東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

グローバルキッズ新大塚園（以下、園）は、東京近郊・大阪で認証・認可保育所や学童保育など約170施設を運営する、株式会社グローバルキッズ（以下、法人）の認可保育所として2014年に開園した。法人の保育理念である『豊かに生きる力を育てる』を基に、園の保育ビジョンとして『子どもの学びを生み出す保育』を掲げている。園長は開園時に着任し6年目となった。一貫して子どもの気持ちに寄り添った保育を実践し、また乳児は担当制保育を行い、職員や保護者に園の保育の考え方を伝えながら園を牽引している。

法人は各園に対して、全体的な計画を基に、具体的な園の方針や目標、計画、その実践の記録を作成し、より計画的な保育に取り組めるよう【チームブック】の作成を指示した。園では昨年度作成した。作成の際には非常勤を含めた職員皆でミーティングを行い、意見交換をしながら作り上げた。このチームブック作成の過程で職員間の共通理解が深まり、園の目指す保育への意思統一が図られた。また、職員は法人理念などがまとめられたコンプライアンスブックを携帯し、困ったこと、迷ったことがあったときには常に確認できるようにしている。

法人本部では月に2回、保育事業部検討会議が実施されている。この会議には各園を担当にもつ各マネージャーも参加しており、各園から上がってきた情報や要望も検討され、重要な案件は、経営層が集まる幹部会議で決定されている。決定事項は園長が参加する月一回開催の全体会議で周知され、職員には園長から口頭または社内アプリを通じて周知される。また、保護者に対しては園内に掲示した上、個々に口頭で内容を伝え、周知を図っている。

園では、日々の送迎時や運営委員会、行事後アンケートなどで保護者からの意見や要望を収集している。特に行事アンケートについては翌年度の内容に反映させるために活用している。また、利用者調査では園長・職員と話しやすいといった意見も複数見られ、保護者の意向を把握しやすい環境であることが窺われる。職員の意向等は面談や園長と職員で情報を共有する園コミノートなどで把握するとともに、園長は普段からのコミュニケーションを始め、年に数回食事会を開催するなど、職員との関係性の向上に図り、職員の気持ちや想いの把握に努めている。

地域の福祉に関する情報は、区からの情報や区内の私立園の園長が集まる「私立園長会」などで収集するとともに、区内に複数ある系列園と情報交換をするなど、地域情報の共有が図られている。また、福祉業界の全体的な情報は法人本部が収集し、毎月１回発行される社報やメールで配信され、日々の業務で活用できるようにしている。園の経営に関しては主に本部で管理し、必要事項は園担当の運営マネージャーを通じて園長に伝達される。

園では昨年、園の将来の姿を描いたチームブックを作成した。保育ビジョンとして『子どもの学びを生み出す保育』を掲げ、保育目標を定め、目標実現するための保育方針、保育方法、実践計画を策定した。目標に向けた年度ごとの具体的な行動を3カ年計画に示し、例えば1年後に目指す状態を『安心できる環境での丁寧な保育実践』とし、実現の為にやる事として具体的な行動を定めている。この計画は毎年度末に成果と反省を行い、進捗を確認しながら取り組んでいる。

園では子ども一人ひとりの想いを大切にし、自己肯定感を育むことを重要視している。その考えは子どもに無理強い・強制をせず、一人ひとりのペースを大切にした保育である【流れる日課】で体現されている。そのため、職員会議でも人権を議題とし、職員全員が子ども一人ひとりの尊厳に対する理解（流れる日課の理解）が深まるよう取り組んでいる。また、職員一人ひとりに法人からコンプライアンスブックが配布され、いつでも確認できるようにしている。虐待に関しては区の家庭支援センターと連携を図っており、適切な対応ができる体制を整えている。

保護者からの苦情解決の仕組は、入園時の面談の際に重要事項説明の中で説明をするとともに、苦情受付の仕組みを玄関先に掲示するなどして周知している。連絡先は園内、法人、第三者委員などを伝えている。苦情等が発生した際には、法人で定められた書類【ご意見・ご要望対応・是正処置】に記入され、その後園長が「再発防止」「対策の結果」「結果の確認」を行い、案件の改善・解決を図っている。運営委員会や行事アンケートなどからも意見や要望を把握し、必要に応じて改善を行っている。

園が秋に実施しているスポーツフェスティバルでは、近隣の在宅児や小規模保育園の乳児を招待している。小規模保育園とは園児が交流する機会もあり、新大塚園が小規模保育園の2歳児以降の移行先としてスムーズに受け入れられるよう連携も図っている。また区の教育センターや家庭支援センター、教育委員会、小学校など行政関連機関との連携や近隣園、町会とも交流を図っている。近隣中学校から職業体験も受け入れるなど、地域の一員として福祉ニーズに応えられるよう取り組んでいる。

法人では様々なリスクを想定したマニュアルを整備している。災害等に関しては「危機管理マニュアル」、アレルギーに関しては「食物アレルギー・未食対応マニュアル」、感染症など衛生対策では「保健衛生マニュアル」「清掃・衛生ガイドライン」など多岐にわたる。これらマニュアル類は毎年見直しが行われ、例えば今年度、「危機管理マニュアル」では、地震や台風など自然災害によって起こりうるリスクを想定し、災害時の園児の引き渡しから園の再開までのロードマップを再度構築した。ただ、園で運用するための役割分担など詳細まで決められていない。

ケガ対策や散歩時のルールなど、普段の保育の中での園児の安全については、ミーティングや職員ノートで情報を共有し、必要に応じて対策を講じている。また、数年前よりヒヤリハットの提出を義務化し、園児の安全に対する職員の意識向上を図っている。また、今年度は交通安全に関して歩道の歩き方など見直しが行われた。また、毎月行われる避難訓練では、警察署に依頼した不審者対応訓練や、入居するビルのテナント合同の避難訓練を実施している。

個人情報が含まれる情報は、パソコンおよび保護者との連絡に使用するタブレットは個人パスワードで管理され、書類に関しては事務室内のキャビネットで管理している。職員に対しては「個人情報管理規定」や「就業規則」「保育基本マニュアル」の中で個人情報の取り扱いの徹底を周知している。保護者に対しては「個人情報の取扱いに関するご案内兼同意書」「保育園の個人情報の取り扱いについて」で明示している。また、情報開示に関しては保護者へ文章での説明がなかったが、昨年「個人情報の取扱いに関するご案内兼同意書」に記載し周知を図った。

職員の確保は法人本部の担当で、職員確保のため様々な施策を実施している。求人媒体としては紹介会社、広告（紙面・ＷＥＢ）、会社ホームページ等、また、大学訪問や就職フェア、相談会、セミナーなどを通じて広く人材募集を行っている。新園の開設によりさらなる人材の確保が急務となっており、近年では職員の紹介制度にも力を入れている。また、現職員の異動に関して職員意向調査を実施し、可能な限り本人の意向に沿って勤務ができるよう取り組んでいる。

法人では保育士及び保健士、栄養士など職種別にキャリアパスを設定し、キャリアに必要な研修制度を設定している。園もこのキャリアパスに則り研修計画を立てている。計画に対する研修参加は7割程度である。また、園では担当制保育の充実を目指しており、職員のスキル向上を図っている。昨年度は園長と主任、年長クラス担任が遠方他県の担当制保育導入園へ見学に赴き、得た知見を園に持ち帰り職員間で共有した。今年度も担当制保育に関する研修へ参加予定である。

職員が参加した研修は職員会議等で報告し、また資料等は回覧して園全体で知見を共有を図っている。また普段からミーティングを活用して情報を共有し、それぞれの学びにも繋がっている。園長は職員が働きやすい環境の整備に心掛け、職員の話を聞くこと、話しやすい雰囲気づくりに努めている。職員自己分析の結果からも多くの職員から意思疎通の良さが挙がっている。勤務についても有給取得や残業がないように勤務シフトを調整し、職員が健全に意欲をもって保育に取り組めるよう心掛けている。

法人のホームページや園が独自に作成したパンフレットで、園情報を提供している。ホームページは法人概要や全園統一した保育理念、方針・目標を掲げている。保育園の温かい明るい雰囲気が漂い、子ども達がいきいきと活動する姿からは、理念である「豊かに生きる力を育てる」が見えてくる。保育環境、食育、プログラム、年間行事、保育理念・目標・方針を分かり易く述べている。グローバルキッズ新大塚園として保育目標・方針、明るい保育室の映像があり、園のトピックスでは異年齢保育の様子や園長先生の保育への想いを載せている。

パンフレットでは「子どもが主体的に生活し、生活習慣を獲得しながら、自分で考え、行動できる基礎を育みます」と園生活の基本的な取り組みを伝えている。特徴として「流れる日課」や「担当制保育」を実施し、それがどのような保育であるかを説明している。見学者に配布する「ご利用案内」では理念・方針、概要、延長保育、定員、保護者との連絡等必要なことが簡潔かつ詳細に記載され、園の情報を明確に把握できる。パンフレットは園見学者や行事、区の子育てイベントの際に配布し、質問を受けて保育の特徴・内容について具体的に説明している。

問い合わせや見学希望に応じ、毎週月曜日を見学日として設定しているが、見学者の事情により個別に日程調整している。見学対応は園長又は主任が行い、子どもの様子がよくわかる午前9：30－11：30、午後14：30-16：30の活動時間帯に案内している。担当制保育や流れる日課など丁寧な保育を行い、自立を促し、3歳で身辺自立ができるようにしているなど特徴を説明している。保護者からの質問や相談に応じ、行事内容や持ち物、入園で準備するもの、日常的な散歩やリズム運動など子どもの体力づくりをしていることを説明している。

入園説明会時に入園面談や身体測定を実施し、園長、主任、担当保育士、必要に応じて栄養士が対応している。事前に渡してある保護者が書き込んだ児童票、緊急連絡先等から基本情報や家庭での様子を確認している。重要事項説明書では延長保育や保育時間の確認をし、必要に応じて就労証明書を貰っている。保育内容や自己肯定感を持つ保育の実践、保護者や子どもの人権を尊重していることを説明している。写真、HP上の映像、保護者がSNSやブログに子どもの写真を載せないなど個人情報の扱いについて説明し、個人情報承諾書に印を貰っている。

入園面談では家庭での子どもの様子を聞いたり、保護者からの質問や相談を受けている。園側は離乳食やアレルギー、発達状況など子どもの心身状況や家庭での対応方法などを聞き、保護者からは母乳相談、離乳食、食事相談などを受けている。内容は面談ノートに記載し、職員間で共有している。保護者と子どもが一緒に過ごす慣らし保育を一定期間実施している。保護者が食事の介助やおむつ替えなどをする様子から、保育士は子どもの特徴や接し方を観察、把握している。6月には園に慣れ安心して過ごす様子を保育参加やクラス懇談会で見てもらっている。

利用開始時は決まった職員を配置するとともに、慣れるまでは職員数を多く配置している。また、乳児は担当制保育を行い、情緒の安定を図っている。子どもに無理強いをしない、寂しい時にはだっこしたり、外に連れ出たり、気持ちを他に向けるなど、きめ細かい保育をしている。利用終了時には母親に行く先を聞き、アドバイスをするなど、不安の軽減に努めている。クラスでは「さようなら会」を行い、本人の作品集や写真、メッセージなどを贈っている。小学校入学に向けて学校見学を行い、授業に参加したり、校内を案内してもらうなど体験を積んでいる。

入園時の面談で児童票をはじめ各種の提出書類を確認し子どもの状況や家庭環境を把握している。それらの記録は個別もしくは目的別ファイルにて管理している。日常の保育の振り返りをはじめ、日々の健康観察記録、健康診断、アレルギー面談など子どもの発達や状況の変化を把握し、園日誌や保育日誌、発達経過記録など所定の様式に記録している。また、連絡帳や送迎時の会話を通して家庭での子どもの様子や保護者の要望や意向を聞いている。これら子ども一人ひとりの各種記録や情報からニーズを分析し、課題を設定して個別支援計画に反映している。

全体的な計画は保育目標や方針の基に年齢別目標を掲げ、養護と教育の保育内容を策定している。全体的な計画から年間計画、月案、週案、日案へと子どもの発達や成長に合わせて保育に繋がりを持たせた計画を作成している。１～2歳児及び発達に配慮が必要な子どもには個別指導計画、3～5歳児はクラス単位の指導計画で、発達に合わせた遊びや援助、やりたい気持ちを伸ばす内容にしている。指導計画は、年・月・週の各期間の終了時に評価、見直しを行っている。保護者には園だよりで月の目標を伝えているが、全体的な計画や指導計画の周知が期待される。

指導計画や児童票、発達経過記録等は統一した様式を用いて記録している。文書や記録類は個人別や目的別に分類・整理し、個別ファイルに保管している。また、PCやタブレットに記載し、職員がいつでも読むことができる。指導計画の内容や子どもの記録はクラスミーティングで共有し、計画に基づく保育を実施している。家庭での変化や情報は職員ノートや健康観察記録、職員会議を通して全員に周知している。会議に不参加の職員には直接伝え、職員全員が子どもの情報を共有し、一人ひとりの子どもに合わせた保育ができるようにしている。

乳児は「担当制保育」を実践し、排泄、睡眠、着脱などの生活面は担当職員が丁寧に関わっているため、発達段階や心理状況など子どもの姿がきめ細かく把握でき情緒の安定に繋がっている。また、職員が様々な研鑽を重ねながら、子ども一人ひとりのペースを尊重した「流れる日課」に取り組み、発達に応じた玩具と子どもの動線に配慮したコーナーが設定されている。多くの選択肢の中から自由に選んで遊び方を工夫するなど意欲が発揮できるように、職員は子どもの様子を見守りながらさりげなく促している。子どもが集中して遊びこめる保育が定着している。

４、５歳児クラスや長時間保育等で異年齢保育が行われ、年齢を超えた関わりが自然と培われている。大きい子の行動を真似することが生活習慣の自立や遊びへの刺激を受けたり、玩具の貸し借りなどが相互の育ち合いに繋がっている。配慮の必要な子に対しても、発達の個人差を個性と受け止め、違いを認め合う援助をしている。現在、外国籍の子は在籍しないが、月１回英語DEあそぼうの活動により、外国人講師と一緒に過ごしながら言動・文化・習慣等の違いを学んでいる。５歳児は、小学校１日体験に参加する等就学に対する期待感が持てるよう促している。

かみつき・けんかなど子ども同士のトラブルには、互いの気持ちを受け止め思いを代弁したり、年齢によって話し合いで解決を促している。話し合いの後は、担任が双方から話を聴き、納得できるようにフォローしている。保護者には、園の責任であることを前提に、成長段階で起きる子どもの成長発達について園だよりなどで周知しているが、起きた際には保護者に謝罪し状況を説明している。園では、子どもの自己肯定感と他人を思いやる優しさを育むことを大切し、友達との関わりや感情・意思の伝え方、遊びや生活のルールなどを学べるように支援している。

朝の受入れの際には、一人ひとり丁寧に声かけし顔・表情・傷・目の赤みなどの視診をしている。連絡帳あるいは保護者向けアプリで前日からの家庭での過ごし方や健康状態を確認するとともに必ず保護者と会話をするようにしている。聞き取った情報は健康観察記録や職員連絡ノートに記入し伝達漏れのないようにしている。降園時には個別にエピソードなどを伝え、室内に子どもの作品を展示したり、クラス別活動報告や連絡事項を掲示するなどきめ細かく対応している。保護者向けアプリでは、連絡帳のほか２４時間対応で写真や日中の様子を共有している。

生活習慣の自立に向け、園長作成の「子どもの発達と基本的生活習慣」の資料を参考にして、一人ひとり個人差を踏まえ家庭と連携して無理なく進めている。排泄では、１歳半頃から育児担当者が経過を把握し排尿感覚を自分でつかめるようになることを目安にしている。遊びの途中では誘わないことに注意している。着脱は１歳頃から着替え時に声かけし、子どもの意欲を大切に導いている。箸への移行は手先の遊びやボタンはめ、鉛筆もちを目安にしている。ただ、幼児に必要なことは箸をもてることより、食事を楽しむマナーを守れることが大切と考えている。

各家庭により生活状況が違い一人ひとりの生活リズムに配慮し、安定した睡眠につなげている。睡眠不足や体調によって休息が必要な場合は個別に対応して、眠れなくても横になって体を休めることの大切さを伝えている。午睡時は定期的に体位・体調・顔色をチェック後、記録してＳＩＤＳ対策をしている。5歳児は年明けから徐々に睡眠時間を短縮し、３月半ばで午睡をなくして、就学前の作品づくりや就学に向けて生活リズムを整えている。保護者懇談会でも「午睡と子どもの成長」「午睡が子どもに与える効果」について説明し睡眠の大切さを知らせている。

各クラスには子どもが集中して遊べるよう、成長や発達に合わせたコーナーを設定し、物や友だちにぶつからず自分の望む行動がとれるよう、遊びの空間に配慮している。乳児は、練習遊びや机上遊び、世話遊びの他にトンネルや小さな滑り台、またいだりバランスをとる粗大運動遊具が用意されている。幼児は、ままごと等の役割遊び、積み木・ブロック等意味づけした構成遊び、ゲーム、折り紙等の机上遊びが子どもの手が届く位置にあり、自ら選んで自由に遊んでいる。昨年度玩具を見直し、色や形、大きさ、安全性や創造力を培う多様な玩具を増やしている。

わらべ歌を積極的に取り入れ言葉やリズムの優しさに親しみ、絵本や詩に触れて言葉の感覚を養っている。各クラスには絵本コーナーがあり、読んでほしい時に１対１あるいは数人で読んでもらい、絵本の世界を満喫している。今年度、ワールドライブラリー（世界の絵本）のコーナーを設置し、外国絵本の画風や言語も楽しみ、子ども同士が話し合いを持って劇遊びに発展させている。また、室内には様々な素材を使って絵画、工作が飾られ、五感を生かした表現活動となっている。また、１日１回「毎日体操」を行い、しっかりと体幹を鍛える運動を行っている。

近くの木々に囲まれた自然あふれる広い公園で、元気に走り回ったり、草花、虫探しなどの自然物に触れて遊んでいる。訪問時、保育参加の父親が蝉の抜け殻を見つけ皆で集まって触れたり、乳児は不思議そうに観察する姿が見られた。室内ではカマキリ・カブト虫の幼虫の飼育しており、図鑑で調べたり餌をあげて生き物に触れる機会をもっている。今夏は週１～２回系列園のプールを利用して夏ならではの水遊びを楽しんでいる。また、「課業」に取り組み、気がついてほしい事柄『天気』『家族』『植物』など月ごとにテーマを決めて調べたり学んだりしている。

昨年、子どもの「やりたい気持ち」を引き出し、主体性を重視した行事を実践するため行事内容の見直しを行った。子どもの日常生活を崩さないよう行事のための練習や制作ではなく、普段の保育の延長線上の中で子どもの成長を感じとってもらう内容とした。例えば、保護者参加だった夏祭りでは保護者参加をなくし、子どもがどんな夏祭りにしたいか意見を出し合って内容を決めている。今回は夏の風物詩である風鈴や魚つり、すいかなど制作し、お祭りの雰囲気を楽しむことができた。子どもが興味や関心をもって取り組む姿を保護者向けアプリで知らせている。

行事は普段の活動を取り入れ、最後までやり通すことで達成感やそれぞれの自信につなげている。運動会をスポーツフェスティバルに改称して、子どもがやりたい競技や子どもの好きな曲からヒントを得て、プログラムを決めている。中でも４、５歳児のリレーとパラバルーンは、子ども同士が協力しあったり励ましあったりして楽しむ競技となった。競技は親子が触れ合って楽しめるよう工夫され、また地域の子どもや卒園児、祖父母参加の玉入れ競技はスポーツフェスティバル全体が盛り上がって、皆でやり遂げた充実感を感じることができる行事となっている。

保護者懇談会や運営委員会では、年間行事のねらいや行事の見直しの主旨など資料を配布して説明し、毎月の園だよりでも日程や取組の様子を丁寧に伝えている。夏まつりやクリスマス会では保護者参加をとりやめ、保護者からは「残念」「寂しい」などの意見が出ている。一方で乳児クラスは廊下から見学する保育参観、幼児クラスでは保護者や祖父母の保育参加が行われている。行事後のアンケートや意見では「園での子どもの姿や友だちとの関係が見られてよかった」「子育てに参考になった」などの意見があり、子どもの成長を共有できる機会となっている。

延長保育は１８時１５分から１９時１５分まで行っている。全クラス合同保育となり、当日の人数によっては１歳児あるいは２歳児のクラスで過ごしている。乳児から幼児まで異年齢保育の時間帯を安心して過ごせるよう、コーナーを活用した遊びの中で、互いに思いやりと親しみがわき、自然な関わりが持たれている。乳児には生活リズムの違いから、ゴロゴロしたい時に使える「くつろげるスペース」がつくってあり、クッションを配置して体を休める為の休息コーナーとして工夫している。補食は夕食に影響がないようおにぎりなどの軽食を提供している。

一日の大半を園で過ごす子どもの気持ちに寄り添いながら、ブロックなど好きな玩具を出して「やりたい遊び」を楽しむことができるよう配慮している。少人数になることで保育者とのスキンシップがとりやすく、１対１でわらべ歌などの触れ合い遊びや絵本の読み聞かせをしてゆったり関わっている。現在、延長保育は専任とシフト制の職員を配置している。職員連絡ノートや長時間保育日誌で連絡事項や日中の様子を引き継ぎ、職員間で共有している。今年度後半は専任２名にする予定にしており、同じ職員が関わることでより安心感をもてる環境をめざしている。

乳児は担当保育士が、遊び終わった子どもから順番に優しく声をかけ、１対１で丁寧に関わり安心して食べられるよう配慮している。幼児は少人数のグループで、静かに落ち着いた雰囲気の中で楽しく食べられるよう心がけている。５歳児は白衣を着て、テーブルクロスをかけたり食具やお皿を並べたりして当番活動を行っている。食事中は、三角食べなどのマナーも身につくよう意識して関わっている。園の献立は和食中心で旬の食材を取り入れて季節感のある食事を提供している。栄養士は毎日巡回しながら喫食状況を把握し、職員会議で共有し次に活かしている。

食物アレルギーには個別に対応し、医師の指示書に基づき保護者と連携して除去食を提供している。配膳には栄養士から担任へ、担任同士の読み合わせと押印をして２重３重のチェックで最新の注意を払っている。トレーや食器の色を変えて、食札プレートは大きく記載され、本人が着席した後に名前を確認して配膳している。食事中は誤食がないよう職員が傍で見守りをしながら安心・安全に十分配慮している。また、当日の体調がすぐれない子や食欲のない子にも配慮しながら一人ひとりの量を調整している。夏は食中毒、冬のO１５７などに厳重に注意している。

食育計画では、年齢に応じた栽培活動、食材の皮むき、クッキングなど積極的に実践している。今年度、プランターで野菜の苗植え、水やりを行ったものの猛暑の影響で収穫ができなかったが、旬の野菜やきのこなどの実物を展示し、感触や形、匂いなどの違いを発見できる体験をしている。幼児クラスでは食育ボードに赤・黄・緑・白の食品群をイラストで分け、視覚で捉え栄養素を知る機会を作っている。また、お月見団子、スイートポテトづくりなどを通して、切る、つぶす・こねるなど調理工程での食材の変化を楽しく体験している。

園では、散歩中の事故などについて、改めて危険個所を洗い出して職員全体で安全対策の再確認を行っている。子どもには横断歩道での信号待ちの立ち位置や車道から離れた場所で待つこと、塀の近くを歩かないなどを必要な場面でわかりやすく伝えている。毎月の避難訓練では、警察署や消防署の方から災害時の約束や標語などを聞いたり、幼児クラスでは「課業」の中で安全について調べたりする中で、自ら身を守ることを学んでいる。感染症予防の手洗いやうがいも乳児からわかりやすく伝え、日頃から自分の健康や安全に関心が持てるよう援助している。

年間を通して、嘱託医による健康診断４回、歯科検診と歯みがき指導を各１回、身体測定を毎月実施し、３歳児以上は歯ブラシを開始して虫歯予防に繋がっている。嘱託医とは病気やけがのほか、子どもの発達が気になる子、アレルギーをもつ子について、相談や助言など連携できる関係を築いている。子どもの状況に応じて病院での受診を勧めたり、家庭支援センター、教育センターなどの専門機関を紹介している。定期的に臨床心理士による巡回指導があり、適切な保育ができるよう努めている。こうして子どもの心と身体のトータルな健康管理に取り組んでいる。

乳幼児突然死症候群（SIDS)の予防は、入園時に説明し行政からの啓発ポスターやチラシを掲示して周知に努めている。特にうつぶせ寝の習慣がある場合には危険性を伝え、改善できるよう働きかけている。午睡チェックは年齢ごとの間隔で呼吸状態、顔色、向き、嘔吐物の有無を確認している。毎月の保健だよりでは、季節ごとに健康や衛生、感染症に関する最新情報を提供し、感染症発生時は玄関などの掲示により保護者に注意を促し蔓延予防に努めている。夏は外の温度が３０度を超えたら散歩や外遊びは控え、水遊びは「暑さ指数」を基準に判断している。

今年度から、保護者用アプリをスタートし、連絡帳、出欠席の連絡、毎月のお便りや身体測定の結果、園からのお知らせなどを配信している。保護者は携帯電話で子どもの様子や連絡事項など確認でき、保護者から「通勤中など場所を選ばず、園に言い忘れたことを随時連絡できたり、子どもの体重や翌日の持ち物など、知りたい時にとても便利」との声を頂いている。保護者の希望により紙ベースの連絡帳やプリント配布も行っている。就労に伴う急な勤務時間の変更や家庭の事情で保育時間を延長したい場合も、臨時利用ができるように柔軟に対応している。

保護者懇談会では、年齢ごとの発達の傾向と見通し、園の保育方針や家庭で心がけてほしいことなど、資料をもとに伝えることで保護者との理解を深めている。DVD動画による園での子どもの様子を見たり、保護者の自己紹介や育児などの話題から保護者同士の会話が生じるなど、自然な交流の場ともなっている。園では、一定の期間を設けて、乳児は保育参観の「そうっと参加」や、幼児では保育参加を実施している。祖父母も参加でき、日頃の子どもたちの活動、集団での関わりやその姿などを見てもらえ、保護者と職員の距離感も縮まる機会となっている。

保護者が参加しやすいよう年間行事予定を配付し、保護者用アプリにも公開している。毎月の園だよりでは日程のほか、保育の姿勢やクラス別に養護と教育の両面から捉えた保育目標、子どもの発達や話題となっている子育て情報、育児のヒントなどの資料を作成して随時発信している。子どもの成長を保護者と園が共有することを大切にして、共通認識を得る取り組みを行っている。また、保護者の養育力向上に向けて、嘱託医による子育て講座を開催したり、子育てに関する書籍の貸し出しを行っている。子育てなどの相談には園長がその都度丁寧に対応している。

普段の散歩の際は、お世話になっている地域の方々に挨拶することを欠かさず行っている。商店街では、食育の一環として野菜の買い物にでかけ、実際に購入する体験をしている。園では日常遊んでいる公園でスポーツフェスティバルを実施しており、公民館の図書コーナーの利用や、消防署では実際に消防車を見せてもらうなど、身近な資源を活かした体験をしている。また、年長組は普段より距離を伸ばして水族館や区の運動場すくすく広場に出かけ、他園の子どもや系列園の子どもとの交流を楽しむなど、子どもの生活の幅が広がる機会を設けている。

園のスポーツフェスティバルには、近隣の在宅の子どもや小規模保育園の園児のほか祖父母にも参加を呼びかけ、保育園生活の雰囲気や楽しさを知ってもらう機会となっている。また、園は町内会に加入しており、季節ごとの祭りや餅つきなどの町会行事への参加を呼びかけたり、クリスマス時には音楽大学のコンサートに招待され本物の音楽に触れるなど貴重な体験をしている。また、ドーム球場で開催のプロ野球選手との交流企画に参加するなど、地域との連携を図りながら子どもが様々な人との出会いと交流が深まるよう工夫している。

職員は採用時に個人情報管理に関する規則を遵守し、守秘義務について誓約書を提出している。園内での掲示や園だより、ホームページに子どもの写真等の使用、及び緊急の際には医師への受診を園側の判断ですることについて、入園時に「承諾書」を提出してもらっている。また、実際の使用時には個別に口頭で承諾を得ている。パンツやオムツ交換はトイレ室内で着脱を行い、トイレにはドアがついている。夏季のプール遊びの衣類の着脱は上下別々にして室内で行っている。5歳児は男女を別にするなど、子どものプライバシー保護や羞恥心に配慮している。

子どもが主体的に生活し、自分で考え行動できること、自分らしさを発揮して生き生きと生活でき、自己肯定感を育てることを園の方針としている。担当制保育や一人ひとりの子どもに合わせた流れる日課を取り入れ、一人ひとりの誕生日に合わせたお祝いをしている。入園時の面談や提出書類、保護者や子どもの思いを受け止め、一人ひとりの子どもの状況を把握し、それぞれに合わせた配慮のもとに寄り添う保育・見守る保育を実践している。連絡帳や保護者との会話で子どもの生活や習慣、保護者の教育観や価値観を把握し保育に反映している。

法人本部や行政からの虐待防止や育児困難家庭に関わる通達の情報を回覧したり、職員会議で伝えている。課題を抱える家庭や習慣の異なる外国籍の保護者への対応など難しいケースについては家庭支援センターに知らせ、虐待防止に向けて連携しながら、対応している。園長は、多様性や異なる文化、ジェンダー、虐待などの研修に参加し、職員会議で報告、共有に努めている。ジェンダーでは、どの色も男女別なく選ぶことが出来、ままごとではお父さん役を女の子がお母さん役を男の子が演じ、男の子がドレスを着ることも可能と職員間で認識している。

「重要事項説明書」や「保育基本マニュアル」で園が提供しているサービスの基本事項や手順を明確にしている。危機管理、事故対応、感染症等の各種マニュアルは法人で統一し、備えている。「掃除の仕方」「早番・遅番業務マニュアル」「嘔吐処理の仕方」「アレルギー対応」等のマニュアルは園独自で作成し、活用している。保育基本マニュアルは職員各自が携帯し、他マニュアルは事務所の書庫に保管し、日常的に活用している。園長は職員会議のレジュメに保育指導に向けた具体的な内容を記述しているが、園独自の指導書として纏められることを期待する。

法人作成のマニュアルは、法人の全体会議の意見や提案を踏まえて、担当部署が年に1回全体的な見直しを行い、改善・改正を行っている。法人全体の園長会議の後で職員会議で改正点について周知を図っている。法人の「お願い事項」通信では感染症や事故などの最新情報が記載され職員間で回覧している。感染症対策や防災訓練計画については季節の到来前に見直しや計画の立て直しを行っている。園では職員全員でチームブックに取り組んだことにより、目指す方向に向けて業務の水準を整える意味が深く理解され、職員間の意識の統一が図られている。

日常の送迎時や連絡帳、懇談会等で保護者からの意見や提案を受けている。保育士は日常の保育の中で子どもの様子や発達の状況を把握し、見直しや改善を図りたい課題を捉えている。保護者や外部の専門家、法人職員も参加する運営委員会では園運営に関する各種の報告を行っている。また、保護者及び外部の専門家などから日常の保育や園の活動に関する意見や提案を受けている。こうした要望や提案を職員会議で検討し、サービスの質の向上を目指して業務の標準化を図る取り組みを行っている。