東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和元年度(2019年度)
サービス名称 就労継続支援B型
法人名称 社会福祉法人江戸川菜の花の会
事業所名称 るーぷ
評価機関名称 株式会社 日本能率協会総合研究所(令和3年3月31日までの評価機関)

コメント

利用者調査は本人と個別に面談し、聞き取り形式で行いました。聞取調査を実施してコメントを求め、利用者本人の意向や意見、感想などの実態把握に努めるとともに、利用者調査を補完するものとして郵送による家族アンケート調査も実施しました。家族からは21件の回答がありました。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)「共に生きる」ということを法人の拠って立つ原点とします。それは共生社会の実現を目指すという事です。 2)障がい者一人ひとりが基本的人権を享有する個人として尊重され、あらゆる場面で一人ひとりが光り輝く存在になることを支援の基本とします。 3)障がいのある人の思いの実現を基本に据え、利用者やご家族の生きづらさによりそい、利用者のライフステージに応じた支援を行っていきます。 4)知的障がいのある人たちを主な対象として、就労支援事業に取り組んでいきます。 5)障がいのある人が「地域」の中で安心して生活できるよう、関係機関との連携をして利用者を支えていきます。地域貢献するとともに地域との良好な関係を築いていきます。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

〇利用者さんひとりひとりの個性を理解して利用者さんに寄り添った支援を行う。 〇利用者さんの作業がしやすい環境を意識しながら作業手順を考えられるよう気配り目配りが出来る。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

〇利用者さん個々の人権尊重をした支援を行ってもらいたい。 〇受注作業に対しても責任を持って対応してもらいたい。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 個別支援計画書の策定からサービス提供までの一連の流れを通じて、サービス提供を円滑に行っています

サービス提供から提供後の確認までの流れは、①支援相談員がサービス利用計画を作成する、②アセスメントシートで現状を把握し、個別支援計画書を作成する、③利用者の日々の状況は月間記録を通して詳細に把握する、④中間評価及び年間評価を行って全体の評価を行う、となっています。この一連のステップでは、相談支援事業所の支援相談員とは支援計画づくりで協働していて、モニタリングの結果により必要に応じて個別支援計画書を見直し、利用者の変化にも対応しています。こうした対応により利用者への支援を円滑に行う仕組みを構築しています。
2 作業内容や担当する利用者を適切に振り分けるとともに、作業を効率的に行えるように段取りしています

受注作業の内容は事務所内に整理・保管してあり、日々の作業についてはホワイトボードに掲示するとともに、作業テーブルには当日の作業内容と利用者の名前を記載した小ボードを置いて、利用者に周知しています。また、利用者個々の特性を踏まえて、電話磨きの作業は各利用者の作業の進捗状況を写真で示すなどの工夫を実施していて、こうした作業手順は一覧を事務所に保管して活用します、さらに職員が作業中にも利用者に的確に指示することで、作業の手戻りや不良品などを減らすことにつなげ、受注した数量を確実に納品するための対策を講じています。
3 利用者の特性を理解するとともに、周囲の理解を得ながら業務に支障ないように対応しています

利用開始後1~2週間は利用者の作業を職員が見守り、就労に向けた支援を行い、利用者の障害の状況に応じて対応しています。声を出しながら作業する利用者もいますが、声が出ていても手が動いています。所長や職員は、声を出している間も手を動かし、決められた数量や品質が維持できていることを理解していて、そのまま任せています。また、就業開始時刻に間に合わない利用者については、他の利用者に「仕事は時間給で評価し、作業時間に合わせて給与を支給しています」と説明して、他の利用者の理解を求めるなど業務に支障が出ないようにしています。

さらなる改善が望まれる点
1 職員個々の状況が異なるため、個人別の育成計画の必要性が高いものと思われます

入職1~2年目の新任研修や3~4年目の初任者研修、5年目以上の中堅研修、全職員対象の全体研修など、法人の階層別研修が整備されています。しかし、当事業所では入職してくる職員が新卒者、業歴者が混在していることもあり、階層別研修が必ずしも適合していないケースも少なくないようです。また、職員の経歴など個々の状況が異なるため、職員別の育成計画を策定する必要性が高いと所長は認識しています。職員自己評価結果でも、「育成計画が自身の意向や経験に基づいている」との項目の評価は低く、職員別の育成計画が重要であると考えます。
2 作業を分解して共通性・個別性を確認して手引書、マニュアル類を作成することで、利用者の指導の実効性が高まるものと考えます

現在、箱折り、電話磨き、ポケットシャープナーづくりなどの手順書により利用者を指導しています。一方、利用者調査では「別の仕事をしてみたい」といった、新しいことに積極的に関わりたい意向を示す声もありました。こうした声に応えるため作業別・利用者別の手引書の作成を検討してはどうでしょうか。現状では手順が変わると指導をやり直す状態になることが多いようですが、電話磨きではこれに類する対応を行っています。作業を分解して共通性・個別性を洗い出し、利用者に使いやすい、職員も指導しやすい手順書を検討してみてください。
3 地域住民との交流の機会を増やすとともに、事業所の活性化につなげるための新事業の展開も検討してみてください

地域と幅広く交流を図ることは、事業所の存在意義に地域の理解を得られる機会となるばかりでなく、災害緊急時などにおいて地域住民の協力支援を得られやすくなることが期待できます。具体的な例では、月1回の体操の時間での植え込みの清掃活動などが挙げられ、また、取り組みを検討している「認知症のオレンジ協力隊」活動も考えられます。さらに、白鷺特別支援学校や障がい者との接点もある葛西工業高校などの地域の社会資源との協働による、事業の創出も検討してはどうでしょう。慈善活動や事業活動につながる地域との交流を検討してみてください。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 虐待防止について皆で話し合う場を設けるなどして、職員の意識を高めています

法人内に虐待防止委員会を設置して、何か申し立てがあったり不適切な場面を発見したら速やかに対応することとしていて、作業室には「障害者虐待の相談・通報・届出先」を掲示しています。独自の虐待防止セルフチェックリストを法人が作成していて、各職員がこれを活用して自己チェックしています。当事業所では、この自己チェック結果や虐待防止のマニュアル等を基に虐待防止について全職員で話し合う場を設けていて、意見交換を通じて意識を高めています。所長は現場で気になる言動に気づいた場合は、すぐに声掛けして注意を促すようにしています。
関連評価項目(虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている)
2 ★ わかりやすい掲示物を作成し、利用者や展示会来場者などに的確に周知しています

以前の掲示物は、ボランティアや実習生に注意事項として「挨拶の練習」などを伝える資料に留まっていました。現在は、利用者に社会との関わりを認識してもらうため、「ほうれんそう(報告連絡相談)、かくにん(確認)」や「ゴミなどの捨て方」「休憩時間の過ごし方」「心得(まずは自分のことをきちんとやる)」などの多様な内容を大きな字を使って書き出し、掲示しています。また、雇用促進フェアでは展示用のパネルを用意して、一日の流れや年間行事、各作業(電話磨き、箱折りなど)を写真と文章で紹介して、来場者に向けてアピールしました。
関連評価項目(個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている)
3 ★ 家族・保護者との情報共有と周知を徹底し、協力関係の維持を図り支援しています

事業所では家族等と常に連携して利用者支援を行っていくことを積極的に取り組んでいて、利用者の情報を家族等と事業所が連絡を取り合い、常に共有できるように注力しています。具体的には電話や書面、連絡帳を使用して事業所と家族・保護者の間で日常的に情報共有を行っていて、連携を深めるようにしています。さらに事業所の情報誌やお知らせを発行して家族・保護者に配付していることが挙げられ、家族会の役割を補完する茶話会を開催し、情報共有と協力連携の理解を得る機会を増やすことにも尽力しています。
関連評価項目(利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:調査は登録している利用者全員を対象としました。
・調査時点では、「就労継続支援B型」で計25名が対象となりました。
・属性では、性別では男性16名・女性9名、全体の平均年齢は36.9歳です。 



調査方法:聞き取り方式  
調査方法は聞取り方式を採用しました。
・聞取り調査では相談室や事務室を利用し、一人当たり20分程度で実施しました。
・回答内容が全般に不明確な利用者の結果は除きました。

利用者総数 25人
アンケートや聞き取りを行った人数 25人
有効回答者数 22人
回答者割合(%) 88.0%

総括
・全体として満足状況は良好です。肯定割合が高い項目は、「1.困った時の支援」「2.設備の安心な利用」「3.利用者同士の交流や関わり」「18.所内の清掃、整理整頓」「19.職員の接遇・態度」「20.けがなどへの対応」「23.プライバシー保護」「24.個別の計画作成での対応」「25.計画などのわかりやすい説明」で、特に「18.所内の清掃、整理整頓」は全利用者が肯定しています。また、「17.工賃支払いの仕組みの説明」の評価も良好です。さらに、総合的な満足状況も良好です。 ・具体的な意見では、「今まで通りでよい」「楽しく仕事ができる」といった、良好なものがありました。その一方で、「他の利用者との関わり方」「異なる仕事に携わること」について、改善を求める意見がありました。 ・家族アンケートでも「19.職員の接遇・態度」「20.けがなどへの対応」「24.個別の計画作成での対応」などで評価が高くなっていますが、「16.知識の習得や能力向上」「17.工賃等の仕組みの説明」ではまだ十分とはいえないようです。

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は91%と高く、評価は良好です。 ・具体的な意見では、「助けてくれます」「作業の疑問に答えてくれます」「こちらから頼むとやってくれます」など、良好な意見がありました。
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は91%と高く、評価は良好です。 ・具体的な意見では、「危ないところなどはありません」など、良好な意見がありました。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は91%と高く、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「楽しくやっています」などがありました。一方、「他の利用者とはあまり交流はありません」といった声もありました。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 18人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は82%となっています。 ・具体的な意見では、「仕事をやっていると、毎日「いいな」と感じます」などがありました。一方、「役立っているか、よくわからない」といった声もありました。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 19人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は86%と、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「工賃のことを書いた紙をもらいました」「工賃は、いろいろ書いた紙と一緒に袋に入れて渡してくれます」などがありました。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 22人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は100%です。全員が「清掃、整理整頓」が行き届いていると評価しています。 ・具体的な意見では、複数の利用者から「いつもきれいです」などという意見がありました。
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 21人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
・肯定割合は96%と高く、非常に良好な評価です。 ・具体的な意見では、「みんなやさしい先生です」「問題はありません」「もう一度聞きなおしたとき、丁寧に説明してくれました」などがありました。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 20人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
・肯定割合は91%と高く、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「具合の悪い時、病院に連れて行ってくれました」「風邪で休んだ時、体調を気にしてくれました」「インフルエンザに罹った時、相談員が丁寧に対応してくれました」などがありました。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 18人  どちらともいえない 0人  いいえ 2人  無回答・非該当 2人 
・肯定割合は82%となっています。 ・具体的な意見では、「止めてくれると思います」「けんかはやめて、話を聞いています」などがありました。一方、「けんかはないのでよくわからない」といった声もありました。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 17人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 2人 
・肯定割合は77%となっています。 ・具体的な意見では、「体操の先生が生活についてよく気にしてくれる」などがありました。
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
・肯定割合は91%と高く、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「大丈夫です」「守ってくれます」などがありました。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
・肯定割合は91%と高く、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「箱折りの作業を続けたいですか、と聞かれました」「箱折りができるようになる、という目標があります」などがありました。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 20人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
・肯定割合は91%と高く、良好な評価です。 ・具体的な意見では、「毎日の作業はホワイトボードに書き出してあります」「分かりやすく教えてくれます」「仕事が滞るとき、丁寧に説明してくれました」などがありました。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 17人  どちらともいえない 2人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
・肯定割合は77%となっています。 ・具体的な意見では、「すべての職員に言えます。言えば対応してくれます」「職員はみんな言いやすいです」「言えば対応してくれます」などがありました。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 14人  どちらともいえない 1人  いいえ 5人  無回答・非該当 2人 
・肯定割合は64%となっています。 ・具体的な意見では、「知っています」「教えてもらいました」「掲示板に書いてあります」などがありました。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
法人の理念・ミッション等を踏まえて、事業所が目指しているものを説明しています

「福祉事業所として何を目指しているか」は、年度初めの職員会議において所長から毎年、繰り返し伝えています。具体的には、法人の理念を解説した「私たちが目指すもの」や法人のミッションを明示した文書を配付して、「共生社会の実現を目指す」ことを説明し、運営方針等を職員に伝えています。事業所の運営方針や重点目標は法人の理念に基づきながら事業所固有の事情を加味して設定されていて、目指していることが明確になっています。職員の意識も、自己評価結果では約9割の職員が「事業所が目指していることを理解している」としています。

事業所の幹部層のそれぞれの役割と責任を整理し、文書での明示が必要と思われます

事業計画書には所長、副所長、サービス管理責任者などの役職を置くことが明示されていて、今年度は役割分担を図って、副所長がサービス管理責任者を兼務することとなっています。それぞれの役割と責任について、文書による明示はありませんが、職員には口頭で説明しています。所長が兼務していたサービス管理責任者の役職を副所長が兼務することになり、副所長は事業全体の状況や各利用者の特性などを把握するとともに、務めている虐待防止部会の内容を職員に伝えるなどしています。計画にこうした状況を踏まえた役割・責任を明示してはどうでしょう。

皆で決定する際には、叩き台となる案の提示の仕方を工夫する必要があるかも知れません

重要な案件のうち事業所内で決定できるものについては職員会議(月1回)や支援員会議(適宜開催)など、全職員が参加する会議で話し合って決めるということを基本としています。所長は、職員会議で検討する前にたたき台の案を考えるものの、最終的にはできるだけ職員の意見を意思決定に反映したいと考えています。しかし、職員自己評価結果では、「重要な意思決定の内容と決定経緯を知らされている」と認識している職員の割合は約3割弱にとどまります。たたき台の案に対する議論、意見の反映などの方法を工夫をする必要があるかも知れません。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している ×
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
満足度調査のほか個別面談や家族会等を開催し、利用者と家族等の意向を確認しています

年度末に利用者満足度調査を実施していて、利用者本人および家族等の意向を確認するようにしています。調査結果を精査し、今後の対応等について検討していて、調査結果、検討結果を家族等に周知しています。また、利用者との個別面談を年2回実施していて、2回目は家族等も交えた三者面談とし、本人と保護者それぞれの意向の確認もしています。さらに、家族会は年4回実施し、法人や事業所の活動・取り組みに関する説明を行って理解を得るとともに、家族等全体の意見を確認しています。

事業計画づくりへの職員の参画意識を高める工夫を期待します

中・長期計画は法人が策定したものがあり、事業所ではこの法人の中・長期計画に踏まえて年度の事業計画を策定しています。事業計画は最終的に所長が策定していますが、策定にあたり事前に職員から意見などを募り、重点目標の設定に活かしています。しかし、職員自己評価結果を見ると「事業所は運営に関する職員の意向を把握・検討している」に対する肯定割合は4割強にとどまっていて、職員には「自分たちの計画である」という認識が十分ではない様子です。職員の参画意識を高めるため、事業計画策定への職員の関与方法の工夫を検討してみてください。

達成度を測定しやすい目標を作り、達成度と課題を明確にしていくとよいかと思われます

計画の進捗状況や達成度については、年度末に総括しています。総括の手順は総括方法を所長から職員に伝えた上で、所長が実施しているとのことですが、こうした現状は「運営や計画づくり」に対する職員の参画意識が希薄になる要因のひとつと考えます。また、事業報告書には1年間の実績は示されているものの、「どのような目標があり、どの程度達成したか」は明確になっていない様子です。特に重点目標については、数値的な目標設定と結果の評価を行うことで、職員の参画意識を高めるものと考えられます。数値的な目標設定を検討してみてください。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
就業規則や職員心得、権利擁護規程等を入職時の新任研修で説明・周知しています

経営における社会的責任において、法人では就業規則や職員心得、権利擁護規程等を整備するとともに、入職時に行う法人の新任研修でこうした事項を説明しています。また、所長は、職員会議の後などに利用者の権利擁護や虐待防止のあり方等について職員に周知するようにしているとのことです。法人では独自の虐待防止のセルフチェックリストを作成しています。所属の事業所ではこれを活用していて、当事業所でも年1回以上各職員が自己チェックしています。自己チェックの結果は法人全体で集計し、集計結果を全職員で確認して意識を高めています。

法人で苦情対応規程を整備し体制を整えるとともに、虐待防止委員会も設置しています

苦情解決制度を利用できることは重要事項説明書に明記し、契約時に利用者と家族等に伝えています。重要事項説明書では、事業所の苦情相談窓口のほか苦情申し立て窓口として、他施設の施設長などの第三者委員4名の氏名と電話番号を掲載しています。法人で苦情対応規程を整備し、第三者委員を配置して苦情解決の体制を整えています。また、法人内に虐待防止委員会を設置していて、申し立てがあったり不適切な場面を発見したら速やかに対応する体制としています。事業所では、虐待防止の自己チェック結果を全職員で振り返り、意見交換を行っています。

ホームページで利用者が行う作業の内容や、行事の際の利用者の様子等を公開しています

法人のホームページ内で事業所の概要や一日の日課、利用者が行う作業内容、行事の際の利用者の様子などを公開しています。また、前月の利用者の様子や今月の予定などを載せた通信誌「るーぷ通信」を毎月発行し、家族等に配付しています。外部の目として保育専門学校からの実習生や支援学校・学級からの実習生等を受け入れています。ボランティアも受け入れていて、社会福祉協議会を通じて募集をしていますが、これまでところ応募がありませんでした。地域のネットワークとしては、区内の同種施設の連絡会などに参加しています。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている ×
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている ×
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している ×
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる ×
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
事業継続計画の策定はこれからですが、危機管理マニュアル等は整備しています

法人共通のマニュアルとして、「危機管理(事故・怪我の対応、感染症対策など)」「災害時対応(地震などへの対応措置、自然災害への対応など)」などを整備しています。事業所としては、「大地震等が発生した場合は家族等に連絡して利用者を引き取りに来てもらう」といった対応方法を決め、家族等に周知しています。また、台風等の際には「通所時刻に遅れても構わないこと」「職員が3人以上集まらない場合は休みになること」を、利用者・家族等に書面で通知しています。事業継続計画(BCP)は法人で策定中であり、事業所では未整備です。

ヒヤリハット報告の仕組みを、今後有効に活用していくことを期待します

危機管理マニュアルや災害時対応マニュアルを整備してあり、事故や感染症、大地震などが発生した際の対応手順について取り決めています。また、各利用者の自宅までの経路などの必要情報は「防災シート」に整理してあり、緊急時にすぐに活用できるようになっています。事故・ケガ等を未然に防ぐための取り組みとしてヒヤリハット報告の仕組みを構築してありますが、職員自己評価結果では活用はまだ十分ではない様子です。報告結果の記録を読むと、予防等の教訓になるような内容が書かれていますので、こうした情報の有効活用に期待します。

IT機器に関わる個人情報の取り扱いについては、より具体的に取り決めています

法人では個人情報保護規程を整備していて、利用者に関する印刷物は施錠できる書庫に管理しています。さらに今年度は法人本部から「個人情報・IT機器の取り扱いについて」の通達が発出され、パソコンやサーバー、デジタルカメラ等にある個人情報・データの取り扱い方法やスマートフォン等の取り扱いについて具体的に明示されました。なお、個人情報の利用目的は、個人情報使用同意書に明記し利用者および保護者に渡しています。開示請求への対応については、重要事項説明書の中に明示して利用者と家族等に伝えています。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている ×
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している ×
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している ×
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している ×
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
大学等への案内のほか新聞折り込みやWebサイトなど様々な方法で求人に努めています

職員の採用は常勤、非常勤のいずれも法人が担っていて、法人のホームページでは賃金や仕事内容、採用方法、応募書類等を細かく示しています。また、大学や専門学校等への求職者募集案内の届け、求人広告会社を通した新聞折り込み、Webサイト、フリーペーパーなどを使った募集なども行っています。法人では法人全体としての適材適所と各事業所間の連携強化等を考慮して、各事業所を跨いだ人事異動を行う方針を持っていて、職員本人の希望を確認するよう努めています。キャリアパスの整備はこれからで、今後の課題と思われます。

法人の階層別研修があるほか、外部研修機関の研修への参加も促しています

法人の階層別研修が整備されていて、入職1~2年目対象の新任研修のほか、3~4年目の初任者研修、5年目以上の中堅研修、全職員対象の全体研修があります。特に新任研修は手厚い体制としていて、2年目では法人内の他事業所で1日勤務する交流研修を年6回実施しています。当事業所では外部研修も活用していて、知的障がい者専門の研修機関が主催する研修の案内を回覧し希望を募っています。その他に本人が希望する研修があれば、勤務体制を調整して参加を促していますが、個人別の育成計画は策定されておらず、今後の課題と所長は認識しています。

職員からは、「休暇が取りやすい」「働きやすい」という声がありました

職員個々の働き方などの意識は、年2回の所長との個別面談などにより把握しています。毎月勤務シフト作成前には各職員の休暇の予定を確認して調整しています。所長は職員が超過勤務しないよう目配りをしていて、今回実施した職員自己評価の自由記述欄には、「休暇が取りやすい」「働きやすい」という声が散見されました。職員のメンタルヘルスケアについては法人の仕組みがあり、外部のカウンセリング機関に職員が直接相談することが可能となっています。人事考課を導入していて、考課結果は賞与に反映させています。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) ・当事業所は平成27年12月に現在の場所に移転してきましたが、移ってきてからは地域の学校(支援校や支援学級を含む)との交流は十分には実施できていませんでした。
・そこで、地域の学校との連携を深めるため、中学校の職場体験や支援校・支援学級の職場見学を積極的に受け入れるという目標を掲げました。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
<標語を選択した事由>
・中学生の職場体験や支援校・支援学級の職場見学を積極的に受け入れるという目標を掲げ、それを達成するための策を実行に移しました。
・具体的には、移転前から付き合いのある学校教諭のネットワークを活用して、地域の学校の先生方に職場体験等を受け入れたい旨のアピールを行いました。
<目標達成の状況>
・地域の中学生の職場体験を1人受け入れたほか、地域の中学校の特別支援学級の生徒10人の職場見学を受け入れました。
・上記の実績で、目標はほぼ達成できたものと事業所では判断しています。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) ・移転によって職場環境が大きく変わったこともあって、利用者の落ち着きがなくなり、仕事時間と休憩時間との切り替えがうまくできていないという状況が続いていました。
・そこで、当事業所では「利用者に作業所での時間のメリハリを意識してもらう」ということを目標に、さまざまな対応を行いました。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
<標語を選択した事由>
・「利用者に作業所での時間のメリハリを意識してもらう」という明確な目標を立て、目標を達成するための具体的な行動をとっています。
<目標達成の状況>
・具体的な行動として、日課表を作ってこれから何をするのか予定を目に見えるようにして示したり、節目の時刻にはチャイムが鳴るようにするなどして、利用者がメリハリがつけやすくなるよう工夫しました。
・こうしたさまざまな工夫を行った結果、利用者の様子は落ち着いてきて、仕事時間と休憩時間との切り替えができるようになってきたと事業所では感じています。目標はほぼ達成できたというのが事業所の評価です。
 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
法人のホームページ上の事業所案内で情報を提供しています

法人のホームページには法人の事業案内、所属の各事業所案内に並んで、障がい者雇用を考える企業向けのメッセージも掲載されています。当事業所のページは就労支援事業の一覧からアクセスでき、概要が確認できます。「みんなでまる○(わ)になろう」を事業理念とし、障がい者がより良い生活をしていくための、人との“わ”、地域との“わ”、社会との“わ”を大切にするとしています。ホームページでは、他にアクセスマップ、作業内容の具体的な説明と写真、一日の流れ、年間行事の写真を紹介していて、ページの更新は法人で年1回実施しています。

実習生のオリエンテーションの際にはわかりやすい説明資料を使用しています

事業所では利用希望の問合せに随時対応していて、見学希望者には所長や副所長が作業の様子や事業所での過ごし方等を案内し、利用者の日々の様子を見てもらっています。利用開始前に行う実習の際には大きな文字で書かれたルビ付きの「実習のしおり」を使って、一日のスケジュール、持参するもの、服装、実習での約束を説明し、利用者の理解が深まるように取り組んでいます。また、実習生には誓約書(兼機密および個人情報の守秘に関する同意書)を提出してもらい、個人情報については「守秘義務」があることも説明しています。

事業所の情報を行政や関係機関に提供しています

利用者受け入れ元となる特別支援学校、相談支援事業所、就労支援センター等に情報提供を行うとともに、江戸川区・ハローワーク木場、特別支援学校が共催する障害者就労支援雇用フェアでは、区内の福祉施設(生活から就労)の紹介や相談コーナーの開設に併せて事業所の紹介、告知を行っています。また、就労者パネル展のコーナーにも事業所で働く利用者の様子をパネルで紹介しています。パネルには一日の流れや年間行事、各作業(電話磨き、箱折り、ポケットシャープナーの組み立てなど)を写真と文章で掲載してあります。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
サービスの開始にあたっては契約書、重要事項説明書を用いて説明、同意を得ています

利用に関する問い合わせがあった場合は、利用希望者には事業所の見学後に1~2週間の体験実習を受けてもらいます。この体験実習を通じて受注作業の内容や事業所の雰囲気の理解してもらうとともに、利用希望者の不安を和らげるようにしていて、この後本人に利用希望の確認、担当する作業の検討を経て、利用契約につなげています。利用開始にあたっては重要事項説明書によりサービスの目的、事業所の運営方針、サービス提供の内容、工賃の支払、利用料金等を、契約書により契約の目的、利用期間等を説明し、利用者及び家族の同意を得ています。

利用者の不安やストレスが軽減されるような取り組みを行っています

利用開始直後には一日のスケジュール、作業手順の確認等行った上で、職員がマンツーマンで見守り、細かく作業手順を説明するなど行うことで、利用者の生活環境の変化に対応できるように不安やストレスの軽減に努めています。また、作業時間と作業量は工賃に影響があることから、相談しながら進めています。普段の作業開始前には、当日の作業と利用者の名前を大判のホワイトボードに掲載し、この内容を小さなボードに転記して、各利用者とテーブルがわかるように作業テーブルに置きます。利用者が安心して作業にとり組めるよう作業環境を整えています。

利用者、家族の状況把握に取り組んでいます

利用前の利用者の状況を把握するために、家族構成、緊急連絡先、かかりつけ病院、服薬の状況を記載した個人台帳を整備しています。また、本人又は家族に記入してもらったアセスメントシートによって、「できるようになりたいこと」「好きなこと嫌いなこと」「困っていること」「就寝・起床時間」「就労意欲」等を記入してもらい、支援のための情報収集を行っています。このほかに通所経路や帰宅経路、自宅の地図を記載した「防災シート」を作成していて、個人台帳とともに保管して、事業所外での不測の事態に備えるための資料としています。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
利用者の心身状況や生活状況を統一した様式で記録し、把握しています

計画作成時には、アセスメントシートに基づいて利用者の希望や現状、利用者及び家族の意向・要望を確認の上、課題を抽出して個別支援計画書を作成しています。また、中間評価、年間評価の年2回行う支援計画の見直しの際には、利用者、家族、職員の三者面談を行い、利用者、家族の意向を確認して次回の計画作成に反映しています。一方、職員自己評価結果では「計画内容の職員の共有、活用」の評価は、リーダー職員と一般職員間にギャップがあり高くありません。一般職員の情報共有の仕方や活用の実態把握を踏まえて、要因を明らかにしてみてください。

ライフステージに合わせた利用者支援に取り組んでいます

利用者の高齢化や障害の重度化など、徐々に利用者の状態変化が進んでいることから、利用者の将来の方向性を見越して、個々のライフステージに合わせて支援の方法を見直しています。例えば、「利用者の年齢が40代に達すると作業効率が低下する傾向がある」ことから、作業量を調整するなどの工夫をしています。また、日常的には朝の作業開始前のラジオ体操、午後の作業開始前のダンスエクササイズを行い、さらに健康維持のために月1回講師を招いて軽度のストレッチ体操を行っていて、健康維持のためのプログラムに取り組んでいます。

利用者の日々の状況は業務日誌、申し送りノート等で引継ぎを行っています

当日の作業の内容の記録は、業務日誌で整理しています。入荷・出荷の数量、作業内容、利用者の勤怠、行事、作業・生活の様子、職員の対応、引継ぎ事項などを記載した業務日誌を利用して、日常生活の様子を把握しています。また、日々の業務が支援計画に沿って行われていることを確認するために、個別支援計画、個別支援月間記録と照合していて、職員が随時利用者の個人ファイルを閲覧できるように整理しています。支援中に気づいた点は申し送りノートに記入して職員間で引継ぎを行い、必要に応じて連絡帳や電話等で家族に連絡しています。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
個別支援計画による目標を職員が常に意識して支援できるようにしています

法人の統一書式となっている個別支援計画書は、利用者の毎日の「作業・活動内容、支援内容・利用者の様子」を記録する個別支援計画月間記録と同じファイルに綴じ込んであり、職員は毎日の記録を記入する際に支援計画に目を通すことができます。これにより職員は支援目標に沿った支援が行われていることを意識・確認できるようになっています。また、計画書の支援目標については長期・短期目標が期間とともに定められ、所定期間に応じたモニタリングを実施して評価を行い、目標の見直し・再設定を行い、適切な支援に向け対応しています。

利用者の状況に応じてコミュニケーションと意思疎通を図っています

利用者・家族等から得る情報と事業所内での日々の状況を踏まえて、職員は利用者個々にその日の様子を確認しています。さらに、利用者に伝えたいことを利用者の状況に応じて文字・イラスト・写真を用いて表現し、ロッカー等に掲示するなどの工夫・配慮によりコミュニケーションを図っています。利用者の支援の際に職員が気づいた点などは申し送りノートや利用者記録に特記事項として記載し、夕方のミーティングで伝達する他、連絡帳で家族等にも報告するなど、職員同士だけでなく家族との情報共有と連携、適切な意思疎通に努めています。

社会性を持った人間関係を構築できるように支援しています

事業所では利用者が社会性を持って生活するために、挨拶の習慣を身に付けて実践することを重視しています。身に付けるべきことのひとつである挨拶を標語として掲示し、朝礼時に大きな声で利用者全員で唱和していて、利用者の挨拶は訪問者にはとても好印象に受け取られるものと思います。また、他者との関わり方に関する社会的なルールに関する標語も掲示してあり、利用者が身に付ける機会となっています。職員は利用者間の日常の関わりの様子を見守り、必要があれば相談を実施するなどの対応を行うことで利用者間の良好な関係づくりに努めています。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している -
講評
利用者の意思や意向を反映できるよう、自己決定の機会を設けています

サービス提供に際しては、利用者の個性や特性による制約もある中で、最大限に本人の意思や意向を反映するよう対応していますが、利用者に理解力の差異があるため、必ずしも全てに対応しきれていないという問題意識を持っています。こうした中でも利用者の自己決定の機会を多く設けていて、具体的には、行事等の参加希望について確認する際には、ボードに各種の文字・イラスト・写真を掲示して、利用者が自由に選んでマグネットで意思表示できるように工夫しています。また、昼食の宅配業者を2社とし、希望する利用者が選択できるようにしています。

事業所のルール作りの前に、利用者自身のルール作りに注力しています

事業所でのルール作りに際しては、利用者の意向も取り入れて対応していますが、職員自己評価結果では「利用者等への重要事項の内容と経緯の説明」はまだ十分ではないと認識している様子があり、ルールの制定の方法について検討が必要になるかもしれません。事業所では利用者とのディスカッションの機会・時間がさらに必要であると認識しています。一方で、全体のルールづくりの前に、まず利用者自身で「自分の決まりごとを制定し、それを実践すること」を大切なこととしていて、「利用者自身で考えて、実践する」機会を増やしています。

快適な室内環境の維持と、受注作業の特性に応じた衛生管理を行っています

事業所内は採光や照明で十分な明るさが確保され、空調・換気も行き届き、気になる臭いもなく清潔が維持されていて、快適に過ごせる環境が整えられています。なお、受託している作業の特性から衛生管理や髪の毛や埃などの異物混入に細心の注意を払っていて、こうした品質管理上で必要なことを利用者が常に意識できるよう、ルールや情報を各所に掲示しています。さらに、作業前には白衣を着用してから粘着ローラーで埃や髪の毛を除去するとともに、うがいと手洗いを励行するなど、一連の準備が利用者の基本的な習慣となるように支援しています。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている -
講評
利用者個々の健康状態の把握と、毎日の健康管理に努めています

事業所では利用者の健康状態に関して、健康診断個人票や利用者個人台帳で把握できるようにしていて、職員が情報共有しています。さらに日常の健康状態の変化は利用者が通所した際の顔色や表情等を確認して、体調不良がないか注意を払い、気づいた点があれば職員の朝礼時に情報を共有しています。利用者の変化に気が付いたときは、随時利用者から様子を聞くなど配慮しています。なお、事業所では年1回利用者の定期健康診断を実施して医師による健康チェックを行うとともに、日頃のラジオ体操、ダンスエクササイズなどで健康の維持管理に努めています。

利用者の健康維持・増進に向けた支援に家族の協力を得ながら取り組んでいます

利用者の健康維持・増進を図っていて、特に肥満防止に向けた支援として宅配弁当の献立等を確認するなどしてバランスの良い食事をしているかを注視して、必要に応じ主食の量を調整するなどの支援を行っています。また、家族会等では家族にも食事の量の調整について協力を要請するなどの働きかけをしています。なお、事業所では毎日の体操の他、毎月1回、講師を招いて1時間程度の軽度なストレッチ体操を実施していて、利用者の健康増進に向けて支援しています。体操後に体重測定を行って必要に応じて助言しています。

利用者の体調変化に速やかに対応するよう、必要な場所と備品を用意しています

利用者の体調に急な変化が起こった場合に備え、事業所内に一時的に横になれる簡易ベッドを用意していて、体調変化が起きた際は、体温・血圧のチェックを行って基本的な状態を確認する体制となっています。簡易ベッドを利用して経過を観察し、必要に応じて家族にも連絡して情報を共有するとともに、その後の状態によっては早退を促したり、困難な場合は家族に迎えを要請するなどしています。緊急時の医療機関への搬送時に家族の対応が困難な場合は、職員が付き添うようにしています。なお、必要な薬は各利用者が持参して、自身で服用しています。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
利用者の意向を確認し同意・許可を得たうえで、必要な情報を家族に連絡しています

事業所では、利用者支援が一方的なものにならないよう、家族と常に連携することを心掛けていて、利用者に関する情報を家族と共有しています。なお、事業所から家族に連絡を入れる場合、それが利用者自身の主体性に影響を及ぼす可能性のある情報であれば、事前に利用者の意向・許可を得て対応しています。ただし、事業所では、利用者によっては意思・意向の確認が困難なケースがあり、その際は家族・関係者の意向が強くなりやすいことを留意していて、できるだけ利用者自身の意向を引き出す方策などの検討が必要であると認識しています。

情報誌「るーぷ通信」の他、こまめに紙媒体を発行して家族等に情報を提供しています

事業所では、利用者の家族や関係者に向けた情報誌「るーぷ通信」を毎月発行して、配付・掲示しています。この情報誌には事業所で行う作業の状況報告の他、行事等の予定も記載してあり、当日の利用者の様子、活動の様子がわかる写真も掲載することで、臨場感が伝わる誌面として公開しています。なお、会話が困難な利用者の場合、希望する家族には連絡帳としてノートを用意してもらい、毎日の事業所内での様子等を記入して報告するとともに、必要な情報も提供しています。その他の各種のお知らせも家族に伝え、日常的に家族と情報共有しています。

家族会だけでなく、家族が参加できる行事等も実施して家族との連携を深めています

家族等から事業所への日常的な連絡は電話や書面、連絡帳を使用して行っています。また、家族等との連携・交流を目的に、3ヵ月に1回、家族会(保護者会)を開催していますが、家族会は以前から家族等の高齢化による不参加傾向が続いていて、それに起因して参加する家族等も固定化してきています。事業所としても、利用者支援に影響が及ぶと認識しています。その改善策として、利用者と家族がともに参加できる茶話会を定期的に開催していて、家族の参加も増加傾向にあり、家族会を補完する行事として今後の展開に期待しています。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
社会資源や地域の活動・イベントの情報を集めて、利用者に積極的に提供しています

事業所では、公共施設などの地域資源に関する情報や区や近隣地域における活動・イベント情報など、利用者にとって有益な情報を収集し、パンフレット等の資料を掲示、配付するとともに、口頭でも利用者に案内しています。こうした働きかけにより、利用者が地域社会の一員として暮らすために必要な情報を得られるように支援し、状況に応じて参加申し込みや利用を促していて、利用者の社会活動や余暇活動、地域交流の機会として活用できるようにしています。具体的には、障害者就労支援雇用促進フェアや区主催のボーリング大会や運動会が挙げられます。

災害時の協力を得られやすくするためにも近隣地域との交流の機会の創出に期待します

事業所では地域交流の機会として、特別支援学校の実習の受け入れだけでなく、区のチャレンジ・ザ・ドリーム活動で近隣の中学生の職場体験にも対応していますが、社会福祉協議会を通じたボランティアの受け入れや活用については、現状では実績がほとんどありません。また、他の事業所で行っているような、地域の廃品回収や清掃活動などによる近隣住民との交流の機会の創出もありません。一方で、区のハザードマップによると事業所は水害予想地域に指定されていることから、災害時に留まらず、日頃の近隣住民との協力関係づくりは今後の課題と考えます。

  評価項目12 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
毎日の作業量を決め、内容も変化させて、利用者の就労意欲の維持・向上に努めています

事業所では利用者の働く意欲の維持・向上に主眼を置いていて、毎日の受注作業の内容と量を朝礼時に利用者全員に伝え、作業連絡ボードに掲示して利用者が常に確認できるようにしています。また、利用者同士の関係性や作業内容等を考慮し、作業しやすいと思われる席順を設定するとともに、作業ごとに見直したり、午前・午後で作業内容を変えるなど、働きやすい環境整備に努めています。利用者個々が担当する作業は工程が細かく設定されて明確にしてあり、利用者の担当意識が醸成されることで自身の力を発揮してもらえるような環境整備に努めています。

受注作業の安定に努める一方で、新規受注作業の受け入れも行っています

事業所では現在、定期的な作業を4社から、不定期作業を1社から受注していて、作業内容は紙器加工作業・プラスチック製品の組み立て・美容器具の組み立て・封入封函・リサイクル電話機清掃・シール貼付などが主となっています、受注作業量とその納期に対して、利用者数とその作業対応力はほぼ均衡している状況であり、成果物の品質維持にも努めていることから信頼も得ていて、安定受注につながっています。一方で、利用者数を追加できる余力があることから、作業量と利用者人数とその対応力のバランスを図りつつ、新規作業の受注を模索しています。

工賃に関する利用者・家族への説明と理解に、様々な機会で取り組んでいます

利用者に支払われる作業工賃は、利用者個々の査定に基づいた基準額に基づき出勤日や就業時間の明細を示して支払われていて、査定は3ヵ月ごとに見直し、利用者の日常の働き方と成果を細かく反映させています。その仕組みや基準、査定方法や金額の変動については、利用者、家族に説明し理解を得るように努めていますが、家族調査の結果では家族の理解がまだ十分でない様子がうかがえます。事業所では利用者、家族に対して、工賃の仕組みなどに関する説明の工夫(絵を使うなど)が必要であると認識していて、新たな説明方法・資料を検討しています。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
個人情報の入ったデータの取り扱いについてルールを定め管理を徹底しています

法人として利用者個人情報、パソコンの取扱い、スマートフォンや携帯電話の取扱い、サーバーへのアクセス・データ管理のルールを定めています。事業所ではデータ化された利用者の個人情報を厳重に管理していて、個人情報の漏洩を防ぐためにシステム管理責任者を選任していて、個人のパソコンの職場への持ち込み、データの持ち出しは禁止しています。また、利用者の写真などを広報誌やホームページなどに掲載するため外部に提供する際は、「写真使用許可同意書」に基づいて掲載の可否を各利用者に確認しています。

日常の支援の中で利用者のプライバシーに配慮した支援を行っています

事業所では各利用者が所持品を保管するためのロッカー、男女別のトイレの設置等を進め、利用者のプライバシーに配慮した設備を整えています。事業所内に相談室を設けていて、周囲を気にすることなく個別に相談できる環境も整えています。職員自己評価結果では、個人の尊厳の尊重やプライバシーの順守に関わる評価は非常に良好で、利用者調査、家族調査の結果でも概ね良好な評価となっています。一方、前回の評価で指摘にあった男女別の更衣室の設置は、移転にともなって手狭になったこともあり、実現していません。

作業時には利用者一人ひとりの状態に配慮した支援を行っています

利用者によって障害の状態に違いがあります。作業中にどうしても声が出てしまう利用者がいます、心配性で家を出る際に電気を消したか、火元は大丈夫かなどが気になり、再確認のために戻るなどしてなかなか定時に出勤できない利用者もいます。このように障害の状態は様々ですが、作業に影響が出ないように職員は利用者の状態に応じて対応しています。また、意思表示をすることが難しい利用者もいるため、利用者個人の意思を尊重して希望に沿った作業内容を選べるような仕組みを模索しているものの、全員に確認することは困難な状況です。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている ×
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている ×
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
講評
利用者支援に関するマニュアルを整備して業務の標準化を図っています

法人では「危機管理マニュアル」を今年度に策定しました。利用者の行方不明時の対応、事故やけがの対応、感染症の対策と予防、個人情報の保護、不法侵入・不審物、車両移動時における緊急時の対応、脳卒中や心臓発作などの対処・配慮事項を定めて、業務・対応の標準化を図っています。また、平成29年度には利用者の「呼名」に関わる指針を定め、ごみの処分方法、心得などの接遇に関わる掲示物を用意して、利用者に日常生活の注意を促しています。事業所では受注業務の作業内容の一覧表を作成して、作業の確認のためのツールとしています。

事業所としてのサービスの定期的な点検・見直しが不十分です

受注作業の内容は事務所内に整理・保管してあり、日々の作業についてはホワイトボードに掲示するとともに、作業テーブルには当日の作業内容と利用者の名前を記載した小ボードを置いて、利用者に周知しています。また、電話磨きの作業は利用者個々の作業の進捗状況を写真で図示するなどの工夫を実施しています。一方で、職員自己評価結果では「定期的な手順の点検・見直し」「日常的な活用」「職員などの意見の反映」などは不十分であると認識をしている様子があります。改訂や見直しへの職員の参加、改訂内容の読み合わせなどの対応が考えられます。

日々作成する製品の完成度を維持するために作業環境、作業内容の確認を行っています

作業手順の一覧を作成し事務所に保管して常に職員が確認できるようにしていて、作業ミスや不良品を減らすための取り組みを行っています。職員は作業中の利用者へ手順の指示も常時行うことで、作業の手戻りの防止、不良品の削減などにより、受注した数量を期日通り確実に納品するための対策に取り組んでいます。また、利用者の体調変化等によるトラブルを防いだり、他の利用者の集中を妨げないようにするため、作業中は常に職員が見守りを行い、作業がスムーズに行えるよう配慮しています。