て風呂吹き大根にして食べるなど、季節に合わせた活動を通じて食の楽しみを味わっている。さらに、みそづくりやコメ作りなど、日本の食文化に触れる多彩な体験を通して、子どもたちの食への興味や関心を育てている。

乳幼児突然死症候群を予防するための午睡中の呼吸チェックの結果を専用アプリで保護者に毎日伝えている他、内科検診（0歳児は毎月、1歳児からは年2回）、歯科検診（年1回）及び毎月の身体測定の結果を保護者に伝え、必要に応じて受診の勧め等をおこなっている。また、看護師が立てた年間保健計画に基づき、手洗いやうがい、歯磨き、鼻のかみ方など、子どもが自分の健康維持に必要な生活習慣等を身につけるための指導を紙芝居や歌などを通しておこなっている。乳児クラスでは手洗いなどを職員が一緒にやりながら定着に取り組んでいる。

子どもの薬の預かりに関しては、原則として医師の処方薬に限り、薬剤情報書等の提出を条件に保護者から一日分を預かり、職員の管理のもとで与薬している。熱性けいれんがある子どもや食物アレルギーのある子どもの処方薬も預かり、緊急時に職員が適切に対応できるよう、注射薬を打つ訓練を毎月おこなっている。食物アレルギーのある子どもについては、職員全員に周知するために、事務室のドアに子どもの顔写真とアレルゲンが明記されている。また、特別な配慮を要する子どもについて、市の専門機関の巡回指導を受け、助言をもとに保育に当たっている。

保護者の手間を軽減するため、入園時及び利用の日または週ごとに家庭で用意するものはシーツや最小限の着替え等に抑えている。朝の登園時間を原則として8時半までとしているが、当日の状況等に応じて柔軟に対応している。近隣の公園に散歩に出た後の登園の場合は保護者に散歩先まで連れてきてもらうこともある。保育時間の変更や昼食の夕食の予約・キャンセルの連絡は専用のアプリまたは電話により受け付け、対応している。土曜日の保育は体制を確保するため、必要な時間帯の事前予約を原則としているが、保護者の就労を利用の条件とはしていない。

保護者懇談会を年2回、平日の17時から0・1歳児クラス、18時から2～5歳児クラスの2回に分けて実施している。2回目となる11月末の懇談会では7月から11月までの指導・取り組みとその成果について園から説明した後、保護者間の懇談が行われている。前半の説明の際に配布される資料は、年間指導計画等に基づき法人本部が作成した共通のベースを園の実情に沿って補整している。今回の利用者調査では、子どもの保育内容についての説明がわかりやすいとの回答は約55％にとどまっており、原因の分析と改善に向けた検討が期待される。

毎月4種類の通信を発行し、専用のアプリ等で保護者に公開している。1日発行の「どろんこだより」では当月の予定と写真画像での前月の活動紹介の他、法人の保育に関する考え方を具体的な事例に即して説明するコーナーを設けている。25日に発行される法人共通の「保健だより」と「食育だより」では、時季に沿った保健情報や法人全体の食育活動の紹介等、育児の参考となる記事を掲載している。また、園で実施している保育参加の他、法人全体で開催している職員向けの保育のスキルアップ講座の一部を一般公開し、保護者にも参加を呼び掛けている。

法人の保育目標の一つに、他者と積極的に関わる意欲とコミュニケーションをとるための表現力を掲げ、子どもたちが園外に出て、多くの人と会って話をする機会を重視している。近隣の公園までの道で顔を合わせる人には職員が率先して気持ちの良いあいさつする子どもに見せている。世代間交流として年2回、市内のデイサービスセンターを訪問し、子どもたちが高齢者と交流している。

保育士養成校からの実習生や市内の小・中学校や高校からの体験ボランティアなどを積極的に受け入れており、毎年多くの児童・生徒、学生が子どもたちと関わっている。また、子育て支援事業として、地域の子育て家庭の親子を対象とした保育所体験や青空保育の参加者が、園内や近隣の公園での活動で園の子どもたちと一緒に遊ぶこともある。さらに、地域活動事業として、プロの演奏家などを園に招き、音楽鑑賞会や狂言、人形劇などを開催して、地域の人たちにも参加を呼び掛けており、子どもたちがさまざまな世代の人と交流する機会が設けられている。

利用契約の際に、利用者の個人情報の使用目的や使用方法等について書面で説明し、保護者の署名をもって同意の意思を確認している。必要に応じて療育機関や医療機関等に個人情報の外部提供を行う際は、その都度、保護者の意思確認をおこなっている。また、園の毎月の通信等には子どもたちの日常の活動の様子を生き生きと伝えるために写真を多用しており、その際は顔写真のアップは避けるとともに、保護者より使用の承諾を受けている。法人として個人情報の保護に関するマニュアルを整備するとともに職員に対する研修を行い、周知に努めている。

法人として子どもの意思を尊重し、自分でできることを見守る姿勢を重視している。また、子どもを呼び捨てにしないことを謳っているが、子どもに対する望ましくない職員の態度があったとして、改めて職員に対し周知徹底に努めている。今回の利用者調査では、職員の子どもへの対応の他、保護者に対してはフレンドリー過ぎるという声が複数の保護者から寄せられており、職員の基本的な接遇マナーや子どもに対する抑制的な接し方について再度の教育の機会を設けることが望まれる。

法人として保育サービスの分野で国際的な品質管理の基準に沿った取り組みを継続的に行い、専門の認証機関による定期的な審査を受けている。また、所定の研修を受けた社員が法人の定める点検表に沿って毎年内部監査を行い、その結果を各事業所にフィードバックして、振り返りの材料としている。点検表には300以上の項目ごとに確認の方法が具体的に示されており、業務の標準化に対する法人の強い姿勢がうかがえる。今後、保育所保育指針や関係法令の改定を踏まえた用語や内容の見直しを継続的に図ることが期待される。

法人の定める保育品質マニュアルは、衛生管理、感染症、危機管理、虐待対応、苦情対応、保健計画、食育計画、給食提供の各領域で構成されており、入職時に正職員全員に冊子が配布されている。各自必要なページにインデックスをつけて素早く確認できるようするなど、工夫しながら活用している。また、緊急時の対応や通報のフローチャートを電話の近くに掲示している他、アドレナリン自己注射薬の練習キットを使った研修や園内に備え置かれた衛生用品の一式を使用した嘔吐物処理の実演訓練等を行い、職員が落ち着いて対応できるように努めている。

法人として現場の職員の前向きな意見やアイデアを大切にし、それらを積極的に取り入れて体験学習の企画や職員研修の内容に活かしている。保育品質マニュアルを毎年見直す過程においても、現場の意見を集約して改定につなげる仕組みを整えている。今後は法人全体で年1回、園ごとに実施する保護者アンケートの集計結果についてもマニュアルを見直す際の材料に活用することが期待される。また、相当な分量のある保育品質マニュアルについて、その内容が細部にわたって現場に周知されているかを点検し、現状の把握につなげることが望まれる。