東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

園では、「壁のない保育の実践」を目指しており、パンフレットで「民族、国籍、宗教、文化、障がい、発達、さまざまな違いを認め合い、助け合う笑顔のコミュニティ」の構築に向けて法人全体で取り組んでいることを明示している。また、多様で自由な「学び」と「出会い」の場の提供、園の特長として「少人数制」、「空間設定」、「時間計画」、「文化体験」の４つの内容を保育に含めている等、簡潔な表現でパンフレットへ盛り込み、入園希望者や関係者へ配布し、広く周知を図っている。

法人として、今年度の強化方針に、「壁のない保育」の組織的展開を掲げ、改めて定義を確認するとともに、運営管理や社会的義務、職員の資質向上等も明示している。この方針のもとで、園長は、各職員との対話やコミュニケーションを図る機会を多く持ちながら行動し、園が目指していることの共通理解が進むように努めている。また、外部研修へ職員を積極的に派遣して、学びの機会を推進している。なお、園の運営方針を話し合うために班長会議を設置しているが、定期的な実施が難しい状況がみられるため、着実に開催して、方向性の統一を深められたい。

園の運営に関する重要な案件の検討・決定は、月１回の職員会議で行われ、常勤職員が出席して協議している。職員会議を夜にかけて実施しているため、非常勤職員に対しては、会議録を作成後、回覧によって伝えている。また、保護者に対しては、年２回、運営委員会を開催し、理事長も出席する中で園の運営方針を直接伝え、理解を促すとともに、運営委員会の会議録の作成・配布で情報共有を行い、保護者と一緒に園を運営する方針で取り組みを進めている。

保護者の意向を把握する手段として、運営委員会に加えて、各種イベントを実施した後にアンケート調査を行い、結果の反映に努めている。また、新たに園庭を設置する際に保護者へアンケートをとり、業者との調整を図っている。さらに、入園希望者等が園を訪問した場合に「来訪者アンケート」で、園の第一印象や気に入った点、要望等を、それぞれ選択式と自由記述欄を設け、回答を得ている。運営上の課題の把握については、法人内で毎月開催している園長会で、他園の取り組み状況等の情報交換を行い、参考にしている。

中・長期計画は法人全体で作成されている一方、園の運営に焦点をあてた具体的な中・長期計画の立案には至っていない。今後は、長期的な展望に基づき、園の運営を進めることができるように、年度を越えて取り組む必要がある項目を設定したうえで、単年度の事業計画の作成が期待される。また、作成後は、非常勤職員も含め、全職員へ内容を周知して運営の方向性を共有し、運営への参画意識を高めていくことが望まれる。

単年度の事業計画書を、Ａ４用紙１枚でコンパクトにまとめており、その上半分で職員体制と「方針と目標」、「重点課題と対策」を明示し、その実現のために各種会議や行事、研修、地域子育て支援、施設機能強化、苦情・意見等への対応体制を明示している。また、事業計画の推進は、職員会議で進捗状況を把握・実施している。なお、重点課題の達成状況について、全職員で四半期、あるいは、半期に一度等、定期性を持って総括を行う等により、事業計画の内容についての、職員の認識が高まる取り組みを進めていくことが期待される。

職員が遵守すべき事項として、就業規則の中で１５項目の服務心得を明示し、入職時に説明・確認している。また、法人が作成する「保育ガイドブック」の中に、「ケンパの基本的な考え方」を定めており、子どもの最善の利益を確保するために行動することを前提に、子どもに対しては、「その人（個）らしさ」の育ちを支援すること、保護者・家族には、わくわくする「個」育てを応援すること、地域・社会には、ありのままの「個」が互いに笑顔になれるコミュニティ創りに挑戦することを掲げ、職員の理解を促している。

入園時に、保護者へ苦情解決制度について、スクールガイドに基づき説明している。また、玄関先に「ケンパ西馬込苦情解決の流れ」というポスターを掲示して、申込人と第三者委員、解決責任者、運営事務局等、それぞれの関連をフローチャート図で示すことで、保護者からの苦情を取り扱うプロセスについて、保護者の理解が深まる工夫をしている。その中で、第三者委員１名を紹介している他、掲示板に、区の福祉オンブズマン制度や、保育サービスアドバイザーの夜間相談窓口の開催日等を示し、保護者が多様な相談窓口を活用できることを伝えている。

地域の関係作りに向けて、前年度から少しずつ、日頃の保育活動で散歩に出かける際に、近隣の商業施設等をはじめ、地域資源と関わる機会を意図的に持つように心がけている。例えば、散歩の際に近所の八百屋で果物をもらう等、顔の見える関係が構築されてきている。また、近隣の学校のホールを借りて、けん玉のプロを招いたパフォーマンスを行う等のイベントを実施したり、園でも１１月に、ブリの解体ショーを企画して、事前に近隣にポスターを掲示する等で参加を得ており、地域住民とつながる場面を増やしている。

安全管理マニュアルが作成されており、事故防止、危機管理、防火・防災の３つの項目について、具体的な対策方法や組織体制等を明確にしている。また、感染症防止については、嘔吐物の処理方法を職員間で確認したり、区内の感染症の発生情報を保護者へ掲示して、注意喚起を図っている。なお、園として想定されるリスクを洗い出し、優先順位をつけて対策を講じるには至っていないため、今後、それぞれのリスクについて確認を行い、必要なリスクマネジメントの対策を明確にしていくことが期待される。

災害対策として、毎月、避難訓練を行い、結果の評価・反省を次回の訓練にいかすことで、子どもの安全確保に向けて、各職員が迅速に行動できるように備えている。なお、ＢＣＰ（事業継続計画）については、現在のところ未整備となっている。大規模災害の被害を受けた後に、法人内に対策本部を設置する等の体制作りや、園の復旧に向けて各職員がどのように行動するか等の方針を園として定め、具体的な実施計画を定められたい。

園に蓄積される情報のうち、登降園や保護者との日頃の情報共有を進めるために、ＩＣＴを活用している。連絡帳アプリ等を導入することで、データ化された情報を園内のシステム内で一括管理している。また、紙媒体の書類については、職員間で共有しやすく、それぞれの情報毎にファイリングを行い、蓄積している。なお、文書管理規程等が未作成のため、情報の廃棄等のルールが明確ではなく、ファイルの中には、年度を越えて綴じられている状況等が見受けられる。今後は保存年限と情報管理責任者等を規程に定め、一定のルールに基づき管理されたい。

職員の採用と人事に関する事項は、法人本部の責任下で実施されており、それぞれの園の職員体制を勘案しながら、必要に応じて法人内で人事異動を行う等、適材適所の人員配置となるように図っている。なお、キャリアパスのしくみについて、今回の職員自己評価結果からは、職員への周知が進んでいない状況がうかがえる。今後は、キャリアパスのしくみを図示する等の工夫により、わかりやすい形で職員へ明示・説明することで理解を深めるとともに、職員が長期的な展望を抱きながら、必要な知識や技術を段階的に身につけるしくみの構築が期待される。

法人全体の集合研修や、新卒フォローアップ研修等を計画的に実施しており、職員に求める専門性を習得する機会を用意している。また、外部研修の案内文書が区や関係団体から園に届いた際に、職員へ情報提供を行い、関心のある職員が研修を受講できるように勤務調整等を行っている。なお、新人職員の育成担当者を班長とし、指導に当たっている一方、指導方法を班長が学ぶ機会が用意されていない。今後は、育成マニュアルの作成等により、育成プロセスのうち、班長が担う役割を明確にしたうえで、段階的な育成に取り組まれたい。

園長と職員との面談を、年２回、定期的に実施しており、前期に立てた目標の達成状況を後期の面談で振り返っている。なお、職員一人ひとりの評価結果を、賞与や昇給、昇格、称賛等に結びつけるしくみが未整備となっている。評価結果を職員のモチベーション向上の手段の一つとして、よりいかすために、連動性を持たせていくことが期待される。また、個人の資質向上だけでなく、チームワーク促進に関する評価基準をわかりやすく職員へ提示する等により、職員相互に留意し、行動できる職場風土作りに努めていくことが望まれる。

入園希望の保護者が園の概要や取り組みを知る手段として、ホームページやＳＮＳ（ソーシャルネットワーキングサービス）が用意されている。ただし、いずれも情報を更新する頻度が少ない状況となっており、入園希望者が知りたい情報や、近況を知る手段として活用し難いものとなっている。今後は、情報を更新するプロセスを明確に決め、担当者を配置する等により定期的に情報を更新することで、入園希望者が知りたい情報を発信することが期待される。

園のパンフレットに、法人が目指す理念や園のカリキュラムの特長、年間行事計画等を掲載して、入園希望の保護者等へ配布し、保育の方針等への理解が深まることをねらいとしている。なお、それらの情報の多くは、法人内の他園と共通した内容となっており、園独自の情報や保育の状況を写真等で紹介するものとはなっていない。園としても、よりわかりやすい表現方法で園の概要を伝えていきたいと考えているため、パンフレットに園の保育活動等の様子を撮影した写真を多用する等の工夫により、現状を伝えていくことが望まれる。

見学の問い合わせがあった場合には、日程調整を行い、個別、あるいは、時期によっては５～６名合同で見学会を実施している。園長や主任が担当して、午前中の３０分程で園内を案内するとともに、園の理念や特長を伝えている。異年齢保育を展開していることや、外国人スタッフを配置して保育を行っている等の特長を紹介している。一方、保護者からは、子どもが熱を出した際の対応についてや、入園時に準備するもの等についての質問が多いため、スクールガイド等を示しながら現状を伝え、理解を促している。

入園決定後は、個別面談と合同のオリエンテーションを開催して、「スクールガイド（重要事項説明書）」を読み合わせ、保護者に園の重要事項・基本的ルールを説明する機会を設けている。また、個別面談では、園長・主任が、保護者の意見・要望・質問を把握し、保護者面談記録書に記録している。さらに、合同のオリエンテーションでは、園長・看護師が「スクールガイド」に沿って読み合わせと説明を行い、持ち物・保護者との連携方法等は、特に、わかりやすい丁寧な説明を心がけ、説明後は、確認書への保護者の署名・捺印で同意を得ている。

子どもが新しい環境に慣れるために、保護者の就労状況や家庭の状況に合わせて、「慣らし保育」を行っている。「慣らし保育」は、５日間ぐらいかけ、午前中の活動まで、昼食まで、午睡まで、午後のおやつまでと徐々に時間を増やし、子どもの不安軽減を図っている。また、登園時の受け入れが同じ職員になるように、職員配置を考慮して、抱っこ等のスキンシップと笑顔での対応を心がける等、安心できる環境作りに取り組んでいる。さらに、保護者には、降園時に、遊び・食事・午睡等、子どもの具体的な様子を伝えることに努めている。

転園にあたっては、職員のメッセージと写真付きのカードや「クラフトブック」をプレゼントし、「お別れ会」で見送る他、転園後に行事の招待状を送り、保護者からの電話相談に応じる等、支援の継続に配慮した対応に努めている。今年度より卒園児がいるため、保育所児童保育要録や就学支援シートの作成準備を進める等、小学校教育への円滑な移行に向けて、取り組み始めている。さらに、近隣の保育園と連携を図り、同じ小学校へ行くグループで一緒に遊ぶ時間を設ける等、小学校生活への憧れを大切に、期待が膨らむような支援を行っている。

子どもの情報は、電子媒体の指導計画・連絡帳アプリ・保育日誌・保育経過記録・発達記録等と、紙媒体の児童票一式・「周知表」・「共有ファイル」等の統一した様式に記録を行い、個別に管理されている。また、担任は、子どもの発達の変化・現れや出来事の他、生活や健康、人間関係、言語・運動・情緒等を踏まえ、保育経過記録や発達記録を、定期的に作成している。さらに、家庭と園での状況を相互に連絡し合うために、連絡帳アプリを活用しており、家庭と園のそれぞれが、食事・排泄・睡眠・体温・健康状態・子どもの様子等を記録し、共有している。

園の全体的な計画を踏まえて、保育所保育指針の改定ポイントを念頭に、養護と教育の５領域を考慮し、前月の子どもの姿や課題を確認して、省察を行い、年・月・週の指導計画を策定している。また、「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」については、園内研修で周知を図るとともに、常に意識できるように、指導計画に追記している。なお、指導計画の実現には、保護者の協力も必要であり、園だよりに保育目標を掲載しているが、園はさらに、保護者の理解を深めたいと考えているため、指導計画をわかりやすく伝える新たな取り組みに期待したい。

子どもや保護者の情報を共有する場としては、毎日の昼礼、週１回のランチミーティング、月１回の職員会議等が挙げられる。また、毎日の昼礼では、班長・主任・園長・看護師が参加して、子どもの体調や緊急・重要な案件、行事等について共有しており、クラスへ伝達している。さらに、子どもの体調・当日の周知事項が記載された「周知表」に加え、昨年新たに情報共有ﾉートとして各班の「共有ファイル」を作成し、朝晩・遅番への連絡、事務や保育の共有事項を盛り込んで、子どもに直接関わる職員間の周知を図っている。

子どもが周囲に関心を持ち、主体的に関わることを目指して、絵本や玩具は、子どもの手の届くところに配置する他、絵本・ままごと・ブロック等の「コーナー保育」を取り入れ、子どもが望む遊びで遊べ、集中できる環境を用意している。また、「見守る保育」を心がけ、職員が先に、指示や声かけをするのではなく、子どもが自ら生活や遊びを選択するよう働きかけている。さらに、「デイリープログラム」に沿って、保育活動を行い、毎日の活動の流れを理解することで、子どもが見通しを立てて、自発的に動くことを支援している。

保育目標に「私たち、一人ひとりが、それぞれの夢に向かって積極的で創造的な学び人へと成長し、互いの違いを認め合い助け合う人になること」を掲げている。また、民族・国籍・宗教・文化・障がい・発達、さまざまな違いを認め合い、助け合う笑顔のコミュニティを目指し、異年齢保育に力を注いでいる。異年齢保育は、主に、３～５歳児クラスと早朝・延長時間に実践して、年が上の子どもは、年が下の子どもを、自ら、思いやる気持ちが育ち、年が下の子どもは、年が上の子どもに憧れを持つ等、お互いの違いを認め、尊重し合っている姿が見られている。

子ども同士のトラブルに対しては、まず、ケガの処置を行い、乳児は、職員が気持ちを代弁し、幼児は、場所を替え、クールダウンしてから、子どもの気持ちを確認する等、仲立ちをすることで、解決に導いている。また、昼礼の時間に子どもの様子を共有して、職員が子どもを見守り、未然に防ぐことに努めている。なお、園でのトラブルは、園の責任と捉え、保護者には、丁寧な謝罪と詳細な状況報告を心がけているが、利用者調査結果には、保護者への伝え方に対する意見も挙がっており、保護者の心情に寄り添った伝え方の判断や方法について、検討されたい。

家庭での生活を把握し、子どもの生活リズムを整えるため、登園時は、保護者と対面のコミュニケーションを図り、子どもの家庭での様子や体調面等、保護者に口頭で確認するとともに、子どもの機嫌や顔色、見える範囲の健康状態の「視診」を行っている。また、子どもの家庭での様子や体調面等、保護者から口頭で得られた情報は「共有ファイル」に記載、職員間で共有して、一日の保育活動にいかしている。さらに、降園時は、「共有ファイル」を活用して、伝達事項を伝える他、体調面や子どもの成長等、具体的に話すように努めている。

生活に必要な基本的生活習慣の獲得に向けては、家庭と連携を取りながら、子どもの状況を伝え合い、一人ひとりの子どもの発達に合わせて、柔軟に行っている。例えば、排泄の自立は、尿間隔が一定になると、便座に座ってみたい子ども、おむつが濡れていない子どもから声かけを始め、子どものペースを大切に、無理なく進めている。また、食事は、職員が一緒に食べる中で、スプーンや箸の持ち方、マナー等、さまざまなことを伝えている。歯磨きや着替えを含めた基本的生活習慣の獲得は、保育活動の中で、子どもが意欲的に取り組めるよう支援している。

午睡を含めた休息は、体調が悪い、前夜睡眠がとれていない等、個別の事情を勘案して、時間帯や長さを調節し、子どものその日の状況や年齢・発達に応じて、柔軟に対応している。特に、乳児は月齢により、発達差も大きいため、保護者から家庭での様子を登園時、口頭や連絡帳アプリで確認して、生活リズムに合わせ、支援している。また、午睡時は、カーテンで明るさを調節する等、保育室内の環境を整え、やさしくトントンと背中をなで、心地良い眠りを促している。さらに、５歳児は、就学に向けて、1月より睡眠時間を保育時間に替えて過ごしている。

子ども主体の保育環境作りの向上を目指して、保育室内の環境整備や玩具・教材等の見直しを行い、子どもが遊びこめる環境作りに取り組んでいる。また、乳児はもとより、幼児も１クラス１２名程度の少人数制で、支援の充実を図り、保育室内は、自分で遊びを選ぶ「コーナー保育」を実践するとともに、専門業者の助言を得て、園庭に築山や砂場を作る等、子どもが自ら遊びを展開できる環境作りに努め、自主性・自発性を育んでいる。さらに、子どもが遊びの中で作った作品は、すぐに解体せず、時間を決めて保管する等、満足感を得られる支援を行っている。

子どもが興味・関心を持って、音楽・造形・運動等の表現活動を楽しむために、さまざまな活動を取り入れている。例えば、音楽では、カスタネット・すず・木琴・タンバリン等の楽器を演奏し、歌や手遊びを楽しみ、造形では、季節や子どもの発達に合わせた制作活動を行い、運動遊びでは、体操や運動表現遊びを取り入れる等、心身の発達を促している。さらに、英語のリズム感と表現を身に着ける「ミュージック＆ムーブメント」、英語の歌やゲームを取り入れた「Ｅnglish Time」等、外国の文化を体験できる活動も実践している。

季節の移り変わりを感じ、五感を最大限に刺激して、脳の発達を促せるように、天気が良い日には、散歩や近隣の公園に出かけ、園庭で遊ぶ等の戸外活動を行っている。また、戸外活動では、外気に触れ、思う存分身体を動かし、開放感を味わいながら過ごす他、季節の木々や花を愛で、昆虫や小動物に触れ合い、落ち葉やどんぐり等を拾って、制作活動に活用している。さらに、横断歩道の渡り方等の交通ルールを学び、近隣住民と挨拶を交わすとともに、公園の遊具は順番に遊ぶ等、自らきまりの大切さに気が付く等、社会性を育む場ともなっている。

子どもが、興味・関心を持つとともに、保護者が交流を図り、園と相互理解できるように、年間を通して、多彩な行事を実施している。また、行事は、年間を４期に分け、保育目標に、安心・楽しさ・発展・達成を掲げて、七夕・お正月・節分・ひな祭り等、日本の伝統行事の他、サマーフェスタ・運動会・ハロウィン・クリスマス・生活発表会等の季節の行事に加え、クラスごとの行事も行っている。さらに、子どもが自ら進んで取り組むことを目指して、子どもの好きな絵本や歌を中心に、導入に制作活動を取り入れて、興味・関心につなげている。

子どもがみんなで協力してやり遂げる喜びや楽しさを味わえる行事として、運動会や生活発表会がある。その中で、日々の保育活動から子どもが興味・関心のあることを職員が見極め、子ども達は、「やってみたいこと」を選んで、意欲的に取り組み、保護者の前で歌・演奏や劇ごっこ等を披露している。例えば、５歳児は、「お泊り保育」で行った制作活動の集大成として、サマーフェスタにも取り入れて、達成感を味わっている。さらに、子どもが心から行事を楽しみ、自信をつけ、満足感を得るために、子どもの気持ちを汲むことを大切に支援にあたっている。

子どもの意欲を引き出すには、保護者の理解や協力が必要であるため、園のパンフレットやスクールガイド（重要事項説明書）に行事計画を掲載している他、毎年４月に年間計画を示し、１ヵ月前に行事の詳細を伝え、園だよりや登降園時の口頭での伝達等で周知を図っている。また、行事の際の早目の登園、弁当作りの他、運動会で飾る制作も保護者が積極的に行う等、協力体制が構築されている。今回の利用者調査結果では、回答した保護者全員が、行事日程について、参加しやすい配慮がされていると答えており、高い満足度がうかがえる。

一日の中で多くの時間を園で過ごす子どもに対しては、安心してくつろげる家庭的な雰囲気となる環境作りを目指している。また、延長時間は、職員配置を固定にせず、交替で担当しており、子どもはそれぞれの職員との関わりを楽しみ、職員は、ゆったり座って、膝に子どもを抱っこする等、スキンシップを増やし、同じ目線で過ごすことで、安心感につなげている。さらに、カーペットを敷いて、疲れて眠くなった子どもは、横になる等、集中して遊ぶ、それまでの日中の時間と、リラックスして過ごす家庭的な時間との、適切な調和等に配慮している。

延長保育の時間は、積み木・ソフトブロック・小さい組み立てブロック・手押し車・乗用玩具・絵本等、クラスの保育活動では使用しない玩具や絵本等、保育形態が変化する中でも、子どもが楽しく遊べるものが準備されている。また、遊んでいる玩具はすぐに解体せず、遊びきるまでしばらく置いておき、子どもが満足感を得られるように配慮している。以前は、用意できる玩具が限られていたが、現在は、子どもが飽きが来ず楽しく遊べることを重視して、玩具や絵本をはじめ、環境設定や時間設定の検討を重ねながら、「特別な空間」の演出に取り組んでいる。

早朝・延長保育の時間は、１・２歳児の保育室に集まり、異年齢で過ごしている。その時間は、年が上の子どもが年が下の子どもを労わる等、年齢を超えて、仲良く過ごしている姿が見られている。また、少子化により、異年齢の子ども同士で遊ぶ機会が減っている中、発達段階の異なる子どもが交流し、きょうだいの関わりに近い環境で過ごすことで、集団社会でのルールや人間関係の築き方を学んでいる。なお、体格差や発達差のある子どもが一緒に過ごしているため、ケガやトラブルがないように、子ども同士の関わりを見守り、安全面の配慮にも努めている。

旬の食材を使い、季節感のあるメニューを心がけ、誕生日・ハロウィン・クリスマス等は行事食を取り入れ、職員と一緒に食事を摂る中で、子ども同士や職員との会話を楽しんでいる。また、調理員が各クラスを回り、子どもの喫食状況を確認することに加え、多職種が参加する給食会議を月１回開催して、切り方・盛り付け・味つけや献立作成にいかしている。さらに、子どもが食を通じて、異文化に触れることができるように、年数回、「ランチトリップ」を実施しており、昼食やおやつに、各国の食べ物を提供し、遊びや生活習慣を知る機会を設けている。

園の食事は、子どもの日々の健康状態に合わせ、個別性に応じて提供し、例えば、体調不良時は、量の調整等を行い、アレルギーがある場合は、原因のアレルゲンを取り除き、代替食品に変更するとともに、医師の診断書に基づき、食物対応マニュアルや、緊急時個別対応表対応カードをまとめたアレルギー緊急時対応ファイルを活用している。また、保護者が、前月に献立の確認を行い、提供時は、献立に示されたアレルゲンを声に出してチェックする他、専用容器を使い、担当職員が個別に対応する等の安全対策を講じている。

食育として、園庭で、なす・トマト・パプリカ等の野菜を作り、水やり・収穫を体験する栽培活動や、ミックスジュース作り・さつま芋の蒸しパン作り等の調理保育を展開している。また、とうもろこしの皮むき、かぼちゃのくりぬき、ブリの解体ショー等、年齢や発達に合わせて、食育計画に則り、１歳児より実施している。さらに、各クラスに「ふゆのたべもの」として、旬の、野菜や魚の写真を掲示する他、玄関には、昼食をサンプルケースで展示し、三色食品群や提供している食材のポスターを掲示する等、家庭での食育も意識した取り組みが行われている。

子どもが病気やけがを予防・防止するため、手洗いは、外出後・トイレ後・食事前等に、うがいは、外出後に促す等、日々の保育活動の中で伝えている。また、年間保健計画を作成し、看護師による、うがい・トイレ指導や地域の歯科医による歯科指導も実施している。さらに、園内では、走らない、階段の鍵は開けない等を、園外では、道中は白線の内側を歩く、公園の外に出ない等の約束や、「いかのおすし（いかない、のらない、おおきなこえをだす、すぐにげる、しらせる）」の防犯標語を理由とともに伝えて、安全への意識向上を図っている。

園では、毎月の身体測定に加え、０歳児は毎月、幼児は年２回それぞれ、嘱託医による健康診断を行い、健診結果は、「健康記録」に記録して、子どもの健康管理に努めている。また、急な体調変化があったときには、２名の看護師が窓口となり、嘱託医と連携を図りながら、子どもの健康面を支援している。さらに、医療的なケアが必要な子どもには、保護者を通じて医療機関と連携を取り、対応方法を個別に検討し、支援できる体制を準備する等、子ども一人ひとりに合った適切な対応を目指している。

子どもの健康管理は、保護者との連携が必要であり、保健だよりを定期的に発行し、例えば、１月は感染症の予防・子どもがかかりやすい疾患・起こりうるケガ等をテーマに、健康面の情報を提供して、予防を促している。また、感染症発症時は、警戒レベル（赤）・注意レベル（黄色）とともに、罹患状況を玄関の感染症伝言板に掲示して、注意喚起と拡大防止に努めている。さらに、乳幼児突然死症候群の予防策として、顔の周りに物を置かず、仰向け寝で寝かせ、０歳児は５分毎、1～２歳児は１０分毎、３歳児以上は、３０分毎の睡眠チェックを実施している。

保護者の就労状況や家庭の状況はさまざまであり、登降園時の対面のコミュニケーションや保護者面談に加え、園長が、保護者の意向や要望を、聞き取るように努めている。また、保護者の急な残業による延長保育も、可能な限り受け付け、補食を無料で準備して、保護者を支えている。さらに、園は、土曜日保育・月極延長保育・都度延長保育・一時保育・定期利用保育等、多様な形態の契約を整えるとともに、個々の家庭の事情に配慮して、状況に合わせた柔軟な対応を心がけ、保護者に寄り添った支援を目指している。

保護者との信頼関係の構築のため、登降園時のコミュニケーションや連絡帳アプリの対応は、丁寧に行うように心がけている。また、保護者に保育活動を可視化して示すことで、理解を深める取り組みとして、遊びや生活の様子を写真と文字で記録した「ドキュメンテーション」を作成し、育ちや学びの記録として、園内の廊下に掲示している。「ドキュメンテーション」により、子どもが園で何を学び、どのように育っているかを、保護者も理解できるため、子どもへの愛情や成長を園と共感し合い、子育ての意欲や自信につながる効果がもたらされている。

子どもの発達や育児について、保護者と園の共通認識を目指して、園だより・ほけんだより・給食だよりを定期的に発行するとともに、保育参観・保育参加・保護者面談・保護者会・運営委員会等の参加を促し、子どもの発達や育児についての理解を深めている。さらに、サマーフェスタ・運動会・クリスマス会等の行事に招き、子どもの成長を感じて、養育力が向上するよう働きかけている。なお、園は、子育ての充実に向けて、保護者同士の交流を増やしていくことを考えており、少人数の話しやすい環境作りを検討しているため、その実施に期待したい。

子どもが地域資源を活用する機会として、散歩や公園等の戸外活動、図書館の利用、地域の祭りや近隣保育園のバザーの参加、３・４歳児を対象とした近隣の八百屋や運輸会社への訪問等がある。また、昨年度より、幼児クラスは、近隣の老人施設への訪問を始め、折り紙を教わる等の触れ合いを得ている。高齢者との関わりは、子どもにとっては、他者を思いやる気持ちを養う機会となり、高齢者にとっても、子どもとの交流が楽しみとなっている。さらに、子どもが多様な体験や交流ができるように、新たに、地域の小学校との交流にも取り組むことを考えている。

子どもが職員以外と交流する機会として、年数回の「ランチトリップ」やブリの解体ショー等の、園に地域住民を招待する行事が挙げられる。園は、地域の子育て家庭への支援にも力を注ぎたいと考えており、地域開放イベントとして、園内開放や「ランチトリップ」の引き続きの開催と実施回数の増加を考えている。また、昨年１度実施した、園長・主任・看護師による子育て支援事業を復活させ、子育てが孤立化して、不安や悩みを抱えている、地域の子育て家庭が気軽に集い、交流できる場づくりを目指して、検討を重ねている。

子どもや保護者の個人情報の取り扱い方法を、スクールガイドの「個人情報について」の中で、情報の管理、情報の収集、情報の利用、情報の開示の４項目を挙げて説明文を掲載するとともに、個人情報の理由を終了する条件についても説明し、保護者から同意の署名・捺印を得ている。また、園の窓を、すりガラスにすることにより、外から子どもの様子等が見られないようにしたり、子どもが着替える際にはカーテンを閉めて行う等の配慮をしている他、着替えの時に、上と下を順番に行うことを呼びかける等、取り組んでいる。

子ども一人ひとりの意見を反映した保育を目指して、３歳から５歳の異年齢保育を展開する際に、朝、複数の活動計画の中から、子どもがやりたいことを選べるしくみを導入している。子どもが登園した際、ホワイトボードに今日の活動を担当する保育士が示されており、参加したい活動のところへ、自分の顔写真付きのマグネットを置く形で小グループを決めている。また、保育ガイドブックの中で、子どもを尊重した関わり方を示すとともに、職員間で共有を図り、保育場面で子ども一人ひとりと向き合う対応に努めている。

職員が子どもと接する際に、具体的にどのような点に配慮して行動するかの詳細まで、保育ガイドブックには掲載されておらず、園としても、今後、文書化して職員間で共有する必要性を認識している。今回の利用者調査結果からは、身だしなみや言葉遣い等について、職員が子どもの見本となり、行動する観点での意見が複数見受けれらるため、それらの意見を参考にしながら、遵守すべき事項を話し合って文書にとりまとめ、共通理解のもとで接遇面や身だしなみに関するルールを作成していくことが期待される。

業務の標準化を図るために、重要事項説明書に該当するスクールガイドを職員全体で読み合わせ、保護者へ伝達している内容の再確認をしている。また、安全管理や調理、感染症、保健、苦情対応、虐待対応、防犯等のマニュアルを職員間で共有しやすく、一括ファイリングしている。多くのマニュアルは、法人全体で統一されている他、プールの安全・衛生管理等については、区で作成された手順書等を活用している。さらに、新たに標準化が必要となったマニュアルをファイルへ追加することにより、標準化を進めている。

各種マニュアルの整備が進められている一方で、それぞれの内容が実際の保育実践等に反映されているかを点検する機会が用意されていない状況となっている。また、今回の職員自己評価結果からは、マニュアルの存在について「わからない」と回答する職員が見受けられる。今後は、改めてそれぞれの内容を職員全体で振り返る機会を用意するとともに、見直す時期を明確に定める等により、職員がマニュアルを意識し、行動する職場風土を構築していくことが期待される。

保育所保育指針に示された、「１０の姿」について職員の理解を深めるために、子どもたちが活動している様子を写真で撮影して、クラス、年齢別に「１０の姿」の視点で配慮が必要な点等を振り返りを行っている。また、月１回の職員会議の際に、園内研修を併せて実施しており、外部研修で学びを得た職員が報告することにより、共有を図っている。さらに、保護者の意見や要望を保育の質の向上につなげることを目指して、運営委員会や総会を定期的に開催して保護者から直接、意見を得て、具体的な改善につなげている。