東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和元年度(2019年度)
サービス名称 認可保育所
法人名称 社会福祉法人どろんこ会
事業所名称 中目黒どろんこ保育園
評価機関名称 合同会社 フェアリンク

コメント

・利用者調査では保護者に対する書面によるアンケート調査を実施。施設長名の依頼状及び調査票、返送用封筒の3点を対象者の人数分の封筒に封入し、園に送付のうえ、子どもの送り迎えの際に保護者に配布してもらった。
・利用者調査の一環として、担当評価者2名が午前中の戸外保育や、園児と同じ献立の給食を試食しながら食堂での昼食の様子を観察した。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)にんげん力を培う(センスオブワンダー・人対人のコミュニケーション) 2)心も体も元気な子ども 3)友達と楽しく遊べる子ども 4)思ったこと、感じたことを表現できる子ども 5)環境を通した乳幼児・保護者・職員・地域の学びの場・育ちの場作り

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

乳幼児の発達の道すじや連続性をとらえ、子ども一人ひとりの遊びを協働的に展開しながら、育ちの本質を汲み取ることができる高い専門性を有する。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

園全体や地域の環境を通して、乳幼児期の豊かな経験とは何かを考察し、保育者自らが実践し、評価し改善しながら、子どもたちと協働的に専門性を発揮できる。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 園という「大きな家」で子どもたちがともに暮らす中で、年齢やクラスの枠を超えた子ども同士の関係性が広がりを見せている

3~5歳児クラスは1階の仕切りのない保育室をベースに一緒に生活しており、異年齢の子ども同士がともに遊び、様々な場面で自然と助け合っている。また、年長児が自分の意思で2階に上がって乳児クラスで小さい子どもたちと一緒に遊んだり、おもちゃを片付けたり、食事の準備を手伝うといった姿も見られ、園という「大きな家」で、年齢やクラスの枠を超えた子ども同士の関係性が広がりを見せている。異年齢の子どもたちがともに暮らす中で、「生活・遊び・労働を教えあう」という法人の方針に沿った保育が着実に根を下ろしてきている。
2 子どもが自分で活動を選択し、考えて行動するとともに、自分たちの問題を話し合って解決する取り組みが根付いている

年長児は毎日夕方に少人数に分かれて話し合いの時間を持ち、一日を振り返りながら、翌日に行きたい公園や遊びを話し合うとともに、嫌だったことや嬉しかったこと、トラブルが起きた時はどうしたら良かったのか等を伝え合うようにしている。話し合いの場では、子ども同士が自分の気持ちを相手に伝え、それを最後まで聞くことを大切にしている。日常の活動の延長に位置付けられている運動会や生活発表会においても、異年齢クラスでは自分のやりたいことを自分で決めている。子どもが自分で活動を選択し、考えて行動する日頃の取り組みが根付いている。
3 動物の世話や給食の食材の下処理などの仕事を子どもたちが自分のものとして積極的に引き受け、自主的に取り組む姿が見られる

法人の保育理念に基づき、園を「子どもと身近な大人が協働的に生活を送る場」と捉え、施設長自ら木製家具の製作や備品の修繕にあたる姿を子どもに示している。また、生き物の世話を通じて子どもたちが生死を学ぶ機会と位置づけ、近隣住民に協力を依頼しながら住宅地の只中にある園庭でヤギやウサギを飼い、当番の子どもが糞を片付けたり小屋の掃除に精を出している。子どもと職員がともに食べる給食の食材として使用する野菜やキノコ等の下処理を手伝う子どもの姿も見られる。そうした仕事を子どもたちが積極的に引き受け、自主的に取り組んでいる。

さらなる改善が望まれる点
1 法人の方針を踏まえ、異年齢の子どもの育ち合いを引き出す指導計画の構成と個別の保育のねらいの保護者との共有に向けた検討が期待される

乳児クラス以外は異年齢保育を基本としているものの、年間及び月間指導計画は年齢別に作成されている。異年齢の子どもたちがともに生活し、遊び、労働を教え合うという法人理念の実現を図るためには、保育を通じて子どもたちの育ち合いをどのように引き出していくかという視点に立った指導計画の構成と、それに基づく計画的な保育の展開が望まれる。また、家庭と連携しながら子どもの生きる力の基盤形成を支えるためには、個別の保育計画における月ごとの保育のねらいを保護者と共有することが重要と考えられる。その現実的な方法の検討が期待される。
2 重要な決定を行う際の保護者に対する丁寧な説明やさらなる工夫が期待される

法人の保育理念を踏まえ、子どもの自主性と選択を尊重した保育の展開を目指す中で、幼児を中心に子どもは一日を通して多くの時間を自分で過ごしたい場所を選んで活動している。しかし、今回の利用者調査では、子ども個々の状況の把握について課題を示唆する声が一部確認された。子どもの活動場所が1~3階に分散していることと併せ、今年度から3歳児クラス以上で年齢別の担任制を廃止した際の説明が十分行き渡っていなかった可能性が考えられる。今後は重要な決定を行う際の保護者に対する丁寧な説明とさらなる工夫が期待される。
3 事業計画の運営管理上の位置づけを明確にし、重点課題に対する取り組みの達成度を測る指標を明示するなど、内容を見直すことが期待される

法人のフォーマットに沿って単年度の事業計画書を作成しており、その最後に「3か年計画」として、各年度の目標を謳っている。事業計画において、重点課題に対する取り組みの達成度を測る指標の明示が十分とは言えず、事業報告における総括がやや漠然とした内容にとどまっている。園の運営管理の仕組みにおいて、事業計画の役割や位置づけを明確にするとともに、付表を含む保育の全体的な計画との関連を整理し、必要な内容を改めて検討することが期待される。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 保育士による虐待として、具体的な事例を挙げて定義を行い、マニュアルに明示している

利用契約時の重要事項説明の中で、虐待防止の措置として、速やかに行政の関係機関に連絡し、早期に子どもの保護及び保護者対応に当たることを謳っている。また、保育品質マニュアルの中で、保育士による虐待として、「子どもを呼び捨てにする」「交換条件を示す」など14項目の具体的な事例をあげて定義し、該当する行為があった場合は、保護者及び行政への報告を検討すると明記している。さらに年2回、職員会議において、権利擁護の観点から日常の保育を振り返る機会を設けている。子どもに対する権利侵害を許さない法人の強い姿勢がうかがえる。
関連評価項目(虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている)
2 ★ 法人として年長児に対する性教育を実施するとともに、いのちの教育に力を入れている

法人では10年以上前から年長児を対象に性教育を実施している。子どもたちが大人から性被害を受けるリスクに加え、性に関する不適切な情報に意図せずに触れてしまう状況がある中で、子ども間の性被加害のリスクが高まっており、身近な大人が子どもに対し健全な性に対する知識を伝えることが何より重要として、指導のポイントを具体的に整理し、5歳児の保育において実践するとともに、その内容を保護者にも伝えている。絵本を使った導入と、新生児サイズの人形を使用して命の誕生を学ぶ機会を設け、2週にわたり性教育の取り組みを実践している。
関連評価項目(子どもが心身の健康を維持できるよう援助している)
3 ★ 近隣の店舗等を訪問して、そこで働く大人と交流を図る取り組みをおこなっている

子どもたちが地域社会を支える人々の様々な仕事を知り、知りたいことを言葉にして相手に伝える体験をする「商店街ツアー」と称する活動に法人全体で取り組んでいる。子どもたちが自分の暮らす街にあるいろいろな店舗や会社、施設等を訪れ、そこで働く大人に仕事について質問し、交流を図る活動を週1回実施している。当園でも近隣のペットショップや米屋、クリーニング店、郵便局、寺院などを子どもたちが訪問する中で、地域の中に顔見知りの関係が着実に広がっており、子どもたちの育ちを地域社会が支える土壌の形成に資する活動となっている。
関連評価項目(地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:アンケートの対象は調査実施時点で在籍している子どもの保護者全員(ただし世帯単位)。2人以上の子どもが同じ通園している場合は、年齢がいちばん下の子どものクラスに関して回答してもらった。

調査方法:アンケート方式  
書面による無記名式のアンケート調査を実施。共通評価項目に対し「はい」「どちらと言えない」「いいえ」「非該当・わからない」の4つの選択肢を用意。依頼状、調査票及び専用の返信用封筒を園経由で保護者に配付し、記入後、評価機関に直接郵送してもらった。

利用者総数 69人
利用者家族総数(世帯) 52世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 52人
有効回答者数 32人
回答者割合(%) 61.5%

総括
共通評価項目全体で、肯定的な回答(はい)の割合は約68%、そのうち、保育の内容及び保護者支援に関する設問(問1~問5、問7)では、その割合が8割以上、中でも問1(子どもの心身の発達)では9割以上に達している。その一方、「どちらとも言えない」「いいえ」の回答を合わせた割合は全体で約27%、そのうち、問6(安全対策)では6割以上、問8(園との信頼関係)と問12(子ども同士のトラブルへの対応)では5割を占めている。また、問17(外部の相談窓口の説明)では、「非該当・わからない」の回答がおよそ3分の1を占めており、自由記述欄には「そうした窓口に相談しようと思ったことがない」といったコメントが寄せられている。共通評価項目に加え、設問の最後に保育に対する総合的な満足度を5段階で尋ねたところ、最上位の「大変満足」と、それに続く「満足」の回答が合わせて7割近くに達しており、保護者の満足度はある程度高い水準にあると推測される。利用者調査の一環として、2名の担当評価者が午前中の戸外保育、及び食事の場面を中心に観察調査を行い(子どもと同じテーブルで給食の試食も実施)、その結果を訪問調査の際に園長に報告した。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 31人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
実際の調査票の質問文(以下、Q):園での活動は、お子さんの心身の発達に役立っていると思いますか
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 28人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
Q:園での活動は、お子さんが興味や関心を持って行えるものになっていると思いますか
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 27人  どちらともいえない 4人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
Q:園で提供される食事・おやつは、お子さんの状態に配慮し、工夫されたものになっていると思いますか
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 28人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
Q:戸外遊びや行事などにより、お子さんが自然や社会と関わる機会は十分確保されていると思いますか
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 26人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 4人 
Q:急な残業などであらかじめ取り決めた利用時間を変更する必要がある場合、柔軟に対応してくれていると思いますか
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 11人  どちらともいえない 11人  いいえ 9人  無回答・非該当 1人 
Q:安全対策が十分取られていると思いますか
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 27人  どちらともいえない 4人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
Q:行事の日程は参加しやすいように十分な配慮がされていると思いますか
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 16人  どちらともいえない 12人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
Q:お子さんの気持ちや様子・子育てなどについて職員と話したり相談することができるような信頼関係があると思いますか
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 26人  どちらともいえない 6人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
Q:園内は清潔で整理された空間になっていると思いますか
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 23人  どちらともいえない 7人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
Q:あなたは、職員の言葉遣いや態度、身だしなみなどが適切だと思いますか
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 18人  どちらともいえない 8人  いいえ 5人  無回答・非該当 1人 
Q:子どもがけがをしたり、体調が悪くなったときの、職員の対応は信頼できますか
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 13人  どちらともいえない 9人  いいえ 7人  無回答・非該当 3人 
Q:子ども同士のトラブルやいじめ等があった場合の職員の対応は信頼できますか
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 23人  どちらともいえない 8人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
Q:あなたは、職員がお子さんの気持ちを大切にしながら対応してくれていると思いますか
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 25人  どちらともいえない 5人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
Q:あなたやお子さんのプライバシー(他の人に見られたくない、聞かれたくない、知られたくないと思うこと)を職員は守ってくれていると思いますか
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 18人  どちらともいえない 7人  いいえ 6人  無回答・非該当 1人 
Q:お子さんの保育内容に関する説明は、わかりやすいと思いますか
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 20人  どちらともいえない 9人  いいえ 1人  無回答・非該当 2人 
Q:あなたが不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員は、きちんと対応してくれていると思いますか
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 12人  どちらともいえない 5人  いいえ 4人  無回答・非該当 11人 
Q:あなたが困ったときに、職員以外の人(役所や第三者委員など)にも相談できることをわかりやすく伝えてくれましたか

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
保育に関する重要事項の決定において、保護者に対する丁寧な説明を行うことが望まれる

区立保育所の民営化の第1号として、2017年から当法人による運営がスタートした。全国に保育事業を展開する法人グループが一体的な管理体制のもとで各事業所の運営をサポートしている。民営化前からの継続利用者もいる中で、区の方針や人員配置基準を踏まえつつ、施設長は3年目に入って法人の独自色を押し出す方向に舵を切り始めている。今年度からの3歳児クラス以上の担任制の廃止はその一つの例である。

リーダー層の機能強化と当園の職員としての望ましい行動特性の明示を図っている

施設長は法人の保育理念に基づき、園を「子どもと身近な大人が協働的に生活を送る場」と捉え、積極的に子どもたちと関わりを持っている。主任と2名のリーダー保育士を加えてリーダー層を形成し、その機能強化を図っている。合議による意思決定を重視し、月1回の職員会議と週1回の各クラスの代表者が集まる会議で日常の保育を行う上で必要な事項を検討・決定している。職員集団を統率するうえで、当園の職員として望ましい行動特性を明示することが必要と考えており、今後、職員会議等での議論を通じて目指す方向性をそろえていくことが期待される。

法人全体で施設長のマネジメント能力の向上を目指した研修を計画的に実施している

施設長には日常の保育に関する事項や法人が設定した予算の範囲内で自園の経費をコントロールする権限が与えられている。法人全体として現場のトップである施設長の育成に力を入れて取り組んでおり、年間の研修計画に基づき、毎月、人材マネジメントと保育の質のそれぞれのカテゴリーごとにテーマを設定して、同一エリア内の事業所の施設長が学びを共有している。研修の講師は法人役員の他、本社の管理職と施設長が交代しながら務めており、各事業所の主任クラスの職員による横断的な会議との連動を意識したカリキュラムを策定している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
法人による外部環境の分析と園が集約した保護者の意向の結果を改善に活用している

法人のマネジメントシステムにおいて、保育サービスに関連する法制度についての情報収集は施設長の役割となっているが、実際には本社が中心となって、関連する法制度の改正や社会・経済環境の変化、業界の動向等に関する情報の収集を行い、幹部会議における分析結果を毎月の施設長会議や研修等の場で職員に伝えている。園では、保護者との日常的なやり取りの中でニーズの把握に努めるとともに、法人全体として年1回実施するアンケートを通じて保護者の意向を集約し、保育の振り返りと継続的な改善に活用している。

区内の園長会に参加し情報を収集するとともに、近隣住民との関係調整に努めている

施設長は区内の園長会に参加し、区の担当者より法令等に基づく都や区の制度対応等に関する情報を収集するとともに、園長間の協議を通じて行政に対する要望を取りまとめ、区に提出して実現を働きかける等の取り組みを共同でおこなっている。今年度より、法人の保育目標を踏まえて、園庭でヤギを飼い始めた。都市部の住宅地の只中でヤギを飼うに当たり、近隣住民から鳴き声や臭い等に関する苦情が寄せられることが予測されたため、施設長は園の周辺を回って住民に理解を求めるとともに、苦情等の連絡先の電話番号を伝え、トラブルの防止に努めている。

目標管理制度を活用したマネジメントが行われている

昨年度の収支予算書は本社主導で編成しており、園の事業計画との関連に関して、施設長から明確な説明は聞かれなかった。法人では、年度の収支予算の作成において、今後、施設長が決定する範囲と権限を広げていく方向で検討を進めている。施設長に対する目標管理制度では、主に園全体の目標が設定され、半年ごとに達成状況を確認している。今後、事業所の目標と連鎖する形で職員一人ひとりの目標を設定する仕組みを活用し、事業所全体の目標達成に対する職員の参画意識や責任感を一層高めることが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
法人全体として定期的な内部監査や自己点検の仕組みを整え、法令遵守体制を整えている

法人全体として独自の点検項目に沿って3か月ごとに内部監査を実施している他、職員一人ひとりが日常の子どもに適切に対応しているかを共通のチェック項目で自己点検する取り組みを年2回実施している。また、各園における書類の整備状況や日々の職員配置の状況等について、法令の要件を満たしているかを本社が一元的に管理する仕組みを整えている。基準を下回った場合にはPCの画面上でアラートが上がることになっている。

虐待防止に向けた関係機関との連携体制や法人全体の内部通報制度を整えている

家庭での子どもの虐待が疑われる場合は、法人役員の指示に基づき、関係機関と連携して対応する体制を整えている。保育所は通園する子どもとその保護者にとって最も身近で密接な関係にある社会資源の一つであることから、これまで、地方自治体に設置される要保護児童対策地域協議会からの要請に応じて園が把握している情報を提供し、子どもの養育環境の適正化に向けて固有の役割を果たしてきた。また、以前より整備してきた法人全体の内部通報制度を職員がより利用しやすい形に改め、園内での虐待が疑われるケースに早期に対応できるように努めている。

園が掲げる「地域と相互的かつ協働的に関わり合う」活動に取り組みの余地を残している

法人全体として、保育の全体的な計画に基づき、地域の子育て家庭を対象に、園での制作活動や公園での集団遊びを親子で体験する中で、遊び方のヒントを学んだり、日頃の育児の悩み等を保育士に相談することでストレスの解消に役立ててもらう取り組みの全園での展開を目指している。当園でも平日の園庭開放や月1回の青空保育等を開催している。また、キッチンの設備や絵本が整備され、地域の子育て家庭が自由に利用できるスペースを設けており、「地域に密着した福祉施設」という園の方針に沿って、今後のさらなる取り組みが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
園運営における重大なリスクを軽減するための対策を講じている

保育中の子どものケガや事故、感染症の発生の他、園運営における法令違反や職員の離職を重大なリスクと位置づけ、その防止に向けて、法人本部を中心とするコンプライアンス体制の整備や職員の意向を踏まえた研修機会の提供、職員同士の自主的な学び合いの支援等に力を入れている。また、感染症予防のための衛生管理に努め、流行の時機を迎える前に衛生用品一式を用意し、それを使った汚物処理の実演研修を毎年実施している。

子どもの安全確保に向けた職員間の情報共有と研修を通じた意識の啓発に努めている

子どもが自然体験をはじめとする様々な経験を通じて自分で考え、行動する力を育成することを法人の保育理念に掲げる一方で、活動中の事故や子どものけがを防止するため、事故及び事故の危険に直面した職員が、その状況等を書面にまとめて報告し、毎月の職員会議や日々のミーティングで情報共有を図るなど、安全管理に力を入れている。また、日常の保育環境に潜む危険に対するアンテナを高めるための職員研修の実施や、職員向けた法人の通信に法人内外の事業所で実際に起きた事故事例を掲載するなど啓発に努めている。

利用者の個人情報保護の仕組みと、情報を共有・活用するためのルールを整備している

利用契約を結ぶ時点で、利用者から預かる個人情報の使用目的や使用の条件等を文書で提示し、保護者の同意を求めている。職務上、利用者の個人情報を知り得る立場にある職員や実習生には、退職後または実習終了後も外部に漏らさないことを誓約した文書への署名・提出を義務付けている。また、事務室内に鍵付き保管庫を設置し、個人情報を含む書類を分類・整理して保管している。組織内で共有することを目的に収集・蓄積している情報は法人のルールに従ってファイリングし、パソコン内またはキャビネットの所定の場所に保管して、職員に周知している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
職員の採用は法人の理念に対する共感を重視し、本部が一括しておこなっている

法人として職員の確保と定着を最重要課題に据え、保育士については新規学卒者の定期採用を軸に本社が一括して募集をおこなっている他、採用難の折り、職員からの紹介制度をはじめとする様々な制度を導入している。選考に際しては法人理念に対する共感を重視し、期待する人材像や共通のミッションを明示して入職時に説明している。当事業所は区立施設の民営化後も区が定めた人員基準に沿って通常より手厚い配置を求められている。開園3年目を迎える中、リーダー層の育成や業務の質の底上げに向けてさらなる取り組みを期待したい。

職員同士の同僚性や信頼関係の構築に取り組んでいる

法人の人事制度において、職員に期待する能力やマインドの定着度合いを評価し、その結果を集計して昇給や賞与、昇格等に反映している。また、全社的な業務改善のプロジェクトに職員の主体的な参加を呼びかけ、現場からのアイデアや提案を積極的に取り入れるなど、職員のモチベーションの向上に取り組んでいる。当事業所では職員同士が相互に気づきを伝え合い、指摘し合える関係性を高めることで組織力の強化を図っている。

職員の役割や意向に応じた研修や個別面談を軸とした育成の仕組みの運用が期待される

法人として施設長が年2回、職員と個別に面接を行い、半年間の職務の達成度合いについての評価をすり合わせるとともに、各人の課題や目標を共有する仕組みを整えている。また、階層別の研修制度を整備し、職員一人ひとりの学習ニーズを把握したうえで、個別の目標と連動する形で外部研修を案内している。今年度の事業計画に謳われた職員育成計画が着実に実行されていくことが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 当園では開設以来、園の生活の中で子どもたちが何かに一生懸命取り組む姿や夢中になって遊ぶ姿を職員が写真画像に切り取り、保育の記録として活用してきた。毎月、数枚の写真に簡単なコメントを付けて台紙に貼り、保護者に渡している。各家庭からも、子どもが家で興味を持って遊んでいる場面等の写真に保護者のコメントを添えて提出してもらい、成長記録として残している。園が「ポートフォリオ」と称する取り組みは、ドキュメンテーションの一つの手法として国内外の多くの保育施設で実践されており、当園では子どもの興味や関心を探るとともに、職員の子どもを観る目を深めることを主要な目的として継続してきた。施設長の思いとしては、文章による記録が得意でない保育士にとっても取り組みやすいという想定もあった。昨年度は職員が当月に撮影した写真のうち、特に子どもの成長や興味・関心の所在がうかがえる5枚をセレクトし、その中から子ども本人に「とっておきの一枚」を選んでもらう取り組みを試みた。そのことが子ども自身の思いの発見につながり、結果として保育の環境設定の変更に活かされている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
昨年度の取り組みをさらに発展させる形で、今年度は当月のアルバムに入れる写真を子ども自身にセレクトしてもらう試みを開始した。ポートフォリオの手法を活用した独自の取り組みを取り入れ、試行錯誤している様子がうかがえる。子どもの発達や成長の姿をとらえた保育士が、それが自分たちの保育のどこから導かれたものなのか、あるいは保育のねらいのどこに見立てを誤ったのか、計画に基づく省察につなげることが重要と考えられる。そうした観点から、これまでの取り組みを総括し、保育の専門職としての視点を深める方向に展開していくことが期待される。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 2017年に区立保育所が民営化され、当法人による運営がスタートした。施設長は区の方針等を踏まえつつ、昨年度から徐々に法人の独自色を出す方向に舵を切り始めている。その取り組みの柱の一つが、園を一つの「大きな家」と捉え、子ども自身の自主性と選択を尊重した保育の展開である。0・1・2歳児の乳児の保育では従来通りクラスごとの担任制をとっているが、3歳児クラスから上の幼児の保育においては今年度から年齢別の担任制を廃止し、異年齢保育を基本としている。幼児を中心に子どもたちは一日を通して多くの時間を自分で遊びたい場所を選んで過ごしている。ホールで遊んだり、乳児クラスで小さい子と一緒に遊んだり、お手伝いをしたりと、園内を一つの大きな家のように自由に移動しながら活動している。保育の計画に関しては、全体的な計画及び年間指導計画に基づき、0・1・2歳児及び3~5歳児の4つのクラスごとに年齢別の月間指導計画を作成し、主任が必要な見直しや調整を担当している。主任のもとに2人のリーダーが配置されており、0~2歳児の乳児グループと3~5歳児の幼児グループをそれぞれが束ねている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
幼児を中心に子どもたちが自分の過ごしたい場所や一緒に遊びたい相手、遊びや活動を選択する環境をどう整えるかを職員会議で検討する中で、子どもの居場所の把握、共有に関する課題が提示された。それを受け、幼児クラスのある1階に園内マップを設置し、子どもは自分の顔写真のついた人形を自分が過ごしたい場所に置き、居場所を知らせたうえで移動して良いというルールを定め、今年度から運用を始めた。そのルールは子どもたちにも受け入れられ、定着している。現在は子どもの活動場所が1~3階に分散しており、組織として展開を目指している保育のレベルと現状における職員集団のキャパシティーのバランスを考慮しながら、子ども自身の自主性と選択を尊重した保育を展開していくことが期待される。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
グループ全体のホームページにより、共通の保育理念や方針、保育目標等を案内している

グループ全体のホームページを通じて、共通の保育理念や方針、保育目標等を案内している。系列園での子どもの実際の活動や生活の場面を撮影した動画や写真画像を使って文字情報を補うとともに、必要に応じて英語及び中国語の表記への切り替えを可能とするなど、ユーザーの多様なニーズに配慮している。ホームページの問い合わせフォームから利用希望の園を指定して資料請求や見学希望のオーダーを送ることもできる。

見学を随時受け付け、施設長または主任保育士が書面に沿って説明しながら案内している

見学の問い合わせを電話等で随時受け付け、都合を調整したうえで、施設長または主任保育士が案内をしている。パンフレットに沿って法人の保育理念や、その実現に向けて園が力を入れている取り組み等を中心に説明している。パンフレットには写真画像が多く取り込まれ、子どもたちの生き生きした姿を伝える工夫が見られる。見学の際は、実際に通園する子どもにも園の雰囲気を感じ取ってもらえるよう、無理のない範囲で連れてくるように話している。法人では、すべての職員が自分の言葉で保育の理念等を説明できるようになることを目標に掲げている。

定員に空きがない場合は、必要に応じて一時保育や子育て支援等の事業を案内している

利用の希望を受けても定員に空きがなく、すぐに利用できない場合は、待機者リストに登録するかどうかの意思を確認のうえ、空きが生じた時点で、申し込み順に並んだリストの上位者から順次案内している。また、必要に応じて当園が実施している一時保育や地域の子育て家庭を対象に実施している保育所体験等の事業の案内をしている他、住所によっては近隣にある系列園を紹介することもある。利用希望者や見学者から育児に関する相談が寄せられることもあり、主に施設長が対応している。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
利用契約の際の保護者との個別面談で、子どもの保育に必要な情報や要望を把握している

利用契約の際に書面による重要事項等の説明と契約書類の取り交わしを行うとともに、保護者から保育に必要な情報の提供を受けている。子どもの食物アレルギーや健康状態を含め、子どもや家庭の状況について、専用のアプリまたは所定の書面を通じて提供された情報をもとに、施設長が保護者との個別面談をおこなっている。また、保護者が育児において気になっていることや保育に対する要望等を確認し、統一した記録用紙に記入して、職員間で情報を共有している。

子どもが園の生活に慣れるための個別の対応や保護者に対する情報提供に配慮している

新入園の乳児には、なるべく特定の保育士が関わるようにし、子どもとの愛着関係を築く中で園の生活に慣れるよう配慮している。慣れ保育は必須とはしておらず、保護者の状況や要望に応じて対応している。標準的には2週間程度かけて段階的に保育時間を延ばしている。法人全体として迎えの際にその日の子どもの様子を保護者にていねいに伝える取り組みに力を入れている。連絡帳に代わるスマホアプリを介した双方向の連絡ツールの活用により、保護者が子どもの園での様子を携帯端末で確認できることで安心感につながっている。

卒園時は就学先に指導要録を送るとともに、必要に応じて個別の引き継ぎをしている

年長クラスの子どもが卒園する際は個別の指導要録を作成して就学先の小学校に提供している他、特に配慮を要する子どもに関しては、対面または電話等の手段により小学校の教員に引き継ぎをおこなっている。途中での転園等の場合、必要に応じて子どもに対する個別の配慮事項等を所定の様式に記述し、保護者の同意のもとで転園先に情報提供する仕組みを法人として整えている。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
効果を上げている職員間の意思疎通方法の横展開が期待される

法人より2月初めに次年度の全体的な計画と年間指導計画のひな型が配信され、園の職員会議で当年度の振り返りをもとに次年度の計画を検討、作成する流れが示されている。当園では0・1・2歳児及び3~5歳児の4つのクラスごとに年齢別の月間指導計画を作成し、主任が必要な見直しや調整を担当している。1・2歳児クラスではノートを使った職員間の意思疎通が効果を上げており、園内の横展開が期待される。

園の生活の中で子どもが見せる成長の姿を写真画像に切り取り、保護者と共有している

各クラスの月間指導計画を踏まえて個別の月案または週・日案を作成し、日々の保育記録をもとに振り返りを行い、次期の計画につなげる仕組みを整えている。また、毎月すべての子どもの発達状況を児童票の項目に沿ってチェックし、子どもの姿の変化等を個別に記録している。当園では、園の生活の中で子どもが見せる成長の姿を写真画像に切り取り、保護者と共有するとともに、職員が子どもを観る目を深める取り組みをおこなっている。今後もこの取り組みを深め、会議等で子どもたちの発達や成長の姿を保育のねらいと意味づけていくことが期待される。

毎週の会議で各クラスの子どもの状況を共有するとともに迅速な意思決定につなげている

7時~20時半の開園時間の中で、保護者との双方向の連絡事項や薬の預かり状況等を職員が所定のノートに書き込み、クラス内や遅番の職員に伝達している。保護者から意見や要望を受けた場合は、その内容を職員が所定のシートに記入して施設長に提出し、会議で検討する仕組みを整えている。また、毎週の各クラスの代表者による会議で子どもたちの様子等を報告し、全体共有を図っている。施設長や主任も参加する週会議は単なる報告の場でなく、検討・決定の場と位置付けられており、園内の迅速な意思決定と職種連携の機能を果たすものとなっている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
3歳児から上のクラスは年齢別の担任制を廃止し、日常的に異年齢保育を展開している

児童票や入園前の面談を通して入園前の子どもの様子を、入園後には日々の保護者との会話や連絡帳を通して家庭での子どもの姿を把握している。園での様子は、毎週のクラスごとの会議や、各クラスの代表と調理、看護師が参加する会議等で情報を共有している。0・1・2歳児の乳児の保育ではクラスごとの担任制をとっているが、3歳児クラスから上の幼児の保育においては年齢別の担任制を廃止し、異年齢保育を基本としている。園の生活を通じて子どもたちが育ち合う姿を保護者と共有する中で、保護者の理解を広げていくことが期待される。

園を一つの大きな家と捉え、子ども自身の選択と多様性を尊重した保育に努めている

幼児を中心に、子どもたちは一日を通して多くの時間を自分で遊びたい場所を選んで過ごしている。幼児クラスのある1階には園内マップが設けられ、子どもは自分の顔写真のついた人形を自分が過ごしたい場所に置き、居場所を知らせた上で移動して良い決まりになっている。ホールで遊んだり、乳児クラスで小さい子と一緒に遊んだり、お手伝いをしたりと、園内を一つの大きな家のように自由に移動しながら活動している。また、今年度、幼児を数名のグループに分け、世界中の様々な年齢の人の写真を見ながら国や文化の違いを考える取り組みを試みた。

特別な配慮を要する子どもを全員で見守るとともに、年長児には就学前プログラムがある

特別な配慮の必要な子どもに対して、担当任せとせず、職員全員で見守ることを基本としている。食事や排せつ、戸外保育の際の移動支援など職員が一対一で対応する必要がある場面を除いて、他の子どもたちに囲まれながら自然と関わりを持って過ごせるように努めている。また、年長児に対しては小学校への円滑な接続に向け、法人が様式を定めた計画に沿って年齢固有の特別なプログラムを実施している。近隣の小学校で行われる「お店屋さんごっこ」に参加したり、小学1年生の保育園訪問を受け入れ、子ども同士の交流を図る等の連携体制を整えている。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
降園時に保護者に子どもの様子を個別に伝える取り組みに法人全体として力を入れている

登園時の受け入れの際は、子どもの顔色や表情、ケガの有無、体調を確認し、普段と違う様子がある場合には保護者に確認するとともに引き継ぎ簿に記録して、職員間で情報を共有している。日中の活動の様子は連絡帳機能を有する専用のアプリを通じてクラスごとにコメントを付した写真画像を配信し、保護者が夕方までにスマホ等で見られるようになっている。降園時には保護者に対し園での子どもの様子について個別に時間をとって伝える取り組みに法人全体として力を入れている。

子どもの年齢や発達に合わせ、家庭と連携して基本的生活習慣の定着に取り組んでいる

子どもの発達段階に応じて、家庭とも連携しがら、1歳の後期から歯ブラシを口に入れることから始め、歯磨きにつなげている。食事は2歳児クラスから食器を運ぶ練習を始め、幼児クラスになると自分の食べる量を自分で食器に盛り付け、席まで運ぶようにしている。食器の置き方、食事中のマナーについては、一緒の席で食事をする職員が子どもたちに伝えるようにしている。トイレトレーニングについては、一人ひとりのペースに合わせて行い、トイレに興味を持った様子があれば便座の使用を始めるなど、家庭と連携しながら無理のない形で進めている。

子どもの生活リズムや体調、就学に向けた準備等に応じて休息時間を調整している

入園前の家庭での生活リズムと園での生活リズムの違いから、子どもが活動時間中に眠くなってしまったり、昼寝の時間に寝られないといった場合は、子どもに無理を強いることなく、事務室で寝かせたり、職員と一緒に過ごすなど、柔軟に対応をするようにしてる。また、年長児は秋の運動会が終わると就学に向けて一斉の昼寝をなくし、その時間を「当番活動」に充てて、園内のごみ集めや床掃除などの活動にそれぞれ取り組んでいる。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している
講評
子どもの主体性を尊重し、「自分で考え行動する」ことができるよう支援している

幼児を中心に、子どもが自分の過ごしたい場所を自分で決め、遊びや活動を選択できる環境整備に努めている。朝9時から散歩に出かける時間になっているが、他のことで夢中になり出かけたくない場合は、室内で過ごすこともできるようにしている。毎日、年長児クラスで夕方に行われる「子どもミーティング」では、その日の振り返りとともに翌日に行きたい公園や遊びたいことを話し合う場となっている。散歩やリズム体操などの集団活動に入っていけない子どもに対しては、本人が興味を持つタイミングを見計らって声をかけ、関わるきっかけを作っている。

子どものコミュニケーションの力を重視し、それを伸ばすための支援に努めている

法人が保育理念に掲げる「にんげん力」の柱の一つとしてコミュニケーションの力を重視しており、子どもが感じたことや考えたことを表現し、相手に伝えることを支援している。5歳児クラスでは毎日夕方に少人数に分かれて話し合いの時間を持ち、一日を振り返りながら、嫌だったことや嬉しかったことトラブルが起きた時はどうしたら良かったのか等を伝え合うようにしている。乳児クラスでは、絵本の読み聞かせの機会を多く設け、職員が子どもたちの反応に共感を示しながら、気持ちが通い合うことの心地よさを伝えるようにしている。

生き物の世話を通して生死を学ぶとともに、銭湯の利用でルールを学ぶ機会を得ている

園では、朝9時には散歩に出かけるようにしている。観察調査の折には、1歳児クラスの子どもたちが木々の間に落ちている木の実や葉っぱを拾い集め、職員に袋に入れてもらい、大切に持ち歩く姿が見られた。また、生き物の世話を通じて子どもたちが生死を学ぶ機会と位置づけ、園庭でヤギを飼い、当番の子どもが糞を片付けたり小屋の掃除をして世話をするほか、ウサギやドジョウなどの小動物も育てている。3歳児クラスから上の子どもたちは月1回、近隣の銭湯に出かけており、先に身体を洗ってから湯舟につかるなどのルールを学ぶ機会になっている。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
運動会や生活発表会では、普段の活動を中心に子どもたちが得意なことを披露している

保護者参加の行事として、運動会や園のおまつり、生活発表会などを実施している。運動会では特別な競技や演目は設けず、子どもたちが普段の生活の中で取り組んでいる活動を中心にしている。運動会で披露したパラバルーンも普段の遊びの中に取り入れ、子どもたちが協働して取り組めるようにしている。生活発表会では、0・1・2歳児は普段の遊びを、3・4歳児は自分の得意なことをグループで発表し、5歳児は園で飼っているヤギをテーマにした物語を子どもたちが作り、その中で縄跳びや跳び箱、ピアニカなど、それぞれが得意なことを発表している。

行事の取り組みを通じて子どもたちがともにやり遂げる喜びを味わえるよう支援している

長い距離を歩く遠足では、職員が「外でお弁当を食べよう!」「マシュマロを焼いて食べようか」など子どもたちが興味を持ちそうな言葉をかけながら、皆で一緒に歩き、ともにやり遂げる喜びを味わえるように支援している。運動会で使用するゲートは幼児が手作りしたものを使用しており、クリスマスには皆で段ボールを使って製作したツリーに絵の具で飾りつけをし、玄関に飾っている。施設長は、職員が子どもの興味や関心に焦点を当てる機会になることが重要と考えている。

事前のアナウンスを通じて保護者の参加を促し、ともに行事を盛り上げる工夫をしている

年間行事予定表を年度初めに保護者に配布するとともに、毎月の通信にも予定を掲載して周知を図っている。行事に向けて取り組む子どもたちの様子を撮影した写真画像に職員がコメントを付して専用アプリで保護者に配信しているほか、0~2歳児クラスではアプリ内の連絡帳にその様子を記載している。職員と保護者が話し合いを重ね、協力して実施する園のおまつりでは、保護者が食べ物の屋台を出したり、園庭の築山でスライダーを作って泥んこ遊びのコーナーを設けるなど、行事の中心になって活動している。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている
講評
職員が普段からクラスの枠を超えて子どもと関わり、様子の把握に努めている

園の開園時間は、7時~20時半で、夕方は18時半以降を延長保育の時間としている。子どもの人数が段々と少なくなる18時以降は1階の幼児クラスの部屋に全員が集まり、一緒に過ごしている。当園では、0~2歳児の各クラスでは担任制を敷いているが、3歳児以上は異年齢保育を基本に年齢別の担任を配置していない。「担任ではないから子どものことを知らない」ということが起こらないように、あえて職員同士が別のクラスに入る機会を設け、子どもも職員も普段から互いを知って、安心して関わることができるように配慮している。

夕方の延長保育の時間帯は、子どもがゆったりと落ち着いて過ごせるように配慮している

夕方以降の延長保育の時間帯は安全面の配慮から子どもたちの活動量を抑え、普段はあまり使用しない塗り絵やパズルで遊んだり、少ない人数で楽しめるゲームを職員と一緒にやるなど、ゆったりと過ごしている。職員は膝の上で絵本を読むなど、子どもの甘えを受け止めるようにしている。保護者の迎えが19時を過ぎる場合は、希望に応じて園で調理した夕食を提供している。夕食は専用のコーナーで職員が盛り付けをし、子どもが落ち着いて食べられるように配慮している。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
幼児クラスでは子どもが自分で配膳し、好きな席を選んで仲間と一緒に食事をしている

0~2歳児はクラスごとに2階の各保育室で給食を食べている。3歳児以上の幼児クラスは1階の仕切りのない保育室で、配膳台に置かれた大きな鍋から自分の食べられる量を盛り付け、好きな席を選んで一緒に食べたい子と食事をしている。2歳から自分の席に食膳を運ぶ練習を始め、3歳で自分で盛り付けるようにしている。年度当初はこぼしてしまう様子もみられるが、年上の子どもが自然と手伝い、教え合う関係ができている。職員は子どもたちと一緒に同じ給食を食べながら、箸の持ち方やテーブルマナーを教えるようにしている。

和食中心の献立の工夫と食物アレルギーのある子どもの誤食防止に努めている

給食は法人共通の和食中心のレシピに沿って各園で調理している。月に数回、各園で考えたレシピが加えられ、現在は東京オリンピックに合わせて海外の料理の献立を各園から募集している。調理員が中心となり、干し柿づくりや豚汁づくりなどを通じて子どもたちに作る楽しさと食べる楽しさを伝えている。食物アレルギーのある子どもには除去食を提供している。医師の記入欄のある所定の書類の提出を受け、保護者との個別面談で対応方法を確認している。専用の食器とトレーを使用し、顔写真と除去食材を記載のうえ、ラップを掛けて指定の席に配膳している。

子どもたちが実物を見る、触れる、育てる体験を通して食への関心を深めている

食への関心を深めるための取り組みとして、給食の食材として使用する玉ねぎの皮むきやキノコをほぐすなどの下処理を子どもたちが手伝っている。園の菜園では、トマトやナス、ゴーヤ、空心菜、二十日大根を子どもたちが苗から育て、収穫して、給食の材料にしている。また、給食で食べる魚を職員と一緒に近隣の魚屋に買いに行き、目の前で捌いてもらうことで、命あるものを食していることを学んでいる。園で使用する米は法人グループ内で自給自足しており、新潟県南魚沼市に所有する水田に毎年希望する園児が訪れ、田植えと収穫を体験している。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
子どもの生活リズムを整えるとともに身辺の衛生や安全に注意を向ける機会を設けている

子どもたちが散歩で歩く距離を徐々に伸ばし、12月を目安に2歳児は往復4キロ、4・5歳児は往復10キロ歩くことを目指している。ただ徒に歩くだけでなく、午前中は外で陽の光や季節の風を受けながら身体を動かし、自然と触れ合い、食事をしっかりとることで生活のリズムを整えることを目指している。また、看護師による手洗い指導や幼児に対する歯磨き指導、地元の警察署員による園での交通安全教室など、子どもたちが身の回りの衛生や安全に対する注意を向ける機会を設けている。

保護者と連携して食物アレルギーへの対応や乳幼児突然死症候群の予防策を講じている

子どもの食物アレルギー対応のため、アナフィラキシーに対する緊急補助薬を家庭より預かっており、職員に対してトレーナーを使用した訓練をおこなっている。また、特別な配慮が必要な子どもへの対応について、支援センターとの連携や区の巡回指導の機会に助言を受けている。乳幼児突然死症候群の予防策については入園時に保護者に説明しており、午睡中の5分おきの呼吸確認の状況を専用アプリで保護者に配信している。法人全体で子どものケガや事故等に関する情報を所定の様式で職員が報告する仕組みを整えており、週会議で防止策等を検討している。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している
講評
子どもの成長や興味・関心が感じられる写真を通じて子どもの姿を保護者と共有している

子どもの姿を保護者と共有する取り組みとして、月に1回、一人ひとりの子どもの成長が感じられる場面を切り取った数枚の写真に簡単なコメントを付けて台紙に貼り、保護者に渡している。各家庭からも、子どもが家で興味を持って遊んでいる場面等の写真に保護者のコメントを添えて提出してもらい、毎月の成長記録として残している。年2回、平日の夜に開催する保護者懇談会は、保護者同士の交流に主軸を置いて実施している。

保護者同士の交流を深める機会として、定例の懇談会や行事の取り組みを位置づけている

保護者の急な残業等による延長保育については当日の申し込みも受け付け、夕方4時までに連絡を受ければ夕食の提供にも対応している。また、法人の方針として、土曜保育については保護者の就業を利用の条件としていない。保護者同士の交流の機会として、年2回の保護者懇談会の他、保護者参加の行事が年数回設けられている。中でも、限定的な形で地域にも開放された園のおまつりは、保護者の有志が企画・運営の中心を担っており、同じ年代の子どもを育てる親同士がつながりを深めるきっかけとなっている。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
講評
地域の高齢者施設や商店、銭湯などに出かけ、様々な人と交流する機会を設けている

法人の保育目標の一つである「人対人コミュニケーション」の考えに基づき、子どもたちが地域に出て様々な人と交流する機会を設けている。近隣3か所の高齢者施設への定期的な訪問に加え、近くの商店街に幼児が出かけ、魚屋で給食のおかずとなる大きな魚を目の前で捌いてもらったり、園で栽培する野菜の苗を花屋でみつくろってもらいながら、店の人と交流している。また、月に1回、職員と3歳児以上の子どもが近所の銭湯に出かけ、一緒に風呂に入っている。一般の入浴客から声をかけてもらったり、マナーを教えてもらう機会にもなっている。

地域に密着した福祉施設としての役割を果たすために、町内会とのつながりを持っている

園として町内会に加入し、園のおまつりの際には町内会の人に来場者の自転車整理を手伝ってもらうなど、協力関係を築いている。園のおまつりでは、関係者以外の入園に対して安全上の理由から保護者の理解が得ることが難しく、一時利用を含む園の利用者及びその関係者に限って案内を送っている。また、法人全体の取り組みとして、園の玄関にはサイズが合わずに着られなくなった子ども服を保護者や近隣住民が置いていき、そこから欲しい服を誰でも自由に持っていける「勝手籠」と称するバスケットを設置している。

月に1回、近隣の公園で園の子どもたちと地域の親子が一緒に遊べる機会を設けている

平日の日中は地域に園庭を開放している他、月に1回、近隣の公園で青空保育を実施し、園の子どもたちと地域の親子が一緒に遊べる機会を設けている。また、地域の子育て家庭の活動や交流の拠点として、園内に設備の整った専用のスペースを設けている。2017年度に建築やデザインに関する著名な賞を受けた園舎の2階に設置された地域交流室には、道路に面した開放的なスペースにキッチンコーナーや絵本棚などが備えられ、地域住民が自由に使用できるようになっている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている
講評
保護者より個人情報や写真使用の承諾を取るとともに取り扱いのマニュアルを備えている

利用契約の際に、利用者の個人情報の使用目的や使用方法等について書面で説明し、保護者の署名をもって同意の意思を確認している。必要に応じて療育機関や医療機関等に個人情報の外部提供を行う際は、その都度、保護者の意思確認をおこなっている。また、園の毎月の通信等には子どもたちの日常の活動の様子を生き生きと伝えるために写真を多用しており、その際は顔写真のアップは避けるとともに、保護者より使用の承諾を受けている。法人として個人情報の保護に関するマニュアルを整備するとともに職員に対する研修を行い、周知に努めている。

法人として子どもに対する性教育に力を入れて取り組んでいる

乳児のおむつを替える場所を固定し、パーテーション等で周りからの目線を遮断している。乳児クラスでは午前中の散歩の後などに全員の子どもが着替えを行い、個別の状況に応じて職員が着脱の手伝いをしている。幼児クラスでは、着替えをするかどうかの判断は基本的に子ども自身に委ねられている。法人として10数年前より年長児クラスにおける性教育を継続しており、子どもの人権の尊重、いのちの教育とともに力を入れて取り組んでいる。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
品質管理の仕組みによる継続的な改善活動を通じて、業務の標準化に取り組んでいる

法人として保育サービスの分野で国際的な品質管理の基準(ISO9001)に沿った取り組みを継続的に行い、専門の認証機関による定期的な審査を受けている。また、所定の研修を受けた社員が法人の定める点検表に沿って毎年内部監査を行い、その結果を各事業所にフィードバックして、振り返りの材料としている。点検表には300以上の項目ごとに確認の方法が具体的に示されており、業務の標準化に対する法人の強い姿勢がうかがえる。

保育品質マニュアルの活用や職員研修により日常業務や緊急時対応の標準化を図っている

法人の定める保育品質マニュアルは、衛生管理、感染症、危機管理、虐待対応、苦情対応、保健計画、食育計画、給食提供の各領域で構成されており、入職時に全職員に冊子が配布されている。各自必要なページにインデックスをつけて素早く確認できるようにするなど、工夫しながら活用している。また、緊急時の対応や通報のフローチャートを電話の近くに掲示している他、アドレナリン自己注射薬の練習キットを使った研修や園内に備え置かれた衛生用品の一式を使用した嘔吐物処理の実演訓練等を行い、職員が落ち着いて対応できるように努めている。

マニュアルを定期的に見直す過程において、現場の意見を反映する仕組みを整えている

法人として現場の職員の前向きな意見やアイデアを大切にし、それらを積極的に取り入れて体験学習の企画や職員研修の内容に活かしている。保育品質マニュアルを毎年見直す過程においても、現場の意見を集約して改定につなげる仕組みを整えている。相当な分量のある保育品質マニュアルについて、今後はその内容が細部にわたって現場に周知されているかを点検し、現状の把握につなげることが望まれる。