東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和元年度(2019年度)
サービス名称 認可保育所
法人名称 宗教法人妙福寺
事業所名称 妙福寺保育園
評価機関名称 特定非営利活動法人 にこにこ福祉の会(令和5年3月31日までの評価機関)

コメント

前回実施した利用者調査と同様に、今回も園及び保護者の協力を得て回収率が100%の全数調査となった。共通評価項目に評価機関からの2問を加えた19項目で実施した。訪問調査前の合議で、ヒヤリング時の質問内容をまとめ、事前に送付した上で、2日間訪問を行なった。園長、主任、2名の主幹の他に、個別に栄養士、リーダー職員、一般職員へのヒヤリング、保育室での園児と同席した給食などで日常の取り組み状況の理解を図った。合議は、訪問調査前と当日の他、講評作成合議の3回行い、評価機関内のチェックを受けた後にフィードバックに臨んだ。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
Copyright©2003 Tokyo Metropolitan Foundation of Social Welfare and Public Health. All Rights Reserved.


Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)仏教精神を基盤とする園として、人として正しい心の持ち方を常に求め、感謝と思いやりを持って保育・育児支援にあたる。 2)園生活は家庭と並び子ども達の人間形成の基礎となるものであるから、のびのびとした明るい子を育てる為に、園自ら職員一人ひとり自ら、正直であることを第一とし、何事にも明るく素直な心で取り組む。 3)子どもの主体性を大切にし、子どもの気持ちに寄り添い、共感し、共に歩む。 4)五感を通して子どもが様々なものを吸収し、成長発達していけるよう園環境を整える。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

人の心を感じる能力に長け、やさしさと思いやりに溢れ、誠実で自信と信念をもって子どもや保護者を支え導く存在である。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

常に感性を磨くことを忘れず、幼子を導く一人の先輩として規範を示しつつ、楽しく明るく子ども達に接する大人であってほしい。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 全ての子どもは「仏様から預かったいのち」であると考え、子どもと家庭のことを第一に考えた日々の保育の実践に職員が一丸となっている

本園は、平安時代からの長い歴史を誇る寺院の境内にあり、園庭の日蓮聖人像が子どもたちの遊びを常に見守っている。保育園の歩みは、来年で65年目を迎える。園長は、仏教の教えとは常に己を振り返り懺悔すること、常に縁を尊び人を敬い慈しみ、今を大切にすることである、と職員に伝授している。職員同士が互いを尊敬し合い、良好な人間関係を築くことができている。また、保護者に対する尊敬と慈しみの心もそこから生まれ、「全ての子どもは仏様から預かったいのち」であると考え、子ども主体の保育を実践するための人的・物的環境を整えている。
2 自然に恵まれた5万㎡の寺院境内の安全な環境を活用し、乳幼児期の子どもたちの感性を磨く自然保育を専門性に基づき体系的に実践している

約5万㎡の膨大な面積をもつ寺院境内の全域を、保育環境として活用している。園庭には沢山の樹木が植えられており、季節の変化に応じた自然遊びを取り入れる環境がある。さらに敷地内の起伏のある林を第二園庭として、日常保育に密着した自然保育を導入している。専門家を招聘するとともに職員も研鑽を重ね、体系的な林保育として位置づけ、子どもたちは日常的に虫や草花、樹木や枝、木の実や葉に触れ、風の音を聞き、造形活動や絵画にもつなげている。敷地内の一角には乳児用に工夫した、第三園庭も設け、植物や土に親しみ体力づくりに活用している。
3 無農薬で旬の食材や調味料にこだわり、子どもたちに安全で「本当においしい食事」を提供すると共に食育活動に力を入れている

給食に用いる食材の全てを厳選し、調味料にもこだわり、子どもたちに「本当においしい食事」を提供している。米は、秋田県の契約農家から9分づき米を仕入れ、魚や肉、旬の野菜などの食材は契約業者から購入している。だし汁に化学調味料は一切使用せず、鰹節を契約専門店から得ている。砂糖や醤油も特定銘柄を指定し、味噌や沢庵は、子どもたち自ら園で手作りしたものである。園庭に実のなる木を増やしたいという園長の思いがあり、ヤマモモ、ブルーベリー、栗やみかんなどの木々がある。春には、敷地内で竹の子狩りを楽しむ子どもたちの姿もある。

さらなる改善が望まれる点
1 アナログを中心とした保育事務の取り扱いから徐々にデジタル化を進めることで、職員業務の軽減を図るための検討が期待される

現在、本園における保育事務は、主として紙と手書きをベースにして行なっている。園だよりや保護者宛文書、給食や保健のお便りなど、パソコンで作成するものもあるが、保育の計画や記録、クラスだよりなどの他アナログなものも多い。また、書類の複雑化、種類や量の増加、担当する係業務の煩雑化など、職員の負担増につながっている。園長は、「じっくり話し合う時間」や、「教材研究、保育の中身の研究にもっと使える時間」の確保が必要だと考えている。たとえば事務の効率化については、ICT化を視野に入れた検討もあって良いと思われる。
2 想定外の災害発生時に対応するための園のBCP(事業継続計画)に基づく訓練を実施するなど、職員全体に周知を図るための取組が望まれる

本園は、「『健全な心は健全な体に宿る』をモットーに体力づくりに励み、のびのびとした明るい子を育てる」ことを保育目標に掲げ、事故の未然防止を最優先課題にしている。乳児、幼児各リーダーに若手職員を加え「ヒヤリハット委員」を組織し、職員が気づくヒヤリへの素早い対応を行なっている。大震災など深刻な事態発生時の子どもや職員の安全確保と園の早期復旧のための具体的なBCP(事業継続計画)についても策定しているが、職員への周知は十分ではない。今後は、たとえばBCPに基づく訓練を実施するなど、全体理解を深める取組が望まれる。
3 園舎の老朽化を予測して新園舎建築を中・長期計画に定めており、計画の実現に向けた今後の具体的取り組みが期待される

寺院境内の自然の中に溶け込む風情のある園舎は、来年65年目を迎える。その間、保育室の耐震補強工事をはじめ3歳児や2歳児保育室の床や壁の改修など、園舎内の改装、改築を行なってきた。また、園庭についても、砂場の改修、グレーチングやU字溝の改修、園庭土の総入れ替えなど、安全対策工事を継続してきた。短期的には現在の保育室の改装を実施しながらも、長期的には老朽化を予測して園舎全体の改築が必要であると考え、中・長期計画の中には新園舎建築工事の実施を盛り込んでいる。計画実現に向けた、今後の具体的な取り組みが期待される。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 就労環境の改善を一層図ると共に、「働きやすい職場宣言」への取り組みを行なっている

職員にとっての働きやすい職場環境を整備し、一人ひとりの勤労意欲を一層高めていくために取り組んでいる。幼児及び乳児各クラスの指導・助言にあたる副主任としての位置づけをもたせる2名の主幹職を置き、組織力の強化を図った。タテの関係と同時に、ヨコの関係やチーム力向上のための人間関係づくり、手厚い福利厚生にも力を注いでいる。2017年度に都が始めた「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」は、働きやすい職場づくりに取り組み、「働きやすさの指標」を達成した事業所を対象とするものであり、現在園では認証申請を行なっている。
関連評価項目(職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる)
2 ★ 指人形を使い客観的に場面を再現するなど子ども同士のトラブル対応に取り組んでいる

子ども同士のトラブルは、発達の過程で生じる大切な経験の一つでもある。保育者は双方の子どもの話しをしっかりと聞き、それぞれの気持ちを受け止め共感することを心掛けている。子どもたちが落ち着いて、冷静な判断をしやすくするために、指人形を使い、お互いの主張を人形に話させてみる。指による人形劇をその場で見ることで、自分たちのいさかいを客観的に判断することができるため、自分の気持ちを振り返り、相手の思いを理解することに繋がっている。集団生活の中で生じるトラブルは、乳幼児期における大事な経験として、対応に取り組んでいる。
関連評価項目(子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている)
3 ★ 子どもの主体性を重んじる保育を通し成長する子の姿を保護者に伝えようと努めている

子どもたちが日々成長する姿を職員と共有し、保護者に伝えたいと考えている。3歳以上では連絡帳がなくなるため登降園時の会話を大切にし、担任は月に1度は全ての保護者と会話するようにしている。毎月発行するクラスだよりでは、個々の子どもの様子が伝わるよう工夫を凝らし、そのタイトルも1歳組は「てくてく」や「ぎゅっと」、4歳組は「えがおがいっぱい」だったりする。いずれも子どもの主体性を尊び、子ども自身のアイディアから生まれた遊びの姿を描いている。5歳組「あしあと」には、泥遊びや砂場遊びでの子どもの学びの様子を伝えている。
関連評価項目(保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:本調査を実施する時点における在籍児童134名の保護者等114名全員を対象に行なった。同一家庭できょうだいが在籍する場合は、年齢の低い方の児童を対象にして回答するよう依頼をした。

調査方法:アンケート方式  
無記名のアンケート方式で行なった。調査開始の1週間前に、調査の趣旨及び協力を依頼する文書を作成し、全家庭に配付した。10月15日の調査用紙配付から半月後を締切日に定め、回答は同封した所定の封筒を用い園への提出を依頼し、未開封のまま園からの送付を受けた。

利用者総数 134人
利用者家族総数(世帯) 114世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 114人
有効回答者数 114人
回答者割合(%) 100.0%

総括
2016年度調査と同様、今回も保護者全員から回答が得られ、回収率100%となった。また、園を総合的に見た感想では、「大変満足」が68.4%を占め、「満足」28.1%を加えると96.5%と大変高く、「どちらともいえない」は2.6%、「不満」は0.9%で、「大変不満」はなかった。評価項目の共通フレームごとの「はい」が占める割合は、サービスの提供(項目1~8)、安心・快適性(項目9~12)、不満・要望への対応(項目16~17)のいずれも80%以上で、利用者個人の尊重(項目13~15)では90%を超す高い評価が示された。項目全体の平均は86.8%で、特に、心身の発達に役立つ活動では98.3%が肯定の回答であった。総合的感想欄へは、利用者の69%からの記述があった。仏教精神に基づく保育方針、子どもの自主性、発想に寄り添う「待つ保育」、広い園庭や開放された境内の林での自然保育、愛情深い職員対応や美味しい給食など、多くの感謝の言葉が述べられていた。その他、悪天候で3年連続し平日に順延された運動会、夏場の蚊刺され、不審者侵入防止などへの対策や、子どもの日常の姿をもっと知りたい等々、多岐に亘る要望や提案も記されていた。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 112人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は98.3%で、共通評価項目全体で最高位の結果となった。その他「どちらともいえない」が1.8%あり、「いいえ」及び「非該当」は皆無であった。自由意見は8件で、自然に恵まれた環境にある広い園庭や第2園庭の林で体験する子ども主体の活動を評価する意見が4件あった。また、野菜の収穫や調理保育などの食育活動、食前に唱和する感謝の言葉、感覚遊びなど、子どもの心身の発達に役立つ保育を記すものが3件と、熱中症予防のため実施が減った夏季のプールや水遊びを、時間を短縮し実施してほしい、との意見が1件あった。
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 106人  どちらともいえない 8人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は93.0%であり、「どちらともいえない」が7.0%、「いいえ」及び「非該当」は皆無であった。自由意見は9件で、子どもたちの「やりたいこと」や好きな遊びを聞き、それを保育の中に取り入れてくれていると2件の記述があった。また、草木や好きな虫と触れあう自然遊びや広い園庭を走り回り、たくさんの遊具で、集中して楽しむ子どもの姿を記す意見が6件あった。「休日には、家庭でも取り入れたいと思うことが多い」との付記もあった。その他、楽しそうなことは多くあるが、制作活動が少なく感じるとの記述が1件あった。
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 109人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」の回答率は95.6%で、共通評価項目中3番目となる高位の結果となった。「どちらともいえない」が3.5%、「非該当」が0.9%で「いいえ」の回答はなかった。自由意見は16件で、3歳未満児の補食にもおにぎりを、洋食よりも和食中心の食事を、との希望を記す2件以外は、いずれも味覚や安全面に工夫が凝らされた給食に感謝する意見であった。何を食べたか、何が入っていたか、という子どもの話しを聞きながら、先生の指導が窺える、試食をしたが全ての面で絶品だったなどの他に、アレルギーや体調に応じた配慮への感謝が5件あった。
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 111人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は97.4%で、共通評価項目中2番目となる高位の結果となった。「どちらともいえない」が2.6%で、「いいえ」及び「非該当」は皆無であった。自由意見は16件で、その内13件はいずれも園が取り組む自然保育を評価する記述であった。木々に囲まれた園庭や敷地内の林で、子どもたちの日常的な自然との関わりを記すもので、四季折々の花や虫との触れ合い、土あそび、定期的に専門講師を招いて行なう林遊びなどであった。その他、時には園外への散歩で地域に触れ、交通ルールを学ぶような機会もほしいとの3件の意見があった。
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 90人  どちらともいえない 8人  いいえ 2人  無回答・非該当 14人 
「はい」の回答率は79.0%で、「どちらともいえない」は7.0%、「いいえ」が1.8%、「非該当」が12.3%であった。自由意見は10件で、その内8件は、園からの対応を受けた体験に基づく感想を記すものであった。残業や電車の遅延、子どもあるいは保護者の疾病や通院など、やむを得ない事情で時間変更の依頼には柔軟で快い対応が得られたと記されていた。思いやりの言葉も添えられて、安心したとの付記もあった。その他は、延長保育時間を超過した際に受入れてはもらえたが、渋々の感じがした、時間変更の経験がない、との2件であった。
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 87人  どちらともいえない 21人  いいえ 3人  無回答・非該当 3人 
「はい」の回答率は76.3%で、共通評価項目全体で2番目に低い結果となった。「どちらともいえない」は18.4%で、「いいえ」が2.6%、「非該当」1.8%、無回答が0.9%であった。自由意見は22件で、倒木防止の支柱や遊具の下の人工芝など、優先順位をつけた施設設備の修繕への取り組みを評価する意見が4件あった。また、登降園の時間帯における不審者侵入の不安を記す7件の意見があり、防犯カメラの設置を望む付記もあった。災害用伝言板の設置や職員も事前に知らない状況下での避難訓練など安全対策への提案なども記されていた。
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 81人  どちらともいえない 28人  いいえ 5人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は71.1%で、本園としては最も低位の結果となった。「どちらともいえない」は24.6%、「いいえ」は4.4%で、「非該当」はなかった。自由意見は15件で、その内の12件は、雨天のため3年間連続して順延となった運動会に関するものであった。予備日に親子競技があり良かったとの意見がある一方、平日の実施で参加しづらい、近隣の体育館を借用するなど天候に左右されない工夫がほしい、などの意見が大半を占めていた。その他、区内の小学校の登校日と重なる第2土曜日の行事開催の見直しを望む、という意見が5件あった。
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 96人  どちらともいえない 14人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は84.2%で、「どちらともいえない」は12.3%、「いいえ」が3.5%で、「非該当」はなかった。自由意見は17件で、その内10件は、園長、主任はもとよりパートも含めた全職員が親身になり相談に応じてくれる、送迎時には子どもの様子や成長の経過を話してもらえる、第二の家族のようだなどの意見が占めていた。その他7件は、近年職員の入替が目立つ、経験の浅い先生には深い話はしにくい、先生方もとても忙しそうに感じられ相談する機会がとれない、連絡帳がない3歳以上では担任との意思疎通が図りにくいなどであった。
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 93人  どちらともいえない 18人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は81.6%で、「どちらともいえない」が15.8%、「いいえ」が2.6%、「非該当」はなかった。自由意見は11件で、施設は古くてもとてもキレイに保たれている、できる限りの掃除はされていると感じている、いつも清潔で整頓され清々しいなどの記述が4件あった。その他には、食事をする場所と午睡場所が普段上履きを使用するのが気になる、夕方の園庭にボールなどが出ていることがある、園内に虫が出ることがある、園に預けてあるものの行方が分からなくなることがあるなどの意見が記されていた。
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 107人  どちらともいえない 7人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は93.9%と高く、「どちらともいえない」が6.1%で、「いいえ」及び「非該当」への回答は皆無であった。自由意見は7件で、若い方を含め先生方は気持ちよく、落ち着きがある方々ばかりである、服装がとてもかわいいと思う、との記述が2件あった。その他の5件は、少数ではあるがと前置きをして、登園時の挨拶が無愛想、子どもに対する態度が少々冷たい、濃いように感じる化粧、など一部職員への印象を述べたものであった。職員間のやりとりに上下関係の厳しさを感じ、親の方が気を遣うことがあるとの意見も1件記されていた。
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 98人  どちらともいえない 13人  いいえ 1人  無回答・非該当 2人 
「はい」の回答率は86.0%で、「どちらともいえない」は11.4%、「いいえ」が0.9%、「非該当」が1.8%であった。自由意見は9件で、体調の変化などへの迅速な対応を、具体的な事例を挙げて記すものが6件あった。先生方の面倒見が良く、大変助かっているなどと記されていた。一方、帰宅して検温すると発熱していたことがある、小さなケガをした際の報告がなかった、日中の子どもの体調についてお迎え時に受けた説明と連絡ノートの記述とが異なっていたことがあるなど3件の意見も記されていた。
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 94人  どちらともいえない 14人  いいえ 1人  無回答・非該当 5人 
「はい」の回答率は82.5%で、「どちらともいえない」が12.3%、「いいえ」は0.9%、「非該当」が4.4%であった。自由意見は10件で、園で起こった子ども間のトラブルについて相談したことがある、子どもがケガをさせてしまったときに報告してもらった、子ども同士のトラブルを親同士の話合いにつなげない方針と理解している、などの3件の記述があった。その他、子どもから話を聞くだけで、担任がどう対応してくれたかが分からないなどが5件、そうした経験はない、万一ケガをさせてしまった場合には報告がほしい、との意見もあった。
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 108人  どちらともいえない 5人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」の回答率は94.7%で、共通評価項目全体で4番目となる高い評価が示された。その他、「どちらともいえない」は4.4%、「いいえ」の回答はなく、「非該当」が0.9%あった。自由意見は7件で、先生方が子どもたち一人ひとりに向き合い見守る保育がなされている、先生方は勿論パートの方々も子どもたちに寄り添い世話をしてくださっていることが日常の会話から伝わってくる、パートさんの存在が心強い、園全体で子どものことを理解し親と一緒になって成長を喜んでくれているなどの6件の意見と、職員によると思う、との1件であった。
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 104人  どちらともいえない 7人  いいえ 0人  無回答・非該当 3人 
「はい」の回答率は91.2%で、高い評価結果が示された。また、「どちらともいえない」が6.1%、「いいえ」の回答はなく、「非該当」が2.6%であった。自由意見は6件で、担任の先生の日ごろの気配りを感じているなど、2件の意見のほか、クラス名簿の配付は保護者一人ひとりへの手渡しが望ましい、住所録の家庭での管理について保護者も気になっている、との記述がされていた。その他、名前は伏せられていたが、子どもを参考例にあげ他の保護者に話しをされたことがある、ノート類の取り違えがたまにあり気になる、などの意見もあった。
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 99人  どちらともいえない 11人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」の回答率は86.8%で、「どちらともいえない」が9.7%、「いいえ」が3.5%で、「非該当」はなかった。自由意見は14件で、その内の10件は、丁寧すぎるくらい、保護者会で毎回知らせてもらえる、クラスに置かれたノートや写真の掲示からよく分かるなどのほか、保育内容の説明は分かりやすいがその日の活動における我が子の取り組む様子が分かりにくいとの記述が6件であった。その他、連絡帳への詳細な記述、3歳以上児の出席カードへの担任所見の記述、園内で行なう習い事の状況報告などを望む意見が4件記されていた。
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 97人  どちらともいえない 9人  いいえ 2人  無回答・非該当 6人 
「はい」の回答率は85.1%で、「どちらともいえない」が7.9%、「いいえ」は1.8%、「非該当」が5.3%であった。自由意見は12件で、その内の8件は、「いつでも意見は大歓迎」と言われている、先生が気にかけ相談にのり、適切な対応をしてもらえている、苦情を申し出た際誠意のある対応を受けることができた、運動会延期に対する保護者の意見への対応に誠意を感じた、などであった。常にお世話になっている上に要望など言いづらい、降園時の担任以外の方からの報告は的確でない、職員による差を感じるなど、4件の意見も記されていた。
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 89人  どちらともいえない 9人  いいえ 6人  無回答・非該当 10人 
「はい」の回答率は78.1%で、共通評価項目全体で3番目に低位の結果となった。「どちらともいえない」は7.9%、「いいえ」が5.3%、「非該当」が8.8%であった。自由意見は6件で、年度当初配付された資料の中に説明があった、外部相談窓口の連絡先を記した説明文があったと思う、との2件のほか、話しを受けたかも知れないが覚えていない、その様な制度があることは前回のこの調査で知った、園からの案内を受けた記憶はない、経験がなく分からないなどの記述がされていた。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
会議の冒頭で保育目標を唱和するなど、常に理解を図りながらの業務遂行の姿がある

経営母体である西中山妙福寺は、平安時代に創建された千年以上の歴史を持つ日蓮宗寺院である。そして、本園は1955年に創設され、今年で64年目を迎えている。全ての子どもは「仏様からお預かりした大切な子」であるとの信念に基づく仏教保育を実践している。子どもたちが現在を最もよく生き、望ましい未来を創り出す力を培うことを願い、「感謝の気持ちを持てる子」、「助け合う子」、「明るい子」の育成を保育目標に掲げている。職員会議の開始時には、園長を始め職員全員で唱和して、常に理念に即した業務の遂行に向けて心を一つにしている。

園理念の達成に向けた全職員の一丸となった取り組みがある

本園の保育理念は、「仏教寺院の付属保育園として、仏教の根本精神である『慈悲の心』を幼い心に育ませることにある」。また、仏教保育の基本的な目標は、『六波羅蜜(ろくはらみつ)』にあるとして、入園のしおり「妙福寺保育園」の冒頭に明示している。園の「全体的な計画」に併せて仏教保育カリキュラムを策定し、園長が毎月の園だよりの巻頭言で解説をするほか、入園式や保護者会での講話を通じ保護者への理解と啓発も図っている。また、各クラス担任が発行するクラスだよりに毎月のねらいを明示し、園全体で、理念に基づく保育を展開している。

園長と主任が緊密な連携を図るとともに、2名の主幹を置き意思決定の周知を徹底させた

園長は、本施設の長であると同時に法人の理事長でもある。従って、重要案件についての決定には大きな役割と責任を担っている。したがって、園運営については、常に主任保育士と緊密な連携を図りながら、適切に推進するようにしている。また、2名の主幹保育士を組織に位置づけ、意思伝達の円滑化とともに職員一人ひとりの意向や課題についての現状把握に努めている。さらに今後は、少人数編成による職員との定期的な意見交換の機会を設けたい、と園長は考えている。保護者への意思決定の説明は、文書及びホームページで行なっている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
保育に係る広範囲の情報を園長・主任の下で検討を加え、園経営の推進に活用している

園長は、国及び都における福祉関係諸団体との関わりを通じ、保育全般に係る最新の情報を入手している。たとえば全国の私立保育園連盟や仏教保育協会、都の民間保育園協会などに所属するほか、区の私立保育園協会では会長の要職にある。収集した情報は主任との共有の下に検討を加え、経営面における、より発展的な推進に役立てている。また、内容によっては、リーダー会議あるいは職員会議で検討を加えながら、園運営に反映させるべき課題の抽出を行なっている。主任が中心の地域支援活動「ハニークラブ」の活動を通して入手する情報も多い。

将来構想に基づく中・長期計画を策定し、当該年度の事業計画として具体化している

園が目指す保育の理念、目標を達成するための計画は、経営を取り巻く環境の変化を見ながら、定期的に修正を図っている。2019年度に策定した中・長期計画は、人材育成などの人的面と園舎や園庭改修など施設・環境面について、3年ないし5年先の実現を目指すものである。いずれも、子どもたちの園生活の質を一層高めるための計画である。当該年度の事業計画はこれらを踏まえて策定しており、健康管理や施設管理など7項目についての実施時期や予算を含めた計画にしている。たとえば、給食で用いる全ての食器の新規交換は、すでに実現を図っている。

年齢ごとの保育の計画を「仏教保育カリキュラム」に定め園生活全体の中で実践している

仏教寺院に付属する本園の保育目標の中心は、幼児期における仏教精神に基づく豊かな情操の育成にある。そのために、「全体的な計画」と併せて「仏教保育カリキュラム」を策定している。布施や精進、智慧など『六波羅蜜』を含む徳目を月ごとに定め、それに基づく1歳児から5歳児までの保育のねらいを明示している。各種の仏教行事や本堂前で毎週行なう参拝、食前の唱和をはじめ、日々の保育の中で実践している。こうした計画に基づく日常保育の実践状況や子どもたちの成長する姿は、園だよりやクラスだよりの中にみることができる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
倫理規程の読み合わせや職員マニュアルに基づき保育者としての倫理の徹底を図っている

2013年に策定した倫理規程を、全職員に配付している。子どもの最善の利益の尊重や発達保障、プライバシー保護など7項目を規定しており、「専門職としての責務」については、特に詳細に亘っている。職員会議で、全員が読み合わせを行なっている。参加しないパート職員には、年度当初及び秋期に開催する「パート会議」の場で行ない、2チームの小グループに分かれるなど周知徹底を図るための工夫をしている。日常の心得や、業務に係る基本事項は職員マニュアルで徹底を図っている。職員の接遇への利用者調査の評価は、94%の高い結果を得ている。

日常のあらゆる場面をとおし保護者の気持ちを理解し、代弁者としての対応に努めている

園内研修の中で度々取り入れているロールプレイングの手法により、職員全員で保護者対応についての研鑽を行なった。「相手の気持ちを理解し、どの様な声かけが適切なのか」を、チームに分かれてテーマごとに話し合い、学びを共有した後にクレーム対応についてロールプレイを行なった。園では、登降園時の保護者とのコミュニケーションを特に大切に考え担任は、月に1度は会話の機会を持つようにしている。投函しやすく工夫した投書箱の設置や苦情解決体制も整えている。利用者調査における、不満要望への園の対応に、85%の高い評価が示されている。

園長及び主任を中心とする積極的な活動を通じ、地域における子育て支援に貢献している

園長は、区の私立保育園関係団体の会長職にあり、加盟する各園の園長との協働を図り、地域関係機関のネットワークの構築に向けて取り組んでいる。また、子ども子育て会議の委員を務め、地域における保育の質向上はもとより子ども子育て計画の策定に尽力している。また、主任を中心とした園独自の取り組みである「ハニークラブ」を主催し、近隣の児童館での出前保育、育児相談を行なっている。区が昨年から開始した事業「こどもカフェ」の講師を主任が担当する他、主幹と共に幼保小連絡会議の委員として、地域の子育て支援に貢献を果たしている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
「ヒヤリハット」の集約結果をKJ法で分析し、リスクの高さに応じた対策を講じている

昨年度の園内研修で、ヒヤリハット報告書の見直しを行なった。試行錯誤を重ねながら、「自分だけでは気づかない危険な箇所や状況を知り、事故を未然に防ぐための環境設定」に役立つ書式に改めた。今年度は、職員会議の議題の一つに「ヒヤリハットの報告」を位置づけ、室内や戸外の他、あらゆる場面での気づきを全員で共有するしくみにした。また、乳児、幼児の各リーダーに若手職員を加えた「ヒヤリハット委員」がKJ法による分析を行ない、その結果明確化された優先順位の高いリスクに向けた対策を、パート職員にも周知を図り、すでに講じている。

「園のBCP」に基づく訓練を実施するなど、職員の理解を深める取り組みが期待される

「『健全な心は健全な体に宿る』をモットーに体力づくりに励み、のびのびとした明るい子を育てる」ことを保育目標に掲げ、子どもを事故から守ることを最優先課題にしている。安全対策を図り、事故防止に努めるための具体的な留意点を年間保健計画に定め取り組んでいる。また、深刻な事態発生時の対応を、園のBCP(事業継続計画)にしている。大震災発生など3ケースを想定し、子どもと職員の安全を第一に、役割に応じた対応のしくみを定めている。しかし、職員の周知は十分でなく、たとえばBCP訓練を実施するなど理解を深めることも考えられる。

今後期待されるICT導入を踏まえ、逐次情報保護・管理の新たな検討が望まれる

保育園の特性上、子どもや保護者等に関する多くの情報が必要である。入手した情報の守秘については無論、機密性の高い文書類は、事務所内の書庫で施錠保管するなど、管理・保護の徹底を図っている。漏洩防止の具体的取り扱いとパソコン管理の規定も策定している。また、利用者の個人情報の取り扱い基本方針を制定し、年度当初の保護者会で説明し、入園のしおりにも明示している。業務の省力、効率化をはじめ保育への活用を図るためのICT導入を期待する職員の意向もあり、これらを踏まえ、逐次情報の適切管理に向けた新たな検討が必要となってくる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
基本理念の実現のために協働し職務を遂行する人材の確保に努め、成果を得ている

保育目標の三つの柱は、「報恩感謝」、「同事協力」、「智慧希望」という職員自身の目標にも通じるものである。したがって職員の採用は、これを基準にして行なっている。事前の園見学や採用面接の際には、この点についての理解を図ると共に、本人の資質を見極めるようにしている。園長や主任を筆頭に、年齢や経験に幅をもたせた職員が協力し、人材確保に努めている。各種就職フェアには職員のアイディアを反映させ、若手職員も参画し、園が誇る保育の様子を知ってもらうための工夫をしている。こうした取り組みが、新規職員の採用につながっている。

職責に応じた業務内容と必要な能力を明示し、職員がキャリアデザインしやすくしている

保育職及び給食職員の職務内容と、役職に応じて求められる能力を記すキャリアパスを策定している。一般保育職、管理職、経営職の順位に応じた職責と昇進・昇格の基準を示し、給食職員では、初任者から主任までとしている。主幹制度を組織に位置づけ活性化が図られた他、職員一人ひとりがキャリアデザインしやすくなった。賃金体系の明示はしていない。園長は、職員が記載した「個人面談表」を基に面談を行ない、各人が抱える課題や将来に向けた希望などを把握し、助言や指導、支援をしている。この面談記録を基にして、個別の育成計画にしている。

職員間の円滑な人間関係の構築とともに就労環境の整備、福利厚生の充実を図っている

保育者は、「人の心を感じる能力」を備え、「やさしさと思いやり」に溢れる人であってほしい、と園長は考えている。そのために、主任を中心とした円滑な人間関係づくりとともに、「役割ごとの研修計画表」の中で個人別育成計画を定め、研鑽を進めている。また、有休、代休、時休の取得、クラス担任や行事担当責任者を複数制にした負担軽減化など、就労環境の整備と併せ、福利厚生面での充実化を図っている。全員や小グループでの旅行や食事会、産業医を配置したストレスチェック、整体師を招聘し希望者への施術など、職員の希望を反映し実施している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 子どもがのびのびと創意工夫をしながら遊びを深めていくためには、園庭の環境のさらなる整備が必要であると考えていた。その一つとして、砂場の砂が課題となった。本園が長年用いてきた川砂は入手が容易ではあるが、砂粒の大きさが不均一な点や形ある物にするには粘性に乏しい点など、子どもの遊びの創造性に限界があると感じていた。園長はすでに7年前から山砂が適度な粘性による造形遊びに適していることに着眼し、約2年間にわたり山砂導入園を見学し、子どもの遊びの状況視察を行なった。適度な粘性に加え、きめ細やかな手触りの良さは、子どもの五感の刺激に有効であるとの判断に基づき、業者を選定し、産地や粒の大きさなど数種類のサンプルを取り寄せ、職員の意見を総合し導入に踏み切ることにした。このほかにも木製遊具倉庫を設置し、子どもたちが思い思いに中のものを取り出し、砂場やその近くでの遊びに展開性をもたせられるようにした。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
長年使用してきた砂場の川砂には、子どもの遊びの発展性に限界があると感じ、きめ細やかな手触りの良さがあり、さらに適度な粘性を持つ山砂に入れ替えを行なった。導入にあたっては、園長自ら数種類のサンプルを取り寄せ、職員の意見を総合しながら、最終決定を行なった。山砂の適度な粘性は、型抜きや造形遊びに適しており、砂場での子どもたちの遊びに変化が見られ、山をつくったりトンネルを掘ったり、水を利用して川や池をつくるなど、形を造って遊び、楽しむ子どもたちの姿が多く見られるようになった。一方、従来の川砂には粘性がなく、固めづらさがあるが、砂のもつ特有なサラサラ感があり、子どもたちはこの感触に触れ、喜びを感じることができるという良さもあることがわかった。山砂と川砂がもつ特性のそれぞれが子どもたちの遊びを豊かにし、五感を磨くものであるならば、今後も引き続き園長・職員間での議論を深め、2種類の砂場を設置することも視野入れた目標を設定したいと考えている。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 園が目指す子ども主体の保育を実践していくためには、職員一人ひとりに備わる資質はもとより人員の確保が必須である。常に定数を超えるゆとりある職員数により園運営を行なっている本園においても、特に前年度は、外国あるいは都外への転居などによる退職者が見込まれることになり、人材確保が重要な課題の一つとなった。園長及び主任が率先し求人活動を行ない、従前から実施している各学校への訪問には、出身職員が同行するようにした。また、養成校やハローワークなどに送付する求人票の記載方法を見直した他、就職説明会の設定に加え、保育所実習終了後の学生への就労条件などについての丁寧な説明なども行なった。その他、就職フェアーへの参加にあたっては、若手職員の派遣をはじめ、職員から出されたアイディアを総合し、園の特徴を分かりやすく伝えるための内容面への工夫も行なった。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
ゆとりある人的環境を備え、良質の保育を実践する本園では、常勤を上回る数の非常勤職員を採用し事業の運用を図っている。非常勤にはベテラン職員が多いが「パート会議」を開催し、業務の標準化に努めている。前年度は、外国あるいは都外や通勤困難な地域への転住などによる常勤の退職者があり、新規職員の採用が重要課題となった。園長が中心となり若手職員に至る全職員で、園が求める人材の確保に向けた取り組みを行なってきた。現職員の紹介により就職が決定した場合の両人への特典や、就職見学者への交通費支給、「就職準備応援金」の支給など、新たな制度も設けることにした。全職員が協働して取り組む成果は、就職を希望する見学者を早い段階で得ることなどにあらわれ、目標とする職員数の新規採用につなげることができた。保育需要の高まりとともに人材不足の深刻度が一層増大することは明らかであり、前年度の結果を生かしながらも、さらに有効な手立てを検討し取り組んでいる。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
ホームページを日々更新し、園児の活動を分かり易く保育への思いを伝えている

園のホームページでは、保育園を始めて利用する保護者にも分かり易く、入園までの手続きや保育内容などの情報を、多くの写真を添え伝えている。特に、「保育園日記」のページからは、日常の園生活を通じて子どもがもつ可能性や、優しい心が育まれる過程、のびのびとした明るい表情が視覚的に伝わってくる。頻繁に更新されているばかりでなく、15年前の2004年度までさかのぼって閲覧できる。「給食何かな?」では食へのこだわりを紹介し、「ハニークラブ」(子育て支援の集い)や園行事への参加呼びかけや地域に向けた取り組みを紹介している。

手作りのフライヤーは、園目標や行事など園児の様子を写真で掲載し分かり易い

見学者や園の保育内容を知りたい方々向けに、A4版三つ折りのフライヤーを作成している。保育目標や開園時間、園児数、職員構成、年間行事や特別保育(音楽指導・体育指導など)を掲載し、コンパクトにまとめている。園生活の様々な場面ごとに写真を入れ、見る人に分かり易いよう工夫し職員が作成している。そのほか、経験豊富な職員が児童館に出向いて行なう家庭支援活動や園内で開催する「ハニークラブ」のチラシを配布し、地域の子育て家庭に向けて園への訪問を促している。園開催の行事などの情報は、路面に向けて大きく掲示もしている。

見学は初めて保育園を利用する親子が園を知る大切な機会として柔軟に対応している

本園は、1歳児からの入園を受け入れているため、比較的子育て経験の浅い0歳児の保護者からの見学希望が多い。園では、在園児の日ごろの活動を十分見てもらうため、昼寝の時間を除く午前あるいは午後の保育時間帯での来園を勧めている。見学に際しては主任保育士や経験豊富な保育士が対応を行なっている。園の基本となる仏教精神に基づく理念・方針・保育目標を説明して、保護者の園への理解を図っている。また、保護者からの相談にも積極的に耳を傾け、育児不安の軽減を促す丁寧な対応を心がけ、育児パートナーとしての役割も果たしている。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
園の情報を分かり易くまとめた「しおり」を資料にして入園説明を行なっている

入園のしおりの冒頭に、設立の趣旨をはじめ保育目標や仏教保育のねらいを掲げ、目次をつけて検索しやすいものにしている。園が目指す保育の理念に併せ、園の歴史、乳児・幼児別の1日の生活の流れや保育内容、感染症や与薬などの対応も記し、準備する持ち物は組別に用品一覧で記し、利用する保護者の目線に立った構成となっている。「保護者参加行事等早見表」には、年間行事の全日程と保護者が参加する行事には印を付け、分かり易い工夫をしている。また、欄外に「保育参観は随時受け付けています」と明記し、園の姿勢を伝えている。

初めて園を利用する子どもの不安と親の不安に応え丁寧に説明会を実施している

入園前面談で、「慣れ保育」(慣れるまでの保育)の必要性を乳幼児の別なく伝え、1週間を目処に実施することを伝えている。保護者の都合や子どもに寄り添い柔軟に検討するが、平素の子どもの姿を把握し、充実した園生活を過ごすため時間をかける大切さを伝えている。入園当初のミルクの使用や愛着のある持ち物の持ち込みなどは、子どもの様子により段階的に手放せるよう時間をかけ接している。保護者や家族用に作成したDVDは、朝夕の準備から駐輪・駐車など施設利用の流れを映像とナレーションで説明し、入園後の不安解消に役立てている。

卒園生対象の子ども会「てらこやin妙福寺」には、当時を懐かしむ多くの参加者がある

年長児には、近隣小学校訪問や体験授業を受けることで就学への期待感を促している。職員は、卒園児の在籍する小学校の授業を参観するなど、卒園児の様子を見守っている。長年の交流実績から小学校の教諭が、夏休み2日間実習に来園し、保育園への理解を深めている。園長は、地域の子どもの拠り所となるよう卒園児の支援の継続を考えている。卒・転園児には、主な園行事の招待状を郵送し参加を促している。小学生対象の子ども会「てらこやin妙福寺」は、本年40名の参加者を集めている。成人式後に立ち寄るなど成長を喜び合う場となっている。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
保護者に配付する「入園のしおり」に全体的な計画等を掲載し、保育内容を伝えている

入園の際に保護者に配付する「入園のしおり」には、全体的な計画や仏教カリキュラムとともに、保育目標や年齢別の保育内容を掲載している。保護者はこれを見ることで、園が行なう保育内容を知ることができている。また、指導計画については、保護者会等でも説明をしている。指導計画は、1歳児から合掌礼拝の生活習慣が身に付くように策定されている。この全体的な計画と仏教カリキュラムに基づいて、長期及び短期の各指導計画を立案している。基本となる2つの計画の様式が異なるため、さらにわかり易い総合的な計画として整備する工夫が期待される。

指導計画に基づく子どもの日々の成長を日誌に書き留め、定期的に児童票に記載している

子どもの詳細な情報を保育日誌に書き留め、児童票へは乳児は2ヶ月ごとなど定期的に記録している。指導計画を立案する学年会議には主任保育士も加わり、同一学年の担任(複数担任制)全員が参加し、子どもの発達の状況や指導上の課題を話し合っている。「学年会ノート」に記録を残し、決められた時期に児童票にも記録している。保育を担当する職員すべてが指導計画や子どもの情報を共有し、活用できるようにしており、保育を補助する非常勤職員に対しては、必要に応じて各学年のリーダーが伝達するしくみにしている。

申し送りや引き継ぎ等は伝達ノートや職員会議で報告し職員間で情報を共有している

登降園時に保護者から受ける伝達や申し出は、クラス毎に作成した「伝達ノート(申し送り簿)」に内容を記録している。子どもや保護者に大きな変化がある場合には朝礼で報告するほか、職員会議でも詳しく説明を行なっている。担当クラスに止まらず、子ども一人ひとりの状況を職員全員が的確に把握し、共有を図ることを大切にしている。保育士等が日々記載する多種類の書類の内容には、重複した内容の記載を要するものがあり、分かりやすく簡素化を図るための見直しが必要であると園では考えている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
家庭での子どもの姿を把握するために、積極的に保護者と直接話す機会を設けている

一人ひとりの子どもの発達の過程を把握するために、園の様子や、家庭での子どもの様子を保護者と直接話をする機会を設けている。登降園時にコミュニケーションをとりづらい保護者とも、月に1度は話を交わす機会を設けることを心掛けている。日々の会話を通じ、子どもが興味、関心を寄せていることなどや、家庭での子どもの現在の姿を把握することができ、月間および週の指導計画などの立案の際に、反映することができている。保護者と話ができた日は記録に残すとともに、均等に会話の機会をもつように工夫をしている。

子どもが主体的に遊び込む「林の活動」を、日常保育の中に計画的に取り入れている

園に隣接する寺院の裏には、針葉樹や広葉樹などの樹木がそびえる小高い丘がある。園はこの林を第二園庭とし、子どもたち専用の遊び場にしている。様々な環境設定をしている。木の切株を円形に配置した子どもたちの語り合いの場や、林の中の豊富な素材で「ままごと遊び」をする場、木工道具を使い制作活動ができる場などを設けている。また、子どもたちが大好きな虫探しや木の実や葉っぱ集めもできる場所である。林を活用した本園の自然保育は、保育士等全員が専門家の指導を受け、継続的な研鑽を重ねており、子どもの主体性の育みにつながっている。

小学校と連携を図り、就学前の不安感が軽減できるための配慮をしている

小学校入学が近くなると年長児は就学に対して不安感を抱くことがある。園では日頃から小学校と連携を図り、子どもたちが小学校を訪問し、年齢の近い1年生と交流する機会を持っている。また、学校からは教員が園を訪問し、保育士等と情報交換をしている。学校の夏休み期間の2日間、園で保育実習もしている。年度末には、原則として主任及び担任が保育所児童要録などの書類を持参し、特に、支援の必要な子どもの情報は、口頭で、着実に申し送りをしている。就学後は保育士が学校を訪問したり、電話による情報交換を密にしたりしている。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
基本的な生活習慣の確立を保護者と連携を取りながらスムーズに進めている

基本的な生活習慣を確立するためには保育計画に基づき個別の発達状況に応じた支援が必要である。時期や方法について、家庭と話し合いを重ねながら進めている。トイレトレーニングのタイミングについての園の方法を、「紙おむつが濡れていない時」、「本人がトイレに行きたいといった時」に子どもをトイレに誘っている、とクラスだよりで保護者に伝えている。排泄の間隔は個人差があり、一人ひとりのペースを把握して、園と家庭とで、同じような方法で無理せず進めていくことを保護者に伝え、子どもにストレスを感じさせないように配慮をしている。

休息の長さなどは子どもの状況や保護者の要望に応じて完全個別対応を徹底している

子どもが健やかにのびのびと育つためには、生活リズムを整えることが大事であり、特に睡眠のリズムを整えることが子どもの健康生活にとって最も必要であると考えている。登園時には、保護者から家庭での睡眠時間を聞きとり、一人ひとりに応じた午睡時間を決める「完全個別対応」を実施している。前日睡眠時間が少なかった子どもには、十分寝ることができる環境の中で、安心して睡眠が取れるように配慮している。早く目覚めた子どもを無理に寝かしつけることはせず、静かに過ごせる場を提供するようにしている。

降園時、集団生活の中での個々の子どもの姿を保護者に知らせる工夫が望まれる

いずれのクラスの子どもも18時までは保育室を移動することなく、自分たちの部屋で過ごしている。そのため、迎えの保護者と担任が直接話す機会ができている。それ以降の保育時間が長い子どもの保護者とは、担任が直接会える機会が少なくなるため、少なくとも月に1度はクラス全員の保護者と面談の機会を設けるように努めている。子どもの園生活の様子や家庭での子どもの姿を共有することが重要だ考えている。利用者調査の意見には少数ではあるが、忙しそうで声をかけにくい、担任と話ができる時間がないなどの記述があり、さらなる工夫が望まれる。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している
講評
自由遊びや林の保育、フリー保育などを通して、子どもの遊びが豊かに展開できている

朝、夕には自由遊びの時間を十分に取り、子どもたちは自主的に遊びを決め、広い園庭で思い切り遊ぶことができている。園庭には固定遊具も設置しているが、敷地内の大木を切り倒した後の廃材を利用し、アスレチック風に組み立て、子どもが上り下りできる遊具を設置している。手作りのベンチやテーブルなども置いている。砂場の周りには、大きな広縁風の台を設置し、これも手作りのものである。砂場で遊ぶために子どもが必要な道具を自分で出し入れできる物置も近い場所に新たに設置した。子どもの遊びを豊かに展開させるための環境を整えている。

隣接する寺院境内の自然の中で子どもたちは、季節の移り変わりを肌で感じとっている

寺院境内には、子どもたちを見守るかのように数多くの大木がある。秋には銀杏やモミジが色づき、風に乗って、落ち葉が園庭にも降り注いでいる。美しく色づいた落ち葉を素材に絵画制作をしたり、小さい子たちはままごと遊びをしたりしている。訪問時、色鮮やかなモミジの葉を胸にさしている職員に出会い、自然を楽しむ感性を感じとることができた。乳児が園外に散歩に出かけなくとも、境内の林の一部を乳児専用の遊び場に開放しており、ゆるやかな斜面の上り下りをしながら体幹を鍛えたり、草むらの虫等を直接見たり触れたりすることができている。

日々の生活の中で、自由な遊びの中にもルールがあることを繰り返し伝えている

日々の保育の中で繰り返し、自由な中にもルールがあることを伝えている。ルールを守らなければ楽しい遊びが面白くなくなり、危険なことにもなることを、子ども自身で気付ける力を養いたいと考えている。また、衣服の着脱に関しては、上下を一度に脱がず、上を着てから下のズボンを着脱することなどを基本的な習慣としてルール化している。トイレで並んで待つこと、スリッパを後ろ向きに脱ぎながら並べることなど、身近なきまりをを守ることを身につけている。交通ルールや集団遊びのルールの大切さを理解し、自分の気持ちを調整する力を育てている。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
子どもたちの普段の保育を見てもらい、考える力を育てるために行事を実施している

行事は特別に企画するのではなく、子どもたちの日常の姿を見てもらうものと考えている。各クラスで子どもたちが話し合い、考え合いながらテーマを決めている。たとえば、年長児は話し合いの結果、「お店屋さんごっこ」で「宇宙レストラン」を開店することが決まり、折り紙や紙皿を工夫し飾りつけをした。当日は、「パピプペポッポー(いらっしゃいませ)」と宇宙語を考え接客し、子どもたちの得意な様子や達成感が保護者にも伝わった。大人からの指示に子どもが従う行事ではなく、子どもたちの思いを受け止め実現させる、子ども主導の行事にしている。

考えを出し合い、力を合わせて取り組む行事が、子どもたちに喜びと達成感を与えている

花まつりや精霊まつり、お会式や涅槃会など数多くの仏教行事を通じ、子どもたちは仏教の心を培っている。また、運動会や「ごっこ遊び」、お遊戯会などのほか、年長児には「お泊り保育」などの行事もある。いずれも子どもたち自身で相談し合い、自分たちの力を発揮できる内容にしている。4歳児のクラスだよりには、「ごっこ遊び」の準備に取り組む子どもたちの様子を紹介している。「自分たちで意見を出し合って決めたからこそ、イメージがどんどん広がり、考えているだけで楽しいという表情が見られた」とあり、担任も楽しみながら見守る姿が窺える。

年間行事予定表をしおりに掲載し、詳細の案内はプリントや保護者会で行なっている

保護者への行事の案内は、プリントや保護者会を通じて行なっている。特に、年長児を対象に実施する「お泊り保育」については、詳細な説明とともに同意書の提出を受けている。今年度の運動会は、雨天のために延期となり、変更した内容で行なった。このことに関する保護者の意見を聞くために、アンケートを実施した。「別の日に親子競技等ができたのは、園の丁寧な対応であった」と評価する意見と、ごく少数ではあるが、延期のしくみについて再検討を望む意見も寄せられていた。保護者からの意見については、常に職員会議で全職員の共有化を図っている。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている
講評
延長保育の呼称を「お残りさん」から「星組」に変え安心して過ごせる保育に努めている

1歳児は18時30分まで慣れた保育者と自室で過ごしている。他のクラスは18時に4歳児室に集合し、好きな遊びをしながら、保護者の迎えを待っている。ゴロゴロしたい子どものためにマットを敷いている。子どもたちは保育者とスキンシップを取りながら、安心して迎えを待つことができている。18時30分には補食をとり、家庭の夕食までの間食としている。それ以降は、全園児が同じ保育室で一緒に過ごしている。以前、延長保育の呼称は「お残りさん」であったが、「星組」と名称も変更し、子どもにとって充実した時間になるための配慮をしている。

十分な職員配置で、子どもがゆったりと安心して過ごせる環境を整えている

18時まで子どもたちは自室でクラス担任と過ごしているが、それ以降は遅番職員2名と遅遅番職員2名の計4名に非常勤職員4名が加わる計8名の職員で保育をしている。当番職員1名は18時30分までは、1歳児室で保育にあたっている。当日スポットで長時間保育になる子どもが約10名前後いるため、18時30分位までの時間帯は子どもの数も多い。時間の経過とともに徐々に人数が減っていき、寂しさを感じてしまう子どももいるため、いつもの大好きな職員に見守られ安心して過ごせる環境を整えるために、十分な保育者を配置している。

延長保育時の異年齢児同士の交流で、思いやりの心や優しさが育っている

本園では、毎週月曜日に意図的な異年齢児保育を実施している。その生活習慣のため延長保育時間の縦割り保育は、子どもたちにとって違和感のない時間となっている。異年齢で過ごす時間では、小さい子どもにとって年上の子どもの遊び方は憧れと尊敬の的であり、優しく面倒を見てもらうことで、安心感と信頼感を寄せることに繋がっている。保育者は、遊びのマンネリ化をなくすために、日中の保育では使わない延長保育に適した玩具を出して目先を変え、子どもが楽しく安全に過ごせる環境に配慮した保育を心掛けている。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
保育者が子どもと一緒に食事をとりながら、楽しい家庭的雰囲気を醸し出している

1歳児にはテーブルクロスを敷き、温かな雰囲気づくりを心掛けている。全クラスの職員が子どもと同じテーブルにつき、同じものを一緒に食べることで、家庭的な雰囲気づくりを醸し出している。同時に、食事作法など基本的生活習慣の指導の場として、子ども一人ひとりの喫食状況の把握の場として役立てている。訪問時、友だちと話ながらおいしい食事を楽しむ5歳児クラスの様子を観察した。自分が食べられる量を予め担任に申告し、苦手なものを少なめにしてもらう子もいた。食事マナーが身についており、全員が完食し、大半の子どもがお替りをしていた。

「本当においしい食事」を探求し続け、本園ならではの食事を提供している

旬の良質な食材と天然の調味料にこだわり、身体に優しい、「本当においしい食事」づくりに努めている。園長を筆頭に主任と調理担当が一丸となり、日々、味と質のさらなる向上に努めている。子どもの身体に優しい家庭的な献立づくりを心がけている。栄養士は定期的にクラスを巡回し、子どもの成長を間近に観察し、献立づくりを行なっている。毎月発行する献立表の裏面に「給食だより」を掲載し、乳幼児期に形成される味覚の育て方などの解説や保護者から要望のあったレシピを載せ、配付している。食物アレルギーや宗教食については個別に対応している。

ミニ菜園や味噌作り、沢庵作りなど調理保育を通し、食への関心と感謝の心を育てている

食育計画表を作成し、年齢ごとに食への関心が高まるよう各クラスが取り組んでいる。4、5歳児では、ナスやキュウリ、ミニトマト、ピーマン、オクラ、インゲンなどの栽培から収穫までの活動を通し、食べ物への感謝の心を育てている。3歳児は味噌づくりや団子づくりを体験したが、4、5歳児では味噌づくりのほか、稲の栽培から始め、籾を突き米にして、おにぎりを作るまでを体験した。また、収穫した大根で沢庵作りの活動も行なっている。自分たちの手で世話をし育てたものが食べ物になる体験は、食への関心と感謝の心を育む保育となっている。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
様々な遊具を通し、平衡感覚や巧緻性を養い身のこなしや体づくりをしている

本園の広い園庭には、大型の固定遊具をはじめ、伐採した境内の樹木を使った手作りの大型遊具やキックボード、三輪車、手押し車など、子どもが興味をもつ様々な遊具を置いている。園庭の隅にある砂場には、カタチを造りやすい山砂を導入したほか、砂の音や大きさに気づかせるための設定も施している。遊びの中で子どもの感覚を研ぎ澄まし、身の回りの事象に気づくことを大切にしている。また、子どもたちにとって遊具は、その扱い方や身のこなし方、どのような事が危険なのかを知るための体験につながり、保育士が見守る中で学び、生活している。

園児の体調変化に合わせ、家庭や専門機関と連携しながら健康管理に努めている

慢性疾患や急性疾患で処方され、服薬が必要な場合は「投薬申請書」の提出を求めている。申請書を園医に報告し、同意が得られた場合のみを投薬可能としている。医療的ケアが必要な子については、園医や発達の専門家からの助言を受け保育に活かしており、関係機関との連携を大切にしている。体調が思わしくない子や病後児には、お粥や温野菜など消化の良いものを提供するなど、日常的に一人ひとりの身体の状態に合わせ柔軟な対応を行なっている。

子どもの持つ体内時計による、睡眠のリズムを大切にして保育を実践している

SIDS予防については入園時に、書面を用い説明している。1歳児には、寝返りやうつぶせ寝の感知データの記録や印刷処理などができる機器を導入し、それと合わせて保育士が、10分おきに寝ている向き、顔色や様子を目視し、記録をとっている。子どもの睡眠については保護者とも連絡を密にとり、子どもの生活時間全体で睡眠を捉えている。たとえば、前日によく眠れた時と眠れなかった時、また子どもによる睡眠時間の長・短の個人差など、個別に配慮をしている。睡眠に対しては、完全個別対応をしており、午睡をしない子どもの姿も受け止めている。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している
講評
保護者の勤務などの事情に合わせスポット利用できる延長保育を受け付けている

勤務状況により通常の保育時間内に子どもの迎えが困難な保護者は定期的な利用申し込みをし、急な時間変更の場合にはスポット利用のできる延長保育を利用するしくみになっている。子どもの不安軽減のため慣れた部屋での保育時間を設定し、人数を見計らって合同保育に移っている。日中子どもに接している顔なじみの職員を配置できるよう非常勤職員が勤務している。利用者アンケートの中にパート職員の丁寧な対応が記されている。担任不在の時の申し送りは、書面や口頭により行なっているが、さらに完璧を期するための検討を進めている。

保護者との日常的な会話の中から身近な問題点を見い出し支援に繋げている

園長は「疑問を感じたら、いつでも気軽に話しかけて」という保護者への呼びかけだけではなく、キッカケの薄くなりがちな保護者が職員と話す機会を持てるよう、不公平が生じないよう職員からの声掛けを推奨している。保護者の勤務状況など日常の様子を把握・理解しながら子どもの成長を共有しようと職員間で話し合っている。全体会2回と組別に1回の保護者会を計画し、個人面談は希望者のみとしている。その他、行事を通して保育への理解を促すため、年間予定一覧の中に保護者参加の日程を明記し、多くの参加を呼び掛けている。

園だよりやクラスだよりを活用し、子どもの活動の意味や捉え方を伝えようとしている

子どもたちの姿に想いを込めて名付けたクラスだよりは、月の保育目標や子どもの遊ぶ姿を捉え構成している。子どものつぶやきなど、子どもの近くで見守る職員の立ち位置まで伝わり、子どもの成長の捉え方や見守る姿勢まで伝わる、育児の参考になると思われる内容である。春の保護者会では、新年度の様子を伝え給食の試食を行ない、2月は、近隣のスポーツクラブ専門家や園医などを招き、乳幼児期の体の発達などについて講演会を設けた。保護者と保育士が情報を共有し子育てするパートナーとして、一堂に会する保護者会は大切な機会と位置づけている。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
講評
豊かな自然と厳かなたたずまい、人々との触れ合いが園児の生活を豊かなものにしている

隣接する寺院には、日々参拝に訪れる地元住民も数多い。園児たちの散歩コースでもあり、地域の方との自然な触れ合いの機会にもなっている。お会式や涅槃会、降誕会などの行事や年8回の高齢者施設との交流会も子どもたちの生活の幅を広げている。園の目標の一つである「報恩感謝」は、「日々いろいろな人に支えられ、人、もの、自然への感謝の気持ちをもつ」ことである。園舎を囲む豊かな自然、隣接する寺院の厳かなたたずまい、そして保育者や保護者たちをはじめ地域の人々との出会いが、子どもたちの生活を豊かにするとともに感謝の心を育てている。

農家の畑での収穫体験や園内での沢庵、味噌造り、野菜栽培で地産地消を実践している

本年開催された「世界都市農業サミット」で、本園が所在する地域は「市民生活と融合した農業が混在する都市」として世界的にも稀有である、と注目された。本園では、子どもたちが地域の農家の畑に出向き、野菜の種まきから苗植え付け、栽培から収穫までの説明を受けるとともに、大根やニンジンの収穫体験をしている。大根は、園内で干したり、漬けたりして子どもたち手作りの沢庵にするほか、味噌づくりも行なっている。園内でも、米やナス、キュウリ、ピーマン他数種の野菜を育て、地産地消、環境エコの実践体験をしている。

運動会や盆踊りの行事をはじめ卒園児や地域の子どもと交流する機会を設けている

運動会や盆踊りなどの行事には地域の子どもたちの参加を促し、在園児と楽しくコミュニケーションを図る機会にしている。転園・卒園児にも招待状を送り、継続したつながりを持つようにしている。ボランティアとして卒園児を受け入れることも多い。園の事業である「ハニー学校」は、卒園児童の支援である。春、夏、冬に定員を定め、園舎とは別棟施設に一日を過ごす活動場所を確保し、支援を行なっている。在園児と交流する時間も設けており、在園児にとっても身近な年上の「きょうだい」とのふれあいの機会となっている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている
講評
子どもの羞恥心についての認識を職員間で共有し、子どもと丁寧に関わっている

成長期の子どもを扱う中では、関係機関との連携が必要な場合もある。そうした際には、保護者に主旨を伝え理解を得て情報提供などを行なっている。保護者の状況によっては、医療施設や相談機関などに保育士が同行する事もあり、保護者の不安に寄り添いながら子どもの発達を擁護する姿勢が持たれている。メガネをかける事になった子がいた時に、引け目に感じたり、からかわれたりしないようにと保育士が、かける理由や壊れやすく大切に扱う物であることなどに加え、特別な事ではないし恥ずかしい事でもないことを話し合う場を設けた事例がある。

子どもが互いを尊重する姿勢を保育士自身が示し、優しい心を育む保育を実践している

子どもの権利擁護指針を規定し、その中で「園児の最善の利益を優先し園児の擁護者であることを常に自覚し、基本的人権を率先して庇護し、いかなる理由においても差別的、体罰的な対応はしてならない」としている。サツマイモを育てる活動の中で子どもたちは、サツマイモの葉に虫がつき、近くのバジルの葉にはつかないことを発見した。虫が嫌う匂いをもつ葉は虫が食べないとの仮説を立てバジル水を作りサツマイモに噴霧した結果、葉が育つことがわかった。子どもの主体性を尊重し、「子どもを見守り、待ち、寄り添い、導く」保育者の姿勢の一例である。

園は、子どもを持つ親の力が十分発揮できるよう全力で支援しようと考えている

虐待防止に向けて職員研修を行なう中で、子どもの様子の変化だけでなく保護者の状況の変化も気にかけている。日々の登降園時間に、少なくとも月に1度は保護者に声をかけ、話し易い環境を作りたいと考えている。保護者への声かけをスムーズかつ誤解を生じることなく行ない、コミュニケーションを図ることをテーマにした園内研修も行なった。まずは小グループで、次いでロールプレイで、相手の気持ちを理解し合える接遇のあり方を探求した。表情や声のトーン、大きさで受け取る感じが違う事にも気づき、今後の保護者対応に活かすことを学んでいる。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
業務水準をさらに高めるために全員でマニュアルを読み、振り返りと見直しを図っている

「職員マニュアル」を策定し、全職員に配付している。社会人としての基本的心得や健康管理、行事についての6項目からなる。「基本事項を理解する」項目の中にある、保護者対応や連絡帳・書類の書き方、子どもの羞恥心に対する配慮など小項目の文章や勤務に応じた当番の動きについての見直しを行なった。このほか、アレルギー緊急時対応や熱中症、不審者対応、ケガ等緊急時対応、児童虐待防止等々のマニュアルを策定している。子どもの姿に変化があった時など、必要に応じてマニュアルを職員全員で読み返し、改善点を確認しその都度改訂している。

「林保育」の研修を定期的に受け内容を検討・見直しながら園独自の保育を行なっている

寺院境内の豊かな自然環境を最大限活用した「林保育」は、導入から11年目を迎えている。その間、「自然保育コーディネーター」の資格取得や専門講師を招聘し全職員で研修を続けるほか、自然保育実践園の見学、研究・研鑽を行なってきた。職員一人ひとりの資質向上と保育内容共有のため、林保育の会議も定期的に行ない、導入から子どもとの関わり方、その遊びの意味を確認し保育に取り組んでいる。職員間での話し合い・相談がしやすく、組織の運営が速やかになるよう、主幹やリーダーの役職を設け業務の標準化を図っている。

保護者や職員からの意見や提案を聞き取る姿勢を工夫している

目指す保育を継続し実践するため、就労環境整備や職員全員がより良い保育を求め協働できる良好な人間関係の構築が欠かせないと園長は考えている。職員が話し易いよう会議後茶話会を設けたり、クラス単位の交流や全員参加の職員企画など工夫している。保護者向けには、芋煮会やテラスのワックスがけのお手伝い作業終了後の交流などや行事アンケートなどで意見を聞き、改善に繋げている。たとえば、開門を10分早めて準備時間を持てる変更をした。年度当初と9月、12月にはパート会議を開催し、非常勤職員の意向把握と重要事項の共有化を図っている。