東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和元年度(2019年度)
サービス名称 認可保育所
法人名称 社会福祉法人多摩養育園
事業所名称 光明第一保育園
評価機関名称 株式会社 評価基準研究所

コメント

利用者調査・職員調査は、WEBでの調査を実施し、携帯電話・スマートフォン・パソコンによる回答を中心とし、紙ベース希望者には従来型の紙による回答も可能とした。利用者調査開始時には、調査の趣旨や手法などに関する詳細な説明と個別のID・パスワードを記した案内状を封緘封筒に入れて全家庭に配布し、職員向けにも同様の案内状を配布した。経営層には各標準項目の自己評価を的確に行うための独自資料を提供するなど、事業所向けの配慮も行っている。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)安心して輝いた人生の実現 2)安心して利用できる福祉の拠点を創造 3)人権、人格を尊重し、慈しみや思いやりの心で一人ひとりを大切にした支援を行う 4)子どもの思いを受け止め、保護者の子育てを支える 5)法令を遵守し、公正で透明な運営を行う

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

①その瞬間の子どもの思いを受け止める ②慈悲の心を持ち、常に子ども主体で考える ③子どもから学び、一緒に楽しめる ④子どものモデルになる ⑤寛容の心で子どもをゆったりと見守れる   ⑥地域の見守りに感謝し、その真心やつながりを子どもたちへ、伝承できる

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

①法人創設の設立精神である、子ども・老人・障害者等弱いものを助け、慈悲の心で支援すること。 ②未来を担う子どもの育成の重要性を鑑み、常に研鑽と努力を怠らない。 ③自分一人ではできない。だけど、チームを組み、それぞれの得意分野で力を発揮すれば、必ず道は開けると信じ、 傾聴・受容・共感・感謝の心を忘れず、職務に励むこと

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 子どもが自身が必要性を感じながら、見通しをもって自立した生活を営んでいる

子ども自身が必要性を感じて活動を切り替え、見通しをもって自立した生活を営んでいることが印象的である。遊んだ後に片づけをし、手を洗ってから必要な分だけ食事を取り、午後の休息(睡眠)をとるといった日課を、それぞれの子どもが自分のペースで自然とこなしている。寝る、遊ぶ、食べるというスペースが分離していて、生活のリズムをゆったりとさせる環境的な仕掛けや、保育者が子どもの行動を先取りしないようなかかわり方、混合保育の中で年長児が年下の子どもたちの身近なロールモデルとなり、良い影響をもたらしているのではないだろうか。
2 さまざまな企画で地域に貢献し地域の人たちを園に引き入れながら自園の保育を地域に伝え、同時に子どもたちの生活を豊かにしている

地域の皆様の声をもとに、安心して利用できる福祉の拠点を創造し、地域と共に歩みます。これは法人の運営方針の一節だ。この言葉のとおり、園は、親子教室やボランティアなど多様な企画で地域の人を園に引き入れ、自然に園を見てもらうことで園の保育、園が目指す保育観を存分に発信している。そうした関わりは地域ボランティアの形で園に還り、また園に多くの人が入ることで、子どもを見守る目は多様化し、子どもの触れ合い・経験も豊かになる。それぞれの地域の人、園、子どもたち、三者三様のメリットをもたらして、園の生活を豊かにしている。
3 丁寧に整備されたマニュアルを活用、見直ししながら、高いレベルで業務を標準化し、園の安心感と信頼感を生み出している

当園は、園児数350人、職員数100人弱という大規模園だが、当園の職員チームの保育の様子、また実際の保育室での子どもたちの雰囲気には、その規模感をいい意味で感じさせない、しっくりとしたまとまりと落ち着きがある。これを可能にしているのが、危機管理からおむつ交換まで、高いレベルでの業務の標準化が全職員に行き渡っているからだろう。丁寧に整備されたマニュアルは、法人のスケールメリットを生かしながら常に見直し更新されている。組織としての運営力が、保育を確かなものにし、園の安心・信頼感を生み出している。

さらなる改善が望まれる点
1 生活と遊びの中で乳幼児が触れるものや見立て遊びの素材に、和の保育につながるものがもっとあってもいいかもしれない

保育の質の核は子どもの経験の質にある。子どもが「自ら環境に関わって経験する内容をどう高めるか」を焦点化したい。たとえば、全体の計画の教育内容に「日本の伝統文化を通して感覚を豊かにする」(環境)とあるように、法人の強みである「和の保育の方針」を、子どもが実際に触れる遊具自体にもっと反映させてはどうか。例えば、2歳児前後の子どもの「ままごと遊び」の素材に、ハンバーガーやカレーはあったが和食の料理や食材が乏しかった。子どもの遊びの中核には「再現」「模倣」があることから、実体験と遊びの関係の理解を深めてほしい。
2 高いレベルの業務の標準化がなされている中、保育について語り合う時間をつくり出し、さらなる理念共有と職員間の連携強化に努めてほしい

丁寧に業務を標準化し、高い水準で業務の質を維持している当園だが、課題をあげるとすれば、園、ひいては法人が掲げる理念の、骨太いところでの理解の深化と共有だろう。忙しい毎日の園の業務の中で、つねに理念に立ち返り、意識化すること、また、それについて話し合い同僚性を高めていくことは、当たり前のようで実は難しい。保育のことを話し合う時間、ゆったりと保育を見つめる時間を捻出し、チーム間で話し合いながら連携をさらに強めていってほしい。
3 子ども主体の保育のプロセスについて、実現したい目的と、それを実現させるための保育方法のつながり具合を明瞭化する余地がありそうだ

重要課題に挙げているテーマについて、多い職員が「どう」共通理解を図るかという方法論は確立していると思われる。問題は「何を」の方ではないかだろうか。実現させたい理念(目標)が保育に「浸透している状態」になるには、その実現のための方法についても「確かにその方法は適切だ」という実感を伴う支持や共感が欠かせない。目標と方法がセットになった有効性について、共通理解を図る余地がまだ残っているかもしれない。同法人の理念は多層構造になっているので「保育のプロセス」のレベルで「何を」共通にするかをデザインしてはどうだろうか。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 園の貢献が地域を力づけ、地域を活性化し、地域の力を園に呼び込むことに成功している

子育て家庭、高齢者、支援が必要な家庭…。園は地域の多様な人たちを包括的に視野に入れ、さまざまな啓発講座やイベント、日常的な保育への参加、足湯などの居場所づくりまで多彩な手段で園に引き入れ、園を地域の拠点としながら地域の人自身を力づけ、地域と保育への関心を高めるよう長年努力してきた。その結果、地域の人たちの力が、園への協力やボランティア参加の形で持続的に園に還ってくるようになった。これはいわば、この地域の文化。長い時間をかけて醸成されたこの文化は、今後もこの地域で生き続け、地域を活性化し続けるだろう。
関連評価項目(地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている)
2 ★ 目指す保育の実現に必要な保育者像を明確にしながら個人と組織の能力向上に努めている

園がともめている人材像や保育の専門性、持って欲しい使命感などを明確にして、個々の職員の育成とともに組織力の向上に力を入れている。キャリアパス構築の仕組みを研修で学び、一人ひとりが取り組むべき目標を立てて仕事に臨んでいる。目指す保育理念の浸透を図るために、その内容を再確認する研修会の開催や、大切なことを忘れないようにする振り返りシート、その都度アドバイスするOJTなど、様々な仕組みを使って職員の育成を図っている。保育士不足や若手の育成の工夫など、現代の新しい課題を抱えながらも個と組織の能力向上に務めている。
関連評価項目(事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる)
3 ★ 特に幼児クラスでは保育者の見守る姿勢によって、子ども自ら育つ機会が担保されている

特に幼児クラスにおいて、子どもが自ら気づきを得て、成長するような機会を尊重する関わりや、環境設定が行われている。例えば子ども同士のけんかやいさかいごとについても、保育者が介入しすぎることなく、子ども同士での問題解決を促す声かけし、見守るよう対応できている。環境面においては、その時々に関心のある遊びをコーナー別に区切っており、子どもが好きな遊びを選択し、存分に遊び込める保育の場を創造している。こうした保育者の姿勢や環境が、園全体として目指す保育方針にも掲げる「子ども主体」を体現しているといえよう。
関連評価項目(日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:調査開始時点での本園の?用世帯283世帯(346名)を対象として実施した。なお、兄弟姉妹がいる世帯は1世帯として扱った。

調査方法:アンケート方式  
調査項目は共通評価項目に準拠した。回答は、弊社オリジナルWEBベース方式(パソコン・携帯・スマホ)で?いWEB回答できない保護者には紙ベースの回答を、園で回収・弊社宛てに郵送してもらい集計に加えた。

利用者総数 346人
利用者家族総数(世帯) 283世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 283人
有効回答者数 142人
回答者割合(%) 50.2%

総括
総合的な感想では、園に対する満足?は「大変満足」が31.7%、「満足」が57.2%の合計88.9%であり、保護者から園への信頼は高い数値となっている。回答率も前回調査時に比べて格段に良くなっており、園側から保護者への回答促進が非常に大きかったと考えられる。設問別では「子どもの心身の発達」、「子どもの興味や関心」、「けがや体調への対応」の3項目で90%以上の保護者が満足と答えていた。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 133人  どちらともいえない 8人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」が93.7%、「どちらともいえない」が5.6%、非該当が0.7%という結果だった。自由意見では、「日々成長を感じられる。」、「大きい園だが様々な活動に取り組んでいて、子供がたくさんの経験ができ、感謝しています。」などの意見があった。
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 131人  どちらともいえない 9人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
「はい」が92.3%、「どちらともいえない」が6.3%、「いいえ」が0.7%、非該当が0.7%という結果だった。自由意見では、「茶道や華道、体操教室など、楽しんで参加している。」などの意見があった。
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 130人  どちらともいえない 9人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
「はい」が91.6%、「どちらともいえない」が6.3%、「いいえ」が1.4%、非該当が0.7%という結果だった。自由意見では、「野菜が苦手だった娘も保育園の給食のおかげで野菜が少しずつたべられるようになってきた」などの意見があった。
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 127人  どちらともいえない 14人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が89.4%、「どちらともいえない」が9.9%、「いいえ」が0.7%という結果だった。自由意見では、「行事はとても多い保育園だと思う」、「楽しんでいる」などの意見があった。
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 109人  どちらともいえない 12人  いいえ 5人  無回答・非該当 16人 
「はい」が76.7%、「どちらともいえない」が8.5%、「いいえ」が3.5%、非該当が11.3%という結果だった。自由意見では「仕事以外でも体調不良や急用が出来た時にも対応をしてくれた。」などの意見があった。
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 113人  どちらともいえない 27人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が79.6%、「どちらともいえない」が19%、「いいえ」が1.4%という結果だった。自由意見では、「玄関前に警備員さんがいるのが良い」などの意見があった。
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 115人  どちらともいえない 21人  いいえ 6人  無回答・非該当 0人 
「はい」が81.0%、「どちらともいえない」が14.8%、「いいえ」が4.2%という結果だった。自由意見では、「参加しやすい。」などの意見があった。
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 116人  どちらともいえない 24人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が81.7%、「どちらともいえない」が16.9%、「いいえ」が1.4%という結果だった。自由意見では、「いつでも話してください。と 子供のクラス以外の先生も 親身になって聞いてくださるので 有り難い」、「0歳の時にお世話になった先生方も覚えててくださり笑顔で対応してくれるので嬉しいです。」などの意見があった。
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 124人  どちらともいえない 16人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が87.3%、「どちらともいえない」が11.3%、「いいえ」が1.4%という結果だった。自由意見では、「すごく清掃が行き届いてる」などの意見があった。
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 113人  どちらともいえない 20人  いいえ 9人  無回答・非該当 0人 
「はい」が79.6%、「どちらともいえない」が14.1%、「いいえ」が6.3%という結果だった。自由意見では、「話しやすい先生が多いです。」、「先生や保育園の子供に対する誠実な姿勢、厳しくも優しい指導など、本来なら親がしなければならない育児をきちんとしてもらっており、日々感謝しています。」などの意見があった。
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 118人  どちらともいえない 21人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が83.1%、「どちらともいえない」が14.8%、「いいえ」が2.1%という結果だった。自由意見では、「直ぐ冷やしてくださったり、してくださるので助かります。」、「我が子の体温が平均がどのくらいで、高めでも様子を見てみる等考慮して下さる先生もいる。」などの意見があった。
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 109人  どちらともいえない 27人  いいえ 5人  無回答・非該当 1人 
「はい」が76.8%、「どちらともいえない」が19%、「いいえ」が3.5%、非該当が0.7%という結果だった。自由意見では、「悪い事は悪いと言って、しっかり向き合っている様子を見かけ、この保育園で良かったと心から思った。」などの意見があった。
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 122人  どちらともいえない 17人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が85.9%、「どちらともいえない」が12%、「いいえ」が2.1%という結果だった。自由意見では、「普段は気持ちを汲んでくれている 新年度のクラス担任の編成も子どもの気持ちを考えて持ち上がりを残して欲しい」、「先生方みんないい方ばかりで 子供の人数が多い中手厚く保育をしてくださっていてとても有り難いです。」などの意見があった。
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 111人  どちらともいえない 21人  いいえ 4人  無回答・非該当 6人 
「はい」が78.2%、「どちらともいえない」が14.8%、「いいえ」が2.8%、非該当が4.2%という結果だった。自由意見では、「その状況になった事がないのでわかりません。」などの意見があった。
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 120人  どちらともいえない 20人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が84.5%、「どちらともいえない」が14.1%、「いいえ」が1.4%という結果だった。自由意見では、「日頃保育園でどのように過ごしているのか確認が出来るように、写真や動画の掲示をもっとして欲しい。」などの意見があった。
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 104人  どちらともいえない 29人  いいえ 2人  無回答・非該当 7人 
「はい」が73.3%、「どちらともいえない」が20.4%、「いいえ」が1.4%、非該当が4.9%という結果だった。自由意見では、「先生方はよくきいてくださいます」、「様々な保護者の意見がある中、先生方はよく対応してくださっていると思います。」などの意見があった。
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 90人  どちらともいえない 22人  いいえ 10人  無回答・非該当 20人 
「はい」が63.4%、「どちらともいえない」が15.5%、「いいえ」が7%、非該当が14.1%という結果だった。自由意見では、「そのような状態になった事がないためどちらとも言えません。」などの意見があった。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
自らの意思や思いで考え動くことができる子どもを目指した「和の保育」を明示している

法人の経営理念「ゆりかごから天国まで」を具体化する運営方針は「福祉の拠点の創造」「慈しみと思いやりの心」「公正で透明な運営」の3つである。この考えを基礎にすえ、保育所運営理念として「子どものおもいを受け止め、保護者の子育てを支えます」という標語を掲げている。一方、保育方針である「日本の心をとりもどす」ための保育内容は、「自然・心・礼節・伝統」の4本柱に整理されている。この4つの要素が毎日の生活で体験できるように環境を構成して「みずからの意思、みずからの力で思い、考え、動くことのできる」子どもを目指している。

組織のビジョンや目標と個人の努力目標を関連させ、職場内で共有するようにしている

保育所として目指している目標が実現できるように、全ての職員が保育実践と結びつけた各自の年間目標を立てている。「チャレンジシート」と呼んでいる書類があり、組織全体が目指している目標と、自分の保育実践上の努力目標とを関連させて書き込むようになっている。またその努力目標を朝礼で発表しており、お互いに何を目指しているのかを理解し合い、職場内のチームワークの向上を図っている。各自の目標を伝え合うことで、組織のビジョンや自分の役割について理解が深まったり、自分で立てた目標を修正するきっかけになったりしているという。

重要な案件の決定プロセスは透明性を確保しながら、相応しい手段を選んで伝えている

園で決定する重要な案件については、管理監督職が集まる会議で話し合っている。そこで決まったことは重要度や緊急性の違いによって周知方法を変えている。重要なものは職員間で理解に差が出ないように、再度、職員が集まる機会を用意して文書で確認したりしている。また保護者に何か重要な変更を伝えるときは、その決定までのプロセスを明確にしながら、保護者の考えや総意がどうなっているか、その上でなぜそう判断したかなどの説明を、手紙や懇談会など適切な説明方法を選んで実施している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
保護者や地域の要望やニーズはアンケートや会議などで詳しく把握できている

園は利用者が多いので、定期的にアンケートをとって保護者の意向の把握に努めている。地域の福祉ニーズについては、八王子市の担当課と密な連携を図り、入園希望者の動向、保育ニーズの変化、子育ての課題などをつぶさに把握している。保育に限らず福祉事業全体の動向は、高齢者施設も運営している法人だけに、詳しい情報が入手できている。また地域貢献のために講演会などの催事を開くこともあり、準備会などには、民生委員や地域の方にも加わってもらっている。そうした地元の方の声から新しい子育て支援メニューも生まれている。

中長期計画には達成目標が具体的に明示されており、取り組みやすくなっている

平成29年度からの中長期計画(3年間)には、目指す目標がわかりやすく具体化されており、取り組みやすい。例えば保育方針「日本の心をとりもどす」の達成に向けて①子ども主体②選択制③関わりを大切に④組織力の向上⑤特色ある保育⑥研究⑦地域運営協議会との連携が挙がっている。また目指す子ども像は「自分が好き 保育園が好き 地域が好き」となっており、そために①自分を大切にできる子②豊かな心をもった子③礼節を重んじられる子④日本文化を継承していく子ーとなっている。さらに目指す保育士像もあり、達成目標は具体的で明瞭である。

事業全体の進捗状況は、部門ごとの指標を用いて定期的に確認しながら進めている

事業が計画通りに進んでいるかどうかという進捗状況は、子どもの育ち、保育内容、会計などの部門ごとに管理監督職が集まる会議で確認している。確認した結果は、リーダーや担任あるいは行事や委員会の担当にフィードバックされ、修正点を踏まえて実行に移している。また職員の自己評価は毎月の理念チェックシートなど、保育を振り返るための点検項目が整理されており、それに基づいて細かい部分まで話しあっている。これが目指している目標の達成度合いを測る指標に該当している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
子どもの人権や人格を尊重するなど社会的責任を明文化し委員会を置いて遵守している

法人が定めている「運営方針」の3項目は、社会的責任を宣言したものである。その2つ目は「人権・人格を尊重し、慈しみと思いやりの心で、一人ひとりを大切にした支援を行う」としており、5つある委員会の一つに「人権擁護委員会」を設けている。また職員の「行動規範」も定め、保護者に配布する「園のしおり」にも明示している。そこには、子どもの最善の利益の保障、生きる力の基礎育成、保護者との協働、守秘義務の遵守、保育の質の自己評価、地域の子育て支援が挙がっている。理念と組織の両面から社会的責任の根幹に当たる人権を守っている。

地域福祉の拠点として核家族・少子高齢化の歪みから生じる問題の解決を支援している

保育園のある地域は、子どもが減少しており、地域の子ども会も解散した。地域祭りも園児が参加しなければ成り立たないという状況にある。昭和23年という戦後の混乱期に開園し、地域福祉の牽引役として大きな貢献を果たしてきた同園は、核家族・少子高齢化という現代日本の歪みから生じる問題の解決に心を配っている。たとえば、ここ数年は療育センターや近隣の小中学校、民生委員、地域包括支援センターなどと密接な連携を図りながら、地域になくてはならない地域活性化の拠点づくりを続けている。

地域の力を借りながら保育の幅を広げ、透明度を高めて好ましい関係を地域と築いている

地域の方が保育園に入り、相互にメリットをもたらしている。華道やお茶、英語など保育に関わる地域ボランティアは年間のべ330人にものぼる。活躍の場の提供は参加者のやりがいに応える大切な機会になり、その一方で、地域の方の力を借りることで保育に厚みをもたらしている。また「地域公益事業」として、保育園を就労訓練の場として提供したり、子育て家庭や高齢者向けの講座を定期的に開いたりしている。こうした活動内容を町会や民生委員の会議で語り合い、そこで得た声をまた事業に反映させており、地域と良好な関係を築いている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
安全管理委員会がリスク情報の集約、検討、研修までを司る体制ができている

リスクマネジメントの体制はよく整っている。園内に5つある委員会の一つとして「安全管理委員会」を毎月1回開き、リスク、防災、防犯、苦情について事例をもとに話し合い、対策を講じている。保育中のけがや火災など緊急に対応が必要なものから、自然災害後の事業継続計画(BCP)のように万が一の事態を想定した準備態勢の構築まで、詳細なマニュアルを用意して職員の周知を図っている。また委員会が主催する研修も開き、ヒヤリハットや事故の分析、防災・防犯の基礎知識、苦情への対応方法などを学べるようになっている。

毎月の状況を変えた不審者訓練で、いざという時に速やかに行動できるようにしている

防犯や不審者対応については、毎月1回、対応訓練を実施している。散歩で不審な人を見かけたら「その行動・服装・時間などをチェックしておく。車の場合はナンバーや色を控えておく」(5月)、「笛や防犯ブザーを鳴らし周囲の人に助けを求める」(11月)など毎月、異なる不審者を想定している。宅配業者を装って園内に入ってきたら「どちら様ですか」と身元を確かめ、園児から遠い事務所に留め、暗号の館内放送で知らせる。場合によっては防犯ブザーを鳴らし、110番通報する。このように職員が非常時にも速やかに行動できることを目指している。

個人情報の漏えいなどが発生しないようなリスク管理と運営の仕組みを持っている

リスクの中には情報漏洩もあるが、そのマネジメントも組織的に取り組んでいる。保育は個人情報を扱っているので、それを適切に収集して整理し、組織的に保管し活用し、破棄するまでの仕組みを構築しマニュアル化している。個人情報が記載された書類などは鍵付きの書棚に収納し、PCやタブレット端末はパスワードをかけた上で、鍵付きの書庫など収納している。職員はもちろん、地域の人やボランティアもたくさんいるので、例えば個人情報の守秘義務に同意してもらい保育室に入るなど、行動の手順も徹底している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
園が目指してる理念を実現させるために個人の専門性を明示して仕組みに反映させている

園が目指いている理念を実現させるために、保育士の専門性を次のように明示している。①その瞬間の子どもの思いを受け止める②慈悲の心をもち常に子ども主体で考える③子どもから学び一緒に楽しめる④子どものモデルになる⑤寛容の心で子どもをゆったりと見守れる⑥地域の見守りに感謝し、その真心やつながりを子どもたちへ伝承できる。この専門性を獲得するために、個人には①弱いものを助け慈悲の心で支援する②常に研鑽と努力を怠らないーことが期待されている。この保育者像が組織の専門性や人材育成計画に反映されている。

個人の能力を伸ばし、自分の持ち味を生かすことで組織力向上につなげようとしている

組織力を高めるために、職員には次の使命感を持つことが期待されている。「自分一人ではできない、チームを組みそれぞれの得意分野で力を発揮すれば必ず道は開けると信じ、傾聴・受容・共感・感謝の心を忘れず職務に励むこと」である。また、個人が学んだことを共有し、チームで保育を推進するために「一円対話」と呼ぶ研修を実施し、お互いを共感しあう心や仲間意識を育てている。さらに園が目指していることと、個人の研鑽目的を組織的につなぐための仕組みとして、「福祉職員キャリアパス構築」を用いて、組織力の向上を図っている。

経営層は保育実践の中の省察が質の向上の欠かせないことを理解して実行している

目指している保育の質向上と定着のために、目指す理念を再確認する研修会を開いたり、大切なことを忘れないように保育をしながら自らの保育を自己チェックするOJTシートを用いた省察の仕組みもある。経営層はOJTの重要性を認識しており、「職員が常に理念に立ち返ることができるように、指導担当者が、その場その場で話す機会を設けている」。またその指導者によって指導内容に差が生じないように監督職とのすり合わせを大切にしている。保育の目的から方法、そして職員の育成体制まで、全体的な仕組みがよく整備されている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 保育所保育指針が改定されたことから、①園児の「主体的、対話的で深い学び」が実現するような「資質・能力」の育成②三本柱の視点から捉えた乳児保育の充実を、平成30年度の重点課題とした。この課題に対して、保育研究委員会が中心になって内部研修を8月から10月にかけて開いた。その結果、当園は大規模園ならではの工夫として、園児をAとBの2つのグループに分けているが、その2グループによって保育環境に差が生じたという。なぜそうなったのかを検証したところ、職員のリーダーシップを含めたチーム保育のあり方に差があるのではないかという分析のもとで、平成31年度は職員配置を変更して人的環境を変えてみた。すると、幼児組では保育設定や保育に変化がみられ、0歳児組では空いたスペースを上手に使う環境構成や1歳児組では成長に合わせて環境を変える保育が見られるようになった。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
前年度(平成30年度)の重要課題は、保育所保育指針が改定されたことから、子どもに育てたい「資質・能力」のさらなる向上を図るものになっている。経営層が感じている課題は、次のようなものだった。それは保育理念の理解に始まり、その実現のための環境構成のあり方、その環境の中で見えてくる子どもの姿や活動の意味、これらを100人近い職員がどのように理解して共有し実践するかというチーム保育のあり方である。個々の職員の専門性のレベルは、ベテランから新人まで差が大きいので、目指す保育理念の理解を深めるための研修を実施している。同園が「見守る保育」と呼ぶ「子ども主体の保育のあり方」と、法人が伝統的に大切にしてきた「和の保育」について、その関係を再確認する研修を実施している。保育の質は「保育の過程」にある。この質は「子ども理解に始まって、その子どもの発達をよりよくするためにどうしたらいいかという保育者の意図に基づいて保育環境を再構成し、そこから見えてくる子どもの姿の変化をさらに理解していく」という、自らの保育の振り返りの中にある。重点課題の対応をOJTと繋げるとより取り組みやすくなると思われる。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 園児の保育と並んで、この園が伝統的に力を入れている取り組みが地域の子育て支援であり、地域の中で福祉の中核となる地域公益事業である。平成30年度は、その活性化を重点課題に掲げた。その課題の目標は「新しい利用者の増加と地域への浸透」である。この課題目標のために、新たに子育てサロンを開き、ボランティアの募集方法を変えた。その効果はすぐに現れ、子育てサロンでは利用者もだんだんと増え、お母さん同士の交流の場になってきた。またボランティアも保育室で何をしてもらうかを明確にしたことから参加しやすくなり、足を運んでくれる方も増えた。この結果を踏まえて平成31年度は、もっと地域の方の声をきき、その求めに応じた新しい内容を取り入れている。具体的にはヨガ講座、ものづくり講座、介護予防体操を加えており、そこへの参加を促すために町会、ボランティア、サロン、近隣のお店などに声をかけている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
保育園が展開している社会貢献事業としての「地域公益事業」は、法人が歴史的に長く実践してきたもので質も高い。ただ法人の中でも本部を置く第一園は、フラッグシップ園として、危機感を持って経営に望んでいる。それは、地域の中の「大きなお家」になるという経営理念を掲げる中で、この地域は少子高齢化が進み、地域の変貌も激しい。そうした地域の中で地域公益事業を新しい課題として位置づけ直そうとしている。例えば、最近では療育センターや近隣の小中学校、民生委員、地域包括支援センターなどと密接な連携を図ったり、本部に喫茶店や「足湯」サービスを始めたりしている。このように、地域の拠点としての役割を見直しているが、この子育て支援もその一つであり、リピーターだけではなく新しく足を運んでくれる方を増やそうと始めたサロンやボランティアの募集は早速、成果をあげているようだ。園は、地域と園児・保護者が顔見知りになり、障害者との交流も進め、地域で子育てがしやすい環境作りを目指している。この実践の歩みの中で、出会う人々の様々な思いがふれあい、思いやりや感謝、礼節など日本の伝統文化としての心も育まれることだろう。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
各種媒体による情報提供に加え、自園を見せることを通して地域に保育を伝えている

町会の回覧板や掲示板、市役所の窓口など、園の情報を幅広く公開している。園の狙いは、「地域の方がいつでも来られるように間口を広く」ということ。こうした媒体での情報公開の他、未就園の親子を対象にした子育て広場、育児講座や高齢者ボランティア、子どもたちといっしょに給食を食べる給食ボランティアなどの積極的な受け入れを通し、地域の方に園に入てもらい、見てもらうという形の開かれた情報提供を行っている。「地域の大きな家」という理念に基づいた、生きた情報提供である。

地域に対してくまなく情報を提供し、相互交流しながら自園の保育を伝えている

ホームページやSNSを使った情報発信の他、カレンダーの回覧やポスティングなども行い、地域への情報提供に万全を期している。そこで園が伝えたことは、子どもたちが地域の中で多様な経験を積んでいるということ。つまり、園や子どもたちと地域とのつながり。そうした意味で園は、一方的な発信だけでなく、自園で開催する福祉祭りに地域の方を招待し、園の様子を知ってもらうことも重視している。情報を提供することでつながりが深まり、それが入園やボランティアとなって園に帰ってくる形である。

さまざまな出会いの機会を用意し、地域の人を自園に取り込みながら園の姿を伝えている

入園見学は定期的な開催のほか、希望者の都合に応じても随時行っている。また見学だけでは保育を伝えきれないという思いから、子育て支援のスケジュールや活動、地域の子育て家庭を集めて造形遊びなどを行うプレ保育の予定なども知らせている。そのほか、子育てサロン、子育て講座、足湯などあらゆる方法を駆使して園に入ってもらい園の様子を見せることに注力している。その結果、多くの地域の人が園に入り、子どもたちはより多くの目で見守られるようになったという。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
入園説明会で園の全体像を伝えながら、個別の事情を汲む面談で慣れ保育を行っている

入園前の説明は、入園説明会と個別面談。入園前の説明会では、看護師から衛生面の注意や健康面でのルール。園長からは、例えば「子どもにとって週6日の通園は体力的にきつい面もあるので、配慮を」など、保護者に子ども本位の視点での園生活の組み立て方の考えを伝える。異年齢児保育、見守る保育といった保育内容や、不審者対策、避難訓練などの危機管理についても伝え、園生活の全容を把握してもらうことに努めている。慣れ保育は、面談で必要な期間を決め、保護者の都合に応じて柔軟に対応している。

入園・卒園の際に、子どもと保護者が新しい生活になじめるよう配慮している

入園時には、保護者と子どもが早く園生活になじめるよう丁寧な配慮をしている。入園時の説明では、個人情報保護など重要事項に加え、持ち物のチェック表も用意し、しっかりと伝えている。また慣れ保育では、保護者との関係づくりを重視し、朝や帰りの時間に極力保護者と話をしている。卒園にあたっては、近隣小学校との連携の下、学校の先生が園に来て絵本を読んだり、園児が学校の授業に参加したりして、互いに顔見知りになることに努め、接続を強化している。

朝夕の声かけで子どもの様子を保護者に伝え、気持ちのいい園生活をつくり出している

1日の終わりと始まりのタイミングで、常に保護者に一言声をかけることを常に心がけている。当園には、保護者は園舎に入らず子どもを預けていけるドライブスルー形式の入り口があるが、そこでの受け入れの際にも、毎朝顔を合わせる担当職員を配置し、必ず声をかけているという。また、退園時も、夕方番の職員が(たとえ担任でなくても)その子の様子を保護者と話すようにしている。子どもの様子を伝える日々の声掛け。と同時に、保護者の不安を軽減しながら、良好な関係づくりにもなっている。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
保育で必要な文書や記録類はその作成マニュアルもあり活用しやすいように整っている

保育で活用する文書や記録類は、作成時期や手順を明確化した作成マニュアルを整備している。それに基づいて作られた書類は、子どもの心身の状況や生活状況、個別の指導計画などが過不足なく整っており、子どもや家庭の状況、保育の状況が把握しやすくなっている。とくに、園児数、職員数ともに多い大規模園なので、整理方法や収納方法までを統一し、必要な際にすぐに取り出して活用できるようになっている。

保育所保育指針に基づいて全園児をアセスメントし、それを保育計画に反映させている

保育所保育指針に基づいた保育を実現するため、保育専用のアプリケーションを活用している。このソフトウエアを用いて子どもの発達をアセスメントした上で、個別のねらいと内容を把握して保育計画に反映させている。また個別的な対応が特に必要な園児や家庭については、巡回発達相談やケース会議を活用してさまざまな職員がかかわって計画を作成している。さらに、このソフトウエアを用いて発達の育ちが記録された「保育カルテ」などを活用して保護者と面談し、子どもの現在の姿と育ちについて、保護者と園とで共有している。

申し送りボードや書類の回覧と併せて毎週の会議で振り返り連絡業務を円滑にしている

当園は早朝も夕方も延長保育を行っているが、その時間帯には専任の保育士が配置されている。また規模が大きいこともあり、送迎担当の専任職員もいる。そこで役割の異なる職員同士の間で、連絡業務のコミュニケーションが課題となるが、以下のような方法で伝達ミスが起きないように工夫している。その方法の中でも大事にしているのが、毎日使う申し送りボードや書類の回覧、また週ごとに実施している週案会議での振り返りなどだ。記録された文章類と、対面によるコミュニケーションの両方によって、情報をしっかりと共通し円滑な連絡を作り上げている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
子どもの発達や状態にあわせて遊んだり生活できるような環境が用意されている

子どもの生活や遊びは、一人ひとりの発達にあった内容や方法をできるだけ選択できるようにしている。子どもが主体的に環境に関わって経験することが豊かな学びになるように、室内は遊びの種類によってコーナーに分かれている。乳児から幼児まで、それぞれの子どもが自分の興味や関心のある遊びを選んで過ごせるようになっている。また園庭にも複数の遊具が置かれ、幼児になると散歩先も子どもたちが話し合って決めているという。食事や睡眠なども子どもの発達にあわせてできるようになっており、個々の状態に応じた保育を行ってる。

子ども同士のトラブルを人と関わる力を育てる機会として捉え自立心などを育てている

保育者は、子ども同士のけんかやいさかいごとを、ネガティブなことではなく成長のチャンスとしてとらえた対応を心掛けている。例えば、けんかが始まったとき、保育者は「この子たちなら、きっとこうできるだろう」という姿を予想し、子ども同士が気持ちや考えを伝えあうことを保証している。そのやりとりを積み重ねることが、子ども自身が自分の感情を調整したり、相手の気持ちに共感したりして、お互いを理解すあう機会になっている。このような人と関わる力は、人と助け合って生活するための自立心や社会情動的スキルの育成になっている。

色々な他者と接する中で多様性を経験し、個を認め合う生活を作り出している

特別な配慮が必要な子どもも含めて、学年の異なる子どもたちがチームで過ごすことにより、それぞれのペースで生活できるようになっている。また臨床心理士が必ず参加するケース会議を定期的に開き、そこでの気づきを全チームで共有することで、子どもへのかかわり方を共有し、職員全体への浸透を図っている。また、外国籍園児が在園している際には、言葉の違いに加えて、肌の色や髪の色など外見的な違いがあっても同じ友達だということを、絵本などを用いて子どもに伝えていくようにしている。多様な他者と接することで自分に気づく生活を作っている。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
朝夕の送迎時に、家庭と園での子どもの様子を伝えあい、相互の生活をつないでいる

朝夕の送迎のとき、家庭での子どもの様子を聞いたり、園での様子を伝えたり、家庭と園の生活が繋がるように保育者は気をつけている。まず乳児クラスでは保護者がクラス担当の保育者と顔を合わせる機会を設け、家庭での様子や悩み事などを共有できるよう心掛けている。また、幼児については送迎専用の道路を利用する家庭が多いので、送迎専用の職員との関わりが主になることから、個人の連絡手帳や引き継ぎノート、事務所内の申し送り事項掲示板などを活用して伝達ミスがないようにしている。

24時間の生活のリズムを整えるために、園の専門性を保護者の子育てに役立てている

生活習慣について、各園児の発達状況を見ながら身に着けられるように配慮している。特に午睡については、幼児の後半頃から家庭での状況などを踏まえたうえで、午睡時間を暫時、短くしたり、なくしたりしている。また、日によって寝られない子どもも体を休めながら遊べるようにしている。子どもは夜に10時間から11時間ぐっすりと寝ることが重要なので、保護者と話し合いながら、園での午睡時間を適切な長さにしたり、夕方から就寝までの過ごし方をアドバスしたりしている。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している
講評
異なる学年が混ざって過ごす保育によって、遊びの深まりと協同性が育まれている

3~5歳児については、異年齢混合保育を実施している。年上の子どもが、年下の子どもの「小さな先生」となり、遊びや生活を教え合う姿が随所に見られている。遊びや生活の姿を教え合うことで、園児にとっては遊びの深まりや、年上の園児に対する自然なあこがれと進級への期待感を生んでいる。こうした環境を生み出し発展させるためにも、保育者は子どもへの声かけを最小限にとどめ、子どもの姿を把握しつつも見守るよう心掛けている。今後はより低年齢のクラスとのさらなる交流により、園全体として保育の質向上がさらに進むことを期待したい。

クラスの垣根を超えて見合い、子どもの主体性が発揮しやすい環境の工夫を重ねている

それぞれの子どもが、興味や関心のある遊びを主体的に選択し、遊び込むために、コーナー別の保育環境を設定している。子どもが得意なことを自分自身で見出し、思い切り取り組むことで、主体的に何かを探求していくことで何かがわかったりできたりすることから、自信の深まりにつながっている姿が見られた。こうした保育環境の改善については、全クラスから代表者が出席する週案会議で検討している。この会議ではクラスの持ち回りで保育環境を視察し合い、他クラスであっても意見を出し合っており、常により良い環境へ再構成しようとしている。

遊びの継続性を保証した環境によって、思考力や最後まで取り組む姿が育っている

園内環境を工夫し、幼児クラスでは遊ぶ、食べる、寝る場所を意図的に分けている。保育者が必要以上に子どもを促さず、ゆったりとした時間の中で、遊びや生活を子ども自身が見通しをもってできるようにしている。特に幼児クラスでは、制作中のものを置いておくスペースを設け「遊びの続き」ができるようにしている。このことで、子どもが活動を切り替えやすく、遊びの深まりと継続性を生んでいる。とくに集中した遊びが続くことは、発達を大きく促す。良質な遊びの中で、試したり工夫したりしながら考える力や粘り強く取り組む姿も育まれている。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
共通の目的を協力して実現する体験が、子どもの自立心や協同性を育んでいる

行事には子どもが普段の生活にはない経験によって大きく成長できる機会になることがある。その代表例が運動会の鼓笛隊だろう。園長は「一人ではできないことをみんなで取り組み、完成した時の喜びや達成感を味わっている。子どもたちの表情は自信に満ち溢れていた」という。また子ども同士が協同する行事では、子どもに仲間意識が育つ手応えも感じている。このように行事が子どもが最後までやり遂げる粘り強さや自立心、あるいは共通の目的を実現させる喜びを得る機会にもなっているようだ。

保護者参観の行事が子どもの成長と当日までの取り組みを伝える場になっている

保護者が参観する行事は、子どもの日ごろの成長を見てもらう場でもある。例えば作品展やお遊戯会は、日常保育の延長や発展として実施している。行事のために特別なものを用意するというよりも、日常的に盛り上がったものの延長として、行事の準備も保育時間内の遊びの中で子どもたちが取り組んでいて、子どもの負担は少ない。また保護者に対して、それを行事当日の結果だけでなく、例えば遊戯会の劇の中で異年齢の関わりが見られるような構成にするなど、当日までのプロセスを含めて評価してもらいたいと願っている。

日本の伝統行事が「自然への恵みへの感謝」であることに気づく機会になっている

行事を通じて保育理念である「和」の心を育んでいる。保護者参加の行事以外にも、巡る季節に応じて日本ならではの伝統的な行事を取り入れている。花祭り、端午の節句、七夕、重陽の節句、十五夜、クリスマス会、鏡開き、節分、ひな祭り。このように年間を通して毎日の園生活に変化を持たせながら、日本古来の風習なども子どもに伝えている。こうした季節行事には、七草粥やお月見の団子のように食文化とも切り離せないものも多い。日本の伝統行事が「自然の恵みへの感謝」つまり礼節に根ざしたものであることに気づかせるものとなっている。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている
講評
延長の時間も昼間と同じ仲間で過ごすし、子どもが安心できる環境になっている

早朝や夕方など、延長保育の時間についても、通常保育の時間となるべく変わらない環境で、同じ生活集団で過ごしており、安心してくつろげる環境を整えている。例えば延長の時間は、担任ではないものの、常に固定の職員が担当しており、子どもにとっては、担任ではなくとも顔見知りの職員がいつもいる、という安心感につながっている。今後は、全園的に「フロア毎にどんなおもちゃがあるのか」といった環境構成の共有を図るなどし、より遊びの連続性が担保されるようになると、より子どもが遊び込めるようになり、その中で集中力が深まるのではないか。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
食事の配膳はセミ・バイキング方式で、子どもの意欲的で楽しい食事を支えている

給食は決まった量を全て食べさせるのではなく、子ども自身がその日の調子や気持ちによって、食べる量を申告し、調節して食べる「セミ・バイキング」方式の配膳方法に特徴がある。これは意欲的で楽しい食事になるだけではなく、子どもが自分の適量を知り、その意思を他者に伝え、その結果に対して責任を負うという、主体的な姿勢の育成にもなる。また、献立は子どもの喫食状況によって味付けや量を常に調整している。喫食状況は先生が個別にチェックしたり、調理師が配膳ったりすることで、残食の量や子どもの好みを常に把握している。

子ども自身が必要性を感じ、見通しをもって楽しい食事の時間を過ごしている

幼児クラスでは、全園児が一斉に食事するのではなく、1時間程度の間に子どもたちが自分の生活リズムに応じて食事をとるようにしている。特に幼児後半になると、それぞれの子どもが生活の見通しを持って食事の時間を過ごしている。そこには保育者が促さなくとも、子どもが自分で必要性を感じて食事の時間を迎えている、自立的な姿がある。また食べたい時に食べる、というだけでなく「4人そろったら頂きます」というような一定のルールを設けることで、一緒に食べると美味しいことや、待つことを学びながら、楽しい食事の時間を過ごしている。

和の保育を生かした調理活動を取り入れたり、食物アレルギーに対応している

食育年間計画によると「和の保育」という特色を生かし、食事にも精進料理作りなど家庭では味わえない体験や、稲植えから収穫、米研ぎまでの栽培活動など、子どもの興味や関心が高まる活動を取り入れている。また毎月の郷土料理や誕生会なども子どもたちが楽しみにしている。また食物アレルギーのある乳児は、献立表を保護者に確認してもらい、調理段階、配膳段階、喫食段階の3段階でミスがないようにチェックしている。専用のテーブルで食事ができ、誤って食べることを防いでいる。今後は調理と保育の連携を進めて食育の充実を図りたいという。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
専門職が積極的に保育に関わりながら、子ども自身の健康を守る力を高めている

専門職が積極的に保育に関わり、子どもたちへの指導を行っている。その最近の成功事例が看護師による手洗い指導だろう。手洗いの重要性が特に高まる秋口に、看護師が各クラスに入って、光を当てると洗い残しの箇所が見える装置や、手洗いの歌も活用しながら、手洗いのコツや意味を伝えていった。またその際、上の子が下の子に教える姿も多く見られたという。教えることで子どもは意味をより深く自覚し、教えてもらう、あるいは真似をすることで子どもは学ぶ。異年齢児保育の長所がここにもある。その結果、この冬、感染症の増加は見られないという。

子ども自身の判断力と経験値を伸ばしながら、自ら安全を守る力を育んでいる

当園の園庭遊びの環境には、自然の木やそれを生かした遊具で「登る」要素のものが多い。この意図は、「子どもが自分で、安全か危険かを判断して遊べるようになってほしい」ということ。子どもは自分が登れるようになったら自然と登る。保育者は、子どもの様子を見守りながら、自力でできるまで援助も無理強いもしない。子どもの判断力を伸ばし、自身の力で使いこなせるようにすることが、安全確保と事故防止の第一歩である。こうした考えの下、子どもたちは経験を積み、現在の園庭では怪我なく安全に遊べているという。

一人ひとりの子どもの心を尊重し、温かな心を育み、心身の健康をつくり出している

人権への配慮という意味も含めて、園が子どもに対して重視しているのは、子どもの心の尊重である。一人ひとりの考えやペースを尊重し、無理強いをしないということである。トイレもそうだ。基本的に自分で生きたいときに行くようにしている。その結果、子どもは園でのびやかに暮らしている。一日の流れは朝の会で説明するが、それをふまえて子ども自身が自ら動く。これは、保育者の温かな見守りと、子ども自身にしっかり身についた「和」の心の賜物だろう。一人ひとりを尊重し温かな心を育むことで、子どもの心身の健康をつくり出している。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している
講評
日常的な声掛けの積み重ねで、保護者が気持ちよく登降園できるよう心掛けている

登降園の忙しい時間帯、どうしても保護者は急がせだり、叱ったりしがちになる。そうした場面に際しても園は、つねに気を配り、保護者が気持ちよく帰れるよう、こまやかな声掛けを行っている。例えば子どもが遊んでしまってなかなか帰らないようなときは、せっかく迎えに来た保護者が困らないように、保育者が保護者に代わって子どもに話し、保護者が気持ちよく帰れるようにするという。こうした安心感が生まれるのも、朝夕のこまめな声がけの成果である。こうした互いに信頼し合う良好な関係が、保護者が安心して子育てできる風土をつくっている。

それぞれの事情に対応しながら、必要なアドバイスや相談によって保護者を支援している

それぞれの保護者の事情を把握し、必要に応じて個別の話し合いをしながら、保護者の子育ての課題や家庭の問題について、個別にアドバイスや相談をし、保護者が安心して子育てできるよう支援している。また同時に、地域の事情に応じた、丁寧な保護者支援も行っている。当園には、近隣の母子寮からの通園も多いが、子ども家庭支援センターとも連携し、保護者からの情報を共有したり、子どもの健康状態の把握や、必要な健診の案内などを行っている。

多様な関わり合いの機会を設け、保護者が楽しみながら子育てできるようにしている

保護者が園の生活を楽しみながら共有できるよう、保護者同士の交流の機会をつくり出している。今年度の幼児クラスの懇談会では、自己紹介のあと、子どものふだんの遊びを体験し記念撮影の機会も設けた。保護者会は、保護者チームで企画し、夏祭りの準備をし、法人全体の福祉まつりでは、他園の保護者会との協力でブースも運営した。また今年は、おやじの会も、運動会手伝いの有志を中心に立ち上がった。多様に用意された保護者同士の交流の場が、保護者の心のつながりを深め、楽しみながら子育てできる雰囲気を醸し出している。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
講評
日常的な地域の人たちとの関わりが子どもたちの経験を広げ生活を豊かにしている

園の中に日常的に地域の人たちを引き入れ、園での子どもたちの生活に豊かな奥行きをもたらしている。地域の人たちも参加するお茶、お花などの教室などでの子どもたちとのふれあいの他、特に当園の特徴的な企画が給食ボランティア。地域の人が自由に参加し園児たちといっしょに給食を食べるというものだ。送迎時のボランティアもふくめると本当に数多くの人と園児たちがふれあっている。催事でも行事でもない、これぞまさに日常の中の交流。自然体の関わりが、子どもの生活を豊かにしている。

地域の方といっしょに作り上げる夏祭りで、皆で楽しみながら地域との絆を深めている

日常的な触れ合いのほか、大きな行事としての地域との関わりに夏祭りがある。夏祭りには民生委員の方たちや町会の方たちも参加している。地域といっしょに作り上げる祭りだ。町会の方が焼きそば屋さんを出店し、在園児が親子で楽しむ。民生委員の方たちは地域の太鼓のグループを招くなど地域をつなぐオーガナイザー的な役割で貢献。楽しみながら、園と地域社会とのつながりが強まっている。

地域の人を取り込む絶え間ない工夫で地域を育て、その力を園に呼び戻している

地域の人たちを園に引き入れる工夫はまだある。例えば足湯。園の建物の法人本部の一角に足湯をつくり、地域の域の方に自由に利用してもらう新企画だ。その他、ベビーヨガ、老人ヨガなど、地域の人を呼び込む多様な工夫を常にし続けてきている。地域支援を謳う法人理念を具現化し続けてきたこの膨大で持続的な努力が、地域をつなぎ、地域への愛を育ててきた。園によって連綿と育てられてきた地域の力は、たくさんの協力やボランティアという形で園に還り、子どもたちの園での生活を豊かにしている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている
講評
子どもや家庭の個人情報の取り扱いにルールを定め、プライバシーを保護している

子どもや家庭の個人情報を、児童相談所など外部とのやりとりが必要な場合に備え、連絡ルールをマニュアルに定めて遵守している。例えば電話連絡をする前などには、必ず管理監督職に確認をとったうえで実施するなどである。またプライバシーを保護するために、環境面の工夫として、午睡時には男女が別れて寝ることができたり、おむつ替えや夏のプールの着替えなどの際にも外から見えないように、パーテーションなどで仕切ったりするなど、子どもの羞恥心に配慮して保育に当たっている。

子どもの声をきちんと聴くことに注力し、子どもの権利擁護や虐待防止に努めている

子どもの権利擁護について園が重視しているのは、子どもの声をきちんと聴くということである。まだ話せない子でも、とにかく子どもの様子をよく見て、声を聴く。話や言葉の中に気になることがあったら心に留めて、園内で共有し検討や対応をしている。一例では、子どもの言葉から家庭でのトラブルの可能性を察知した保育者が、すぐに保護者にヒアリングをしていた。その結果、家庭内の課題解決のために、関係機関と連携することができたという。保護者との良好な関係をつくりながら、丁寧に子どもの声を聴き、子どもの権利擁護や虐待防止に努めている。

子ども観を伝えながら保護者の養育力を支えつつ、それが子どもの権利擁護になっている

子どもの権利を守るということに伴って、園がもうひとつ注意しているのは保護者支援である。まず日常的な対話を通じて、保護者の意向を受け止め「子どものよさ」や「子ども観」を伝えている。併せて、保護者が抱えている気持ちを認めながら、一つずつ、子どものためにやるべきこと、できることを伝え、できたら共感し、できることを増やしていく。こうした積み重ねによる保護者支援が「保護者育ち」に通じている。つまり、保護者の良さをしっかり認めて大切にしながら、保護者の子育てを支えており、それがまた子どもの権利を守ることになっている。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
各種のマニュアルが常に更新され続け、保育業務を高いレベルで標準化している

複数園を運営する法人のスケールメリットを生かして、各園から管理者や専門職が集まる、園長会、主任会、栄養士会、看護師会といった、横のつながりによる高度な情報共有の仕組みが連携を促している。こうした会の中で色々なマニュアルも常に実情に合うように見直している。最新のマニュアルは見やすいファイル形式で、常に閲覧できるように事務所だけでなく各クラスに置かれている。これらのマニュアルには、「おむつ替え」のような保育の日常的なこともわかりやすく定められ、業務の標準化が図られている。

現場の知恵を出し合い事例を分析、検討することで、業務の標準化を行っている

リスクマネジメントは、各園から委員が出席するリスク委員会が主導している。この委員会は各園の事故をすべてまとめて共有、分析して、高いレベルでリスクを管理している。例えば自園では気づけなかったことに気づける、対応策について複数の視点から意見を出し合える、といったメリットがある。食物アレルギー対応についても、配膳方法や手順について意見を出し合い、よりよい方法を常に検討している。現場の知恵を出し合う形により、業務の標準化を高めていく仕組みがある。

見直しの必要が生じた場合には、迅速に検討し対応する仕組みが整えられている

必要に応じて迅速にルールを見直し、改善点を共有する仕組みもある。例えば行政から「プール遊びの際には専任の見守り要員を配置せよ」という方向が示された際には、すぐに法人のリスク管理委員会で討議し新たなルールを設定、それを各園に一斉におろすという形で、すべての現場に迅速に指示が行き渡っている。その分かりやすい例が、プールの見張り係は専用のビブスを着用するというもの。子どもからも、どの先生が見守り役か見分けやすい。現場の知恵を生かし、それをしっかりと定着させるシステムが有効に機能した好事例といえよう。