東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

グローバルキッズ西国分寺園（以下、園）は、東京近郊・大阪で認証・認可保育所や学童保育など約170施設を運営する、株式会社グローバルキッズ（以下、法人）の認可保育所として2017年に開園した。法人の保育理念である『豊かに生きる力を育てる』を基に、園の保育方針『一人ひとりに寄り添い見守る保育』『子どもと一緒に楽しめる保育』『素直に「ありがとう」「ごめんなさい」が言える保育』『挑戦できる環境を作る』を掲げている。園長は今年度当園に赴任し、保育内容や保育環境など見直しを図りながら保育の質の向上に取り組んでいる。

法人は各園に対して、全体的な計画を基に、具体的な園の方針や目標、計画、その実践の記録を作成し、より計画的な保育に取り組めるよう【チームブック】の作成を指示した。園では昨年度、職員皆でミーティングを行い、意見交換をしながら作成している。今年度赴任した園長は職員全員に再度グローバルキッズの保育の理解を図るため、職員一人ひとりと法人の保育基本マニュアルの読み合わせを行っている。ただ、職員自己分析結果からは、職員の園の理念や方針に対する理解度が十分ではない結果となっており、引き続き今後の取り組みが期待される。

法人本部では月に2回、保育事業部検討会議が実施されている。この会議には各園を担当にもつ各マネージャーも参加しており、各園から上がってきた情報や要望も検討され、重要な案件は、経営層が集まる幹部会議で決定されている。決定事項は園長が参加する月一回開催の全体会議で周知され、職員には園長から口頭または社内アプリを通じて周知される。また、保護者に対しては園内に掲示した上、個々に口頭で内容を伝え、周知を図っている。

園では、日々の送迎時や運営委員会、ご意見箱、行事後アンケートなどから保護者の意見や要望を収集している。行事アンケートは、夏祭り、運動会、発表会など保護者参加の行事の後に行っており、結果は翌年度の内容に反映させるために活用している。職員の意向等は面談や園長と職員で情報を共有する園コミノートなどで把握するとともに、週1回の職員会議や毎日の昼礼時などで意見や要望を聞き入れるようにしている。これらの取り組みからニーズや課題を抽出し検討し、様々な計画に反映させるようにしている。

地域の福祉に関する情報は、市からの情報や市の「園長会」、地区の系列園との情報交換などにより地域情報を得ている。また、年長クラス担任は幼保小連絡会に参加し、小学校との連携、情報収集を図っている。福祉業界の全体的な情報は法人本部が収集し、毎月１回発行される社報やメールで配信され、日々の業務で活用できるようにしている。園の経営に関しては主に本部で管理し、必要事項は園担当の運営マネージャーを通じて園長に伝達される。

園では昨年、園の将来の姿を描いたチームブックを作成した。保育目標を定め、目標実現するための保育方針、保育方法、実践計画を策定した。ただ、中長期的な具体的施策、行動の策定には至っていない。年間計画については前年度の活動を振り返り事業報告書をまとめ、それを基に次年度の事業計画を作成している。年度は園長の交代もあり、年度計画の作成、運用に遅れが生じたが、現在は計画に基づいた園運営を実践している。計画推進にあたっては、毎週の職員会議や毎日の昼礼で振り返りを行いながら取り組んでいる。

園長は子どもに対して丁寧な保育をすることを職員に伝え、実践するように指導している。また、職員一人ひとりに法人からコンプライアンスブックが配布され、規範を守り、倫理的な行動がとれるよう職員に示している。その他就業規則や保育基本マニュアル、コンプライアンス管理規定などで子どもの尊厳を十分に守ることを規定している。虐待に関しては区の園長会を通じて市と連携が取れる体制を整えており、園内では職員会議で虐待や子どもへの対応について話す機会を設けている。

保護者からの苦情解決の仕組み等は、苦情受付の仕組みを玄関先に掲示するなどして周知している。連絡先は園内、法人、第三者委員などを伝えている。また、法人本部直通のフリーダイヤルも設置し、匿名性を保持しつつ意見や要望を伝えやすい環境も整備した。また、園に直接意見や要望などがあった場合には、園内の連絡手順を踏まえて園長に報告され、法人で定められた書類【ご意見・ご要望対応・是正処置】に記入され、その後園長が「再発防止」「対策の結果」「結果の確認」を行い、案件の改善・解決を図っている。

園では地域貢献の取り組みとして、昨年度、ベビーマッサージの講座を開催した。土曜日に開催し、地域の在宅児のいる母親へベビーマッサージの他、育児相談を行った。また、専門学校の生徒を実習生として年に数名受け入れている。市の幼保小連絡会を通じて、年長組は地域の他園の園児と合同で活動をする機会を設け、子どもたちがスムーズに小学校へ移行できるよう取り組んでいる。

法人では様々なリスクを想定したマニュアルを整備している。災害等に関しては「危機管理マニュアル」、アレルギーに関しては「食物アレルギー・未食対応マニュアル」、感染症など衛生対策では「保健衛生マニュアル」「清掃・衛生ガイドライン」など多岐にわたる。これらマニュアル類は毎年見直しが行われ、例えば今年度、「危機管理マニュアル」では、地震や台風など自然災害によって起こりうるリスクを想定し、災害時の園児の引き渡しから園の再開までのロードマップを再度構築した。ただ、園で運用するための役割分担など詳細まで決められていない。

園では、警察に協力を依頼して不審者訓練を行っている。また、嘔吐処理研修やＡＥＤの準備など安心・安全の対策を進めている。今年度はヒヤリハットの活用を進めており、挙がってきたヒヤリハットは昼礼時に共有して対策を検討している。毎週一人1件はヒヤリハットを提出するように園長は職員に伝えているが、職員の意識の差が大きく、提出をしない職員も散見される。園として行っている安全の取り組みに対して参加しない職員が存在することは大きな課題と考えられる。職員全員が安全に対する認識を高く持つよう意識の改善が望まれる。

個人情報が含まれる情報は、パソコンおよび保護者との連絡に使用するタブレットは個人パスワードで管理され、書類に関しては事務室内のキャビネットで管理している。職員に対しては「個人情報管理規定」や「就業規則」「保育基本マニュアル」の中で個人情報の取り扱いの徹底を周知している。保護者に対しては「個人情報の取扱いに関するご案内兼同意書」「保育園の個人情報の取り扱いについて」で明示している。また、情報開示に関しては保護者へ文章での説明がなかったが、昨年「個人情報の取扱いに関するご案内兼同意書」に記載し周知を図った。

職員の確保は法人本部の担当で、職員確保のため様々な施策を実施している。求人媒体としては紹介会社、広告（紙面・ＷＥＢ）、会社ホームページ等、また、大学訪問や就職フェア、相談会、セミナーなどを通じて広く人材募集を行っている。新園の開設によりさらなる人材の確保が急務となっており、近年では職員の紹介制度にも力を入れている。また、現職員の異動に関して職員意向調査を実施し、可能な限り本人の意向に沿って勤務ができるよう取り組んでいる。

法人では保育士及び保健師、栄養士など職種別にキャリアパスを設定し、キャリアに必要な研修制度を設定している。園もこのキャリアパスに則り研修計画を立てている。職員はその他都や市主催の外部研修にも参加し、専門性の向上を図っている。ただ、職員は自らのキャリアパスについて理解・認識ができていない者も多く、また、開園以来、毎年園長が異動している経緯もあり、経年的な視点での育成計画には至っていない。職員のキャリアパスに対する理解や、経年的な職員育成計画の策定ができる環境整備が望まれる。

法人では、福利厚生としてアニバーサリー休暇やテーマパーク、美容室の割引などを職員に提供している。また、残業の少なさや休暇が取りやすいといった声が多くの職員から聞かれた。園長は2～3か月に１回は面談を行い、行事後には慰労会を行うなど職員とコミュニケーションを図る場を作っている。ただ、職員自己分析の結果からは、更なる意思疎通、コミュニケーションを図る必要が窺える。特に保育に関しては職員一人ひとりの思いも強く、保育方針、保育観に考えの相違が見られる。園の保育方針に沿った保育を実践する体制整備が望まれる。

園は最寄駅から徒歩５分程度の幹線道路沿いに立地している。防犯上目立つ看板などは設置していないが、園庭で遊ぶ子どもの姿から保育施設であることを地域の人々は理解している。また認可園であることから積極的な広報活動はおこなっていないが、利用希望者の利便性に配慮してＨＰを作成、市のガイドブックにも情報を掲載している。市主催の保育所展示会が年１回開催され今年度は園長と職員２名が参加している。行事・デイリープログラムなどを展示し、利用希望者の質問などには園パンフレットを提示しながら園の紹介に努めている。

法人内近隣園には定期的な会議を通して園の情報を伝えている。行政とは子どもの受け入れなどに関して園の現状を知らせている。内科・歯科など嘱託医とは定期的な健康診断の実施や突発的な受診、相談を通して園の情報を伝えている。市の私立園長会や看護師、栄養士部会に参加して園の情報を発信している。子ども家庭支援センターとは事例を通して情報を提供している。こども発達センターからは年に２回巡回指導が実施され、子どもの情報を伝えている。小学校には入学前訪問や同じ小学校に入学する他園の５歳児とのふれあい保育で園の保育を伝えている。

見学者の対応は園長が行い、月・水・金曜日の午前１０時と午後３時３０分からの時間を設けている。見学者は２家庭までとし、在園児の保育に支障が無いように予約を受けている。見学予約には、見学受付票を使用し、時間や人数が被らないように誰でも受け付けられるようにしている。見学時には園パンフレットを基に園の概要を説明し、その都度質問にも答えている。見学時間などは、希望者の都合に合わせて夕方にすることもあるが、土曜日などの希望には人員的な理由から対応していない。障害児など入園受け入れが難しい場合でも見学には対応している。

昨年度までは入園前健診を個別実施していたが、今年度は嘱託医からの要請により一斉健診に変更予定である。それに伴い、入園前説明も健診後の一斉実施を予定している。年度途中の入園では、重要事項説明書や園パンフレットを基に園の決まりや持ち物、書類について個別に説明している。また、児童票を基に担任による個別面接、栄養士、看護師との面談で食事や健康面の詳しい聞き取りを行い、入園後の保育に反映している。在園児には４月に重要事項説明書を再配布し、変更点を伝え同意を得ている。写真の使用は同意書にて保護者の意向を確認している。

入園前の個別面談で得られた情報は、それぞれがメモに残し児童票と共に他の職員と共有している。入園前面談では、子どもが新しい環境に安心して慣れて行けるように「慣れ保育」について説明し、機嫌や食事、水分、休息の状況を見ながら進めて行くことについて保護者の理解を求めている。慣れ期間中はその日の子どもの様子を保護者に伝え、翌日の予定を互いに確認しながら進めている。午睡時の癖や習慣なども確認し、家庭保育との連続性や環境を考慮した保育に努めている。０歳児は少人数で独立した保育とし、職員との親密性に配慮している。

年度途中での退園は、おやつ後の時間に全園児がホールに集まりお「別れのご挨拶」を行っている。最終日には制作物を纏めて手渡し、職員からは新しい生活を応援するメッセージを伝えている。５歳児は卒園遠足に出かけ、園で大きくなった思い出として心に刻んでいる。入学前には近隣４園の５歳児が、入学予定の小学校ごとに公園に集まり、親睦を深めている。また、小学校体験会にも参加、小学校への提出する要綱は対象児と一緒に届けに行くなど、入学の期待を高めている。卒園式は保護者も参加し、厳かな雰囲気の中で園生活を締めくくっている。

子どもの心身の状況は、児童票や健康記録、保育日誌、発達記録、個別の指導計画、連絡帳などで把握し、それぞれに記録している。発達記録には年月齢に合わせた発達の様子をチェックし、個別の遊びを促したり、活動につなげている。現在保育記録は電子化への移行中であり、細かな部分での統一が十分でないが、本部からの指導の基、順次改善していく予定である。トイレトレーニングや離乳状況などは、子どもの発達に応じて行うが、まずは家庭での取り組みをお願いし、園がそれに合わせて進めている。各指導計画は提出期日を設け管理している。

指導計画は全体的な計画を基に、年間指導計画、食育計画、保健年間計画、月案、個別月案、週案が作成されている。それぞれは、養護と教育の各領域を基に計画され、定期的な評価で振り返っている。子どもの情報を職員間で共有する場として、毎日の昼礼と毎週水曜日の職員会議がある。更に職員会議は月に１回拡大会議として全クラスの子どもの情報を一覧表にして周知、気になる子どもへの対応は全員で検討して統一した保育となるように取り組んでいる。クラス単位では毎月第３週に月案会議を開催、園長も参加し子ども主体の保育について指導している。

指導計画に基づいた保育であることを保護者に伝えるために、毎月の「えんだより」にはクラス毎の月の目標と生活の様子を掲載している。また保護者会や個人面談で年齢に沿った発達の課題を伝えたり、個別の相談などに寄り添い、家庭と歩調を合わせた保育となるように努めている。長時間保育も計画しているが、非常勤職員に指導計画を十分に伝えきれていない事を園長は課題としている。そのため今年度は非常勤者の会議を計画している。職員間の連携として、申し送りノート、昼礼ノートを活用し、事務所に配置することで出勤時に確認している。

それぞれの子どもの姿は、児童票や連絡帳（アプリ）、送迎時の保護者からのやりとりなどを通して、子どもの変化や様子を把握している。また、年間・月間の年齢別指導計画・週案に基づいて日常保育に反映し、実践した結果を保育日誌に記録している。毎日の保育で気づいたことや連絡事項などは昼礼で報告している。さらに毎月の職員会議では、クラス報告とともに子ども一人ひとりの発達と課題を分析し、改善策について報告し情報を共有している。配慮の必要な子どもの受入れも、行政の臨床心理士の訪問により助言を受けて援助する体制がある。

クラス毎に子どもの年齢と成長に応じて、パーテーションや棚で分けて遊びのコーナーを工夫している。子どもが主体的に遊びが発展できるよう玩具や絵本を手にとりやすい配置にしたり、ブロックなど集中して遊べるよう広さの確保など、子どもの動線に沿って保育環境を見直し、コーナー遊びの改善を検討している。幼児クラス（3～5歳児）は異年齢保育の取り組みを積極的に行い、活動によってグループごとの縦割り保育を実践している。異年齢の触れ合いを通して自然に兄弟のような関わりが育まれ、子ども同士が互いに尊重しあう心が育っている。　　

発達段階で起きるトラブルは、年齢や発達に合せて対応するようにしている。1、2歳児では、職員が個々の気持ちを大切にしながら「噛むと痛いよ」「貸して」と言えるように促し、楽しく遊べるよう伝えている。幼児はルールの捉え違いや勘違いによるトラブルがあるが、自分で気づいて「ごめんね」が言えたり、相手の意見にも耳を傾けて受け入れることを学んでいる。また、年長組は、他園の年長組同士で交流する機会や小学校の授業見学などを通して、大きくなった自覚をもち、話の聞き方や列の並び方など手本になるように頑張っている姿がみられている。

登園時、子どもと保護者に挨拶をしながら前日からの家庭での様子を伺い、検温とさりげない視診を行って健康状態や子どもの様子を把握している。顔色や表情など気になることや申し送り事項がある場合は、クラスボードや健康観察記録に記入し、その日の子どもの状況に配慮した保育が進められている。園では、休みや登園が遅くなる場合には直接電話するようにお願いしている以外は、子どもの状態は連絡帳アプリを活用している。保護者が言い忘れた事でも出勤途中で入力することができるシステムがあり、職員はタイムリーな情報が確認できている。

基本的生活習慣の自立に向けた取り組みは、一人ひとりの発達に応じ、家庭と連携しなが進めている。1歳児頃から手洗いなど簡単な身の回りのことを自分で行えるよう働きかけている。トイレトレーニングは、排尿間隔を掴み便座に座ることから始め、成功した時には沢山褒めて次につながる声かけをしている。靴下や靴を履く、衣類の着脱に関心をもち、「やってみよう」とする意思を尊重し見守りをしている。スプーンや箸の移行も子どもが興味を示し、家庭で使い始めた段階で保護者と相談しながら、成長に合わせてスムーズに進むように配慮している。

0歳児は、個々の生活リズムや体調に合わせて午睡の長さや時間帯を決め、子どもの体調や機嫌を見ながら柔軟に対応している。午睡はオルゴールの音色を聴きながら自然な入眠を大事にしているが、眠れない子どもには身体を休める時間であることを話している。午睡チェックは年齢に応じた間隔でチェックを行い、顔色・表情・体の向き・呼吸など確認している。また、子どもの顔が見える明るさを確保するよう指導している。5歳児は就学に備えて徐々に午睡を減らしていき、10月頃を目安に卒園式に向けた製作やひらがな等の習得する準備をしている。

子どもが自発的に遊びこめる保育環境を工夫している。0歳児は、這い這い・またぐ・歩くなどの運動を自由に行えるように仕切りはなく、棚には手触りの良い玩具が用意されている。1歳以上は、子どもが好きなものを選びやすいように配置し、ままごとや積木・絵本のコーナーを各クラスに設置するなど遊びこめる空間作りを心がけている。園の保育方針「挑戦できる環境をつくる」を念頭に、園長は各クラスの環境を改善したいと考えている。年齢に合った玩具の内容・種類・数など、子どもの生活や遊びがより豊かに展開されるよう検討している。　

乳児期には子どもが発する泣き声や喃語に丁寧に対応して発語を促している。少しずつ簡単な言葉や身振りで職員に伝え、ごっこ遊びやわらべ歌、絵本の読み聞かせを通じてやりとりを楽しめるよう努めている。幼児期では、自分の思いを言葉にして子ども同士で伝え合い、友だち関係を広げている。年齢や発達に応じて絵画製作、リトミック、リズム体操、歌や楽器演奏など、様々な自己表現の機会を設け、発表会では歌や劇あそびを披露している。年長組はアイデアを出し合って廃材を利用した制作に挑戦したり、卒園に向けた思い出の作品を自由に作っている。

天気の良い日は目的を持って戸外に出かけ、散歩しながら季節ごとの木々や草花の変化、見上げる空の色や雲など自然の移り変わりが感じられる活動を行っている。公園では虫探しや泥んこ遊び、遊具（3歳以上）やかくれんぼ・鬼ごっこなど体を思う存分動かして遊んでいる。今夏は暑さ指数が高く、プール遊びが少なかったが、室内で氷に触れたり寒天遊びなど夏ならではの遊びを楽しむことができている。また、集団遊びを通して、きまりを守るよう気づいたり、勝ったり負けたりを経験して、自分の気持ちをコントロールすることができるようになっている。

行事は日頃の活動の延長となるように配慮し、子どもの発達に応じた取り組みに努めている。七夕、クリスマス会、節分などの季節行事は、興味を持って意欲的に取り組むことができるようにその都度由来を話したり、歌や絵本を通して雰囲気づくりをしている。また、職員がヒントを出しながら子どもがやってみたい製作物を作って楽しんでいる。七夕では短冊にお願いを書いたり、節分では新聞で手作り豆を制作して行事の準備をしている。毎月の誕生会は集会形式で行い、誕生カードを渡し、職員がパネルシアターなどの出し物を披露して皆でお祝いしている。

保護者参加の行事は夏祭り、運動会、発表会があり、日ごろの取り組みを披露することで、子どもの成長を保護者と共有できる機会となっている。成果だけではなく、友だちと協力し合って練習に取り組んだり、当日使う制作物を作る過程も大切にしている。例えば、夏祭りでは、子どもがやってみたいと考えたヨーヨーやお面のほか、神輿づくりにチャレンジしている。また、ミニ運動会では、障害物競争で使う備品を製作したり、ダンスの発表を楽しみにして練習を行っている。保護者に見てもらうことで、子どもが自信や達成感に繋がる行事となっている。

年度当初に年間行事予定表を配付することで、保護者に園の行事の周知を図り、理解・協力が得られるように配慮している。更に、毎月の園だよりで伝えるほかにその都度お知らせ文を配付して、保護者の理解を得られるようにしている。園長は、子どもが自分の力を発揮できるように心も体も成長していく過程を保護者と共有できることを望んでおり、送迎時や園だよりで子どもが行事に向かって頑張っている事を伝えるよう心がけている。行事後にはアンケートを実施して、保護者の意見や感想から、次回に反映するような活動や内容に取り組んでいる。

延長保育は朝・夕ともに、休息ができる場所のある1歳児の部屋で過ごしている。一日の中で多くの時間を保育所で過ごす子どもがゆったりくつろげるように部屋の温度や室温など快適な環境に配慮している。日中の賑やかな雰囲気とは違うため心身面に配慮し、心細くならないように子どもの気持ちを受け止め、膝の上に座って絵本を見るなどスキンシップを大切にしている。また、少人数の異年齢児が関わり合う家庭的な雰囲気の中で過ごし、日中使わないパズルや塗り絵、木製レールなど落ち着いて遊べるよう工夫している。

園の職員体制はシフト制により一日の保育を行い、朝夕の長時間保育担当が担任以外でも、子どもが安全・安心して楽しく過ごせるよう努めている。担当職員は、登園時に保護者から得た子どもの情報や子どもの日中の過ごし方を、伝言ノートや発達経過記録、昼礼で把握し、延長時に子どもの変化が見られた時には迅速な対応をしている。お迎え時には、担任からの申し送り事項や「夕保育連絡表」の確認により、連絡漏れがないようスムーズな引き継ぎに努めている。補食にはおにぎりや蒸しパンなどの軽食を提供し、一息つきながら過ごす時間となっている。

本部作成の献立は2サイクルで作成され、旬の食材と素材の味を生かした食事づくりの工夫をしたり、季節の行事食も取り入れている。保育室での食事が基本であるが、時にはホールで食事を楽しんだり、クリスマス会ではランチョンマットを使い雰囲気を変えてバイキング形式の食事をしている。栄養士、調理員はできる限り食事の様子を確認し、毎月の給食会議で味付け、食材の形態について検討し、食べやすくおいしい食事を提供している。今後さらに、子どもの生活リズムの違いを尊重した食事方法や、一人ひとりにあった食事提供に期待したい。

入園時に保護者との個人面談で食材チェック表を確認しながら、食物アレルギーについて聞き取りをして把握している。離乳食を開始する場合も同様、園で使用する食材について未食の食品は入園前に家庭で試すようお願いしている。アレルギーがある場合、主治医による生活管理表の提出をお願いし、園長・調理・看護師・担任と各々に面談を行って除去食を提供している。食事を提供する際は、子どもの名前と除去の食材を記入した食札をトレイに載せ、調理と担任が口頭と押印確認をして個別に出している。誤配・誤食を防ぐため、座席の配置に配慮している。

年間食育計画を作成し、1歳児から野菜の皮をむいたり、きのこを割くなどの手伝いをしながら、季節ごとの食材に触れる機会を持っている。園庭でのしいたけ栽培や、プランターではトマト、きゅうり、ピーマンなど季節の野菜を栽培し、毎日の水やりをしながら収穫を楽しみにしている。秋にはスイートポテトづくりのクッキングに挑戦し、正月の鏡開きではおしるこを食べる慣習を楽しんでいる。様々な経験が当番活動などの役割意識を養い、食への関心を高めている。今後、幼児向けの三角食べや3大栄養素についてわかりやすく話す取り組みを検討している。

室内には手洗いのイラストを掲示し、日頃の生活の中で手洗い・うがいに取り組んでいる。3・4・5歳児を対象に看護師が手洗いチェッカーを使い、歌いながら丁寧な洗い方の指導を行っている。朝の会では、外遊びや散歩の際の交通マナーや約束ごとなどを伝え、公園では固定遊具の使い方を確認するなど危険を意識できるように説明している。毎月の避難訓練の際には子どもに身を守るポーズや避難時の約束ごとを伝え、経験を重ねる中で自然と身に着くようにしている。また、室温や湿度、換気に注意し、乳児の玩具の消毒は毎日行って衛生管理に努めている。

嘱託医による定期的な健康健診は、0歳児が毎月、1歳以上が年2回行うほか、嘱託医には随時の相談体制や病気に関する情報をもらうなど連携して対応している。歯科医による年1回の健診も行われ、今年は3歳以上の虫歯予防集会もかねて行い、歯の大切さを伝えている。毎月の身長・体重や年2回の頭囲・胸囲の測定結果もあわせて保護者に報告し、子どもの成長を共有している。日中の健康変化やケガ等が生じた際には看護師が必要なケアにあたり、配慮の必要な子どもには必要に応じて専門機関に同行して助言をもらうなど連携をした支援を行っている。

子どもが感染症に罹った際には、玄関に発生状況を掲示して注意を喚起し蔓延防止につなげている。ＳＩＤＳ対策では入園時に文書を配布し説明をしている。午睡時は、呼吸・体位などのチェックを行い、0歳児は5分、1歳児は10分、2歳児以上は15分ごと確認している。定期に開催する法人看護会議や行政の保健会議では、感染症やアタマジラミの対応などの保健全般の情報が得られ、毎月の保健だよりでお知らせをし、保護者への啓発に努めている。また、「早寝・早起き・朝ごはん」の生活習慣を呼びかけ、家庭と連携した子どもの健康支援に努めている。

保護者の就労や家庭状況は、毎日の送迎時での会話や連絡帳アプリ、個人面談などを通じて把握し、必要に応じた個別対応と子どもの成長が共有できるよう努めている。延長保育は基本的に月極めで受けているが、急な残業等での延長保育にも柔軟に対応し、15時までの連絡で補食を提供している。保護者参加の行事日程は土曜日を中心に設定し、見通しを持てるように年度当初の説明会や毎月の園だよりに掲載して伝えている。また、乳児の使用後のおむつの持ち帰りがないようにするなど、保護者の負担軽減にも配慮し、仕事と子育ての両面から支援している。

年2回開催のクラス懇談会では、年齢に応じたクラス活動や子どもの様子、保育方針を保護者に伝えている。園の取組みを知ってもらい、園と家庭が共通認識のもとで子育てができる機会としている。例えば5歳児では、トラブルが発生した時に、子どもが自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを受け止める様子を伝え、「心の育ち」を保護者と共有できるよう心がけている。保護者からは自己紹介に加え、できるだけ保護者同士で子育ての話や育児で悩んでいること等を話せる場とし、保護者同士の交流と、保護者と職員の信頼関係を深める取り組みとなっている。

園では、保育参観を行い、乳児は気づかれないよう小さな穴から除く参観となっているが、わが子の成長を喜ぶ場としてだけではなく、子ども同士の関わりも見ることができ、子どもへの理解を深める機会となっている。また、毎月園だよりを発行し、園長からのメッセージやお誕生日、行事予定、お知らせのほか、クラスごとの保育目標と子どもの姿や育児のヒントを掲載して、園での子どもの環境や取り組みを伝えている。さらに園の専門性を生かして、ベビーマッサージの継続や育児講座、給食試食会など保護者の養育力向上のための活動を期待したい。

園周辺は様々な公園があり、散歩や戸外活動の目的に応じて選び毎日出かけている。0、1歳児は散歩車の中から、2歳以上は歩きながら行きかう地域の人に手を振ったり、挨拶を交わして顔なじみになっている。近隣の商店街へは、園の夏祭りやクッキングで使う野菜や果物の買い物をしている。散歩時に通りかかる消防署、交番の人の出会いもあり、図書館には定期的に絵本を借りに出かけている。今後は一歩進めて、消防車の試乗体験や、警察署から交通ルールを学ぶ体験など地域の社会資源を活用して、子どもの多様な体験や交流の機会を期待したい。

市開催の地域イベントに年長児が招かれて他園との交流会が行われ、就学に向けて貴重な体験となった。また、園の運動会には、子どもと一緒に園の入居する建物のオーナーに招待状をもって訪問したり、保育園の見学者に声かけして参加の呼びかけを行っている。園長は、子どもにとって地域との連携は社会性を育む大切な機会と捉えており、園の行事等に地域の人の参加を呼びかけたり、地域行事にも積極的に参加し、子どもが様々な年代の人たちとの地域交流の場を広めることを検討している。今後、子どもの地域交流の場を広めるための取り組みに期待したい。

子どもの情報提供先は行政や受診先など限られており、あらかじめ入園時に書面で伝え同意を得ている。写真の使用先は具体的に明示し、保護者の意向に基づいて対応している。連絡帳や行事予定などは電子化されており、保護者アプリマニュアルに基づいて適切に管理している。記録時間については、保育に影響を及ぼすことのないように注意喚起しているが、十分に理解していない職員も見受けられ指導の強化が期待される。子どもを外部の視線から守る取り組みとして、プール時や排泄時の目隠し、５歳児は男女別の着替え場所の確保などに取り組んでいる。

生まれたその日が大切な記念日として寄り添い、ガーベラ一輪を園長自らラッピングし「おめでとう」と共に子どもに渡している。誕生日会は主役の子どもが特別感を味わえるように、王冠やメダルをつけ、職員の出し物で楽しく過ごし園全体で祝っている。次年度からは、対象児の保護者参加や保護者からのメッセージ紹介などの取り組みも企画されており、子どもの誕生を大切に思う園の姿勢が窺える。子どもの呼び名は「ちゃん・くん」を基本に、家庭での愛称も参考にしている。声の大きさ、表情、言葉遣いも大人が見本として丁寧に子どもに接している。

園では外国籍の子どもも受け入れ、様々な文化を認め、グローバルな視点で子どもの育ちに寄り添っている。現在対象児はいないが、宗教食なども除去食での対応が可能である。衣服を汚されたくないとの保護者の希望には事前に園の活動を知らせ、当日の衣服に配慮いただけるようにしている。虐待事例では、行政や関係機関と連携し、登園時の視診チェックや親子関係などの観察に努め、タイムリーな支援の仕組みを整えている。虐待防止研修については毎年の参加は出来ていないが、コンプライアンスブックや職員面談で職員の意識啓発に取り組んでいる。

入社時に配布されるコンプライアンスブックの他、保育の基本マニュアルや保健衛生、感染症マニュアルなどが法人統一で配置されている。園長は法人の理念に沿った保育を職員に浸透していきたいと、５月に全職員一人ひとりと基本マニュアルの読み合わせを行っている。更に、自主点検表や事故防止チェック表、調乳者衛生チェック表、調理室衛生チェック表などを使用し確実で安全な保育が提供できるように配慮している。その運用は現場の意識づけには有効であるが、業務の慣れや漫然としたチェックによる漏れ防止に対応した管理体制には課題もある。

園業務として、遅番・早番の仕事が作成されている。その内容は事務所に掲示し、職員が確認しながら業務に取り組めるようにしている。役職や職能に応じて職務分担表が作成されており、園での自分の役割りを明記している。また、行事担当や係りも職員に分担され、それぞれが園の運営に責任を持って臨んでいる。新人への指導はＯＪＴで行っている。第三者評価の職員調査では職員間の関係性が良いとの声も多いが、他職種との連携や保育観の統一には課題も感じる。今後は、子どもを主体にした保育の実現に向けて園全体での意思統一に期待したい。

園では保護者の意見を大切にし、より良い園運営につなげている。その取り組みとして、行事後のアンケートや個人面談、運営委員会、ご意見箱の設置、東京都福祉第三者評価を通した利用者調査で保護者の意見に耳を傾けている。その意見から次年度に向けて給食参加や誕生会への保護者参加などを考えている。その他、職員会議での子どもの情報シートの活用、ヒヤリハット報告書の提出とその分析集計、５歳児の着替え場所の工夫など、園長指導の基、保育の質向上に繋がる業務の標準化に向けて着実に取り組んでいる。