東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

　運営法人（以下、本部）の理念に基づき、保育目標の4つの約束「元気にあいさつしよう、自分たちでできることは、自分たちでしよう、人にやさしくしよう、自然や物を大切にしよう」の実現に取り組んでいます。職員は「たつの子保育指針」で具体的内容を確認しています。本部の全職員参加の年度末講習会で年度事業計画を公表し、理念・方針を確認しています。保護者には入園決定後の説明会で入園のしおりを使い、詳しく説明し理解を求めています。毎月の各クラスだよりや園だより等で保育園の取り組みを伝え理解を深めています。

　「キャリアパスの仕組み」で園長はじめ、副園長、主任、副主任、専門リーダー、リーダー等の職階を定め、それぞれの職務内容を明確にしています。保育園の重要な運営事項は、園長、副園長、主任で構成する主任会議でクラス会議の意見を集約し、園長が決定しています。本部傘下の2つの保育園と他福祉事業との連携と円滑な運営を図るため、リーダー層が集まり調整会議を設定し、調整しています。非常勤職員の会議を設定し、職員間の意思疎通をはじめ、情報共有や指示の徹底に努めています。

　運営の重要事項は事業計画に関すること及び職員の人事に関すること等で、主任会議を経て本部へ報告または上申します。本部事務局で検討し、最終的には理事会・評議員会で決定する手順が定められています。決定された重要な案件は、主任会議、職員会議、クラス会議、非常勤職員会議、調整会議などの場で報告されています。各種の会議等を通して情報共有し、職員それぞれが職務を適切に果たせるよう取り組んでいます。保護者には、クラス保護者会、園だよりやクラスだよりなどで伝達しています。

　第三者評価の際、利用者調査（保護者アンケート）を実施し、利用者の意向や満足度を把握しています。保護者の意向はクラス保護者会でクラスごとに要望や意見を集約しています。運動会や誕生会等保護者参加行事の際、参加や協力に関する意向を聞き、終了後連絡ノートなどに感想や意見を出してもらっています。寄せられた意見や要望等を園だよりなどで報告することが今後の検討課題と思われます。職員の意向はグループ会議等で意見を集約し、主任会議において改善策を検討しています。区私立園長会に参加し、地域の動向を把握しています。

　本部で、全体の事業計画を立て、中期計画（期間3年）とその先を見据えた長期計画を策定しています。中期計画で保育事業は、少子化進行を課題ととらえ定員問題の検討、新保育指針の改定に伴う内容の見直しと新たな取り組みをテーマとしています。年度計画は、事業計画として「発見・探検　楽しい保育園」を保育テーマに設定し保育内容の充実、メリハリある保育、要支援児保育の充実などを方針として設定しています。職員は働き方改革で、会議の運営見直しや残業終了時刻を午後8時までとし、行事の見直しや園児を3グループでの運営としました。

　年度事業計画を遂行するため、「職員担当表」を作成し、それぞれの職務・役割を明確にしています。保育事業と本部の他の運営事業と重なるところがあり、活動別分担表を作成し、各職員の担当分野を明示しています。1年間の行事や取り組みのスケジュールを立て、円滑な運営を目指しています。職員は保育園と本部の活動で役割を兼務していることがあることから、調整会議を設け、円滑な遂行に努めています。9月までを上半期とし、その間の運営を総括し、年度事業計画の進捗状況を確認し、必要に応じ計画の見直しを検討しています。

　本部が作成した「職員職務上の心得」に、職員が守るべき法・規範・倫理等を明確にしています。本部の年度末講習会で職員全員に配付し、周知しています。「たつのこ保育指針」に、保育で大切にしたいことを明文化し、徹底しています。「人権擁護の為のセルフチェック」を使い、自己点検を通して内容理解を図り、次回の点検でさらに深まるよう努めています。保護者からの苦情や意見に関し、入園のしおりで苦情解決制度を説明するとともに、意見BOXを設置し受け付けています。寄せられた意見や苦情等は本部が取りまとめ、保護者へ公表しています。

　第三者評価を3年毎に受審し、結果を本部のホームページ（以下、ＨＰ）や区内私立園長会が運営するサイトで公表しています。地域の町内会の防災訓練に参加したり、同じ敷地にデイサービス事業所があり日常的に交流しています。保育実習生の受け入れ、ボランティアの小学生や中学生との交流は、年間を通して行っています。園内の図書を活用した地域の未就学児との交流事業「たいやきくん」、卒園児「あらぐさ会」との交流、また、父母と職員の会でも文集「たつの子」の発行や行事などを通して交流しています。

　本部傘下のたつの子地域福祉センターの活動に職員が参加しています。高齢者通所施設では、子どもたちが日常的に訪問し、肩たたきや手あそび、握手をしたり、また、季節の行事、七夕や敬老のお祝い会を実施し、高齢者と交流しています。子どもたちが地域の高齢者に週1回「お弁当宅配サービス」として利用者へ届けています。町会主催の「こどもまつり」に職員が参加し、ソースせんべい売りを担当しています。近隣公園の「板橋ふれあい祭」に職員が参加した時は、保育園のおやつ五平餅を販売し、好評だったということです。

　遭遇する恐れがあるリスクは「たつの子保育指針」の保育の基本に整理しています。リスクに応じマニュアルを整備し、他の保育園の事故をもとに園外活動の経路等を見直しました。防火・防災に備え、毎月避難訓練を実施しています。2019年10月の台風19号に対応するため、緊急主任会議を開き、休園を決めるとともに保護者に緊急連絡を行い、混乱なく休園することができました。こうした子どもや職員の安全を重視した対応策は区の方針に連動したものです。防災に関し改めて全体研修を行い、組織としての防災への取り組みを確認しています。

　使用保管するデータ等は基本的に印刷した文書で管理しています。児童票や子どもの記録類はファイルごとに区分管理し、施錠できる書庫で保管しています。日常の保育で使用するマニュアルや手順書などの文書等は、いつでも迅速に使用できるよう所定の場所に保管しています。園内確認用カメラを2019年6月に導入しました。画像データは一定期間経過すると上書きされ、必要に応じ園長のもとで管理します。インターネットなど外部に接続可能なパソコンは使用者を制限しています。SNSへ保育園の情報を投稿することは禁止しています。

　個人情報取扱いの重要性は、「職員職務上の心得」に記載され、年度末講習会で確認しています。保護者には、個人情報を適切に取り扱う旨を園内に掲示し、入園のしおりにも掲載する等周知に努めています。保護者等への情報提供のため活動の様子等を写真撮影しています。撮影には専用のデジカメを使用し、私物の携帯電話等のカメラの使用を禁止し、例えば散歩時には保育園の携帯電話を持って出かけます。保護者との連絡にも私物の携帯電話等の使用を禁止しています。

　求める人材には、子どもの人権に配慮し人格を尊重した保育ができるとともに、専門知識を高め職員間の情報共有等ができることを求めています。人材確保のため、ハローワーク、養成学校への求人票送付、区の保育フェスタ等多様な方法を活用しています。キャリアパスを設定し、職員に期待する職務やプロモーションルート（目指してほしい職位）、経験年数ごとの研修課題等を明示しています。中核となる職員は、経験豊富で安定して職務を遂行できる人材で構成しています。車いすを使用する職員や外国籍の職員等が勤務し、多様化しています。

　本部が人事・給与・考課制度を整備しています。勤務体制は副主任が中心になって、勤務ローテーションを3区分に分けて組み、勤務や休暇を管理しています。自己評価チェック表で評価後、園長や主任が個人面談を行い、職員の意欲喚起に努めています。本部の広報紙に職員アンケートによる休日の過ごし方や好きなスポーツに関するコメントを掲載し、共通の話題を作り、職員間のコミュニケーションを促しています。福利厚生のため、給付金や旅行レクレーション施設などを利用できる勤労者福利厚生事業に加入しています。

　園外研修やグループ研修を通して、気づき、情報共有、災害対応の重要性を学んでいます。平均経験年数15年という職員層を生かし、組織力の向上に取り組んでいます。研修担当を任命し、全体研修計画の立案や外部研修の申し込みを担当しています。2018年度社外研修は延べ87人が参加しました。園内研修では、社外研修に参加した職員の研修結果報告のほか、グループ研修を毎月実施しています。2019年度も活発に実施しているということです。情報共有や保育園の取り組みに連携するため非常勤職員会議を開き、報告と意見交換を行っています。

　パンフレットは、A4サイズ・両面カラー印刷で連絡先や開園時間、定員、「ゆたかな体験と心のふれあいを大切に」した保育の写真、保育の中で大切にしている4つの約束、職員チームのスローガンなどを記載しています。本部の地域情報誌「たつのこ」、区内私立園長会のホームページ（以下、HP）「ほいくネット」、区の保育利用の手引きなどから必要な情報を入手できます。パンフレットや地域情報誌、保育利用の手引きは、園や区の保育課に常置しています。

　保護者向けに、随時発行の園だよりと月刊の年齢別のクラスだよりを配付しています。その月の取り組みや行事予定、前月の行事や保育の様子を写真入りで掲載しています。6月発行「園だより」には、個人面談のおしらせや7月実施のキャンプの日程を知らせ、8月号にはキャンプに楽しく参加する子ども達の様子を写真入りで報告していました。3歳児の「なかよしだより」10月号は、箸の持ち方指導の様子やおやつの片付け方、布団のシーツかけなど生活の基本的なことに挑戦する子どもの姿を写真入りで掲載し、保護者に報告していました。

　利用希望者等の電話での問い合わせや見学希望に、随時対応しています。年間を通して園見学を受け入れ、9月以降入園申し込みの為の事前見学が増えます。見学希望者等の都合に合わせ、園長または主任が対応し、毎週火曜日午前10時から30分ずつ一定の家庭の見学を受け入れています。見学時は、パンフレットで説明し、質問に答えています。丁寧な対応を心がけ、必要に応じ子育て相談に応じています。見学希望者との日程調整に努めていますが、調整できず実現しないこともあるようです。今後の検討が期待されます。

　入園決定者には、3月中旬、内科医の健康診断と併せて個人面談の日程を決めています。面談には、園長、主任、副主任が対応し、必要に応じ看護師、栄養士が同席し、提出書類を確認します。保護者には、事前に入園アンケートに家族や子どもの育ちの様子を細かく記入し提出してもらいます。保育園のしおりを配付し、入園後の生活内容やルール等を丁寧に説明します。新園児面談・検診記録に子どもの様子や保育時間、慣れ保育予定、健診の結果、提出書類等を記録します。重要事項の説明後、入園と氏名・写真等の掲載の各同意書を提出してもらいます。

　入園当初に、1週間前後の慣れ保育を実施しています。保護者の都合に合わせて計画し、子どもが慣れていく様子や体調、ミルクの飲み具合などを登降園時に伝え、情報共有します。初めて保育園を利用する保護者には、初日に保育の様子を見てもらう場を設けています。子どもが保育園の生活に慣れるまでの間は、同じ職員が付くなど信頼、愛着関係を築くよう努めています。慣れ保育後に、保護者と子どもの様子や感じたことなどについて個人面談を行い、安心し利用を継続できるよう配慮しています。

　卒園する子どもには、入学予定の小学校へ児童保育要録を提出し、また、保護者の要請で「支援シート」（区所定）を提出することもあります。卒園児の集まり「あらぐさ会」があり、卒園児に毎年夏祭りや運動会行事の招待状を出しています。2019年度は卒園児約60人招待ハガキを送り、30人以上が参加したということです。卒園後もこうした支援を継続しています。これまで、入園後に転居等の理由で退園した事例はなく、また、転園の子どもの情報提供を受けた事例もなく、今後、必要が生じた場合は適切に対応することができます。

　一人一人の児童票ファイルに、入園時の面談記録や検診記録、同意書と、入園後の保育経過記録、発達経過記録等を綴じています。保育経過記録は、子どもの育つ姿を5領域に分け、項目毎に年2回（6月・12月）評価し、〇印を入れています。発達経過記録は、0～2歳児は毎月、月別のねらいと健康や子どもの様子、特記事項を、3～5歳児は期毎に個人のねらいを見定め、保育の展開とねらいに合わせた子どもの様子を、具体的に記録します。個別指導（?計画？）が必要な子どもには、ジェノグラムやエコマップ（家族の人間関係図）も作成しています。

　全体的な計画（以下、全体計画）に、4つの約束「①元気にあいさつしよう、②自分たちでできることは、自分たちでしよう。③人にやさしくしよう、④自然や物を大切にしよう」を掲げ、年齢毎に保育目標、大切にしていることと、保育のねらいと内容を記載しています。年間・月案・週案・日案の指導計画は、全体計画を踏まえ、それぞれ所定の時期に作成し、見直しています。年2回、クラスの保護者会で行事予定や保育の様子を伝えるほか、年1回個人面談で、新入園児は夏前に、年長児は秋過ぎに、一人30分くらいかけて成長の様子を伝えています。

　全体計画をはじめ各指導計画や指導内容、日々の保育内容の振り返り（自己評価）は、年度末会議や主任・リーダー・グループ・クラス・ケース・調整会議等において実施し所定の書式に記録しています。殆どの会議を午睡中に開き、非常勤職員に内容を報告する日程を作り、情報共有を図っています。日々の子どもの健康状態は「家庭よりヒヤリハット」をもとに看護師が子どもの様子を観察し、保護者の連絡事項と併せて遅番職員に伝え、降園時保護者に報告できるようにしています。職員はいつでも、事務所で必要な情報を確認することができます。

　保育日誌に日々の保育計画と、子どもの様子や保育の振り返り、工夫したことを記録しています。5歳児・11月の保育日誌には、12月に予定している行事「おゆうぎ会」に向けて歌や劇の練習に取り組む姿を記していました。保育計画には「自信をもって練習しよう」、子どもの様子には「子ども同士見合いっこをしてどちらも良い刺激になった」、工夫には「自分の番が終わっても周りを意識できるように促していく」と具体的に記載しています。日々、保育を振り返り、子どもの姿を把握し、以後の保育内容を検討しています。

　特別な配慮が必要で、職員が個別に援助している子どもや気がかりな子どもには、区の巡回指導者（心理職、毎月）と連携し、援助に関するアドバイスを受け、情報共有をし、援助内容や子どもの状態をきめ細かく記録しています。担当職員は、子どもの気持ちを受け止める（共感的理解）や愛されているという実感（基本的安心感）を持てることを基本に、援助しています。日案に、「おゆうぎ会」の練習や椅子取りゲームで遊ぶなどクラスの一員として過ごしている様子を記録していました。

　子どもが円滑に就学できるよう、①毎年、区教育委員会教育支援センターの幼・保・小連携研修に園長や主任が出席し、地区別のグループ討議で情報共有しています。?小学校と連絡を取り子どもが見学したりするほか、文字を練習し自分や友だちの名前を書けるよう練習します。③椅子に座る姿勢、話を聞く時や話す時の約束事、電話のかけ方等を指導し、何かあった時に助けを求められる場所として保育園の電話番号を教えています。④保護者には、校長が来園し、就学に向けた心構えなどを話してもらう機会を設けています。

　登園時に受けた保護者の連絡事項や子どもの健康状態などを、早番職員がクラスごとの「引き継ぎノート」に記録し、保護者が記入する出席簿を併せてクラス担当に引き継ぎます。看護師は、毎日各クラスを見回り、子どもの様子を視診するとともに、保護者の連絡事項を担任から確認し、「家庭よりヒヤリハット報告」に記録します。子どもの健康状態を遅番職員に引き継ぎます。

子ども一人一人の発達の様子を観察し、発達経過記録に記録しています。2歳児では一人でできない衣服の着脱について、3歳児の年間指導計画に食事・排泄・睡眠・衣服の着脱などを自分でしようとすることを目標にし、指導や援助を行っています。栄養士による料理保育、食育の取り組みで食材への関心や食べることへの興味を持たせたり、看護師から手洗いの仕方などを学んだりと、着実に自分でできるよう援助しています。

　年齢に応じて午睡時間の長さに配慮しています。5歳児は、就学に向け、9月頃から午睡時間を30分くらいずつ短くし、卒園までに午睡をしないで一日を過ごす生活リズムに慣れていくようにしています。遅番職員は、担任や看護師等から引継ぎを受け、降園時保護者に体調の経過とその日の保育の様子も伝えます。子どもの様子を写真付きで玄関脇に掲示していました。

　2階にある保育室は、2歳児が個室、3～5歳児が可動式の壁で仕切られた部屋となっています。3～5歳合同の室内遊びでは仕切りを開放し、テーブル毎にコーナーを分け、粘土やブロック、おはじき、おゆうぎ等の遊びに子どもがじっくり取り組める環境を整えます。ダンボールを幾重にも重ねた手作りの「アクティブボード」の壁面に子どもの目線で玩具や仕掛けを施し、子どもが集中して遊べる空間を作っています。異年齢児が関わりあうなかで、大きい子どもに憧れ真似をしたり、小さい子どもを助ける意識が見られます。

　職員が子どもとしりとりやなぞなぞなど言葉遊びをする際は、自分で言葉を探していけるよう引き出す投げかけをしています。自分で表現できない時は職員が助け舟を出したり、子ども同士の間に入り仲立ちし代弁するなどしています。2019年度から5歳児は、子どもが日替わりで日直・当番をすることになりました。朝の会で当日の日付、天気、出欠を発表し、公園遊びの時は最初に全員で輪になった中央に日直の子どもが出て、準備運動の掛け声をかけています。人前で話す、発表する機会を設けることで、少しづつ小学校への準備が始まっています。　

　公園など戸外活動に出かけると、職員は当日の天気や気候の移り変わり、季節ごとに植物が変化していることなどを子どもたちに投げかけています。子どもが植物に触れる感触や発見する気づきを得られるよう散歩の時間を大切にしています。上着のポケットや袖に手を入れない、横断歩道は手を上げて渡る等の約束も予め子どもに確認してから出かけます。年1回、板橋警察署の協力で交通指導の時間を設け、子どもが交通ルールを学んでいます。

　行事を企画する際、子どもたちに行事のテーマや準備について問いかけ、意見を聞く時間を設けています。例えば、おゆうぎ会では　3、4、5歳児はそれぞれどういうことをやりたいか、登場人物の台詞はどのようにするかなど希望や意見を聞いています。子どもから出た意見のうち取り入れられる部分を反映させています。子ども主体の行事となるよう年齢別に目標を掲げ、職員会議で情報共有し、確認ししています。

　運動会やキャンプ、お店屋さんごっこ、クリスマスなどの行事に取り組むまでに、どのような行事にしたいか、子どもが話し合い皆で考え決めていけるよう、職員は見守りや助言、環境づくりに努めています。行事を通して子どもは自分たちで考え、作り上げ、最後までやり遂げた達成感を味わっているということです。保護者が観に来てくれるおゆうぎ会では、子どもたちから「練習をやりたい」と希望することが多く、行事前は日中の活動のなかに練習を取り入れています。

　保護者には、年度初めに保護者アンケートを実施し、行事の協力に対する意向を確認しています。そのうえで準備に協力してもらっています。7月のキャンプでは、5人以上の保護者が火起こしやカレー作り、キャンプファイヤーの点火や「山の神の役」で登場するなど、協力してもらいました。1月の「そり遊び日帰り旅行」では、保護者が荷物運びや安全確保の役割を担ってくれました。園外活動を行う際は事前に保護者説明会を開催し約半数以上の保護者が出席しています。前回の様子を映像で見てもらうなど園外活動に対する理解と協力を依頼しています。

降園時間になると、２階の３、４、５歳の合同保育の部屋では遊びに夢中になっている子どもも途中で遊びをやめ、迎えにきた保護者と帰りはじめます。最後に職員による紙芝居に聞き入っているうちに標準保育時間が終わり、延長保育を利用する子どもは上着とリュックを持って１階に移動しています。保護者が迎えに来るまでは、子どもの人数に合わせて使用する部屋を変えます。5～6人の時は広めのランチルーム、2～3人の時は少し小さめの部屋で、それぞれ落ち着いて過ごせるよう配慮しています。

　延長保育を利用する子どもは18時40分から補食を食べます。訪問調査の日、１階のランチルームで職員と子ども数人がテーブルを囲み、ご飯を食べていました。その後、職員は子どもたちにどのような遊びをしたいか、それぞれの希望を聞き、玩具を用意していました。子どもに人気のキャラクターの玩具を広げ一人遊びに集中している子ども、レースやフリルの付いたプリンセスのドレスを着て鏡に向かってポーズをとる子どもなど少人数ゆえにお気に入りの玩具でゆったり遊び、安心して穏やかに過ごしていました。

　延長保育では「なかよし保育計画」を作成し、日々「なかよし日誌」にどのような遊びをして過ごしたか等を記録しています。2019年度の「なかよし保育計画」のねらいは、一人一人の様子に合わせた環境づくりをはじめ、遊びの工夫をすること、体調の変化に気をつけることとし、職員2人が一緒に過ごしながら、子どもの心身の様子に目を配っています。異年齢の子ども同士が一緒に過ごしていますが、日中の合同保育でも顔を合わせていることから一緒に楽しく遊ぶなど安心して過ごしています。

　１階のランチルームで、これまでのテーブルの配置を見直し、4月以降クラス毎に入れ替わり、5～6人が一テーブルを囲んで食べる方式に改めました。その結果、遠い席の子どもに大声で話しかける必要がなくなり、隣や向かいあう子どもが落ち着いて食べるなど食事の雰囲気が変わりました。調理員は子どもと一緒に食べ、給食日誌にその様子や喫食量、味付け、残食状況等を記録しています。スチームコンベクンション（オーブンの一種）で調理し、食材の形を崩さず柔らかくできます。栄養士は2か月毎の調理研修会で素材を生かした献立を研究しています。

　食物アレルギー対応の除去食は、献立表をランチルームに置き、配膳用トレーの色を変え、メモ書きを貼付しています。配膳前に調理員と担任が食事内容を確認し、職員が傍で食べています。年3回、栄養士が「栄養お話会」を開催しています。年齢毎に伝え方を工夫し、三色分類や食事のマナー等を話しています。話の内容を覚えている子どもから話題にしてくれることもあり、子どもが栄養や食事に関する理解を深めている様子がうかがえます。また、保育園で話を聴き、給食で食べたことから、家庭でも食べられるようになることもあるということです。

　料理保育は2歳児から始めています。年齢毎に役割や作業内容を変え、楽しんで取り組めるプログラムを工夫しています。訪問調査の日、3歳児がクラッカー作りに取り組み、エプロンと三角巾を身に着け、栄養士から今日のおやつになると聞き、生地を丸めたり伸ばしたり楽しそうに作っていました。毎年5歳児は味噌作り体験をし、卒園前に保護者と共に豚汁を作り味噌を味わっています。園庭の菜園でさつま芋を栽培したり、また、野菜に毎日水やりをしたりするうちに苦手な野菜を食べられるようになった子どももいるということです。　　

　年3～4回、看護師が「健康お話会」を開催しています。10～15分程度の時間、食中毒や手洗いなど季節ごとのテーマを設定し、子どもの毎日の健康につながる話をしています。3・4・5歳のクラス毎に図解図やイラスト等手作りの教材を使い、説明の仕方を工夫して子どもが興味を持てるよう工夫しています。戸外活動で近くの公園に出かけて遊ぶ時は、到着するとまず輪になって準備体操を行い、怪我の予防を意識します。5歳児は日直当番が輪の中央に出て体操の掛け声をかけています。

　医療的なケアが必要な場合、保護者が提出した「生活管理指導票」に記載された主治医の指示を確認し、看護師が対応しています。アレルギー疾患やその他、緊急性や配慮が必要な疾患などの場合に限り、内服薬の指示等に対応しています。救急搬送の際は、保護者に連絡し、看護師が搬送に付き添うこともあります。各クラスにアナフィラキシーショック等緊急時対応のフローチャートや嘔吐物の処置キットを配備しています。全職員が上級救命講習を受講済みで、毎月、職員会議において人形を使い心肺蘇生法と背部叩打法を練習しています。

　「保健だより」で、保護者に健康管理に役立つ情報を提供し、感染症発生時は「保健からのお知らせ」で発症者数や特徴を伝えています。地域の医療機関情報を提供するほか、受診の要否を見極める相談や定期受診後の確認等に応えています。乳幼児突然死症候群（ＳＩＤＳ）の予防のため、午睡中の室内の温湿度を測り、2、3歳児は10分毎、4歳児は15分毎に呼吸や顔色を観察し、咳・くしゃみ・嘔吐・熱・鼻詰まりの有無を確認します。職員全員が参加する年度末講習会では腰痛問題を取り上げ理学療法士から学ぶなど職員の健康管理にも努めています。

　保護者と毎年1回、個人面談を行い、日頃の子育て、家庭や仕事のことなどを聞いています。保護者の相談に応えるとともに、子どもの成長に伴う課題や就学に向けた準備などを共有しています。面談の日程は、保護者の就労状況を考慮して決めています。保護者同士の交流の機会となるよう、クラス別保護者会を開いています。父母と職員の会が主催してクラス交流会を毎年開催し、公園でフラフープや葉っぱ集め、スタンプなどのレクリエーションをしたり、屋上で水遊びをしたりしています。

　毎朝登園時に、家庭での様子や体調の変化等気がかりなことはないか、保護者に確認しています。家庭からの連絡は、主に個人連絡票に保護者が記載し、毎日、登園時に持参してもらいます。保護者の相談希望には、面談の上対応しています。3、4、5歳児は職員のコメントは記入していませんが、日々の生活のなかで子どもの様子に普段と異なる点や気がかりなことがあると、降園時に保護者に子どもの様子を伝えるよう努めています。保護者に向けて、「園だより」や「クラスだより」を発行し、全体で共有する情報を提供しています。

　子どもの誕生日会には、保護者を招待し、午前中は保育に参加してもらっています。訪問調査の日は、午前中の誕生日会が終わると、そのまま保護者も一緒に公園に出かけ、準備体操や鬼ごっこ、大縄跳びや自由遊びを楽しみ、子どもと一緒に昼食を食べてもらいました。日頃の保育活動の一端に参加してもらうことで、子ども同士の関わりも見られるなど保護者にとっても良い機会となっているということです。様々な行事に保護者の参加を勧めていて、職員との交流や保護者同士の交流を重ね、良好な関係や信頼関係が深まることを期待しています。

　子どもたちはキャンプの前に近隣の八百屋に食材の買い出しに行きます。敷地内に本部傘下の高齢者デイサービス事業所が運営されていて、子どもが訪問し、地域で暮らす高齢者と交流しています。夏には、町内会の人と4、5歳児が打ち水体験をしたり、芋煮会にはデイサービスの高齢者をはじめ、町内会、近隣の幾つかの障害者施設の利用者も参加しています。退職した職員がボランティア活動に来園したり、区内中学校の職場体験の受け入れたりして、子どもが職員以外の地域の様々な大人と関わる機会を作っています。

　園では、子育て支援・次世代育成支援事業として、「おもちゃ図書館（たいやきくん）」を開催し地域の子どもが園のおもちゃで遊ぶ企画を行ったり、「赤ちゃんの駅」として授乳やオムツ交換のために立ち寄る人を受け入れたりしています。また、地域の未就園児を対象とする体験保育交流や絵画教室など地域の人が利用できる保育園として長年実績を積み重ねています。　

　入園時に、氏名や写真を掲載する必要が生じた時の承諾書をもらっています。職員には、「保育の基本」マニュアルに、USBメモリやカメラのメモリーカードに保存したデータを持ち出ししないことや引き継ぎノートの扱い方等個人情報の取り扱いに関する注意事項を明示しています。子どもの羞恥心に配慮した方法として、毎月の身体測定は服を着用したまま行うことやオムツ替え時の配慮のほか、夏の園舎の屋上で水遊びをする時は遮光カーテンで覆ったり、着替えはスカートをはいて行うこと等配慮した保育を行っています。

　年齢別に子どもの育ってほしい姿を示し、毎日の保育の積み重ねがその姿につながると考え、0歳児期は、健康な心と身体の土台作りの時期、1・2歳児期は自分でしてみようとする気持ちが育ち、友達と関りを持ち始める時期、3～5歳児期は、集団活動を通して自分で考えて行動できる時期としています。職員は、子どもの姿を観察し振り返りながら日々保育を実践しています。外国籍の家庭の子どもも一緒に生活していて、食材に対する配慮に加え言葉による伝え方でカタコトの言葉でやり取りし、スマートフォンの翻訳機能も利用しています。

　虐待防止や育児困難家庭に対する適切な支援のため、区子ども家庭支援センターと情報共有し、必要な助言を受け、具体的な対応に努めています。職員は、専門研修を受講して理解を深め、具体的な対応方法等を学んでいます。日常の子どもと接する中で気になるときは声かけし、言葉遣いを注意し合うほか、子どもに「早く！」と急かしたりしないことや目線を合わせて話すこと、子どもや保護者に差別なく接すること等配慮した保育を日々実践しています。

　2019年度、開設して50年という節目を迎えます。歴史の積み重ねの中で培ってきた保育の取り組みと、実践する職員の育成に対する具体的な取り組みに知恵や工夫がこめられています。毎年3月末の年度末会議に全職員が参加し、理念や方針を確認しています。2019年度事業計画には、①保育内容の充実、②メリハリのある保育、③要支援保育の充実、④楽しい食事と会話が聞こえる環境づくり、⑤職員チームの助け合い「元気・笑顔・対話」を方針に掲げ、具体案を検討し、全職員が共有しました。

　目的に合わせた会議を組織化し、職員や非常勤職員も含めボトムアップやトップダウンによって必要な情報や具体的な対応方法を情報共有しています。ケース・クラス・グループ・調整（看護師、調理師参加）・主任・職員などの会議を定期的または必要に応じて聞き、課題の具体的な検討や見直しを行っています。毎月の全職員参加の職員会議では、各年齢の月案や研修報告、必要不可欠な知識や技術に関する研修を周知し、非常勤職員には別の日程を設け、報告、説明します。各会議で検討した内容を所定の様式に記録し、ファイルしています。

　保育内容や行事について、保護者の提案・要望、職員の意見や提案を聞き、検討し、改善に役立てています。例えば、行事のおゆうぎ会について、2018年に子どもの姿が見えづらいという意見があり、2019年は保護者の見学位置を演じている子どもの保護者を前に入れ替える方式に改め、その効果を共有できたということです。職員の提案は、その内容を周知し、まずやってみて、その結果を確認したうえで正式採用することにしています。「保育の基本」マニュアルの内容は、毎年1回見直し、職員がより良い保育を行えるよう改善しています。