東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

聖ヨゼフ保育園は社会福祉法人聖母の会が、キリスト教の精神に基づいて運営する保育園です。その保育理念・保育方針・保育目標をホームページやパンフレットに明示しています。年度の事業計画書に記載し、園長が職員に説明して理解を深めるよう努めています。職員には、キリスト教の精神について教会の神父の話を聞く機会を設けています。保護者には重要事項説明書にも記載して説明しています。保育理念等は玄関ロビーにも掲示しています。

園長、主任は自らの役割と責任を職員会議等で説明し、率先して運営に取り組んでいます。最近は、保育士が希望通り確保できない状況が続いていますが、職員には継続して職員確保のために動いている等の事情を説明して協力を呼び掛けています。

日常の保育に関しては、職員会議で話し合い、確認しています。運動会やクリスマス会などは、姉妹園と一緒に開催しており（合同行事）、職員会議も合同で開いて内容を決めています。法人の決定事項は園長が職員に報告・説明しています。重要な案件については保護者にも伝えています。最近の保育士不足問題についても臨時保護者会を開き、事情を説明しています。

第三者評価の中で利用者調査を実施する（３年ごと）ほか、保護者懇談会や保育参加を通じて、また父母の会役員との話し合いの中で保護者の意向やニーズ把握するよう努めています。職員の意向は職員会議や年間活動のまとめを行う時などに把握しています。地域の保育の状況は園長会や関係機関との交流、利用希望者等を通じて情報・ニーズの収集・把握に努めています。保育をめぐる動向に関しては、行政や関係組織を通じて情報を把握するよう取り組んでいます。経営状況は理事会で検討しています。保育園を取り巻く環境を分析し、課題を整理しています。

中・長期計画は策定していませんが、建物・設備の保守等に関しては一定の見通しのもとに準備するようにしています。単年度の事業計画は策定して、計画的に取り組んでいます。予算は事業計画に基づいて編成しています。毎月、職員会議を開いて計画の実行についての確認と結果の振り返りを行い、取り組んでいます。職員体制が不十分なところをカバーし合いながら取り組んでいます。

園規則に職員としての心得を明示して、職員に周知しています。また、全国保育士会倫理綱領を職員全員で確認しています。園長会で議題となった保育者としての規範・倫理に関する問題や行政からの関連する情報を職員会議で報告・説明して、職員の理解が深まるよう取り組んでいます。

苦情解決のしくみについては、重要事項説明書に記載して保護者に説明しています。園内にも、苦情受付窓口がわかるように掲示しています。利用者の意向には速やかに対応し、利用者の気持ちに沿いながら解決するよう取り組んでいます。職員の子ども・保護者に対する言動については、気づいたことをクラス打ち合わせで話し合い、また園長・主任が問題提起をして振り返りを行っています。虐待に関しては、区など関係機関と連携して対応する体制を整えています。

周辺地域との関係では、近隣の住民には年間の行事予定を知らせています。毎年、民生委員が来園して懇談しています。中高生の「仕事体験」を受け入れています。隣接の教会のバザーには父母の会が参加して、子どもたちの遊びのコーナーを設けたり、チャリティ活動を行っています。区内の私立園長会に参加し、区議会文教委員会との懇談を行っています。八幡地区の保育園との交流活動にも園児が参加しています。小学校や学童保育とも連携して活動しています。

対策に優先順位をつけていないので「なし」としていますが、個々のリスク対策はつぎのように行っています。災害時の避難訓練を毎月実施し、保護者の引き取り訓練も行っています。伝言ダイヤル・保育メールも保護者に周知しています。保育所の感染症対策、事故防止・対応、アレルギー対応ガイドラインに基づいて対応策をまとめています。給食提供に関しては、渋谷区の保育所衛生マニュアル・大量調理施設衛生管理マニュアルに基づいて衛生管理を行っています。侵入対策では玄関の開閉をリモコン方式にしています。

区の指示により散歩コースの検証を行い、散歩時の安全の確保に取り組んでいます。嘔吐処理やエピペン・AEDの使用方法については職員に周知しています。飲料水・非常食等の備蓄は行っていますが、事業継続計画はまだ策定していません。

個人情報保護規程を定めて、利用者の個人情報の取り扱いの基準を明示しています。職員その他関係者には、個人情報保護の趣旨を周知し、ルールを徹底するよう努めています。個人情報の利用目的、開示請求への対応は規程に定めています。情報全般については、法令等で定められた基準に基づいて管理しています。情報の重要性や機密性を踏まえてアクセス権限を設定するとともに必要な時に情報を活用できるよう管理しています。

人材の確保には、ハローワークをはじめ、保育フェアへの参加、人材紹介会社への依頼等、いろいろなルートを使って取り組んでいますが、十分な成果を得られていない状況です。当面の最大の課題で、法人本部を含めて対策を急ぐことが望まれます。キャリアパスについては、検討中の段階です。処遇改善との関係を含めて検討する考えです。職員の研修には、職員体制が十分とはいえない中でも分担を調整して、区の主催する研修会への派遣などに取り組んでいます。個人別の育成計画は今後の課題です。指導担当者を都や区の研修に派遣しています。

変形労働時間制を取っています。職員体制が不十分な状況にあるので勤務時間や休暇の取得にも影響がないとはいえない状況です。そのような中でも職員はどうしたら子どもたちの活動ができるかを考え、協力し合って保育に取り組んでいます。園長、主任もクラスを回って、保育の様子を見て助言し、労いの言葉をかけています。看護師も職員の健康管理に助言しています。

研修の成果は職員会議で報告するようにしていますが、共有化は十分とはいえない状況です。報告書や資料の活用など、成果の共有の方法について検討することが望まれます。日常の保育の中では、散歩に一緒に出かけたり、クラスを超えて連携していますが、職員の気づきや工夫を活かすための話し合いの場が、現在はクラス打ち合わせのみとなっています（乳児会議・幼児会議が開催できていない状況）。

園の保育については、ホームページやパンフレットで案内をしています。パンフレットには、保育方針・保育目標・施設の概要・年間行事などを記載しています。渋谷区を通じても聖ヨゼフ保育園の情報を知ることができます。毎月、子育て広場「ぽっぽ」を実施しており、保育を体験することもできます。

渋谷区には定期的に園の情報を提供しています。子ども家庭支援センター、療育機関などにも園の情報を提供して連携しています。

利用希望者の問い合わせには随時対応しています。見学の希望に対しては、毎月３～４回見学日を設けて、都合の良い日に見学してもらっています。保育の様子も見てもらうようにしています。

新入園の際の説明は小グループで行い、「園生活のしおり」と重要事項説明書に基づいて、基本的ルール、重要事項等を説明し、サービス内容や利用者負担金等について同意を得ています。保護者には予め入園申込書に必要事項や要望を記入して提出てもらっています。個別面接には、管理栄養士、看護師、主任も同席して、子どものことや生活の様子、要望を丁寧に聞いています。

子どもの保育に必要な個別事情や要望は、個別面接で確認し、児童票に記録しています。慣らし保育については、子どもや保護者の状況に合わせて時間や日数を相談して決めています。

小学校に入学する子どもの場合は、保育要録を学校に提出しています。

子どもの心身状況や生活状況は発達記録票や調査票に、入園後は保育日誌、児童票、健康記録等に記録しています。クラスごとに子ども一人ひとりの保育のねらい（月間指導案）をまとめています。乳児クラスは月末に振り返りを行い、幼児クラスは月案について自己評価を行っています。

指導計画は、全体的な計画を踏まえて養護の２領域と教育の５領域を考慮して作成し、それをもとに月案、週案を作成しています。乳児（０，１，２歳児）は個別に計画を作成しています。配慮が必要な子どもも個別計画を作成して、巡回指導を受けています。保護者には懇談会で指導計画について説明しています。

子ども一人ひとりの情報は児童票に記録しています（乳児は毎月、幼児は２か月ごと）。月案には振り返りの結果を記録して、子どもの様子が分かるようにしています。指導計画や子どもの記録は、担当者が共有し、活用しています。配慮が必要な子どもについては、職員会議で報告して情報の共有化を図っています。子どもや保護者の状況については、昼礼やクラス打ち合わせで報告・伝達して、職員間で情報を共有しています。

クラス打ち合わせや月のまとめの中で、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握して保育を行っています。環境構成では、おもちゃや絵本は子どもが自分で取り出せるように配置しています。図鑑など子どもの好きなものは毎年買い替えています。担任だけでなく、他のクラスの職員が関わったり、姉妹園と一緒に活動する機会を作り、人との関りも広げています。節分や七夕などの行事には子どもが興味を持って取り組めるよう保育を行っています。

年齢別のクラス保育が中心ですが、同じフロアのクラス同士の交流や乳児クラスと幼児クラスの交流も行い、優しさや思いやりの気持ちが育つよう保育を行っています。外国籍の子どもがいるので、文化や習慣の違いを認め合い、尊重し合う気持ちも育っています。教会の神父のお話の中でも、自分以外の人を尊重すること、それぞれの国や文化・習慣を認め合うことの大切さを教えています。

配慮の必要な子どもの保育については、区の専門員の指導・助言を受けています。子どもの特性に合わせて保育を行いながら、クラスの子どもと一緒に活動できるよう援助しています。子ども同士のトラブルについては、年齢によって対応は違いますが、子どもの心に寄り添い、対応することを基本にして、双方の保護者に報告するようにしています。小学校と連携してオープンスクールへの参加、保育要録の提出など、円滑な接続に向けて取り組んでいます。

登園時には、保護者から検温の結果を含めて子どもの様子を聞いています。特に病み上がりの子どもの様子は確認して看護師に伝えるようにしています。乳児クラスは連絡帳で家庭での様子を伝えてもらっています。

食事については、子どもが食べることが嫌にならないように工夫して対応しています。排泄については、個人差があるので、子どもの様子を見ながら、保護者とも相談してトイレトレーニングを行っています。休息や昼寝については、乳児は体調を考えながら眠りにつくよう促し、幼児は眠れない子には無理をせず、様子を見ながら対応しています。

その日の子どもの様子は、乳児は連絡帳で、幼児は保育室入口のボードで伝えています。できるだけ直接、口頭でも伝えるようにしていますが、降園が集中する時間帯（17：30～18：14）は玄関も込み合い、伝えきれないこともあります。重要なことについては、担任が直接伝えるようにしています。

遊びの時間は、室内では自分で遊びを選んだり、グループで遊んだり、自由にできるようにしています。ホールに出て遊ぶこともできるようにしています。ドッジボール・縄跳びなど集団活動のときは、子どもの様子を見守り、全体に、また個別に声をかけて子どもが自分から関りを持つよう援助しています。

日常の保育の中で、子どもたちに積極的に声をかけ、言葉によるコミュニケーションをとり、言葉に対する感覚を養うよう取り組んでいます。お絵描き、工作などのほか、外部講師によるボイスレッスンやドラムサークルを行い、歌を歌ったり、パーカッションを演奏するなど子どもたちが様々な表現を楽しむ機会を提供しています。散歩の時に集めてきた落ち葉やドングリなどを使って、製作活動にも取り組んでいます。

近くには公園がたくさんあり、１年を通じて天気の良い日には散歩に出かけています。散歩の折々に自然に触れ、季節の移り変わりを感じ取っています。夏場は屋上でプール遊びを行っています。散歩の時には、手をつないで歩くこと、信号を守ることなど決まりの大切さを理解できるよう援助しています。また、遊びの中でも声をかけて、相手のことを考えられるよう援助しています。

年齢に応じて、子どもたちが楽しんで取り組めるよう工夫しています。お店屋さんごっこでは、お店屋が幼児クラスの子どもたち、お客さんが乳児クラスの子どもたちです。いろいろなお店の商品も子どもたちが作って、お店屋さんになったりお客さんになったり、楽しんでいます。節分や七夕などの季節の行事でも、子どもたちが楽しく参加できるよう工夫して取り組んでいます。

クリスマス会は、子どもたちによる降誕劇が恒例になっています。一人ひとりが役割を持ち、練習の時からみんなで協力して取り組んでいます。当日、子どもたちは練習の成果を家族に見てもらい、力を合わせてやり遂げることの喜びを味わっています。運動会でも、みんな揃って行う遊戯を取り入れて、達成感を得られるようにしています。

年間の行事予定を年度当初に保護者に知らせて、子どもの成長・発達を見てもらうようにしています。園だよりでも、その都度案内をして保護者の参加を呼び掛けています。今年度は、クリスマス会が、会場の手配ができなくて平日の開催になってしまい（例年は土曜日）家族には迷惑をかけてしまったようです。

１日を通してメリハリのある活動を考えて保育を行っています。各階にホールがあるので、保育室とホールを使い分けて活動しています。マット、滑り台、平均台などを揃えて、雨の日にも室内で身体を動かして活動しています。

早朝の時間と延長保育の時間は合同保育になりますが、年齢に合わせておもちゃなどを用意して、子どもたちが楽しく過ごせるよう配慮しています。子どもたちもお互いに名前を覚えて一緒に遊んでいます。

職員も一緒に食事をとりながら、子どもたちが楽しく、落ち着いて食事ができるよう見守り、声をかけています。お代りは自由にしています。献立は２週サイクルですが、飽きの来ないように味付けや食材を変えるなど工夫しています。栄養士も食事場面に入り、子どもたちの様子を見ています。毎月の誕生会の食事（一例・アンパンマンランチ）や行事食・季節食（一例・こいのぼりランチ、夏野菜カレー）はいろいろ工夫して楽しい食事を提供しています。卒園の近い年長児には、２・３月にリクエストメニューの日を設けています。

食物アレルギーの子どもに対しては、医師の診断書をもとに栄養士、看護師が連携して除去食・代替食を提供しています。アレルギー対応の食事には、その表示をつけ、トレイ・食器・ワゴンを別にして提供するようにしています。宗教上の理由で配慮が必要な子どもには個別に対応しています。

子どもたちが楽しみながら食に対する関心を深めていくよう食育活動に取り組んでいます。調理では、そら豆の鞘むき、ピーマンの種取り、トウモロコシの皮むきなど、ラップを使ったおにぎりづくりも行っています。年長児のお泊り保育では、じゃが芋・人参・玉ねぎの皮むきをしてカレーを食べています。ビスケット、クッキーの型抜きなどお菓子作りもあります。庭のプランターでは、ミニトマト、ピーマン、きゅうりなどの野菜を育てて、給食で食べています。

子どもたちには、遊びや散歩の時に気をつけることについて説明し、けがや事故の予防に努めています。病気の予防には、手洗いやうがい、歯磨きが大切なことを説明して、園でも必ず行うように声をかけています。インフルエンザの時期には、マスクの着用も働きかけています。医療的ケアが必要なケースが生じた場合には、関係機関と相談して対応することとしています。

「ほけんだより」を通じて、子どもの健康に関する情報を保護者に伝えています。掲示板にも、感染症など最新の情報を掲示して、保護者の注意を促しています。感染症については、「子どもがかかりやすい感染症とその対応（登園基準）」「インフルエンザにかかったら」などの文書により保護者に周知し、予防に努めています。乳幼児突然死症候群に関しては入園時に保護者に説明しています。園では、午睡チェックを行い、防止に取り組んでいます。

保育時間は7：15～18：15、延長保育時間は18：15～19：15としています。急な残業等による保育時間の変更や通院による登園時間の変更には柔軟に対応しています。

毎年５月に親子交流会を代々木公園で開催し、子ども・保護者・職員が楽しい一日を過ごしています。家族参加の行事として、聖母祭、こどもまつり、運動会、クリスマス会などを実施し、保護者同士の交流の機会にもしています。父母の会も役員を中心に、園の運営に協力しています。

クラス別に保護者懇談会を開き（年２回）、園の保育について説明し、保護者と意見交換を行っています。また、保育参加を実施して（８～12月）、子どもと一緒に一日を過ごし、保育を体験してもらっています。午睡の時間には担任等と話し合いも行っています。保護者懇談会や保育参加を通じて、子どもの発達や育児について共通の認識を広げ、相互の信頼関係が深まるよう取り組んでいます。

年長児は、八幡地区の私立４園、公私立６園との交流行事に参加しています。子どもたちが進む小学校のオープンスクールには子どもたちが参加できるよう取り組んでいます。

近くに姉妹園があり、クリスマス会、運動会、聖母祭、親子交流会などの行事は合同で行っています。また、ボイスレッスン・ドラムサークルの活動も姉妹園の子どもたちと一緒に行っています。近くに新しくできた保育園にも声をかけ、クリスマス会・観劇会・ボイスレッスンへの参加を受け入れるなど、地域交流に取り組んでいます。

子どもに関する情報を外部とやりとりすることについては文書（個人情報利用同意書）で同意を得ています。子どもの羞恥心に配慮した支援としては、例えば、年長クラスのトイレにはドアをつける、着替えの際には声をかける、プール遊びの時は外部からは見えないようにするなどを行っています。

子どもの個性や発達段階を踏まえて、一人ひとりを尊重して保育を行うよう努めています。子どもや保護者の価値観や生活習慣については、例えば、宗教上の理由で食べられないものには別なものを提供するなど配慮して対応しています。

虐待防止や育児困難家庭の支援に関しては、園長会での渋谷区のアドバイザーの講演内容を職員会議で伝達し、職員の理解を深めるよう取り組んでいます。

全体的な計画・年間指導計画、保育の基本的な考え方を明示して保育を行っています。感染症対策や災害時対応マニュアル、行事の実施要領等を作成しています。保育の実務上の課題についてはクラス打ち合わせ等で話し合い、取り組んでいます。基準や手順を文書にまとめていないものもあるようですが、必要に応じて整理していくことが望まれます

基本的な事項や手順の見直しは、事業計画の策定に合わせて行っています。年間の取り組みのまとめをクラス・職域ごとに行い、基本事項や手順の見直しに活かしています。