東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和2年度
サービス名称 指定介護老人福祉施設【特別養護老人ホーム】
法人名称 社会福祉法人三交会
事業所名称 青葉台さくら苑
評価機関名称 公益社団法人 長寿社会文化協会

コメント

●利用者調査は利用者83名全員を対象とし、利用者の当日の体調や心理的状況を確認し、評価者3名が分担し感染防止対策を綿密に行って回答可能な10名から聞き取り調査を実施した。●コロナ禍で施設内への立ち入りを自粛せざるを得なかったため、事前の資料読み込みに加え、詳細な資料をメールで送付していただき、更にメールでの確認をすることにより、訪問調査に代えた。●評価者3名が第三者性を担保し、事前の読み込みを十分行い、担当分野についての評価の視点及び確認すべきポイントを明確にして経営層の考えを十分に把握するようにした。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1) 地域に根ざした社会福祉の実践                                                               2) あなたらしい生活と生き方の支援                                                                         3) ケアにおける「目くばり・気くばり・心くばり」の実践                                                            4) 地域のニーズに沿った取り組みの提案                                                                   5) 地域における公益的な取り組みの実施

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

<人物像>                                                                                ①利用者の生命・健康・尊厳を守るために力を尽くす人物    ②利用者の気持ちに寄り添い、共感できる人間性がある人物      ③専門職であるという自覚と向上心を持っている人物   ④常に感謝の気持ちを持ち、礼儀正しく丁寧な言葉遣いができる人物                                                                                   <役割>                                                                                         ①物事を考えぬく習慣を身につけていること   ②優先事項を判断し、速やかに実行すること  ③職務に関し、自己啓発(資格取得、通信教育、研究発表等)を意欲的に行なうこと

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

・常に向上心を持ち、社会福祉の充実に尽力すること                                                           ・社会福祉法人の職員としての自覚を持ち、地域における公益的な取り組みに積極的に参加すること                                ・高齢者、障害者、生活困窮者など、社会的に孤立している方に対して共感を持って対応すること

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 理事長の卓越した指導と事務長の的確なフォローの下、事業環境を分析し、対策を検討し、組織を挙げて事業所の再構築に取り組んでいる

理事長(施設長)は、東社協高齢者福祉協議会副会長、社会福祉法人協議会役員、都高齢福祉推進協議会委員等高齢者福祉問題に関するリーダーとして長年業界全体を指導してきた。事務長も、各種加算取得の為のデイサービス経営、内部監査室にて東京都、各区との実施指導の豊富な経験を有する。 経営立て直しのために施設長、事務長として着任し、福祉行政全体及び事業所固有の課題を把握し事業所内諸会議・町会役員会等を通じて、職員・利用者・利用者家族・地域の意向をくみ上げながら、組織を挙げて事業所の理念実現に取り組んでいる。
2 ホームページの頻繁な発信や家族への定期的なお便りの送付など、分かりやすいタイムリーな情報発信が行われている

ホームページの改定・更新を頻繁に行い情報を発信している。料理やクラブ活動、レクリエーションの様子、職員紹介を写真を交えて伝える他、コロナ対策や面会方法の変更などタイムリーな情報を発信している。家族に向けては「相談課からのお知らせ」と「個人別便り」を毎月作成し送付している。「個人別便り」では利用者一人ひとりの家族に向けて担当職員が手がきで利用者の状況を伝えている。家族アンケートでは「ホームページの発信を楽しみにしている」「毎月封書でのお便りが嬉しい」との好意的な評価が寄せられている。
3 施設内の環境設備に積極的に取り組んでいる。

建築士、インテリアコーディネーターの経験がある理事長が中心となって、施設内のリノベーションを進めている。玄関から始まり、在宅介護センター、デイサービス、各階のフロアの内装(絨毯、壁クロス、カーテン)を改善している。特に相談室にケアマネ、看護師が一緒に仕事が出来る様に改装した結果、専門職間のコミュニケーションが円滑化した。

さらなる改善が望まれる点
1 組織力向上について、基本的に現在の取り組みを継続するとともに、更にきめ細かな人材育成を期待したい

組織力向上のために、多彩な取り組みを行い、危機的な状況からの急速な脱却を実現している。特に人材採用と育成に関しては、旧来の手法を抜本的に変革し、人材採用面では近隣事業所との協働による採用活動等新機軸を採用し、育成面では研修制度の拡充や処遇制度の改善に加え、姉妹法人からの出向者受け入れによる指導力強化などにより、見るべき成果が挙がりつつある。今後もこの取り組みを継続するとともに、職員の要望を掘り起こして、個人個人の意欲向上につながる個別育成計画を策定してきめ細かな研修を行う等、更なる人材育成を期待したい。
2 Withコロナの時代の地域連携のあり方の検討が望まれる

法人の理念として、「地域に根差した社会福祉の実践」を掲げ、今年度の事業再生計画の柱の1つとして、災害対策・医療連携・行事参加・地域交流室の活用の視点からの地域連携が示されている。地域の防災訓練に参加して日頃からお互いの顔が見える関係を築く、医療・介護を一体的に提供する仕組みづくりに参加する、地域のイベントに参加して近隣住民との関係を深めるなどの計画が示されているが今期の計画はコロナ禍のため中止となっている。Withコロナの時代の地域連携のあり方についての更なる検討が望まれる。
3 心身共にリフレッシュできる文化的行為として入浴が楽しみになるように一層の工夫が求められる

事業所で週2回提供している入浴は、利用者の身体の清潔保持や全身の健康状態確認などの衛生面からの取り組みになっている。ゆず湯など入浴を楽しむことができる工夫もしている。,しかし、更に、入浴を利用者と介護職員の良好な人間関係を築くツールとして位置づけ「清潔の保持のみならず、気分に働きかけ、心身共にリフレッシュできる文化的行為」であると位置づけて取り組む事が求められる。年間を通して季節感を感じる風呂の企画が求められる。また、入浴時間帯の検討など、安全で快適な入浴のために創意工夫を重ねることを期待する。


Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 事業所を取り巻く事業環境について多面的に分析し、課題を明確にして取り組んでいる

事業所を取り巻く事業環境について、理事長の指揮と事務長のフォローの下、①都心部における福祉事業においての人材確保の困難さ、②事業所自体の年間の活動収益差額の低さ、③23区内における特養整備の進み等多方面から多面的に情報を把握・分析し、①職員の確保、定着、②増収に向けた取り組み、③事務費の削減、④収益事業の開始の4課題を明確にして取り組んでいる。中でも、人材不足(採用難と離職増)について経営の根幹を揺るがす問題であるととらえ、人材確保・育成と並行して職員の定着のための労働環境改善に計画的に取り組んでいる。
関連評価項目(事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している)
2 ★ 介護記録ソフトを活用して個人情報の記録を一元化し、課題を明確にしている

各種帳票類の精査と保管方法ついて見直し、職員の記録の負担軽減を図った。新たな介護記録ソフトを活用し、利用者の基本情報、アセスメントシート、ケアプラン等の記録の一元化を図った結果、利用者個々のニーズや課題が明確に出せるようになった。このソフトは全ての職員が個人別ケース記録に、日々の様子、特変事項、医療情報、アクシデントなどを入力閲覧できるため、利用者個々への継続的な支援に必要な情報を共有することができる仕組みとなった。この仕組みにより緊急時にも円滑な対応が可能となった。
関連評価項目(定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している)
3 ★ 認知症ケア専門士が在籍し、認知症ケアの充実に努めている

認知症がない利用者を含めて、ほぼ自立して一人暮らしが可能な利用者は3.6%であり、IADL低下が見られ、ADL低下がある利用者は66%に及び、常に介護が必要な利用者は26.6%であり、全利用者の96%に認知症の症状が見られている。認知症ケア専門士を配置して、現場の各フロアで介護職員の認知症の理解、対応が深まるように関わっている。大変な不安を感じている利用者が自分を守るために起こしている防衛反応であることを理解して、否定する対応をしないように介護者の日々の受容的対応が会得できるように取り組んでいる。
関連評価項目(利用者の施設での生活が楽しくなるような取り組みを行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:利用者数83名全員を対象とし、当日の体調や心理状況、聞き取り手法への適応度等を確認し、回答が可能な10名から聞き取り調査を実施した。

調査方法:聞き取り方式  
午前中の落ち着いた時間帯に、入居者に負担を与えないよう、応接室や居室を使用し、評価者3名が分担して一対一の個別面談で、感染症予防対策を講じながら調査を行った。アクリル板使用による対面式聞き取り3名、ガラス窓越し・マイク使用による聞き取り7名である。

利用者総数 83人
アンケートや聞き取りを行った人数 83人
有効回答者数 10人
回答者割合(%) 12.0%

総括
利用者聞き取り調査は、利用者総数に対する回答者割合が12.0%であり、施設全体の総合満足度感で「大変満足」2名(20.0%)、「満足」7名(70.0%)、合わせて90%である。個別設問についても、満足度80%以上が14設問中9設問となっている。施設への意見要望は、「特にない」とする3名のほかに、「コロナが収まったら外出したい」、「家に帰りたい。息子に会いたい」などコロナ禍での要望や「二人部屋の相手が夜起きて声を出すので落ち着かない」、「前の施設の方が良かった」、「個性的なので、黙っていればよいが、話すと、ぶつかることがある」など率直な意見・要望が出された。コロナ禍で聞き取り調査を補完すべく任意で利用者全員の家族へのアンケート調査も行ったが、利用者総数83名中55名(66.3%)から回答が得られ、「利用者が大切にされていると感じているか」の設問に、47名(85.5%)がはいと答えている。自由意見としては、「新型コロナ感染症の拡大の中、利用者が感染しないよう最大限の対策を取りながら、施設内のイベントを取り入れて楽しく過ごせるよう工夫して下さっているので、大変嬉しく思う」など9名から高い評価の記述が寄せられている。

利用者調査結果

1.食事の献立や食事介助など食事に満足しているか
はい 6人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が60%、「どちらともいえない」が40%、「いいえ」が0であった。個別聞き取りの中では、「おかずなど全体的に美味しいが量が少ない」、「野菜が多いが、肉や魚をもっと出してほしい」、「味がついていなくてまずい」、「味が少し辛い」、など各1件ずつ寄せられている。
2.日常生活で必要な介助を受けているか
はい 9人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が90%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が0であった。個別聞き取りの中では、「とっても良い」、「思い付きでやってくれる。もっとレギュラー化してほしい。一覧表などを作ってほしい」、「移動が自由にできない」、など各1件ずつ寄せられている。
3.施設の生活はくつろげるか
はい 3人  どちらともいえない 6人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が30%、「どちらともいえない」が60%、「いいえ」が10%であった。個別聞き取りの中では、「歌が好きだけど今はテレビで聞くだけ。」、「新聞や雑誌を読んでいる」、「テレビ以外あんまりやりたいことはない」、「囲碁が好きでインターネットでやっている。朝、新聞がなかなか届かないことがある」、「歌は好きだけど何もやっていない。体操がやりたい。1週間に1回ぐらい映画が見たい」。「コロナでできないことがたくさんあったので、昨年のようになってもらいたい」「今は読書しかできない」など各1件ずつ寄せられている。
4.職員は日常的に、健康状態を気にかけているか
はい 9人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が90%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が0であった。個別聞き取りの中では、「自分から言う」、「最近、体がだるい」、「いつも聞いてくれる。絶好調と答えている」、など各1件ずつ寄せられている。
5.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が100%であった。個別聞き取りの中では、「前のところと比べれば本当にきれい」、「良く面倒を見てくれている」、「きれいで問題はない」、「きれいになっている」、「ベッドのシーツは取り換えてくれる」など各1件ずつ寄せられている。
6.職員の接遇・態度は適切か
はい 9人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」が90%、「どちらともいえない」、「いいえ」が0、無回答が10%であった。個別聞き取りの中では、「皆さん優しい」、「違和感はない。今のままでよい」、「みんな考えているので良い」、など各1件ずつ寄せられている。
7.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が100%であった。個別聞き取りの中では、「そのような場合にあたったことはないが、ちゃんとしてくれると思う」、「ここでは経験がないが、あればきちんとしてくれる」、「これまでないが、そうなった時はしてくれると思う」など信頼を寄せる声が各1件ずつ寄せられている。
8.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が100%であった。個別聞き取りの中では、「いじめやいさかいの場面は見たことがない」との声が6件寄せられている。
9.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 9人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が90%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が0であった。個別聞き取りの中では、「とってもよくみてくれている」、「皆親切」、「これが当たり前と思っている」「優しい」、など各1件ずつ寄せられている。
10.利用者のプライバシーは守られているか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が100%であった。個別聞き取りの中では、1件ではあるが、「お風呂は仕方がない」との声が6件寄せられている。
11.個別の計画作成時に、利用者や家族の状況や要望を聞かれているか
はい 5人  どちらともいえない 1人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」が50%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が40%であった。個別聞き取りの中では、「そう思う」、「家族はない」、「計画があることすら知らない」、「計画は知らない」、など各1件ずつ寄せられている。
12.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 3人  どちらともいえない 3人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」が30%、「どちらともいえない」が30%、「いいえ」が40であった。個別の感想、意見は寄せられていない。
13.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 8人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が80%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が10%であった。個別聞き取りの中では、「きちんと言うほうだが、今まで言いたいことがなかった」、「これまで言ったことはない」、「意見などは言いにくい」、「現在不満がないので、言ったことはない」、など各1件ずつ寄せられている。
14.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 2人  どちらともいえない 1人  いいえ 4人  無回答・非該当 3人 
「はい」が20%、「どちらともいえない」が10%、「いいえ」が40%、無回答が30%であった。個別聞き取りの中では、「そんなことはない」、「あまり考えたことはない」など各1件ずつ寄せられている。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
明確な理念・ビジョンを掲げ、職員や地域、利用者・家族に周知している

平成10年設立の当事業所は、当初順調な経営であったがここ数年の介護人材不足の深刻化により経営危機に直面した。緊急・抜本的な再建計画の基本的対策として、理念、ビジョンの確認から再建をスタートした。事業計画、パンフレット、ホームページ、諸掲示物等に理念・方針・職員の遵守事項を明記して事業所内外に示し、事業報告書・事業計画書、職員ハンドブック・社員証を全職員に交付して事業所内諸会議でその徹底を図るとともに、地域の方々や利用者及びその家族にもホームページ、パンフレット、広報紙を通じて訴えかけ、周知を図っている。

経営層の強いリーダーシップの下、事業所の理念実現に取り組んでいる

経営再建の取り組みに当たって、令和元年10月から、姉妹関係にある社会福祉法人の支援を受け、理事会、監事、評議員会等のメンバーを一新するとともに、理事長以下、幹部職員の責任を明確にして各職務を担当することにした。そのため、新体制の下、理事長以下リーダー層は自己のなすべき責任をより明確にし、諸会議においても、日常業務においても強いリーダーシップを発揮して業務に当たることができるようになった。その結果、職員調査においても、「管理者が現場の意見を抽出して、働きやすい職場になった」との評価の声があがっている。

重要な事項に関しては、検討・決定手順、周知手順が明確に定められ、守られている

月2回の運営会議が開催され、職場発の重要な事項は、原則として運営会議の場で検討し、施設長や法人の上部会議に向けて起案される。決定された事項については施設長決定事項として運営会議、係長会議を経てフロア会議に周知され、その内容は各会議の議事録に記載し職員が閲覧できるようにしている。決定事項のうち、利用者にかかわることについては、ホームページ、家族会、毎月の相談員のおたよりによって利用者及び家族に伝えられている。家族は、わからないことは職員に気軽に声をかけて聞く雰囲気がつくられている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
高齢者福祉に精通する理事長の指導の下、事業所を取り巻く環境を的確に把握している

理事長(施設長)は、東社協高齢者福祉協議会副会長、社会福祉法人協議会役員、都高齢福祉推進協議会委員等高齢者福祉問題に関するリーダーとして長年業界全体を指導してきた。この事業所に対しても、経営立て直しのために令和元年10月から施設長として着任し、令和2年7月からは法人の全権を掌握する理事長として、福祉行政全体及び事業所固有の課題を把握したうえで、事業所内諸会議・町会役員会等を通じて、職員・利用者・利用者家族・地域の意向をくみ上げながら中長期計画、年度計画を策定し、組織を挙げてその実現に取り組んでいる。

取り組むべき課題を明確にした中長期計画及び単年度計画を策定している

法人を取り巻く経営環境について、多面的に分析したうえで法人理念実現のための長中期計画を策定し、それに基づく単年度計画を「事業再生計画」として、①職員の確保、定着、②増収に向けた取り組み、③事務費の削減、④収益事業の開始の4課題を掲げ、それぞれに東京都高齢者福祉施設協議会「平成29年度の特別養護老人ホーム経営実態調査」、「平成30年度経営分析結果」等客観的資料と当該事業所の運営状況を比較分析のうえ、課題を明確にし、具体的事業再生計画として策定し、策定した計画に基づいた予算編成を行っている。

プロジェクトチームを立ち上げて単年度計画達成のために組織を挙げて取り組んでいる

単年度事業計画(事業再生計画)は係長会議等各委員会に伝えられ、各種委員会ではICT補助金取得・リスクマネジメント等、具体的目標を掲げ、その達成に向け活動を開始している。目標達成の為に計画策定と同時に事業所内にプロジェクトチームを立上げ、課題毎に目標管理シートを作成し、随時開催の入所調整会議、月2回定例開催される運営会議で目標達成状況を確認している。目標達成に関して問題がある場合は、その原因を分析し、課題解決の為の方策を検討して取り組んでいる。取組みについて組織内、特に一般職員層への浸透は今後の課題といえる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
職員ハンドブックを全職員に交付して、法・規範・倫理など守るべきことを徹底している

職員ハンドブックを全職員に交付して、社会人・福祉サービス事業に携わる者としての法・規範・倫理など守るべきことを徹底している。ハンドブックの第1ページには、法人理念である「地域に根差した社会福祉の実現」と、そのために遵守すべき6項目の中に「社会福祉に携わる者として法令を遵守し、自覚を持った行動をする」旨明記し、研修会等諸会議、日常業務を通じて職員に周知するとともに「虐待の芽チェックシート」を用いてその実施状況を確認している。

抑制拘束廃止委員会等、組織を挙げて利用者の権利擁護に努めている

利用者の権利擁護に関して、抑制拘束廃止委員会を毎月開催し、定例的議題として身体拘束対象者有無の確認、居室・フロアの環境確認・対応やケアについて確認を行っているとともに、年に1回「虐待の芽チェックシート」を回収し、集計・分析・確認し今後の指導方針を検討している。プライバシー保護については、利用者調査からも全員からプライバシー保護について満足しているとの回答が寄せられ、家族からも高い信頼が得られている様子が伺われる。意見、苦情、要望を積極的に汲み上げ、ケアプランに反映している。

施設長の町会役員会出席など、地域の福祉ニーズ把握と地域福祉への貢献に努めている

法人の理念として、「地域に根差した社会福祉の実践」を掲げ、事業所の透明性を高めるとともに、積極的に地域福祉への貢献に努めている。さくら苑だより、相談員お便り、介護課お手紙、月間行事予定表、ホームページの頻繁な更新など様々な発信により法人の透明性を高めている。施設長が、町会の会議・行事に参加、評議員が役員を務める町会役員会に自ら出席するなど幅広く社会全体や地域の高齢者福祉に関する情報の把握をして、地域ニーズに応え、行政や自治会、学校とも協力して地域福祉への貢献に努めている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
事業所のリスクを洗い出し、優先順位をつけてリスクに応じた安全対策を講じている

災害対策室を設け、事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスクについて洗い出し、優先順位をつけて対策を講じている。特に本年度は、コロナ禍の中で、従来からの業務サービスに伴う事故、自然災害、侵入災害に加えて感染症対策に力点を置き、外部との接触制限・施設内での消毒や隔離等ソフト面・ハード面での対策を講じている。従来の災害対応型BCPを改訂し、感染症対策型BCPを新たに加え、マニュアルを作成・配布して職員に周知・訓練するとともに、ホームページや相談課お便りで、家族と地域に伝え、協力を求めている。

幅広く情報を収集・分析し、使いやすくメンテナンスしている

理事長・施設長が福祉業界のリーダー的存在であることから、福祉事業者にとって必要な情報に常に注意を巡らし、幅広く情報を収集し分析するとともに、収集した情報および利用者・家族に関する情報をあわせて、法人文書規定として定め、ホームページ上に文書規定を公開している。1階事務所入り口に法人運営規程・指針・マニュアル・パンフレットなどを掲示し、常に閲覧可能にしている。介護記録ソフト、請求ソフトをリニューアルし、関係する職員が使いやすいようにメンテナンスしている。

情報へのアクセス権を明確に定め、情報の活用と保護に努めている

情報の管理・保護に関しては、法人として「個人情報保護に関する方針」、「個人情報保護規程」に定め、就業規則や「職員倫理規程」に基づく行動方針として職員ハンドブックに盛り込んで職員に交付し、周知を図っている。職員以外の実習生、ボランティアに対しても「個人情報保護誓約書」を提出させている。コンピューターで管理している情報については、職種・職務・職位別にアクセス権限を設け、個人別パスワードによって管理するとともに、紙ベースの情報については、必要に応じて鍵のかかる保管スペースで管理している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
事業所の求める人材像を明確にし、複数法人と協力して人材確保に努めている

事業所の理念実現の要が人材確保と育成であることを認識し、前年度までの派遣・紹介会社とコンサルタント頼みの人材採用・育成について抜本的に見直し、人材対策室を中心に計画的・効率的な取り組みをしている。採用に関しては、高齢者福祉の真の発展を考える複数法人と協働で「TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会」を立ち上げ、就職フェアを開催して成果を上げている。また、都内で開催される福祉フェアにも積極的に参加している。ただし、実習生の受入れについては、コロナ禍の影響で、今年度見るべき実績を上げることができていない。

研修制度を充実し協力関係の法人からの出向を得て、人材育成と組織力向上に努めている

最重点施策の一番に「人材確保と定着」を掲げ、姉妹関係提携法人からの出向をを受け、現場でのOJT指導体制を強化するとともに、研修体制を充実している。事業者の費用負担で資格取得を奨励し、連携法人との介護職交換研修を実施し、法人主催としてストレスケアなど年間15回の職員研修を開催、目黒区社会福祉事業団、交通安全協会、目黒区介護事業者連絡会等の外部研修に年間16回出席してその成果を組織力向上に活かしている。キャリアパス制度については、導入はしているが一般職員にまでは十分な理解を得ている状況には至っていない。

職員の意識を把握し、安心して意欲をもって働ける職場づくりに取り組んでいる

人事管理制度を明確にし、「人事管理制度の手引き」として組織内に周知している。人事考課表を明文化し的確な評価を可能にするとともに、課長面談の実施による職員意識の把握に努め、社宅制度の拡充、感染症対応手当・夜間手当・資格手当等諸手当の拡充、リフレッシュ休暇・業務見直しによる休憩時間の拡大、腰痛調査・ストレスチェック・精神科医師への相談制度導入、ワーカー室の修繕・整備による休憩室改善、相談員と看護師が連携しやすい部屋の工夫等を実施し、職員が安心して働ける環境を整備し、職員の働く意欲の向上に取り組んでいる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) ここ数年来介護人材不足の深刻化により、施設の稼働率が低下していたが、特に令和元年度に1年間で大量の退職者が出て、その他の要因も重なり、急速に経営が危機的状況に陥った。地域の福祉拠点としての使命を果たすために緊急且つ抜本的な再生策を講ずる必要を自覚した法人は、福祉施設運営に定評のある他の法人に支援を求め、7月から理事長が施設長を兼務し陣頭指揮に当たるとともに、理事会、監事、評議員会、評議員選出解任委員会のメンバーを一新し、「事業再生チーム」を設置して経営の立て直しを図ることとした。経営立て直しに当たり、我が国の福祉環境に卓越的知識を有する理事長の指揮の下、①東京都における求人状況、②施設整備の進展状況、③福祉施設における低い収益性、④新型コロナの影響、⑤介護報酬の抑制傾向等、幅広い角度から経営分析を行って事業所の抱えた課題を抽出し、「事業改善計画書」を策定、事業再生チームを中心に組織を挙げて各課題に取り組むこととした。 事業改善計画の取り組みにあたり、分かりやすく事業所の理念の第1に掲げる「地域に根ざした社会福祉の実践」にかなう「令和3年3月までに特養の全ベッドを稼働させる」を具体的目標に掲げて取り組んだ。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
「令和3年3月までに特養の全ベッドを稼働させる」を目標に掲げ、令和元年10月から組織を挙げて計画的に職員の確保を進め、事業改善計画書に沿って入所者増に取り組んでいる。令和2年3月末までに5フロア中3フロア68床を満床に、その結果の総括に基づき半年ごとの稼働率目標を定めた。令和2年度の取り組みとしては、順調に計画を達成してきた前年度の取り組みの総括に立って、上期に23名、下期に6名の新規入所者確保の目標を掲げた。平成30年1月以来低減傾向をたどり令和2年3月末に68%にまで落ち込んでいた特養の利用率は、介護職員の採用・育成状況に基づいて利用者の入所を進めた結果、令和2年11月末には88%となり、同12月末に5階の満床を確保、対策実施期限である令和3年3月末には特養100%達成が確実に見込める状況になっている。稼働率向上のためには、その前提として受け入れ態勢の拡充が必要であることから、人材確保、労働環境の改善、職員のレベルアップ、入所者へ対応等、様々な課題に対し法人のみならず、目黒区、目黒区社会福祉事業団、姉妹関係法人との連携、支援を得ながら、まさに事業のPDCAの模範を実現している取り組みといえる。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 令和元年上期まで続いた深刻な経営状況を総括の上、その根本的要因が施設基準の定員ギリギリの人数で業務遂行する事に伴う業務負担の多大さとそれを原因とする職員の離職による更なる業務負担の増大にあるととらえ、10月から事業再生計画の下、業務量軽減と人材確保の為の抜本的対策に取り組んだ。経営陣総入れ替えによる抜本的組織改革に伴い、上期に大量の退職者があったが、姉妹関係を結んだ社会福祉法人の人材対策室の協力を得て4名の出向者およびスポット勤務者5名を確保し、目黒区社会福祉事業団からの出向者3名の協力を得た。業務量軽減の為にはプロジェクトチームを立上げて現状分析を行い、①利用者の動作センサーが不足し、利用者の安全確認のため頻繁な巡回が必要になっていること、②施設の構造上横長の居室配置のため巡回やナースコール迅速な対応ができないこと、③介護記録ソフトの機能不足による記録の重複や集計作業負担、④各セクション個別ごとの記録作業による多職種連携不備、等具体的課題を洗い出した。これらの分析に基づき、、次期事業計画としての「ICT導入プロジェクトチーム」を発足し、次年度(令和2年度)ICT導入に向けて具体的準備に取り掛かっている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
ここ数年続く経営悪化要因について、①都心部における一般的な人材確保の困難さ、②事業所自体の年間の活動収益差額の低さ、③人材紹介手数料の高さ、④23区内における特養整備の進展等に関し詳細に分析し、それぞれの課題について具体的で明確な対策を掲げて取り組みを行っている。中でも、人材不足(採用難と離職増)について経営の根幹を揺るがす問題であるととらえ、人材確保と並行して職員の定着のための労働環境改善に注力した。具体的には、①出向職員導入による残業の解消、②各階への係長配置による業務の円滑化、③夕礼の採用による情報共有、④各階の職員休養スペースの改装による職員の緊張緩和を実施し、ほぼ目標通りの成果を上げることができた。更に職員の業務負担を軽減するため、業務内容の検討を行い、①情報伝達の確実化、②現場での日々の問題解決のスピードアップ、③利用者の事故減少、④リネン業者の変更など、現場からの工夫を取り入れた改善を行い、職員のモチベーションを高めた。これらの取り組みの中から、業務改善による職員の負担軽減の重要性が再確認され、ICT導入のためのプロジェクトチームとして次期事業計画に引き継いでいる。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
ホームページ、パンフレットなどで分かりやすく事業所情報を提供している

「選ばれるサービス」を目指して、ホームページの改定・更新を頻繁に行い情報を発信している。元旦の料理やクラブ活動の様子、出張売店等の年間行事、オリジナル体操や本の朗読会などレクリエーションを写真を交えて伝える他、相談室のコロナ対策や面会方法の変更などタイムリーな情報を分かりやすく伝えている。先輩職員のブログでは職員の自己紹介がされている。パンフレットは目黒川の桜並木が満開になると建物が桜色に染まることから、桜色をベースとし「一日一日、明るく、楽しく、元気で長生きしよう」をテーマに施設の概要を紹介している。

地域福祉の拠点となるべく、関係諸機関・団体と情報交換を行っている

施設長が全国老人福祉施設協議会、東京都社会福祉協議会高齢者福祉施設部会の要職を務め、東京都高齢福祉推進協議会や目黒区施設長会に関係し、福祉行政全体及び固有の問題を把握した上で、評議員とともに町会役員会に参加している。地域福祉の拠点となるべく、地域の関係者とのネットワーク構築を図りながら、災害時に備えた地域のコミュニティづくりに取り組むため、地域包括支援センターや併設の在宅介護支援センター、高齢者在宅サービスセンターと定期的に情報交換を行っている。

見学希望に対しては可能な限り希望者の要望に合わせて、相談員が対応している

見学希望は随時受け入れ、要望に合わせて相談員が対応している。パンフレットで説明しながら、利用者のプライバシーに配慮しつつ食堂、サロンや浴室、空室がある場合は居室等、施設内を可能な限り案内している。現在は、新型コロナ感染対策のため1階相談室で、パンフレットの他、苑内の写真や相談室だよりで、施設内容や基本的ルール等を説明している。見学者名簿および相談員日誌に見学者の名前や年齢等基本情報を記入するとともに、施設見学対応記録を作成している。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
事前に契約書、重要事項説明書を送付し、入所時に分かりやすく説明して同意を得ている

区から入所順位の連絡を受け、再度入所希望があるかを電話で確認をしている。入所の希望があれば、相談員が、事前面接と施設見学の調整をしている。入所決定後は、十分に時間を取って理解してもらうため事前に契約書と重要事項説明書を家族に送付し、入所時に疑問点を重点的に説明している。特別な薬や嗜好品等の出費は事前に連絡して承諾を得、看取りケアや身体拘束廃止に関する指針等についても丁寧に説明して、同意を得た上で契約を取り交わしている。入所時面談の本人や家族の意向は入所時の記録に残して暫定ケアプランに反映している。

入所時の記録、アセスメントシートに基づき個別事情に配慮した支援を行っている

入所決定者の情報は入所時の記録、アセスメントシート、暫定ケアプラン等で多職種(介護・看護・栄養・ケアマネジャーなど)が情報を共有し、入所日から適切な支援ができるよう備えている。ケアプランは入所1週間後にカンファレンスを行い支援の見直しを図り、1か月程度で通常のケアプランとしている。入所開始直後は居室担当を中心に朝夕の挨拶や日時の確認などこまめに話しかけ、コミュニケーションを重ねながら心配事には早急に対応して、利用者の不安の軽減に努めるなど個別事情に配慮した支援を行っている。

本人・家族の意向を配慮した終末期の対応に取り組んでいる

終末期にどのような医療を選択するか利用開始時に説明を行っている。退所して病院等他所に移動を希望する場合は必要な情報を提供して継続的な支援が行われるよう配慮している。看取りケアを希望する場合は、医師が看取りケアについて利用者・家族等関係者に説明し、意向をを確認している。その上で、医師・看護・介護等の多職種が話し合いながら看取りケアプランを作成して、ケアに取り組んでいる。看取り後は施設長以下関係職員が施設玄関からお見送りをするなど、家族のブリーフケアに取り組んでいる。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の施設サービス計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
介護記録ソフトを活用して個人情報の記録を一元化し、課題を明確にしている

各種帳票類の精査と保管方法ついて見直し、職員の記録の負担軽減を図った。介護記録ソフトを活用し、利用者の基本情報、アセスメントシート、ケアプラン等の記録の一元化を図った結果、利用者個々のニーズや課題が明確に出せるようになった。このソフトは全ての職員が個人別ケース記録に、日々の様子、特変事項、医療情報、アクシデントなどを入力閲覧できるため、利用者個々への継続的な支援に必要な情報を共有することができる仕組みとなった。この仕組みにより緊急時にも円滑な対応が可能となった。

ケアプランは本人の希望に沿って1か月毎の評価、6か月毎の見直しを行っている

暫定ケアプランは1か月後に見直しを行い通常ケアプランに移行している。その後は居室担当のモニタリング、多職種がアセスメントを実施し、ケアプラン会議を開催して、利用者の生活がより個別性を持ち充実した内容を持つよう、一人ひとりの思いに寄り添ったケアプランの作成に努めている。通常は1か月毎に評価、6か月毎の見直しを行っているが、状態の変化、介護度の変更や退院等についてはその都度見直しを行っている。ケアプラン会議は毎週水曜日に設定しているが、本人・家族の意見が聞ける貴重な機会であるため、開催は臨機応変に調整している。

個人別ファイル、情報共有システム、連絡ノート、朝礼夕礼で情報を共有している

個人別のフェイスシート・アセスメントシート・ケアプラン・医療情報等の紙ベースの情報は個人別ファイルにまとめて保管し、各フロアにはコピーしたファイルを事務室に置いて情報共有している。施設全体では、情報共有システムを使用して、利用者情報および施設内情報をPC内で全職員が共有している。フロア別に職員を固定化し、情報共有システムの活用の他、より細かい情報や問題などの申し送り事項を連絡ノートに記載し、朝礼と夕礼で連絡・報告・相談を行って職員間で情報を共有している。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 施設サービス計画に基づいて自立生活が営めるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 施設サービス計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者の意向や状態に応じて、生活の継続性を踏まえた支援を行っている
  標準項目3 介護支援専門員を中心に、介護、看護、リハビリ、栄養管理等の職員が連携して利用者の支援を行っている
講評
居室担当職員を中心に評価表でケアプランに基づいたサービスの実施状況を確認している

ケアプランに基づいて必要な支援が行われているか、日々の記録や評価表を使って確認している。日々の様子はフロアの職員が介護記録ソフトに記載して、居室担当が評価表により実施状況を確認している。評価は1か月毎に実施し、ケアプランの目標別に解決すべき課題、必要な支援の実施状況、目標の達成度や今後の対応について確認し、さらに充実した支援に取り組むべく半年毎にケアプランを見直している。なお、ケアプランの中身の周知を充実させること及び利用者の変化に対応したケアプランの見直しを行うことが改善すべき課題として認識されている。

入居前の利用者の意向や習慣等を把握し、継続性を踏まえた支援を行っている

入居が決まった際には、利用者や家族から日中の過ごし方や外出頻度、望む生活等を聞き取っている。その内容は課題分析に関する項目表に記録し、居室担当やフロアの職員が適宜確認してケアにあたっている。入居前に個人で携帯電話やスマートフォン、パソコンを利用している人は、入居後のコミュニケーションやゲーム等使用方法を把握して、継続して利用できるよう対応している。入居後に嗜好品などの希望が出された場合は家族、場合によっては看護師や管理栄養士と相談して量・タイミングなどを確認して提供している。

多職種間で情報を共有し、連携してケアプランの見直しを行っている

情報共有システムの活用、朝礼と夕礼による申し送り等で利用者の日々の様子や特変事項などは全職員、多職種間で確認している。毎週水曜日に介護支援専門員が司会進行を務めるケアプラン会議を開催し、本人と家族、介護職・看護職・機能訓練指導員・管理栄養士・相談員など多職種が参加している。会議では、利用者のニーズや課題を洗い出し、それぞれの部門から意見、報告を行い、利用者個別のよりよいケアプランの作成や見直しを多職種間で連携して行っている。

  評価項目2 食事の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態に応じた食事提供や介助を行っている
  標準項目2 利用者の栄養状態を把握し、低栄養状態を改善するよう支援を行っている
  標準項目3 嚥下能力等が低下した利用者に対して、多職種が連携し、経口での食事摂取が継続できるよう支援を行っている
講評
利用者の状態に応じて、一人一人にあった食事を提供している

管理栄養士は入所時のケアプラン会議に出席し、利用者や家族の意向を把握して栄養ケアマネジメントを作成し、食事形態を決定している。主食は常食・軟飯・粥・ペースト、副菜は常・一口大・粗刻み・刻み・ソフト・ペーストがあり、利用者の状態に合わせて喫食できる食事形態を用意している。利用者の栄養状態に応じて、栄養補助食品の提案をしている。また、利用者の嚥下や嗜好に合わせた観点も含めて、利用者、家族に説明している。利用者ができるだけ自分で食べられるよう、食器や食事の補助具や配膳時間や配膳方法も検討・工夫している。

管理栄養士が中心になって栄養状態を把握し、多職種が連携して栄養改善を行っている

管理栄養士は、入所時や健康状態の変化時、年1回の健康診断時の検査データや毎月の体重の増減、食事摂取量などで栄養状態を把握している。管理栄養士や言語聴覚士が、ミールラウンドを行い、利用者に声をかけ喫食状況を観察している。月1回栄養マネジメントを行い低栄養状態かを確認して、必要に応じて栄養量を検討するなどの栄養計画を策定している。また、喫食時間を要する利用者には「早出し」を行い、各フロアの介護職員や看護師、他部署との連携のもと、状況を把握し、補助食品などを使用して低栄養状態を脱するように努めている。

食事・口腔ケア委員会が中心となり経口摂取の維持・改善に取り組んでいる

利用者一人ひとりが安心・安全に喫食できるように、歯科医師、歯科衛生士、看護師、介護職員、介護支援専門員、生活相談員、管理栄養士、言語聴覚士、機能訓練指導員など多職種で構成する食事・口腔ケア委員会を毎月開催している。委員会ではミールラウンドの観察で得た情報から、食事摂取状況や嚥下状態の情報を共有し、経口維持の評価を行い、利用者個々の課題に対して各専門職の立場からの意見交換をして、計画の変更があればその都度各フロアに持ち帰り見直しをしている。

  評価項目3 利用者が食事を楽しむための工夫をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の嗜好を反映した食事を選択できる機会がある
  標準項目2 食事時間は利用者の希望に応じて、一定の時間内で延長やずらすことができる
  標準項目3 テーブルや席は、利用者の希望に応じて、一定の範囲内で選択できる
  標準項目4 配膳は、利用者の着席に合わせて行っている
講評
嗜好調査を行い、利用者の意向を聞き、日々の食事や行事食に反映している

毎年行っている嗜好調査では、管理栄養士が味付けや量についても聞き取りを行い、献立や選択食に反映している。行事食は月に2,3回提供している、管理栄養士が中心となり世界の料理や日本古来の季節に応じた行事に因んだ行事食を提供している。選択食は月1回主菜の選択食を実施している。出前の要望にも対応し、誕生日食も工夫して提供し、利用者の楽しみの一つになっている。コロナ禍で外出も制限された中で、季節を感じるように工夫している。

利用者の希望や喫食状態に合わせ、安全で楽しい食事時間の提供に努めている

利用者がゆっくり食事を摂れるように「早出し」を行うよう時間調整をしている。朝食8時から、昼食12時30分から、夕食18時から1時間とし、おやつは15時になっている。利用者の状況、要望に合わせて食事時間をずらし、開始2時間まで保管している。食事はデイルームと兼用になっている各フロアの食堂で摂ることを原則としている。食事席は原則自由で、利用者同士のコミュニケーションが取れるように調整し、要望に応えている。また、利用者の密集することを避け、時間をずらして着席し、少人数での落ち着いた食事時間を過ごしている。

温冷配膳車を使用し適温配膳を行い、食札を確認して誤配膳を防止している

毎日の食事は、温冷配膳車を使用して、あたたかいものは温かく、冷たいものは冷たく、適温で食事が楽しめるようにしている。配膳車の扉と利用者のトレーにも名札を設置して、配膳カートから出す際に一致しているかチェックし、利用者の顔を見てトレー内の名札を読み上げてチェックする体制をとっている。食事テーブルに着くときは良好な姿勢になるよう配慮しており、車イスから椅子に乗り換えて貰い、利用者の着席に合わせて配膳を行っている。食札にアレルギーなどを明記し、利用者が安全に食事をできるように、間違いなく配膳できるようにしている。

  評価項目4 入浴の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の意向や状態を把握して、できるだけ自立性の高い入浴形態(個浴、一般浴等)を導入している
  標準項目2 入浴の誘導や介助は、利用者の羞恥心に配慮して行っている
  標準項目3 認知症の利用者に対し、個別の誘導方法を実施している
  標準項目4 利用者が入浴を楽しめる工夫をしている
講評
利用者の心身状況に応じた入浴形態をとっている

一般浴・チェアイン浴(座位)・機械浴(臥位)など3種類の浴槽タイプを用意しており、利用者の心身状況に応じて週2回の入浴が提供されている。利用者の重度化があり、利用者の状況によってはベッド上での清拭も行われている。なるべく、残存機能をいかした入浴形態となるようにしているが、転倒リスクと隣り合わせであるので、常に利用者から目を離すことなく、安全に入浴できるよう支援している。

利用者の意向やプライバシー・羞恥心に配慮した入浴支援を行っている

入浴時には利用者の意向を確認し、バイタルサインのチェックによる健康チェックを基に安全に入浴できるようにしている。入浴時は利用者の身体観察を行う場面でもあり、痣や皮膚トラブルがないか、発赤など褥瘡の予兆はないかなど早期発見に努めている。同性介助の意向は入所時、または、随時確認を行っている。利用者にとっては肌をみせる羞恥心があることを理解し、バスタオルで身体を覆い、肌の露出を避け手早く対応している。利用者の持参するシャンプーやリンスを使用するなど、柔軟に対応している。

利用者の特性に配慮して入浴支援している

認知症の利用者に「お風呂に入りましょう」と誘っても拒否する場合は、時間を置いてからまた誘ったり、担当職員を交代したりして対応している。また、待ち時間を作らないなどの対応をしたり、あからさまに誘ったりしないように違う話題から入るなど対応を工夫している。「足湯をしましょう」と声をかけると、拒否無く応じてくれることもある。また、賑やかな環境を好まない利用者対応として、早めや最後の時間に案内するなど利用者の特性に配慮した工夫をしている。一人ひとりが入浴を楽しめる工夫が必要であり、今後の検討課題である。

  評価項目5 排泄の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の意向や状態に応じ、自然な排泄を促すよう支援を行っている
  標準項目2 排泄の誘導や介助は、利用者の羞恥心に配慮して行っている
  標準項目3 研修等によりオムツ交換、トイレ誘導等の排泄介助方法の向上に取り組んでいる
  標準項目4 トイレ(ポータブルトイレを含む)は衛生面や臭いに配慮し、清潔にしている
講評
排泄リズムを把握し、利用者の様子などからトイレ誘導を促している

利用者の排泄リズムは、排泄チェック表に記録して読み取っている。定時の排泄介助に加え、排泄パターンを把握したうえで交換頻度やタイミングの調整をして取り組み、利用者に適した排泄物品を選択して対応している。また、ラジオ体操を1日2回実施して、利用者が身体を動かすことで、スムーズな自然な排尿・便を促す一助にしている。利用者の身振りなど、そわそわした様子が見られたときには声掛けし、トイレ誘導を促している。トイレ誘導時には、本人にしか分からないような声掛けや居室でオムツ交換時にはプライベートカーテンを用いている。

利用者の羞恥心に配慮し、排泄介助方法の研修も実施している

トイレの誘導時には、周りの利用者に聞こえないよう声量に気配りして、耳元で呼びかけたり、サインを確認して対応している。利用者一人ひとりの残存機能を把握して、安全確保に努めている。トイレ誘導後は、便座に着座を確認して、トイレの外で待機することを基本にしている。オムツメーカーの協力を得て、排泄委員会が主催する研修が実施され、排泄ケア向上に取り組んでいる。パットやオムツの機能を最大限活かして正しく排泄ケア用品を使用することで、利用者の負担や不快感を減少する排泄ケアを行う事を学んでいる。

清潔な排泄環境の維持に取り組んでいる

トイレの清掃は、外部清掃業者によって1日1回行われており、介護職員による見回りにより必要に応じて随時清掃を行っている。トイレ使用後、便座、手すりなど次亜塩素水による消毒を行っている。居室内で使用するポータブルトイレも、その都度清潔が保たれるように対処している。オムツ交換後にも、その都度消臭スプレーを使用して臭気を無くしたり、置き型の消臭剤を設置しているが、更なる消臭対策が検討されている。

  評価項目6 移動の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態や意向に応じ、できるだけ自力で移動できるよう支援を行っている
  標準項目2 ベッド移乗、車イスの操作など移動のための介助が安全に行われている
  標準項目3 利用者が快適に使用できるよう車イス等の環境整備が行われている
講評
利用者の状態や意向に応じて移動・移乗を支援している

車イス利用者は90%余に達しており、移動手段の主なものになって生活している。機能訓練指導員・看護師による指導・助言に基づき移動・移乗方法をカンファレンスで検討され、個別支援計画に挙げられて周知されている。麻痺や拘縮のために二人介助での支援が必要な利用者も多くなり、居室内のベッドの位置や車イスの乗降位置についても、利用者の残存機能に働きかける工夫が必要であり、適切な介助ができるように取り決めている。利用者一人ひとりにあった車イスが選定され、利用者が自分の身体の一部として楽に使用できるように支援している。

居室内のベッドの配置や、二人介助等、安全な移動ができるよう工夫している

居室内で頻回にトイレに行く利用者には、利用者が安全に移動できるように動線を短くして安全を確保し、移動できる環境を整えている。また、利用者の介護・身体状況にあった車イスを使用し、二人介助ができる空間を整えている。利用者にとって安全で、介護者にとって負担が少ない移乗ができるように、スライディングボードを用意して移乗の手順を決め周知している。フロアの介護者にはカンファレンスで周知している。

車イス等の保守点検は、利用者が安全・安楽に使用できるよう行っている

車イス・歩行器・シルバーカー・杖などの移動用具は、保守の程度によって業者や職員が修繕して、安全に使用できるようにしている。各機器の清掃も曜日を決めて行っている。日常に使用する前には、必ず各担当者が安全確認を行っている。故障が発見された場合は、メーカーに依頼して修理する仕組みも整っている。また、利用者の身体に合った車イスの選定を行い、場合によっては、必要なタイプの車イスを購入して、利用者が安全・安楽に過ごせるように支援している。

  評価項目7 利用者の身体機能など状況に応じた機能訓練等を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに応じた機能訓練プログラムを作成し、評価・見直しをしている
  標準項目2 機能訓練のプログラムに日常生活の場でいかすことができる視点を入れている
  標準項目3 機能訓練指導員と介護職員等の協力のもと、日常生活の中でも機能訓練を実施している
  標準項目4 福祉用具は、定期的に使用状況の確認をし、必要に応じて対処をしている
講評
利用者の入所時に多職種で身体状況を確認して個別機能訓練計画を作成している

入所時に全ての利用者に個別機能訓練計画を作成している。サービス担当者会議で、機能訓練指導員、介護支援専門員、生活相談員、介護士、看護師、管理栄養士が専門的見地から利用者の身体状況を確認し、利用者にとって適切な計画になるようにしている。その後、3ヶ月毎に見直し、下肢筋力を維持し、日常の動作の中でしっかり立位がとれるなどの訓練目標を挙げて、利用者一人ひとりが具体的に筋力を鍛える訓練内容を明示している。利用者・家族にその結果を説明して同意をえている。

利用者の意欲向上や楽しみを見出せるようアクティビティなどを組み込んでいる

利用者の意欲が向上し、楽しみを見出せるようなアクティビティを行っている。アクティビティに機能訓練の要素を盛り込んでいる。1日2回のラジオ体操を行ったり、利用者に好評なカラオケで大きな声で歌ったり、食事の前に全員で口腔体操をしたり、輪投げ、脳トレクイズやゲームをするなど楽しみながら身体を動かせるように工夫している。しかし今年は、声をだす活動の代わりに、ソーシャルディスタンス保持をしながらバーに捕まって立ち上がるなどの起立訓練を行い、下肢筋力維持・向上を目指すことを大切にして支援している。

介護職員と協力して、日常生活の場面で機能訓練ができるようにしている

立位保持や方向転換などの起立移乗動作が維持できるように、膝立、体位変換、腰上げなどの体位変換、トイレでの立ち上がりや移乗、車イスの自操、整容時の腕の挙上、自力での口腔ケアなど、日常生活のあらゆる機会を機能訓練と捉え、機能訓練指導員と連携し、職員と協働して支援している。介護度の重度化に伴い、座位やベッドでのポジショニングも大切であり、機能訓練指導員は介護職員に適切な福祉用具の使用方法を呈示している。年4回褥瘡予防委員会を開催、利用者の皮膚の状態観察の強化、エアマットや体位変換マットの導入を行っている。

  評価項目8 利用者の健康を維持するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態に応じた健康管理や支援を行っている
  標準項目2 服薬管理は誤りがないようチェック体制の強化などしくみを整えている
  標準項目3 利用者の状態に応じ、口腔ケアを行っている
  標準項目4 利用者の体調変化時(発作等の急変を含む)に、看護師や医療機関と速やかに連絡が取れる体制を整えている
  標準項目5 終末期の対応をすでに行っているか、行うための準備が行われている
講評
看護師を中心に利用者の体調管理を行い、異常の早期発見に努めている

年1回の健康診断や内科、精神科、整形外科の医師の健康チェックや相談による健康管理に取り組んでいる。各フロアには看護師を配置して、日々のバイタルチェックなど利用者の健康状態の把握や誤嚥・感染症などの予防策、体調異常の早期発見を日常的に行い、医師から必要な指示を受けて対応している。各階に酸素吸入器を設置し、医務室近くにはAEDを設置して緊急に対応している。嚥下機能についても、歯科医や歯科衛生士から助言をうけて口腔ケアの向上を図っている。体調変化についても、その都度家族にこまめに連絡している。

服薬管理を徹底し、誤薬防止に取り組んでいる

服薬管理マニュアルに沿って、服薬チェック表を使用して服薬管理が行われている。処方された内服薬等は薬局から医務室に届けられる。各階に内服薬を配る際に、看護師でダブルチェックし、各階では届き次第介護士がもう一度チェックする。配薬時にも介護士がダブルチェックを行い、それぞれ分業して行う事でチェック機能を働かせている。配薬の際は、2つ以上の内服薬を手に持たず、利用者の名前とプレートの名前が一致していることを確認して、各利用者に渡して服用してもらっている。内服後は、はき出さないように飲み込み確認を行っている。

「看取り介護指針」を整備し、利用者・家族の支援を行っている

「看取り介護指針」に則って、昨年度は11名の看取りを行った。入所時から看取りに関する利用者・家族の意向を聞いている。看取りケアを行うために利用者・家族、多職種でカンファレンスを行い、介護支援専門員は看取り介護を施設サービス計画に入れ、利用者・家族に看取りの計画を説明し、同意を得て看取りケアを開始している。状態が変化した際には医師から説明が行われている。家族や主治医、看護師、介護職員など他職種が連携し、利用者が穏やかに過ごせるよう支援している。看取り終了後1週間を目安にカンファレンスを実施し、振り返っている。

  評価項目9 利用者が日々快適に暮らせるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 起床後、就寝前に更衣支援を行っている
  標準項目2 起床後に洗顔や整髪等、利用者が身だしなみを整える際に支援を行っている
  標準項目3 利用者が安定した睡眠をとることができるよう支援を行っている
講評
利用者の意思を尊重した上で更衣支援を行っている

起床時、就寝時の更衣支援は希望する利用者に対して行う事を基本としている。アセスメントや日常の会話から、利用者一人ひとりの生活習慣、こだわりや意向を確認したうえで更衣支援を行っている。しかし、介護度の重度化で拘縮などがあり、更衣支援の難しい利用者が増えている。利用者の自立度・希望を勘案しながら、創意工夫をして介助している。支援時には利用者の好みの衣類を提供するようにしている。更衣支援時には、介護者とマンツーマンでの会話も楽しめるよう工夫している。

整容支援を行い、身だしなみを整えることを大切にしている

朝、起床時にはホットタオルを手渡して、顔を拭いてもらったり、ヘアブラシで髪を整えられるように支援している。眼脂の拭き取りも丁寧にするように利用者に声掛けし、拭き残したところを職員が支援するようにしている。腕を挙げることが困難な利用者にも整髪を行っておしゃれな自分を確認し、腕のストレッチをする気持ちで取り組んでもらっている。また、定期的に理容師や美容師が訪問して行う理髪のサービスについては、本年度は新型コロナ感染症の状況に応じて、実施した。

安定した睡眠が取れるように、個別支援に取り組んでいる

利用者が安定した睡眠をとれるように、昼夜逆転の要因を多職種で話し合い、その要因を解消、緩和する取り組みを行っている。日中のレクリエーション活動の参加状況、1日2回のラジオ体操の参加の促しをしている。夜間帯は騒音や照明に留意して睡眠の妨げにならないようにしている。室温・湿度を適正に保ち、良眠できるよう配慮している。利用者一人ひとりの希望に合わせて、生活習慣などに配慮して就寝時間を決めている。また、なかなか寝付けない利用者には、職員が傾聴し、温かい飲み物を飲んでもらい、落ち着いた気持ちになれるようにしている。

  評価項目10 利用者の施設での生活が楽しくなるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 施設での生活は、他の利用者への迷惑や健康面に影響を及ぼさない範囲で、利用者の意思が尊重されている
  標準項目2 利用者の意向を反映したレクリエーションを実施している
  標準項目3 認知症の利用者が落ち着いて生活できるような支援を行っている
  標準項目4 利用者の気持ちに沿った声かけや援助を行っている
講評
健康に配慮しながら、利用者一人ひとりの意思を尊重して支援している

例年、家族との外出や外泊は原則自由とされており、事前の申し出によりいつでも対応している。他の利用者への影響がない限り、利用者本人の希望を受けて飲酒や喫煙も対応することを原則としている。喫煙は事業所内の所定の場所でのみ可能である。飲酒を希望する利用者には医師の許可を得て、健康に影響がない場合には家族に用意してもらい、適量を決めて、自室で楽しめるよう支援している。好きな菓子を食べたい利用者には、管理栄養士と相談して量を決め、家族に用意をしてもらい、決められた量を食べるなど楽しむ事ができる。

コロナ禍で諸行事開催が難しく、感染症対応をし工夫して取り組んでいる

コロナ禍のために、予定したイベントやレクリエーションの中止あるいは規模縮小をしなければならなかった。ボランティアによるクラブ活動も中止となり、全体で集まっての趣味活動はできなかった。職員が各階毎にイベントや、レクを実施し、利用者が楽しんだ様子をPCで情報共有した。家族の面会も接触も避けなければならず、ガラス越しの面会になっている。その反面、職員はゆとりを持って利用者とのみ向き合う事ができ、会話も増え、利用者のニーズの把握が深まり、収集した情報を基に利用者が求めている新たな活動へ拡がる可能性も生まれている。

認知症の利用者も落ち着いて過ごせるように取り組んでいる

不穏な様子を見せている利用者は、自分の不快な身体状態を介護者に説明できず、ディスコミュニケーションに陥った状態を引き起こしていることがある。利用者の便秘や睡眠不足など原因と考えられることを探ったり、対応職員を変えたりし、静かに隣りに寄り添ったりして見守っている。また、気持ちを切り替えられるように、利用者の好きな歌を一緒に歌うなど、利用者の気持ちに寄り添い、理解を深めて対応するように努めている。認知症ケア専門士が在籍し、実際に現場に入り、各フロアの介護職員の声掛け、対応、環境整備などについて助言している。

  評価項目11 地域との連携のもとに利用者の生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 定期的な散歩や外食、遠出など外出の機会を設けている
  標準項目2 利用者が地域の一員として生活できるよう、地域住民が参加できるような行事など、日常的な関わりが持てる機会を設けている
  標準項目3 地域の情報を収集し、利用者の状況に応じて提供している
講評
行動指針に「社会参加の促進」を掲げ、外出機会を設けている

事業所は目黒川の桜並木に面した住宅街にあり、桜の満開時には職員が付き添ってフロアやベランダから花見を行っている。今年度、当初予定していた周辺を散歩しながらの花見は、新型コロナの影響により外へ出ての花見は行うことができなかった。行動指針に「施設の中の活動に止まらず、必要に応じて外出の機会を設けること」を掲げており、従来は近隣のカフェまで出向いて好きな飲物を購入したり、近くの自動販売機を利用しているが、新型コロナウイルスのため、外出機会が中止となっている。

災害対策、医療連携、季節行事、地域交流室の活用の視点から地域連携に取り組んでいる

今年度の事業再生計画の柱の1つとして、災害対策・医療連携・行事参加・地域交流室の活用の視点からの地域連携が示されている。地域の防災訓練に参加して日頃からお互いの顔が見える関係を築く、医療・介護を一体的に提供する仕組みづくりに参加する、春や秋の地域のまつりに施設入口前のスペースを地域団体に提供することに加え地域のイベントに参加して近隣住民との関係を深める、近隣の小中学生と高齢者との交流を図る、1階フロアをリニューアルして地域交流スペースを設けるなど、今期の計画はコロナ禍のため中止となっている。

ボランティアを積極的に受け入れ、利用者の地域交流を支援している

事業所はボランティアを積極的に受け入れており、令和元年度のボランティアの延べ人数は傾聴320人、音楽・茶道・華道・書道クラブ関連は合計300人を数えている。書道・茶道・華道クラブは毎月開催し10~20人の利用者が参加、音楽クラブは毎月2回開催し参加者が30人~50人と最も多い。クラブ活動は住区住民会議地域交流会、各老人会・家族会・専門学校の学生等の協力により開催されており、利用者と地域との交流の貴重な機会となっている。今年度は、感染症予防のため、職員が仲介し利用者に接触しない形での活動とした。

  評価項目12 施設と家族との交流・連携を図っている 実施状況
  標準項目1 利用者の日常の様子を定期的に家族に知らせている
  標準項目2 家族や利用者の意向に応じて、家族と職員・利用者が交流できる機会を確保している
  標準項目3 家族または家族会が施設運営に対し、要望を伝える機会を確保している
講評
広報誌さくらだより、相談課からのお知らせ、個人別お便りで定期的に情報を伝えている

「広報誌さくらだより」は、利用者家族や家族会に向けて年4回各200部発行し、新人職員や新型コロナ対策を写真入りで紹介している。家族向けには「相談課からのお知らせ」や「個人別お便り」を毎月作成し、請求書・領収書に合わせて送付している。「相談課からのお知らせ」はクリスマスや年末年始のイベントを写真入りで紹介する他、感染症対策等を紹介している。「利用者別お便り」は担当職員の手書きで利用者の様子を伝えている。家族アンケートでは「毎月封書でのお便りが嬉しい」との好意的な評価が寄せられている。

面会、行事やクラブ活動の際に家族と職員が交流できる機会をつくっていた

例年では家族の面会件数は毎月約300件あって、面会の際にはゆったりと面会でき、職員に話が聞けるようカフェテリアなどの場所を設けていた。また、夏祭り、年忘れ会、お花見等の行事や、毎月開催しているクラブ活動等に家族が参加し、職員と交流できる機会をつくっていた。今年度は、新型コロナウイルス感染症防止のため家族の面会も接触を避けなければならず、ガラス越しの面会やリモート面会となり、家族が参加できる行事やクラブ活動は中止となっている。

意見箱の設置場所を変更し、家族アンケートで家族の意向を把握している

例年、家族会運営会議や家族懇談会を開催し、施設と家族とのコミュニケーションを図っていたが、コロナ禍のため中止となった。家族の意見を把握するために設置している意見箱を意見を入れやすいエレベーター前に設置変更し、新しいポストにして改めて意見を入れていただくよう促したが、面会が中止となり現在は活用されていない。家族アンケートは7割弱の回答があり、面会ができない状況の中で、感謝の気持ちを伝える家族が多いが、外出や面会の中止などで利用者の身体が弱体化する不安を伝える意見も出されている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い、利用者のプライベートな空間への出入り等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
個人情報は個人情報保護方針、個人情報保護規程等に基づいて管理している

法人の個人情報保護に関する方針及び個人情報保護規程、個人情報の利用目的及び取り扱いについて、プライバシー保護マニュアル等に基づいて、個人情報の管理やプライバシー保護に努めている。利用者及び家族には個人情報の取り扱いについて丁寧に説明し、同意書を得ている。家族あての請求書や手紙などの書類はメールボックスに入れて家族の来苑時に受け取ってもらう仕組みとしているが、来苑が難しい家族や希望者には郵送をしている。現在は新型コロナ感染対策のため家族の来苑を制限しているため、全て郵送している。

プライバシー保護マニュアルを定め個人の尊厳を最大限保障するよう努めている

法人は個人の尊厳を最大限に保障するためプライバシー保護マニュアルを定め、日常生活、入浴時、排泄時、配薬時の職員の対応方法について具体的に示している。日常生活では居室には必ずノックして入る、利用者の記録は施錠可能な保管庫に収納する等4項目、入浴時や排泄時は衣服の着脱時の配慮や同性介助等6項目などを示している。また、セクシャルハラスメント宣言、パワーハラスメント宣言や年1回の虐待チェックシートでの点検等により利用者の権利擁護に努めている。

職員倫理規程及び具体的行動指針に基づき主体性と個性を尊重した支援を行っている

福祉サービスに関わるものとして守るべき心得や倫理を徹底するため、職員ハンドブックを職員全員に配布している。職員倫理規程では「利用者の主体性、個性を尊重し、自己選択や自己決定ができるよう支援する」ことを示し、具体的な行動指針として、「本人の選択の機会が得られること」「利用者の生活歴をよく知り、施設利用までの生活習慣を尊重するように努めること」などを示し、職員が指針に違反する場合は、懲戒処分の対象になると位置付け、人権を尊重した支援に努めている。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
講評
マニュアルに関する指針を作成し、目的・存在意義・種類・制定や見直し等を示している

法人では各種指針・マニュアルとして、業務・医務・新人研修等8種類の業務関連、緊急時・AED・BCP等6種類の緊急時関係、運営・就業等7種類の指針・マニュアルを制定し、業務の標準化を図っている。また、マニュアルに関する指針を作成して、各種マニュアルはサービスを提供するにあたり、利用者の快適性・安全性・効率性・公平性等を担保するために制定するものとし、職員は各種マニュアルを熟読・理解し、実践をしなければならないと定めている。マニュアル類は各職員がいつでも確認できるよう職員室等閲覧しやすい場所に設置している。

マニュアルは定期的に見直しを行い、緊急事態には臨機応変に対応している

マニュアルは年1回必ず見直しを行い、修正・見直しを行った場合はその時期と内容を必ず明記するものとしている。マニュアルはサービスのよりどころではあるが絶対的なものではなく、対応方法についてマニュアルに記載がない場合や、マニュアルでは充分なサービスが提供できないなどの緊急事態の場合には、その状況に合わせて臨機応変に対応している。その後マニュアルを見直している。制定や変更の必要が生じた場合は、必要に応じて委員会やフロア会議にかけて、職員や利用者からの提案を反映して、制定・変更を行っている。

ICT導入による業務水準の向上に取り組んでいる

多職種の連携強化を図るとともにリスクマネジメント強化、業務量軽減によるサービスの向上を目的として、プロジェクトチームを立ち上げ、ICT機器の導入と活用に取り組んでいる。ICT選定にかかわるコンサルタントを招き、4月から月1回の会議を開催し、6月にICT活用促進事業費補助金を申請、11月から導入開始と、計画通り着々と準備を進めている。今後、更に介護ロボットの導入など業務の効率化と介護業界における人手不足の中での業務水準向上の実現が期待される。