東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

区の保育理念・方針、園の保育方針・目標は、ホームページ、園のしおり、全体的な計画への記載、園内掲示などにより、職員、保護者への周知に努めています。年度当初の職員会議での目標シート作成を通じ、目標と実践の関係をより深めるよう努めています。さらに保育指針の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿10項」を掲示し、日常的に参照しています。入園説明会や保護者会では、理念と実践の関係を説明しています。利用者アンケートでは「目標等の説明を受けた」「共に子育てしていると感じる」の項目で98％の方が「はい」と回答しています。

区立保育園共通の「園長の手引き」には、園長の心得、園長の役割、保育の運営など、園長が果たすべき運営管理の内容が示され、園長の行動指針となっています。園長はこれを踏まえながら、職員会議や園内研修の機会を通じて、自らの役割と責任、職員に求めていることを伝えています。さらに運営がトップダウンにならず、職員が自ら考え、自発的に取り組めるような職場づくりに努めています。園内研修では、ブレインストーミングとＫＪ法の手法を活用し、目標と具体的な保育実践を整理し、職員が納得して保育に取り組めるよう配慮しています。

会議体は、職員会議（週1回）、昼礼（毎日）、乳児会、幼児会、リーダー会、リスクマネジメント委員会などがあり、課題に応じて、それぞれの会議で検討を行っています。会議での検討経緯、決定事項は、職員会議、昼礼の機会を通じて周知し、会議録、昼礼ノートの回覧を通じて共有を図っています。また、会議では経験、年齢を問わずに意見発表ができる雰囲気づくりに努め、全員が意思決定に参加できるよう配慮しています。また、子どもや保護者に関わる案件は、保護者会での説明、園だより、掲示等を通じて周知し、協力を得るよう努めています。

利用者調査や保育参観、行事アンケートなどを実施し、保護者の意向を把握し、運営に活かすよう取り組んでいます。調査結果には要望、意見に対する園の取り組みなどを示し、保護者の理解を得るよう努めています。職員会議、園内研修、面談の機会を通じて職員の意向を把握し、運営改善につなげています。例えば、園庭開放での当日参加の親子の受け入れは、職員の意見から改善した事例です。園長会、保育ネット、子育て支援ネットワークなどに参加し、保育ニーズの把握に努めるとともに、関係者と地域の課題解決に向けて協働して取り組んでいます。

公立園長会での提供資料や、主管課からのメール情報、保育団体広報誌、保育雑誌などを通じて、福祉事業全体の動向把握に努めています。収集情報は回覧や報告を通じて共有し、将来の保育施策の方向性を踏まえながら、園の課題抽出などに役立てています。また、園長会、所管課を通じて予算要求するほか、予算措置の内容を確認するなど、経営に影響する区の保育予算の把握に努めています。さらに今年度は「子ども計画」「子ども・子育て支援事業計画」の見直し時期であることから、計画作成のための基礎調査、審議会などの情報収集に努めています。

中長期計画の「子ども計画」「子ども・子育て支援事業計画」を踏まえ、毎年度4月、全員が参加して目標シートを作成しています。12月に中間評価、3月に最終評価を行い、次年度に向けた課題、提案を行うなど、ＰＤＣＡサイクルで目標管理を行っています。さらに全体的な計画、年度、月、週の指導計画を作成し、定期に目標の達成度合いを評価し、必要に応じ計画を見直して実践に取り組んでいます。園内研修では、年間計画に沿って5つのグループ別に意見交換、実践、振り返り、見直しを行うなど、テーマによる実践研究方式で取り組んでいます

保育士の倫理は、保育安全マニュアルの「保育従事者の心得」に示され、職員会議や園内研修で確認し合い、日常的に参照するよう努めています。さらに公務員の立場では「公務員倫理ハンドブック」に倫理が示され、職員会議で確認するとともに、区倫理研修などに定期的に参加し、報告書作成、発表を通じて成果を共有しています。苦情解決は、保健福祉サービス苦情審査会の説明を入園説明会、保護者会で行うほか、掲示を通じて一層の周知に努めています。利用者からの意見は、職員会議で具体策を協議し、窓口を一本化して対応するよう努めています。

子どもの心を傷つけないよう、職員会議や昼礼の機会を通じて「保育の質ガイドライン」を参照し、日頃の言動、対応の振り返りを行っています。気になる子には、シグナルを見逃さないよう職員が連携して子どもの様子の把握に努めています。疑いのある場合、子ども家庭支援センターなど、関係機関と連携する仕組みが整っています。ホームページ、施設見学での情報提供、地域交流などの機会を通じて、園の活動内容を開示しています。ボランティア、実習生、職場体験は積極的に受入れ、子どもと体験者双方に実りある機会となるよう取り組んでいます。

地域交流事業の一環として「保育園で遊ぼう」「パパママデビュー」「園庭開放」「体験保育」のほか、栄養士、看護師、保育士が講座や相談会で活動するなど、園の機能や専門性を地域貢献に活かしています。また、保育ネットや子育て支援ネットワークに参加し、関係者と協働して地域の共通課題の解決に向けて取り組んでいます。さらに近隣の多様な形態の保育施設や保育ママさんなどとの連携を図るため、例えば看護師、栄養士の派遣、園庭開放への招待や、防災訓練参加への働きかけなど、地域の保育水準向上に向けた取り組みを行っています。

リスクマネジメント委員会を設置し、年間活動計画を作成して、事故、感染症、侵入、災害など、テーマに応じた具体的な対策を講じています。ヒヤリハットでは、報告書をチェック方式に変更して情報を集めやすくするなど、工夫をして成果を上げています。集めたデータは全体とクラスの比較や、経験年数のクロス集計を行うなど、対応の分析に役立てています。さらに事故防止チェックリストには、チェックした際の職員の「気づき」を追記するなど、より実践的な内容となるようブラッシュアップし、職員への注意喚起を徹底しています。

区では事業継続計画を策定し、発災から時間別に業務と開始目標時間を体系的に整理しています。これを踏まえた保育園防災マニュアルに従って、園では非常災害訓練を年間を通じて行っています。訓練には起震車体験、煙中訓練、引き渡し訓練、不審者対策などもあり、様々な事態に応じた実践的内容になるよう努めています。また、3月には年長児が道路・横断歩道の歩き方を学ぶ機会をもつなど、就学を意識した訓練も行っています。感染症対策では、インフルエンザの罹患情報を掲示により伝え、保護者、職員に予防の注意喚起を行っています。

個人情報保護については、職員はもとより、実習生、ボランティアの方にも書面と口頭で説明し、守秘義務の徹底を図っています。保育に必要な個人情報は、区ファイリングシステムに従って管理しています。児童票などの紙資料、デジカメ・ＳＤカードなどは鍵付き書庫に保管し、持ち出しの管理を徹底しています。電子情報は、区情報セキュリティ手順書に沿って管理し、パスワードによりアクセス制限を行っています。保護者には、入園説明会の際、個人情報保護条例による情報の利用目的、開示請求への対応などを説明し、書面で同意を得ています。

区ホームページには「世田谷区に就職を希望する方へ」のサイトを設け、試験情報、研修・福利厚生、よくある質問などのほか、職員メッセージのコーナーで先輩保育士が仕事を紹介し、求職者が求める情報を提供しています。非常勤職員、臨時職員の募集は、区で一括して行い、園の希望に応じて配置しています。11月の職員の意向調査、配置状況を踏まえ、12月に保育課との園長ヒアリングが行われ、翌年度の人員配置が行われています。毎年度の担任の選考は、本人の希望、スキル、人材育成の視点から、適材適所となるよう配慮しています。

区はキャリアパスとして「保育者育成指標」を設定し、基礎・中堅・管理職の各ステージの到達目標を示しています。「研修体系」ではステージ別の保育士像、具体的研修内容を示しています。これらを踏まえ、園では年間研修計画を作成し、園内研修を開催するほか、ステージに応じた外部研修に職員を派遣しています。さらに職員は毎年度「自己申告書兼評価書」を活用して、専門職としての能力開発、自己啓発など、目標管理に取り組んでいます。新人職員の指導では、担当職員が区のＯＪＴ研修に参加し、指導技術の習得に努め、新人教育に活かしています。

自己申告書兼評価書を活用した目標管理や、能力・態度・業績考課などをによる適正な評価が行われています。また、年1回ストレスチェックを行うほか、就業状況や年休取得状況を把握し、必要に応じて指導・助言を行っています。さらに年2回のヒアリングにより仕事への意識や悩みを把握するほか、休憩時間の確保に努め、職員間のコミュニケーションの円滑化に配慮しています。園内研修では、個人ワークで課題を書きだし、グループでの意見交換を通じて、クラス、園全体で実践するなど、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいます。

区の統一的な仕組みとして、保育に関する相談窓口を区総合支所の生活支援課・子ども家庭支援センターに設置しており、利用希望者向けに冊子「保育のごあんない」を配布しています。この冊子では、保育に関する利用案内を中心に説明しており、各園については「園名・所在地（住所、地図）・電話番号・定員・保育開始月齢・延長保育定員」等の基本的な情報を掲載しています。また、各支所で施設案内を発行し、前述の資料を補っています。さらに、子育てネットワークを単位として子育て支援事業を紹介する情報誌を発行しています。

インターネットを通じた情報発信として、区のウエブサイトに各園のページを設けています。各園個別の情報として「施設の概要（所在地・連絡先・開園時間・構造・地図・園舎平面図等）・保育方針・職員数・開設年月日・特徴・お知らせ・イベント」を掲載しています。加えて、区立保育園が統一的に取り組む「在宅子育て支援事業・質の向上への取り組み・園の取り組み・子育てトライあんぐるの紹介・健康ひろば・食育ステーション」を掲載しています。園では園庭に沢山の素材を工夫して子ども達が遊ぶ様子が写真で紹介されています。

施設見学は随時受け付けし、可能な限り希望者の都合に合わせています。対応は園長・副園長のリーダー層が行い事情が可能ならば、地域交流と施設見学を同日にし独自のリーフレットを配布し利用者の質問に答えながら丁寧に説明しています。園からのＰＲとしては「園庭で子ども達が主体的に遊び大きな子も小さい子も自然な異年齢保育。全職員が協力して子ども達に園庭の手作り遊具を提供している。」等を伝えています。また、育児相談、地域の子育て情報誌・地域交流事業の案内をしています。

入園が決まった利用者に対しては、入園前の個人面接・健康診断・入園説明会を実施しています。入園説明会は、区立園共通のしおりを作成・配布し、区の理念、方針・保育の概略・給食・園と家庭の役割・登園や降園時の心くばり・保育料等について、合わせて園の目標・方針・園からのお知らせについて保護者に分かりやすく説明しています。持ち物については、写真や実物を用意しています。なお、これらの機会や資料を通じた「保育園の取り組み・個人情報利用目的」の説明内容について区立園統一様式による「同意書」を得ています。

入園時の子どもや家庭の様子は、入園前の面接（新入児面接にあたり）や生活調書を通じて把握に努め、健康状態（既往歴や予防接種の状況・体質的な特徴等）について児童票に記録しています。これらの情報は職員会議を通じて職員間の共有を図っています。その上で入園当初にあたっては徐々に長時間の園での生活に慣れるように職員体制を厚くし就労状況・個々の子どもの状況に合わせて保育時間を設定し、環境の変化によるストレスの軽減に努めています。また保護者が安心できるように、送迎時の説明を丁寧にし職員との信頼関係を保てるようにしています。

退園する利用者には、各クラスで工夫しながらお別れ会の開催や作品集・メッセージカード・育ちの記録を提供しています。また、区として継続した支援の必要性が認められる場合には、子育てネットワークや要保護児童対策地域協議会で情報を共有して見守り体制を築いています。就学支援に向けては、希望する保護者には個人面談の機会を用意しています。保育要録については小学校へ届け子どもの様子を丁寧に伝えています。退園後も緊急一時保育、地域交流事業の案内を渡すなど引き続き身近な安心して相談できる存在であることを伝えています。

入園決定後及び入園以降に把握した子どもの発達や心身・健康の状況、家庭の状況などを児童票に全園児期毎に記載しています。また毎日の送迎時の会話や個人面談などの際に、子どもの園での生活や心身の発達などについて家庭との連携を図り記録簿で情報を把握し、乳児日誌の個人別記録、幼児は週案と日誌を連動させて作成しています。月の指導計画については、職員として保育の振り返りを会議を得て、各クラス担当職員が毎月計画を立てながら反省を踏まえて立案しクラスとして見通しをもって展開されるように作成しています。

全体的計画に基づき、指導計画会議を経て年間指導計画及び月・週案・日指導計画を作成しています。乳児及び要配慮児の個別の指導計画・個人別ねらい・配慮、幼児の月の指導計画は週案と連動させて計画を作成しています。これら指導計画は、週・月・期・年度末で反省、自己評価、見直しをし次の計画に繋げています。全体的な計画については、月の指導計画を元に実践・振り返り・反省を踏まえて作成に取り組んでいます。うち「保育理念・目標・方針」年間指導計画等については年度初めの保護者会で資料配布説明しクラス目標は掲示もしています。

園での日々の保育は、月の指導計画・週・日指導計画案に基づいて実施され、個別の様子や活動状況などを保育日誌・昼礼ノートに記録しています。個人面談では保護者の意向を把握し、保育日誌や連絡帳、面談から得た支援内容の推移を児童票に成長の姿として記録しています。なお各会議で子供の様子を職員間で共有し、子どもや保護者の状況の変化は昼礼、昼礼ノート、クラス視診簿、延長日誌に記録するとともに確認しています。非常勤職員への対応としては、園長とのヒヤリング、日々の出来事はクラス職員から口頭で個別に伝えています。

子どもの発達や家庭環境については、毎月の会議や日々の打ち合わせで必要な内容が職員間で共有され、保育計画に盛り込まれています。乳児クラスでは、少人数グループに分かれた保育が行われ、一人ひとりの発達や興味、その日の体調等に応じてきめ細やかな対応が行われています。恵まれた広い屋内スペースを活用して、手作りの粗大活動の遊具や巧技台やマット等を設置して身体発達を促したり、ままごとや絵本、ブロック、積み木、乗り物など発達に合わせた玩具のコーナーが設置されて、思い思いの遊びを楽しめる環境が工夫されています。

幼児クラスでは異年齢交流活動の「はっぴいの日」を月1回程度実施して、散歩や集団ゲーム、リズム遊び、絵本や積み木、構成遊び等のコーナー遊びを楽しんでいます。また、ホールを活用した「ランチルーム」会食が月1回取り組まれ、異年齢児が自由に交流しながら、好きな時間に好きな席で食事を楽しむ機会をもっています。広い園庭では、乳幼児が思い思いに遊ぶ中で自然な交流が生まれています。こうした交流を通して、互いに刺激し合い、遊びの伝え合いが生まれたり、年下の子どもを思いやる気持ちが育まれたりしています。

特別な配慮の必要な子どもの保育に当たっては、保護者と細やかに連携しながら、毎月個別の指導計画を立てて対応しています。また、職員は専門機関から定期的な巡回指導を受け、適切な保育環境や援助方法を学んでいます。こうした丁寧な援助や子ども同士の関りの中で子どもの成長が促され、周りの子ども達には多様な存在を受け入れる気持ちが自然に育っています。子ども同士のトラブルについては、子どもの年齢や個性に応じて、保育者は時に介入したり見守ったりしながら、互いの気持ちに気づき解決できるよう、根気よく働きかけています。

乳児クラスでは「連絡帳」で毎日の生活や健康状態について細かに保護者と確認し合い、幼児クラスでは必要に応じて「れんらくのーと」でやり取りしています。登園時には子どもの健康状態を保育士が直接確認し、必要な連絡事項も含めて担当職員と共有します。周知の必要な情報は昼礼で報告されて全職員で共有し、「引継ぎノート」で夕方の当番保育士に確実に伝達され、送迎時に直接保護者に伝えます。重要な事柄については、担当保育士や園長が直接保護者に説明することもあります。丁寧な情報のやり取りを通して保護者との信頼関係が得られています。

排泄・食事・うがい手洗い・衣服の着脱・整理整頓などの生活習慣の習得に向かい、年齢や一人ひとり発達を踏まえた計画の下で、系統だった援助が行われています。とりわけ乳児クラスでは、保育者が一緒に行いながら個別に繰り返し丁寧に知らせ、幼児クラスでは、年齢に応じてその必要性を意識して自主的に取り組んでいけるように促しています。保護者に対しては、保護者会などの機会を活用したりクラスだよりで年齢の特徴や園の取り組みを伝えたり、必要に応じて個別の相談に対応したりしています。園と家庭とが連携しながら進められています。

0.1.2歳児クラスでは食事の部屋と別に午睡室を設けて、食後スムーズに休息が取れるように整えられています。0.1歳クラスにはカメラを設置して、緊急事態に備えています。幼児クラスではホールでクラスごとに順次休息をとります。0、1歳児は5分、2歳児は10分毎に一人ひとりの様子を確認し、3.4.5歳児では15分おきに子どもの様子を記録して、就寝中の事故防止に取り組んでいます。早めに目覚めたり眠れない子どもに対しては、別室で過ごしたり絵本を読む等の配慮をしています。就学に向けて年長児は3月より午睡を廃止しています。

園庭は「わくわくの園庭」と名付けられて、環境の充実と遊びの継承が長年積み重ねられています。砂場横のログハウスやふんだんに提供されているタイヤや牛乳ケース、風呂マットや椅子、ホース、ベニヤ板などの素材を使い、子ども達は自由なイメージで組み立て、友達と試行錯誤を繰り返しながら遊びを発展させています。各部屋では、ままごとや絵本コーナー、積み木、木製レール、ブロック、パズル等、年齢に合った玩具を子どもが自由に出して遊べるように設置され、手作りの仕切りを使って子どもが自分の遊びに集中できるような工夫もしています。

年間・月間指導計画に沿って、年齢に合わせた教育活動をバランスよく取り入れています。特にリズム遊びは全クラスで取り入れられ、楽しみながらリズム感を養い、体幹を鍛え柔軟な体つくりに繋げています。言葉の領域では、乳児では保育者の膝や友達と一緒に、絵本の読み聞かせや紙芝居を楽しみ、幼児ではお話の世界を友達と共有しながら、それを表現活動に繋げたりします。幼児クラスでは当番活動として食事のあいさつや献立の読み上げを皆の前で行ったり、生活や遊びのなかで様々な話し合いを行い、伝え合いを楽しんでいます。

広い園庭には桜の巨木や銀杏の木があり、季節の移り変わりや自然の美しさを感じることができます。花壇やプランターでは、クラスごとに様々な野菜を植え栽培や収穫の楽しさを味わいます。子どもが自由に扱ってよい花壇もあり、土に触れたり自然物を集めたり、遊びの素材や虫探しを楽しんだりできます。室内では毎年カブトムシを幼虫から育て、命の尊さに触れています。園の周辺には自然豊かな公園や緑道などがあり、散歩も積極的に取り入れています。4.5歳クラスでは自然教室に参加し、近隣農園でのジャガイモやサツマイモ掘りも体験しています。

行事の年間計画が作られ、季節を感じ伝統に触れる行事や、友達と一緒に楽しみ協力してやり遂げる行事、日ごろの取り組みの成果や子どもの成長を保護者と共に喜び合う行事など、様々な行事に取り組んでいます。誕生会はクラスごとに子どもの誕生日当日に行い、クラス皆でお祝いします。年3回の「お楽しみ会」では、職員が子どもたちの興味関心を引き出すよう様々な出し物を工夫し、子どもの期待感を高めています。内容に応じて乳児と幼児と企画を分けて実施することもあります。多彩な行事を通し、園生活に変化と潤いがもたらされています。

子どもが創意工夫しながら主体的に作り上げる行事に取り組んでいます。「元気にあそぼう会」は年長児が園児皆を楽しませてあげようと、出し物やプレゼントを考え合って企画しました。夏祭りでは縁日ごっこに取り組み、友達と一緒に工夫して作り上げる楽しさを味わいました。運動会では、一人ひとりが目標をもって縄跳びに取り組んだり、友達と協力しながら組体操や遊戯やリレーを行い、友達と一緒に力を合わせる喜びや互いに競い合う楽しさを味わいました。保育者は個々の行事のねらいを明確に、取り組みの過程を大切にした援助を行っています。

年間の行事予定表を年度の始めに保護者に配付して、保護者が参加する行事を分かりやすく伝えています。行事前には、子どもの取り組みの様子や競技での子どもの位置の見取り図をクラス便りで知らせ、楽しみが持てるようにしています。また、運動会では全クラスで親子競技を取り入れ、親子が一緒に楽しめるよう配慮しています。運動会や発表会の行事後は保護者アンケートを実施して、行事の感想や要望等を把握し、改善に繋げています。保護者が参加しない行事の様子は壁新聞やクラス便りで写真と共にタイムリーに伝えて、保護者の理解に繋げています。

0歳児は朝と夕方共に、1.2歳児は、朝8：15以降と夕方はクラス保育を行い、慣れた環境の中で少人数で過ごせるよう配慮しています。子どもの様子に応じて、体を休めるコーナーを作ることもあります。幼児はホールで合同で過ごしますが、保育環境については遊具環境図を基に日々の保育者の気付きを伝え合い、作品入れ用のかごを設置するなどの細かな改善を行っています。担当についてはシフトを工夫して、慣れた職員ができる限り対応できるようにしています。延長保育時間は、0.1歳児と2歳以上児に分かれて、少人数ですごしています。

乳児は日中の保育とのつながりの中で、子どもが年齢に合った好きな玩具を自由に出して遊べる環境となっています。幼児が合同で過ごすホールの遊具については、汽車や積み木、ブロック、絵本のコーナー、折り紙、お絵かき、パズルなどの机上遊びのコーナーに大きく分類して、時々の子どもの興味関心に合わせて、玩具の設定を行っています。担当者の日々の気付きを昼礼で伝え合いながら、子どもが楽しく落ち着いて過ごせる環境設定に努めています。延長保育時間には、0.1歳児室には専用玩具を設定して、安全に落ち着いて過ごせるよう配慮しています。

給食は、栄養バランスと食材に配慮した区の統一献立により、主食と副菜は陶器の食器で提供されています。乳児は個々の子どもの体に合わせて調整された席に座り、落ち着いて食事をとれるよう配慮されています。幼児では月1回ホールをランチルームにして、ビュッフェ形式で好きな時間に好きなテーブルで食事を楽しみます。ごはんやおかずも自分の食べられる量を自分でよそいます。2歳児も年度の後半から参加して、異年齢交流の一環ともなっています。行事にちなんだ特別献立や、工夫を凝らした盛り付けなど、豊かで楽しい食事を提供しています。

アレルギー児については区の定めるマニュアルに沿って対応しています。医師による「アレルギー疾患生活管理意見書」に基づき、保護者・園長・担任・調理職員で毎月面談して献立内容をチェックし、除去や代替食対応を確認します。提供に当たり調理師、園長、担任で何重にもチェックし、専用トレーを使い誤食防止を図っています。離乳食では、一人ひとりの進み具合に合わせて保護者と密に連携しながら４段階の献立を提供しています。また、体調不良の子どもにも保護者からの要望に沿ってできる対応を行うなど、きめ細やかな対応となっています。

2階のテラスには0.1歳児用の畑があり、乳児もキュウリやプチトマトを職員と一緒に育てています。園庭では2歳以上児がクラスごとにピーマンやおくら等の野菜を育て収穫を楽しみます。ピザやスイートポテト、お団子やクッキー、うどん作り等様々な調理活動も年間計画に沿って取り組まれ、子ども達の楽しみとなっています。また、給食の野菜の皮むきを体験したり、「食育の日」など調理師や栄養士からマナーや栄養について学ぶ機会もあります。活動の様子を写真でその日に伝えたり、給食の展示やレシピの提供等によって家庭との連携を図っています。

園ではリスクマネジメント委員会を立ち上げ、ヒヤリハットの検討や安全チェック、様々な訓練を行い、子どもの安全管理に努めています。子ども達とは年度始めに園庭や遊具の使い方を確認をした上で、子ども自身が危険に気づいたり考えたりできることを大切にした働きかけを心掛けています。毎月の避難訓練では地震や火災から身を守る方法を知らせ、警察署と連携した防犯訓練や交通安全指導も実施しています。看護師は手洗いやうがい、咳エチケットの指導や保健便り配布時に健康講話を行い、子どもが健康や安全を意識できるよう援助しています。

子どもの健康情報は面接時の書類や保護者からの聞き取り、連絡帳で把握して、看護師が毎日クラスを巡回して確認しています。慢性疾患など与薬が必要な場合は、区の統一的な方針の下、医師の与薬指示書に沿って預かり、園長、看護師が対応しています。園医による健康診断は0歳児は毎週、他クラスは年3回、歯科検診は年1回実施される他、園医とは日常的な連携が図られています。歯科衛生士からの歯磨き指導は4.5歳児対象に行われます。職員は心肺蘇生、ＡＥＤ、感染症対応、嘔吐下痢対応等を毎年学び、緊急時に対応できるようにしています。

区の看護師業務連絡会からは「おおきくなあれ」が発行されて、様々な健康情報を保護者に提供しています。また、「けんこうてちょう」のやり取りを通して、毎月の身体測定や健康診断の結果、予防接種や各種健康診査、既往歴などの情報を家庭と共有しています。感染症発生時には、玄関とテラス、当該クラス前に速やかに情報を掲示して、マニュアルに基づき拡大防止に取り組みます。また、地域の感染情報や各種健康情報も、掲示やパンフレットで適時提供しています。このような取り組みを通し、園の対応に対する保護者からの信頼が得られています。

園では、子育てと就労が両立できるように支援しています。保護者の就労状況は入園手続きにおいて得た個人面接や児童票などの記録で確認しています。その際病後児保育施設の登録も進めています。また、年度初めに保護者参加行事が明示されている年間行事計画を配布し、園便りでも周知を図る事で多くの保護者が参加できるように配慮しています。区立園ではスポット（日ぎめ）利用による延長保育を実施しており、できる限り柔軟に対応し個別の相談、事情を聞き入れて保護者の就労上の配慮に努めています。

保護者同士の交流の機会として年度当初の保護者会では、年間目標・年間行事予定表・園からのお願い事・年齢ごとの発達の特徴・生活の場面を映像によって子どもの姿を見てもらっています。年度末には年間の振り返りを伝えることで保護者の安心に繋げています。クラス懇談会では小グループで話しやすい雰囲気の中で「怒らずにすむ方法」等課題をもとにフリートークでお互いの話しに共感することで交流が図られています。また父母会主催で音楽会を開催し子ども達も手作り楽器で参加する等子どもを中心に保護者との信頼関係を築いています。

子どもの園での生活に触れる楽しみを感じてもらえるように、乳児の保育参観、幼児の保育参加を開催し日頃の子供の様子を見てもらっています。幼児については、一緒に集団遊び・散歩等の活動をすることでより深く子どもの成長を見る機会をつくっています。また個人面談、育ちの記録を乳児年2回・幼児4回発行し担任と保護者とで子どもの育ちを共有しています。ほか各クラスのその日の出来事をホワイトボード、A4版で写真を添えて行事や日頃の子供達の様子を掲示し保護者により分かりやすいものにしています。園は日々信頼関係づくりに努めています。

園では、地域に根ざした保育園を目指し様々な地域資源を活用しています。図書館で本を借りる、高齢者施設への訪問、区の農園での収穫体験、消防署見学、交通安全教室、スケルトンゴミ収集車でリサイクルについて学んでいます。ほか地域の福祉施設の方々と紙すきでハガキを作る体験もしました。就学支援に向けては、地域の小学校へ行って授業の様子を見学しています。園は地域と連携を図りながら、子ども達は様々な人との出合いや体験・交流を通して社会性を育んでいます。今後も地域の情報交換に務め公立保育園の役割を果す事に期待します。

子育て家庭に地域交流の活動を知ってもらえる手段として、ホームページ、施設見学、地域のネットワークなどで周知を図っています。地域交流事業、「保育園であそぼう」では（親子ふれあい遊び・水あそび・絵本を楽しもう・看護師指導・栄養士指導等）地域の子育て家庭が保育園で多様な体験ができるよう支援しています。その際必要とする保護者には、区で作成した子育てに関する情報誌を配布し相談にものっています。また地域の保育施設へ起震車体験、運動会等に招待しています。子ども達は様々な人達との関係を築いています。

個人情報保護の規程や目的を策定しており、利用目的と併せて同方針を明示し、保護者への説明と入園時の同意書による確認を行っています。同意書には、項目と利用目的が記載され、双方で個人情報保護の認識を共有できるようにしています。なお急な子どもの画像等を必要とした場合には、その都度保護者に確認、署名をもらっています。羞恥心への配慮としては、おむつ交換、着替えは個定の場所で行い、シャワー時は遮光ネットで目隠しをしています。5歳児はプライベートゾーンについて話をし羞恥心について学んでいます。

入園以降の保護者との日々の会話や定期的な個人面談などから各家庭の生活習慣や価値観などを把握し配慮に努めています。また区職員の人権理解向上に向けた取り組みとして、入職時に研修担当課による研修を行うとともに個人情報やプライバシーの保護に向けて、職員は区個人情報保護条例および同施行規則に則して遵守事項を確認しています。また保育従事者の心得において「接遇・守秘義務・保育従事者の姿勢」等で理解しています。ほか保育の質のガイドラインでキャリア別に読み合わせ日々の保育を振り返り子どもの権利・人権について確認しています。

虐待防止に向けた区の「虐待防止マニュアル」が整備されています。また登園時や着脱時などに外傷や身体・衣服の汚れなどの有無、食事などの摂取の仕方等、子どもの様子に気を配り、虐待やその兆候などが見受けられた場合には区の子ども家庭支援センターまたは保育課に通告する仕組みとなっています。配慮が必要な家庭については、担任だけではなく全職員に周知し、子ども家庭支援センターと連携し、情報の共有を図っています。また個別の対応はケース会議をおこない支援に繋げています。

保育園で活用するマニュアル類は、区として統一的に作成し職員として各マニュアル類をもとに保育を進めています。マニュアルとして保育安全・給食・保健・情報関係・散歩マニュアル等が整備されています。臨時職員・非常勤・入園関係・実習生・ボランティアマニュアル等事務所にて職員が活用しやすい状況で管理しています。安全・衛生面に関する手順等はリーダー層の現場巡回時や会議時での随時指導等で実践までの徹底を促し、チェックリストで確認しています。今後はどの職員も同じ対応ができるよう園独自の手引書の作成が望まれます。

保育サービス提供の見直し等は、月・期毎・行事毎・年度末会議で行なっており、反省と課題を共有し必要に応じてその都度見直しをし次年度の計画に活かしています。日常の保育に関わる内容は状況を昼礼、職員会議で提示、報告して職員間で共有しています。保育園運営全体に関わる業務等の見直しにあたっては、区と調整を行い改善に努めています。なお、行事後のアンケート、園全般に関わる利用者アンケートにより、要望・意見を聞いて次年度の保育運営に活かす事でより良い保育の提供に繋げています。今年度はクラス便りに写真を多く取り入れました。