東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 平成30年度
サービス名称 障害児多機能型事業所(主たる利用者が重症心身障害児または肢体不自由児)(児童発達支援事業、放課後等デイサービス)
法人名称 社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会
事業所名称 中野区子ども発達センターたんぽぽ
評価機関名称 合同会社 フェアリンク

コメント

・利用者調査における場面観察方式の調査では、9:30から15:30の間、各事業のグループ療育や個別の作業療法の様子等を担当評価者3名で観察した。また、保護者アンケートでは、事業所より事前に実施のアナウンスをしてもらったうえで、調査票、施設長名での依頼状、返信用封筒の入った封筒を保護者に郵送した。
・経営層合議による自己評価では、標準項目の実施状況を3段階で評価するとともに、課題をわかりやすくするために事業所の方針に沿って優先度の評価をしてもらい、職員の自己評価と併せて集計結果の報告を行った。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)最も弱いものを一人ももれなく守る 2)個人を尊重します 3)児童一人ひとりの健やかな成長と生きがいを追求します 4)保護者との信頼関係を大切にします 5)地域社会への参加を積極的に行います

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

①療育の専門者として児童や保護者に最善のサービスを提供できる。 ②人権の尊重と思いやりのある接遇態度を身につけている。 ③支援提供において保護者とのコミュニケーションを密にして、職員間のチームワークを高めサービスの向上を図れる。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

①療育の専門者として必要な知識と技術の向上に努め自己研鑽と自己啓発する態度。 ②人権擁護、虐待防止、個人情報保護、接遇技術等に関する高い見識を有し行動できる。 ③豊かな想像力、創意工夫をもって療育に臨む。 ④コストパフォーマンスの高い感覚を有す。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 区立施設の指定管理者として法令に則った事業運営に努めるとともに、利用者に対する説明責任を果たすことで信頼感の向上につなげている

当事業所は区内の重症心身障害児を対象に区が設置した施設で、民間の社会福祉法人が指定管理者として運営している。施設長を中心に法令に則った事業運営に努め、職員に対して守るべき法令や倫理等を明示して共有を図るとともに、利用者に対する説明責任を果たすべく、定例の保護者会や季刊の通信等で、サービスに関する事項の検討結果等について説明や報告を行っている。また、国の定めたガイドランに沿って保護者アンケートを毎年実施し、その集計結果及び寄せられた要望等に対する事業所の回答を文書にまとめて保護者に配布し、信頼につなげている。
2 子どもの健やかな成長と生きがいの追求を目指し、医療的ケアを要する子どもの安全に配慮しながら非日常の体験を楽しむ機会を提供している

事業所の基本理念の一つに子どもの健やかな成長を生きがいの追求を掲げ、外出の機会が制限されがちな子どもたちが同年齢の子どもと同じように外出を楽しむ取り組みに力を入れている。年1回の遠足の際は事前の下見や調整を入念に行い、レストランでの外食や電車での移動の体験などを提供している。また、夏期は建物内の温水プール設備を使い、水の浮力を活用して子どもが非日常の体験を楽しめるプール活動をおこなっている。毎年、活動が始まる前に専門職がプール指導の講習会に参加し、全職員に伝達研修を実施して、子どもの安全確保に努めている。
3 事業の枠や職種を越えて子ども支援するチームアプローチを重視し、支援情報を職員間で共有するとともに、リスクの軽減に取り組んでいる

事業の枠や職種を越えて職員全員で子ども支援するチームアプローチを重視し、子どもの状況確認と個別支援計画に関する検討を行うケース会議、その他の定例会議で子どもの情報を職員間で共有している。また、日々のミーティングで子どもに関する申し送り事項の確認や周知を図るとともに、その日の支援の振り返りを行っている。ミーティングでは、支援の場面で子どもの安全や健康を脅かす危険を察知した職員の気づきや、子どもの尊厳や人権を損なう恐れのある不適切な言動を感知した職員の気づき等を共有し、組織の力でリスクの軽減に取り組んでいる。

さらなる改善が望まれる点
1 運営の透明性を確保するための情報開示、及び地域社会に対する情報発信により積極的に取り組むことが期待される

当事業所は児童発達支援と放課後等デイサービスのほか、区の事業である一時保護や在宅訪問等を実施している。区の発行物やホームページに加え、法人のホームページや事業所のリーフレット等により、各事業の内容や利用方法等を区民に発信している。利用希望者が最初にアクセスする様々な関係機関に対し、今後はさらに計画的な情報提供を行うことが望まれる。また、情報開示による運営の透明性を確保及び地域社会に対する情報発信により積極的に取り組むことで地域住民の理解を深め、福祉の街づくりの拠点としての役割を果たすことが期待される。
2 対象児童を重症心身障害児とする職員の専門性を明らかにし、それを相互に高め合うことを促す人材マネジメントの仕組みの整備が期待される

職員の仕事に対する使命感は総じて高いものの、比較的短い期間で職員の一部の入れ替わりが続いており、定着率の向上が課題となっている。重症心身障害児の療育を福祉、看護、リハビリの各専門職がフラットな関係で相互に連携しながら展開する体制を整える中、今後は職員として求められる専門性を明らかにしたうえで、それを段階的かつ効果的に身に付けるためのキャリアアップの体系を待遇と連動する形で整備することが期待される。また、職員の能力やスキルのアセスメントを踏まえた個別の育成計画の作成についても併せて検討を始めることが望まれる。
3 重症心身障害児の命と健康を支える療育の現場において、より高いレベルで専門職としてのスキルを平準化するための取り組みが期待される

「最も弱いものをひとりももれなく守る」という法人の基本理念のもと、重症心身障害児の命と健康を支える療育の現場において、職員に対する個別指導や日常的な会議等での研修等を通じて、必要とされる水準の業務の標準化は図られている。職員それぞれが専門職として子どもに向き合いつつも、成熟の度合いには当然ながら差があり、法人の資源も活用しながらそれをどのように補っていくのかが課題となっている。今後は新任職員に対する指導方法の統一化を図るためにも業務マニュアルの整備をさらに進め、指導の基準として活用していくことが期待される。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 子どもの権利侵害が日常的に起こり得るという前提に立ち、組織的な防止策を講じている

日誌の他に、支援の現場で起こったことを中心に職員間で共有が必要な情報を毎日記録に残している。その様式には見出しが付けられており、その一つである「権利擁護・ヒヤリハット」の欄には、支援の場面で事故につながる危険を察知した職員の気づきや、子どもの尊厳や人権を損なう恐れのある不適切な言動を感知した職員の気づき等をサービスのさらなる向上につなげるための貴重な情報として積極的に吸い上げ、共有を促す目的が意図されている。支援の現場で子どもの権利侵害が起こり得るという前提に立ち、それを組織的に防止する仕組みを整えている。
関連評価項目(虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている)
2 ★ 必要に応じて定期健診等の前に保護者から医師等に対する質問を聞き、所見を返している

小児科医による月2回の健診と、歯科医・歯科衛生士による年3回の歯科検診及び摂食指導を実施している。児童発達支援を利用する子どもの保護者が受診を希望する場合は付き添いを必須としている。一方、放課後等デイサービスを利用する子どもの保護者に対しては、医師等に対する質問用紙を事前に配布・回収し、当日医師等に渡すとともに、医師等からの回答を用紙に記入し、保護者にコピーを返している。用紙は個別ファイルにまとめ、子どもの建康状態の把握に活用している。保護者の状況に配慮しつつ、医療職と連携して子どもの健康管理に努めている。
関連評価項目(利用者一人ひとりの状況に応じて生活上で必要な支援を行っている)
3 ★ 入念な下見や準備を行ったうえで、遠足等の外出の機会を保障する取り組みを行っている

医療的ケアを要する子どもはストレッチャー型の車イスや医療器具等を使用しているため、移動手段が制約され、通学先での校外活動でも保護者の付き添いが求められることから家庭の事情等によって参加できない子どもが少なくない。そのため、事業所では通学や通院以外の外出の機会を保障する取り組みに力を入れている。遠足では行先の下見を入念に行い、昼食をとるレストランのメニューを事前に保護者と確認して、子どもが食べたいものを自分で選択できるような配慮を行った。昨年度は復路で公共交通機関を利用し、電車に乗って移動する体験を提供した。
関連評価項目(地域との連携のもとに利用者の生活の幅を広げるための取り組みを行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

■児童発達支援、放課後等デイ

調査概要
調査対象:原則として調査実施時点で児童発達支援及び放課後等デイサービスを利用している子ども全員。ただし、児童発達支援事業の利用者に対するアンケート調査では対象を子どもの保護者等とし、子どもがきょうだいで利用している場合は、年齢が下の子どもについて回答を求めた。

調査方法:アンケート方式,場面観察方式  
担当評価者3名で実際のサービス提供場面の観察を行うとともに、調査対象の子どもの家族等(児童発達支援事業においては保護者等)に対する無記名式のアンケート調査を実施。調査票等を各家庭に郵送し、回収は専用封筒による評価機関への郵送とした。

利用者総数 38人
利用者家族総数(世帯) 38世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 38人
有効回答者数 18人
回答者割合(%) 47.4%

総括
実施事業別の回答率は、児童発達支援事業が64.3%(調査対象者14人に対して回答数9人)、放課後等デイサービスが37.5%(同じく24人に対して9人)。共通評価項目に加え、総合的な感想として事業所のサービスに対する満足度を5段階で尋ねたところ、最上位の「大変満足」とそれに続く「満足」がともに8人、「どちらとも言えない」が0人、「不満」が1人、「大変不満」が0人(無回答1人)という結果だった。回答者の9割近くが満足と答えており、利用者の満足度は高い水準にあると推察される。共通評価項目では、問11~14の「利用者個人の尊重」に関する設問で「はい」の回答割合がすべて8割を超え、満足度が相対的に高くなっている。一方、問15・16の「不満・要望への対応」に関する設問では「はい」の割合が5割前後にとどまっている。「いいえ」の回答は半数の設問で0人、多くても2人以内に収まっている。「どちらともいえない」が最も多かったのは問6(家族に対する精神的なサポート)の10人で、回答者の約56%に上っている。場面観察方式の調査では、9:30から15:30の間、各事業のグループ療育や個別の作業療法の様子等を担当評価者3名で観察した。

場面観察方式の調査結果
調査の視点:「日常生活の場面で利用者が発するサイン(呼びかけ、声なき呼びかけ、まなざし等)とそれに対する職員のかかわり」及び「そのかかわりによる利用者の気持ちの変化」

評価機関としての調査結果

  • 調査時に観察したさまざまな場面の中で、調査の視点に基づいて評価機関が選定した場面
    放課後等デイサービスで、ミュージックパッドを使用して音楽の活動を行っていた。あらかじめ準備した楽曲での使用音が6音であったため、7名の参加者のうち1名は順番にお休みになる状況だった。ある子どもが次の子どもにパッドを渡すために自分から身体をずらしていき、周りの職員が、すごいね、優しいねと声をかけていた。児童発達支援事業では、色々な動作や活動プログラムについての絵カードを使って職員とやり取りしていた子どもがカードを突然放り投げる場面があり、「一緒に片付けようね」と声掛けする職員の顔を見つめて、促しに応じていた。
  • 選定した場面から評価機関が読み取った利用者の気持ちの変化
    放課後等デイサービスの音楽療法の場面では、自分が持っていたミュージックパッドを他の子どもに譲り、職員から褒められた子どもが嬉しそうな表情になり、曲に合わせてパッドの代わりに手拍子でリズムを刻んでいた。自分の行為が褒められたことで気持ちが高揚し、手拍子が出たと考える。一方、児童発達支援事業での場面では、子どもと担当職員との関係は良好な様子で、職員をからかっているような、少し困らせたいような行動に思われた。スキンシップが多く、子どもに寄り添い支援する職員への安心、信頼が感じられ、子どもにとっては遊びの要素も含んだ行動のように感じられた。
  • 「評価機関としての調査結果」に対する事業者のコメント
    二度目の受審だが、前回の課題を含め客観的な評価を得られたことは、当事業所の今後のサービス提供やケア及び運営の在り方においてとても有意義で生産的である。当方実施のアンケート回収率は70%前後であるが、今回の50%を下回る結果は意外である。結果については両事業の保護者会で報告を行い、当方の対応についてご回答している。当事業所では、利用されるお子様は言葉での意思表出が困難であることから、彼らの表情やボディランゲージからその思いを読み取ることに心掛けている。また、お子様の移送も療育の一部と捉え、移送業者と連携し乗務員・添乗員向けに重症児の特性などのプレゼン機会を設け、お子様が車内において快適に過ごせるよう、運転上の配慮やお子様の適正なポジショニングの確保などを双方で確認している。
    児童発達支援事業は保護者様や他の療育機関と連携し未就学児の発達支援を行う場として、放課後等デイサービス事業は保護者様や学校等と連携し学校でもなく家庭でもないそのお子様らしくほっとできる場所づくりを目指し、お子様がご家族と共に過ごし、身近な地域で必要な支援を利用し人生を歩んでいけるよう、今後とも微力ながら支援をさせて頂きたい。


    利用者調査結果

    1.事業所に通うことが、子どもの身体の機能や健康の維持・促進の役に立っているか
    はい 14人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
    実際のアンケート調査票で設問文(以下同):事業所に通うことが、お子さんの身体機能や健康状態に良い影響を与えていると思いますか
    2.事業所での活動は、子どもが興味や関心を持てるものになっているか
    はい 16人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
    事業所での活動は、お子さんが興味や関心を持てるものになっていると思いますか
    3.事業所に通うことが、子どもの情緒面での発達(感情のコントロールを身につける等)の役に立っているか
    はい 15人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
    事業所に通うことが、お子さんの情緒面での発達(感情のコントロールを身につける等)の役に立っていると思いますか
    4.事業所に通うことで、子どもに社会性(人と人との関わり合いやルール等)が身についているか
    はい 12人  どちらともいえない 5人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
    事業所に通うことで、お子さんに社会性(人と人との関わり合いやルール等)が身についてきたと思いますか
    5.子どもの様子や支援内容(体調変化時の対応含む)について、事業所と情報共有できているか
    はい 16人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
    お子さんの様子や、支援の内容(体調変化時の対応含む)について、事業所と情報共有ができていますか
    6.家族に対する精神的なサポート(子育てに関する悩み相談や進路相談、家族間交流の機会の提供等)は役に立っているか
    はい 5人  どちらともいえない 10人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
    ご家族に対する精神的なサポート(子育てに関する悩み相談や進路相談、家族間交流の機会の提供等)は役に立っていると思いますか
    7.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
    はい 18人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
    事業所の生活スペースは清潔で整理された空間になっていると思いますか
    8.職員の接遇・態度は適切か
    はい 15人  どちらともいえない 1人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
    職員の言葉遣いや態度、身だしなみなどは適切だと思いますか(職員としてふさわしいと思いますか)
    9.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
    はい 14人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 3人 
    お子さんがけがをしたり、体調が悪くなったときの職員の対応は信頼できますか
    10.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
    はい 7人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 8人 
    子ども同士のトラブルやいじめ等があった場合の職員の対応は信頼できますか
    11.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
    はい 16人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
    職員はお子さんの気持ちを大切にしながら対応してくれていると思いますか
    12.子どものプライバシーは守られているか
    はい 16人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
    お子さんやご家族のプライバシー(他の人に見られたくない、聞かれたくない、知られたくないと思うこと)を職員は守ってくれていると思いますか
    13.個別の計画作成時に、子どもや家族の状況や要望を聞かれているか
    はい 15人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
    お子さんの支援に関する計画を作成したり見直しをする際に、事業所はお子さんやご家族の状況や要望を聞いてくれますか
    14.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
    はい 16人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
    お子さんに対する支援の計画やサービス内容など、事業所での生活についての職員の説明は、わかりやすいと思いますか
    15.利用者の不満や要望は対応されているか
    はい 12人  どちらともいえない 4人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
    事業所に対して不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員はきちんと対応してくれていると思いますか
    16.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
    はい 8人  どちらともいえない 4人  いいえ 2人  無回答・非該当 4人 
    事業所の利用に関して何か困ったことがあったときに、外部の窓口(役所や第三者委員など)にも相談できることを職員はわかりやすく伝えてくれましたか

    Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
      サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
      評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
      標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
      標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
      評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
      標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
      標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
      評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
      標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
      標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
      標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
    講評
    法人・事業所の基本理念や方針等を職員向けのオリエンテーション用資料に明示している

    当事業所は区内在住の主に重度・重複障害のある児童を対象に2014年に区が設置した通所施設で、重症心身障害児(者)の親が中心になって1966年に設立した社会福祉法人が指定管理者として運営している。毎年更新される新入職員向けのオリエンテーション用資料に法人の基本方針や事業所の基本理念、療育方針、職員の倫理綱領、行動指針、施設長及び主任の職務等を明示するとともに、組織の意思決定や運営上の課題を検討するための会議体の一覧表を掲載している。施設長は当資料を毎年全職員に配布することで、さらなる周知の徹底を目指している。

    組織の意思決定を行う会議体を整備するとともに、職員間の情報共有に取り組んでいる

    毎月1回、常勤職員全員が集まって開催される会議を事業所内の最高議決機関と位置づけ、職員に周知している。また、福祉、看護、リハビリの専門職ごとの会議や、児童発達支援及び放課後等デイサービスの事業別の担当者会議等でサービスに関する検討を行い、毎朝のミーティングの場での連絡や申し送り用のノート、会議録の回覧等を通じて検討経過及び決定事項の共有を図っている。施設長は直接会議に参加する機会のない非常勤職員と常勤職員との間の情報格差の解消に向け、非常勤職員に対し、個別に必要な情報をフォローする取り組みを始めている。

    管理職層を中心に職員集団を統率するとともに、利用者に対する説明責任を果たしている

    ベテランの施設長は重度・重複障害のある子どもに対するチームアプローチを掲げて専門職の職員集団を統率するとともに、区の指定管理者として法令に則った公正な事業運営を行うべく、リーダーシップを発揮している。施設長とともに児童発達支援管理責任者を兼務する療育主任が中心となり、利用契約時の重要事項説明において、保護者に事業の目的や運営方針等を伝えている。また、事業ごとに年2回開催される保護者会や季刊の通信等で、事業所が大切にしている考え方や重要な案件についての検討経過及び決定事項等の説明を行っている。


    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
      サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
      評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
      標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
      標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
      標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
      標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
      標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
      標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
      サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
      評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
      標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
      標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
      標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
      評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
      標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
    講評
    定期的なアンケートの実施や保護者会の開催を通じて利用者の意向の把握に努めている

    国のガイドラインに基づき、年一回、12月に保護者に対するアンケートを実施し、翌年2月に集計結果を保護者に文書で開示している。また、その結果を踏まえた改善に向けての検討結果を事業ごとに回答編として文書にまとめ、5月に保護者に配布している。回答編では、保護者より意見や要望のあった項目について、具体的な改善策や実施が難しい場合の理由等を記載し、保護者の理解を求めている。その他、事業ごとに年2回開かれる保護者会で意向の把握に努めている。事業所では、放課後等デイサービスの保護者の参加率を高めることを課題としている。

    関係機関との連携により、区民の福祉ニーズの対応と利用率の向上に取り組んでいる

    事業所の運営基本指針において中長期の療育指針を掲げている他、区の指定管理者として2016年から10年間の運営委託を受けるにあたり、サービスの対象者数の人数やニーズの予測等を踏まえた運営の計画について、区と協議しながら毎年調整を図っている。区の所管部署及び地域ごとに設置された保健所と子ども家庭支援センターの機能を併せ持った区内4施設との定期的な連絡会が年4回開かれ、子どものニーズに応じた利用調整等が行われている。関係機関との連携強化を通じ、区民の福祉ニーズにていねいに対応しながら利用率の向上に取り組んでいる。

    年度事業計画の進捗管理の方法について、職員に対するより一層の周知が期待される

    事業所の年度事業計画には、運営方針や職員配置、事業内容が記載された概要版のほか、施設長のイニシアチブにより、年度の重点課題に対する取り組みの進捗管理を行うための実行計画表が作成されている。計画表は事務室に掲示され、進捗状況をカラーマーカーを使って可視化する取り組みを行っているものの、職員の自己評価を見る限り、周知の度合いは必ずしも高いとは言えない。計画の達成度合いを測る指標の設定と併せ、今後の改善が期待される。その一方、職員からの問題提起がきっかけとなり、昨年度から防災訓練が毎月実施されるようになった。


    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー3  経営における社会的責任
      サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
      評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
      標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
      サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
      評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
      標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
      標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
      評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
      標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
      標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
      サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
      評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
      標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
      評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
      標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
      標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
      標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
    講評
    日常的なコミュニケーション等を通じて保護者の意向を把握し、組織として対応している

    送迎時の会話や連絡帳のやり取り等、日常的なコミュニケーションを通じて保護者の意見や要望等を職員が受け止め、施設長及び主任を中心に組織として対応する体制を整えている。また、事業所が実施する年1回のアンケートにより保護者の意向を把握し、改善に向けての検討に活かしている。昨年度は送迎業務の委託業者の対応に関する保護者の苦情を受け、業者の責任者を保護者会に呼んで改善を進めた事例を確認できた。ただし、今回の利用者調査の結果では、苦情や要望等への対応に関する項目で満足度が相対的に下がっており、原因の究明が期待される。

    個人の尊厳と人権尊重を基本方針に謳うとともに、具体的な行動指針を明示している

    事業所の基本方針等に個人の尊厳と人権の尊重を謳い、職員の行動指針にはサービス提供の場面で子ども・保護者と接するときの留意事項等を具体的に列挙している。今回の利用者調査の結果では、個人の尊厳に関する項目に対して保護者の高い満足度が示されおり、評価者による滞在調査の際も、子どもの意思を尊重した支援や声掛けが行われている様子が確認できた。ただし、同性介助が望ましいと思われる場面で、必ずしも徹底が十分とは言えない部分が見受けられた。特に高年齢児に対する身体介助の際は、羞恥心に対するよりきめ細かい配慮が期待される。

    基本理念に地域社会への参加を謳い、行事や日常の活動を通して地域交流を図っている

    事業所は重症心身障害児に対する専門的な療育のノウハウを備えた施設として、関係機関と連携しながら障害児とその保護者の地域生活を支えるとともに、障害に対する地域住民の理解を深め、福祉の街づくりの拠点としての役割を果たすことが期待されている。事業所の基本理念には地域社会への積極的な参加を謳っており、毎年8月に開催する事業所の夏まつりには、隣接する施設の関係者や大学生のボランティア等が参加して、利用者との交流を図っている。また、利用者の戸外活動がきっかけとなって、近隣の福祉施設との間に人的交流が生まれている。


    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー4  リスクマネジメント
      サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
      評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
      標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
      標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している ×
      標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
      標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
      サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
      評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
      標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
      標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
      標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
      標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
    講評
    子どもの命に関わる感染症や誤嚥等のリスクの予防を最優先の課題として取り組んでいる

    当事業所では対象を重症心身障害児に特化しており、医療的ケアを必要とする児童も多い中で、子どもの命に直結しかねない感染症や誤嚥等のリスクを予防することが最優先の課題となっている。また、子どもの体調の問題により利用当日を含む直前のキャンセルが通常よりも多くならざるを得ず、経営的な観点から看過できないリスクとして位置づけられている。そのため、事業所では看護師を中心に安全・衛生管理の徹底と医療的ケアの標準化に努めるとともに、区及び区内の関係機関との協議を通じて、利用登録者数の確保に力を入れて取り組んでいる。

    子どものケガや事故等に関する情報を職員間で共有し、組織的な防止対策を講じている

    毎日の振り返りのミーティングで、子どものケガ等の事故及びヒヤリハットの発生の有無を確認し、施設長の指示により、事故等の当事者または発見者となった職員が当日中に所定の報告書にその状況等を記載して、職員間で回覧している。また、直近に開かれる会議で再発防止策を協議し、決定した内容を報告書に追記するとともに、毎月の職員会議で事故等の集計及び分析結果を確認、検討している。報告書にあらかじめ表記された事故等の種類には転倒・転落や誤嚥、誤薬等に加え、職員による不適切な対応も含んでおり、職員同士の注意喚起につなげている。

    事業継続計画の策定と情報活用のファイリングシステムの構築に向けた検討が期待される

    毎月、防災訓練を実施して災害に備えているものの、大規模な災害や重大事故等が発生した場合に、どのような体制や方法、手順等により途切れることなくサービスを提供するかの計画は現時点で作成されていない。不審者の侵入を想定した対応マニュアルの作成と併せ、関係機関と協議しながら検討を進めることが期待される。また、情報管理については、区立施設として区と同等の基準に則った漏えい防止や個人情報保護の対策を講じることが望まれるとともに、情報共有・活用のためのファイリングシステムについて、法人統一の基準に沿った整備が期待される。


    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー5  職員と組織の能力向上
      サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
      評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
      標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
      標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
      評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
      標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている ×
      標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している ×
      評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
      標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している ×
      標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している ×
      標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
      評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
      標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
      標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
      標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
      サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
      評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
      標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
      標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
      標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
    講評
    職員の定着率の向上が課題となる中、責任ある職務遂行体制の構築に取り組んでいる

    職員の仕事に対する使命感は総じて高いものの、比較的短い期間で職員の一部の入れ替わりが続いており、定着率の向上が課題となっている。採用にあたっては、資格や経験の他、支援の現場での体験実習を重視し、同僚となる職員の意見も参考にして決定している。また、採用後1年間は新入職員を指導役のリーダー層が責任を持って育成する仕組みを整えている。施設長のもと、療育と看護それぞれの主任と事業ごとのリーダーを置くとともに、事業所内の業務内容とその担当者を一覧表にした業務分担表を作成し、責任ある職務遂行体制の構築に取り組んでいる。

    個別面接での目標設定や職務等に応じた研修参加を通じて職員の成長を促している

    施設長は全職員と年2回、個別面談を実施して意向の把握に努めている。面談ではまず職員の良いところを褒めたうえで、それぞれの成長につながる目標をシェアすることに重点が置かれている。年度ごとに職場の内外で実施される研修の年間計画を策定しており、療育関係を中心とする外部研修については、職務や役割等に応じて派遣する職員を決めている。5月の障害児者プール指導講習会には作業療法士を派遣し、職場内の伝達研修を実施したほか、12月にはノロウィルスの感染防止のために嘔吐物の処理方法の研修を二日に分けて実施する予定になっている。

    職員として求められる専門性の向上を促すキャリアアップの仕組みの構築が期待される

    福祉、看護、リハビリの各専門職がそれぞれの立場を尊重し、フラットな関係で相互に連携・協力しながら両事業の利用児を支援する体制を整えている。重症心身障害児の療育等については、これから経験を積み上げていく職員もいる中で、今後、当事業所の職員として求められる専門性を明らかにすることが望まれる。そのうえで、能力やスキルを職員が段階的かつ効果的に身に付けるためのキャリアアップの体系を待遇と連動する形で整備するとともに、能力やスキルのアセスメントを踏まえた個別の育成計画の作成について検討を始めることが期待される。


    ※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
    カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
      サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
      評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
    前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 当事業所は区内在住の重症心身障害児を対象として区が設置した多機能型施設で、民間の社会福祉法人が指定管理者として運営している。毎年度の区との予算折衝において、児童発達支援及び放課後等デイサービスの実施事業ごとに目標利用率を設定している。医療的ケアを必要とする児童も多い中で、子どもの体調の問題により利用当日を含む直前のキャンセルが通常よりも多くならざるを得ず、経営的な観点から利用率の維持が重要な課題となっている。事業所の所在する自治体では、区内の4つの圏域ごとに、子育て、保健・福祉、支えあいの地域拠点として相談・支援のほか各種事業やサービスの提供を行う区の施設(すこやか福祉センター)を設置しており、その4つの施設と区の所管部署が年4回、連絡会を開催している。事業所では、障害や発達に課題のある区内の子どもの保護者が区立施設の利用を希望する場合に、子どものニーズに合った適切な支援を受けることができるよう、区の所管部署を通じて、連絡会の出席者に対し、重症心身障害児に対する基本的な知識と、当事業所の利用状況等について情報提供を行った。
    評語
    目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
    取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
    検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
    【講評】
    区内には当事業所を含め障害児通所支援事業の区立施設が4か所あり、施設間の役割分担と連携が再確認された。当事業所は区内で唯一の重症心身障害児に特化した施設であり、療育相談等において子どもの障害についての判断に迷った場合は当事業所に照会する体制が整備された。結果的に利用登録者数が増え、利用率の向上と安定につながっている。 
      評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
    前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 当事業所は重症心身障害児に対する専門的な療育のノウハウを備えた施設として、関係機関と連携しながら障害児とその保護者の地域生活を支える役割を期待されている。事業所の基本理念の一つに子どもの健やかな成長と生きがいの追求を掲げ、療育の中長期指針として、子どもが地域社会に参加できるようにADLの維持増進を支援することを謳っている。医療的ケアを要する子どもは、ストレッチャー型やリクライニング式の車イスの他、医療器具等を常時使用しているために移動手段の制約を受けやすい。通学先での校外活動においても保護者の付き添いが求められることから、家庭の事情等によって参加できない子どもも少なくない。事業所では、通学や通院以外の外出の機会を保障し、子どもに同年齢の児童と同じような経験や楽しみを味わってもらう取り組みに力を入れている。昨年度の遠足では下見を入念に行い、昼食をとるレストランのメニューを事前に保護者と確認して、子どもが食べたいものを自分で選択できるような配慮を行った。復路は公共交通機関を利用し、電車に乗って移動する体験を提供している。また、不定期ではあるが、近隣のスーパーへの買い物や地域のイベントに参加する機会も設けている。
    評語
    目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定したが、その達成に向けて取り組みが行われていなかった
    取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
    検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
    【講評】
    事業所の遠足当日に通常の活動は行わないため、遠足に参加しない子どもは休みとならざるを得なかった。その点について、保護者から改善を望む声が寄せられたため、今年度は行先を増やして選択制にするとともに、目的地によって移動手段を変える方向で検討を進めている。そのことにより、遠足に行かない子どもたちも当日に通常の利用ができるよう改善が図られる見通しである。子どもによって利用する日数や曜日が異なるため、日常の買い物体験や地域のイベントへに関しては、参加機会の公平性に課題を残している。 

    Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

    カテゴリー6 サービス提供のプロセス
      サブカテゴリー1 サービス情報の提供
      評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
      標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
      標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
      標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
      標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
    講評
    区及び運営法人のホームページや発行物により、区民に対し情報を発信している

    当事業所は区が設置した通所施設の指定管理事業者として、医療的ケアを常時必要とする子どもを含む重症心身障害児の在宅生活と健やかな成長を支援するため、児童発達支援と放課後等デイサービスのほか、区の事業である一時保護や在宅訪問等を実施している。区報等の区の発行物やホームページに加え、法人のホームページや事業所のリーフレット等により、各事業の内容や対象者、利用方法、問い合わせ先などを区民に発信している。

    区立施設として対応の手順を明文化し、見学時はプログラムの体験の機会も設けている

    電話等により利用の相談を受けた場合は、窓口である区の担当部署の連絡先を伝え、担当部署より利用希望者に関する情報が送られてきた時から支援が開始される流れを明文化している。児童発達支援管理責任者を兼務する施設長と療育主任が中心となり、利用希望者の意向や相談内容を聞き取り、その内容を記録して、見学時の体験やインテーク面談の際に活用している。見学の希望者には、利用者の都合や子どもの状況等に応じて、実際の療育の場面に一緒に参加してもらい、プログラムを体験する機会を設けている。

    利用希望者のプライバシーに対する配慮と子どものニーズを踏まえた対応に努めている

    インテークの面談では、保護者が気兼ねなく話ができるよう、専用の相談室での個別対応により、プライバシーに対する配慮に努めている。子どものニーズを見極めたうえで、他の区立施設の紹介を行うこともある。区及び関係機関との連携が強化される中で、利用待機の状況も生まれてきており、事業所では広報の仕方について工夫の必要を感じながらも、利用希望者が最初にアクセスする様々な関係機関に対し、より計画的な情報提供を行うことを課題と認識している。


      サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
      評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
      標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者等の状況に応じて説明している
      標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者等の同意を得るようにしている
      標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者等の意向を確認し、記録化している
      評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
      標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
      標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
      標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
      標準項目4 サービスの終了時には、利用者等の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
    講評
    インフォームド・コンセントを重視する方針のもと、丁寧な重要事項の説明に努めている

    利用希望者の最初の相談は区の担当部署が窓口となっており、事業所は区から提供される情報を基にインテークの面談を実施して、受け入れ可否の検討を行っている。その結果を区に報告後、必要に応じて利用者に受給者証の申請等の手続きを案内したうえで、契約書類の取り交わしを行っている。事業所では療育指針の一つにインフォームド・コンセントを掲げており、サービスの出発点となる契約の段階から、重要事項説明書の他に、よりわかりやすい言葉でサービス利用に際しての留意事項等をまとめた案内文書等を用意して、丁寧な対応に努めている。

    重度・重複障害のある子どもの受け入れに際し、詳細な支援情報を収集している

    利用対象を重症心身障害児に特化し、常時医療的ケアを要する子どもの受け入れに際して、詳細な支援情報を収集している。保護者に記入、提出してもらうフェイスシート(生育歴、心身および健康状態、家族構成などの基本データ)、療育の意向書、主治医等による診療情報や療育意見書、看護要約などの情報提供を受けて、利用開始前の生活や活動状況などを把握している。また、併用利用のサービス事業所、特別支援学校等の関係機関からの提供情報など、通所開始当初の環境変化に伴う負担軽減を図り、利用児の心身の安定を最優先にした支援に活かしている。

    利用開始当初は親子の不安軽減に努めるとともに必要に応じて終了時の支援を行っている

    3歳児からは送迎車による単独通園を原則としているが、利用開始当初は年齢にかかわらず、できるだけ保護者の付き添いを求めている。子どもが家庭を長時間離れる初の外出となる場合もあり、保護者の不安が子どもに影響を与えることも考えられるため、担当職員などとの接点、対話の機会として相互理解、良好な関係構築の場となるように支援している。一方、子どもの就学や特別支援学校卒業後の進路支援を踏まえた地域ネットワークにも注力しており、移行支援についての情報提供や関連施設との協働関係など、個々の必要に応じた支援に努めている。


      サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
      評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
      標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
      標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
      標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
      評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
      標準項目1 計画は、利用者等の希望を尊重して作成、見直しをしている
      標準項目2 計画を利用者等にわかりやすく説明し、同意を得ている
      標準項目3 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
      標準項目4 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
      評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
      標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
      標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
      評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
      標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
      標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
    講評
    関係機関からの情報等をもとに個別支援計画を作成し、保護者の同意を受けている

    利用にあたり、医療機関の診療情報提供書、学校の医療指示書、すこやか福祉センター(子ども家庭支援センター)の依頼書のほか、保護者に子どもの身体状況や家庭での生活状況等を所定の様式にまとめてもらい提出を受けている。そうした情報をもとに児童発達支援管理責任者が中心となって個別支援計画を作成し、個別面談で保護者に説明している。事業所ではインフォームドコンセント(説明と同意)の重視を療育指針に掲げており、個別面談で保護者の意向を確認し、必要に応じて調整を加え再度提示して、同意を得た個別支援計画書を保護者に渡している。

    個別支援計画の内容を踏まえた支援記録をもとにモニタリングを行う仕組みを整えている

    日々のケース記録の様式に個別支援計画の内容が記載され、計画の内容を意識して記録をとるように職員に意識付けしている。経鼻栄養チューブの抜去、経口摂取の進行状況や食形態等の段階、また、入退院など、支援内容に変更が求められる情報を個別支援計画別紙としてまとめ、速やかに支援へ反映させている。計画に基づいた支援の実施状況と子どもの変化の様子等を定期的に確認するモニタリングを半年ごとに行い、その結果を保護者との個別面談で報告するとともに、保護者の要望や意見等を把握し、必要に応じて計画の見直しにつなげている。

    職員全員で子ども支援するチームアプローチを重視し、子どもの情報を共有している

    事業の枠や職種を越えて職員全員で子ども支援するチームアプローチを重視し、子どもの状況確認と個別支援計画に関する検討を行うケース会議、その他の定例会議で子どもの情報を職員間で共有している。また、日々のミーティングで子どもに関する申し送り事項の確認や周知を図るとともに、その日の支援の振り返りを行っている。ミーティングでは、その日に起きた事故等に関する情報を共有し、注意喚起を促している。会議等での検討・決定事項を会議録等の回覧で全体周知を図っているが、今後、周知のスピードや確実性をより高めていくことが期待される。


      サブカテゴリー4 サービスの実施
      評価項目1 個別の支援計画に基づいて利用者一人ひとりの発達の状態に応じた支援を行っている 実施状況
      標準項目1 個別の支援計画に基づいた支援を行っている
      標準項目2 利用者の特性に応じて、コミュニケーションのとり方を工夫している
      標準項目3 関係機関(教育機関、福祉関係機関、医療機関等)と連携をとって、支援を行っている
    講評
    ケース記録に個別支援計画の内容が記載され計画を確認しながら記録ができている

    日々のケース記録に個別支援計画の内容が記載され、計画を意識して記録をすることを可能にし、計画に基づいた支援が実施されているかチェックができるようにしている。モニタリングは半年に1度行い、支援内容について評価し、見直しをしている。保護者との面談を年2回行い、モニタリングについて報告し、保護者の意向や要望、意見を個別支援計画に盛り込み、反映するようにしている。事業所では職員に対し、個別支援計画の策定やモニタリングのスキルをより向上させることが必要であると考え、課題と位置づけている。

    絵カードや写真等のコミュニケーションツールを活用して子どもと意思疎通を図っている

    言葉によるコミュニケーションが難しい子どもに対して、絵カードや写真をホワイトボードに貼り、その日の活動プログラムを見通せるようにして情緒の安定につなげたり、マカトンサイン(コミュニケーションに問題のある子どものためにイギリスで開発された意思疎通のツール)を活動や生活の中に取り入れ、浸透を図る取り組みを進めている。また、子どもが学校で使用しているコミュニケーションツールを事業所でも活用したり、視力の弱い子どもには活動で使用する道具等に手で触れて、物の形から内容を伝えるといった配慮をおこなっている。

    行政や医療機関、学校等の関係機関と連携し、支援に必要な情報を共有している

    利用する子どもの特性から医療や行政をはじめ関係機関との連携は必須となっており、サービス提供にあたり、医療機関からの診療情報提供書、学校からの医療指示書、すこやか福祉センター(子ども家庭支援センター)からの依頼書等の提出を保護者に求めている。子どもが通学する学校とは送迎の際にやり取りがあるほか、下校時の駐車方法や引き渡しのルール、安全性等について他事業所とともに連絡会を持って話し合いを行っている。学校行事には積極的に参加し、学校での子どもたちの様子を確認するとともに、担任との連携を深める機会としている。

      評価項目2 【食事の支援がある事業所のみ】利用者が食事を楽しめるよう支援を行っている 実施状況
      標準項目1 食事時間が楽しいひとときとなるよう環境を整えている
      標準項目2 利用者の状態やペースに合った食事となるよう、必要な支援(見守り、声かけ、食の形態や用具の工夫等)を行っている
      標準項目3 利用者が安全に食事をとれるよう取り組みを行っている
      標準項目4 食物アレルギーや疾患等については、医師の指示に従い、対応している
      標準項目5 食事の彩りや献立を工夫するなど、食に関心を持てるようにしている
      標準項目6 利用者の状況をふまえ家庭での食事について助言を行っている
    講評
    昼食時は楽しい雰囲気を心がけながら個々に合わせた用具の使用とペースに配慮している

    昼食はそれぞれ家庭で用意した食事を活動室で皆と一緒に食べている。全員でそろって「いただきます」を言い、食事の時間であることを認識できるようにしている。職員は子どもが持ってきたお弁当の内容について話題にするなど楽しい雰囲気で食事ができるように努めている。また、個々の状態に合わせた用具の使用と適切なペースで食事介助を行い、安全に摂取できるように注意は怠らないようにしている。自分で食べられる子どもでペースが速い場合は、別の容器に取り分け、ゆっくりと順に食べられるように声かけをしている。

    専門職の指導により食事中の姿勢や食物アレルギーに注意を払い、安全確保に努めている

    子どもが安全に食事を摂れるよう、通園開始時に保護者と理学療法士、作業療法士が食事中の姿勢について確認を取り、職員全体に周知している。作業療法士は子どもの嚥下状態の評価を適宜行い、職員に助言をしている。食物アレルギーについては、保護者から情報を確認し、フェイスシートに記録して周知を図っている。現在重い食物アレルギーの子どもは在籍していないが、嘱託医がエピペンの使用方法の研修を職員を対象に行った。緊急時に際し、職員が迅速に対応できるように準備している。

    医療職から摂食についての助言を受け、保護者及び職員の不安解消につなげている

    主治医の指導のもとで経鼻栄養チューブを使用している子どもが経口摂取の訓練を始める時に、口から食べるとおいしいと感じられるように、子どもの気持ちを高め、褒めたり、励ましたりしながらスムーズな移行を支援している。また、希望者に対して年3回行っている歯科検診の際に、歯科衛生士から子どもの摂食について助言が受けられるようにし、保護者と職員の不安や疑問の解消につなげている。医療職との緊密な連携により、子どもの食事に関する専門的な支援を可能とする体制を整えている。

      評価項目3 利用者一人ひとりの状況に応じて生活上で必要な支援を行っている 実施状況
      標準項目1 身の回りの支援は、利用者一人ひとりの健康状態や身体機能に合わせて行っている
      標準項目2 基本的な生活習慣や社会生活上のルール等(あいさつ、マナー、交通ルール等)を身につけられるよう支援を行っている
      標準項目3 集団活動を取り入れるなど、利用者の心身の発達や社会性が育つよう支援を行っている
      標準項目4 一人ひとりの有する能力を活かせるよう個別のプログラムを実施している
      標準項目5 送迎は、利用者と保護者等の状況に応じて送迎方法を検討し、行っている
      標準項目6 【入浴を実施している事業所のみ】 入浴の支援は、利用者一人ひとりの健康状態や身体機能に合わせて行っている -
    講評
    集団活動における様々な刺激の中で感情表出を促し、社会的ルールの会得を支援している

    集団活動によって子どもは他者に気づき、家庭とは違った刺激を受けることで感情の表出等様々な反応を見せている。始まりの会では毎回、あいさつと呼名への返事を促し、習慣化できるようにしている。活動プログラムの中では順番の意識付けのために、次の子どもにハイタッチをして替わるなど、楽しみながら社会性を高められるよう支援している。また、リハビリの専門職による個別の機能訓練を通じて、子どもの有する力を伸ばし、自立に向けた支援をおこなっている。今後、スーパーバイズの機会を通じて訓練の質のさらなる向上を図ることが期待される。

    子どもの状態に配慮して活動プログラムを提供し全員で楽しめるようにしている

    全盲や視力の弱い子どもを含め聴覚優位の子どもが多いため、音楽や歌に乗せて行う活動を多く取り入れ、リズミカルで楽しい雰囲気にしている。粗大運動など身体を大きく動かす活動も安全に行えるよう配慮して、楽しい体験ができるようにしている。緊張と弛緩の活動をバランス良く取り入れ、感触遊びやリラクゼーションのプログラムもおこなっている。人工呼吸器やペースメーカー埋め込み、常時酸素吸入などの医療的ケアを必要とする子どもも様々な体験ができるように安全性に努め、工夫しながら全員で一緒の活動ができるようにしている。

    委託業者と連携して、子どもの状況を踏まえた送迎車の運行・添乗体制を整えている

    通園の方法は、子どもの年齢により原則として3歳未満は保護者が同伴し、3歳以上は子どもだけを車イス対応の専用車両によって自宅前まで送迎している。必要に応じて保護者の同乗の希望にも対応している。送迎車両の運行及び添乗業務を専門業者に委託しており、医療的ケアを要する子どもが乗車する場合は事業所の看護師か理学療法士または国の要綱に基づくたん吸引等の研修修了者で認定証を持つ職員が同乗している。昨年度、保護者から委託業者のスタッフに対する不満の声が寄せられた際には、保護者会に責任者を呼び、話し合いを行った。

      評価項目4 利用者の健康を維持するための支援を行っている 実施状況
      標準項目1 利用者の健康状態について、保護者や医療機関等から必要な情報を収集している
      標準項目2 利用者の状態に応じた健康管理を行い、体調変化に速やかに対応できる体制を整えている
      標準項目3 日常的に利用者の口腔ケアを行っている
      標準項目4 医療処置や服薬管理は過誤等の防止に向けた取り組みをしている
    講評
    医師及び保護者から子どもの健康に関する情報を収集し、緊急時の対応に備えている

    利用開始時に主治医の診療情報提供書や医療指示書の提出を求めるほか、保護者との面談により子どもの疾患や障害等の把握に努めている。また、保護者との間でやり取りする連絡帳等を介して、通所当日の子どもの健康状態を把握し、活動中の配慮につなげている。各活動室には緊急時の対応方法に関する文書を綴じたファイルを備えている。子どもの発作に対する対応についても詳細に記載されており、職員が適切かつ迅速な行動を取れるように努めている。

    子どもの健康状態を把握し、着衣や水分補給等に配慮しながら活動をおこなっている

    常時医療的なケアを必要とする子どもが多い中で、サービス利用時は事業所に到着したら必ず検温を行い、必要に応じてサチュレーション(動脈血酸素飽和度)の測定等をおこなっている。活動中に子どもの体温が38度以上になった場合は家庭に連絡し、車両で自宅に送り届けている。体温調節が難しい子どもが多いため、天候や温度変化に注意を払い、様子を見て衣服の着脱の支援をおこなっている。また、水分補給を適宜行い、特に夏季や乾燥期には脱水等の防止のためにこまめに対応している。

    食事前の口腔体操や食後の口腔衛生、服薬時の二重チェック等に取り組んでいる

    食事前に口腔体操を行い、嚥下機能の向上を図っている。一対一で声掛けしながら、楽しい雰囲気の中で子どもに動作を促している。チューブによる流動食の注入や医療処置は原則として看護師がおこなっている。痰吸引に関しては福祉職も研修を受け、実施可能な体制を整えている。食後は歯磨きを行い、虫歯予防と口腔衛生に努めている。服薬については看護師が配薬を行い、別の看護師または常勤職員とで服用の際に薬剤名を読み上げ、リストと照合することで誤薬の防止に努めている。緊急時に備え、各家庭より3日分の予備薬を預かり、管理している。

      評価項目5 利用者の主体性を尊重し、施設での生活が楽しく快適になるような取り組みを行っている 実施状況
      標準項目1 日常生活の支援は利用者の主体性を尊重して行っている
      標準項目2 利用者が安心して活動できるよう、状況に応じて室内の環境を工夫している
      標準項目3 利用者の状況や希望に沿って、多様な体験ができるようにしている
      標準項目4 【放課後等デイサービス】 利用者の状況に応じて利用日や利用時間を設定している
    講評
    表情やしぐさ等から子どもの感情を汲み取り、意思を尊重した支援に努めている

    コミュニケーションの手段に制約や特徴のある子どもが数多くいる中で、職員は子どもが表出する喜びや楽しい気持ち、拒否の感情などを表情やしぐさ等から汲み取り、意思を尊重した支援に努めている。子どもの興味・関心を大切にしながら、拒否の反応が示されれば無理強いをせずにその理由を探り、主体的に活動に取り組めるように配慮している。衣服や靴の着脱の介助の際は、子どもに声かけをしながら状況を観察し、手を握って力が入ったり、指が上がったりなど小さなことでもできたことを褒め、モチベーションを高めている。

    子どもの健康と安全に配慮した用具の使用や温湿度管理、体温調節等に努めている

    活動室内には滑りにくいマットや各種クッションを用意し、子ども一人ひとりの特性を踏まえた安全な姿勢保持に努めている。必要に応じて家庭から持参したものも使用している。活動室の温度や湿度は一定の範囲内で維持されるように管理しており、体温調節が難しい子どもには冷却剤や冷却枕を使用するなど時季に応じて個別に対応している。冬は床暖房であるため、乾燥を防ぐために加湿器で湿度を高めに設定している。排泄の支援では、子どものプライドに配慮し、職員間でストレートな言葉ではなく隠語を使用してトイレに誘導している。

    施設内のプール設備を使って子どもが非日常の体験を楽しめる活動をおこなっている

    建物内に温水プールの設備を有しており、重度の障害のある子どもが水の浮力を活用して非日常の体験を楽しむことのできるプール活動を7月から9月(放課後等デイサービスの子どもは夏季休業の期間)にかけて実施している。毎年、活動が始まる前に障害児・者を対象としたプール指導者講習会に専門職が参加し、担当する全職員に対し伝達研修をおこなっている。また、設備の操作や水質管理に関しても職員が連携して事故のないように取り組んでおり、気管切開の子どもなど常時医療的なケアを必要とする子どもたちの安全確保に努めている。

      評価項目6 家族との交流・連携を図り支援を行っている 実施状況
      標準項目1 利用者のサービス提供時の様子や家庭での普段の様子を家族と情報交換し、支援に活かしている
      標準項目2 家族の意見や要望を活かした支援を行っている
      標準項目3 家族の状況に配慮し、相談対応や支援を行っている
      標準項目4 利用者や家族に合った療育方法等について助言している
    講評
    連絡帳等を介し、家庭や学校での子どもの様子について保護者と情報を交換している

    保護者とは連絡帳を介して利用の都度、子どもに関する情報を交換している。保護者には連絡帳に子どもの家での様子や健康状態等を書いてもらい、日中の支援に活かしている。職員からはその日の子どもの過ごし方や体調、食事、排泄の状況等について報告している。連絡帳以外に、必要に応じて電話等でも保護者とやり取りを行い、子どもに関する情報を共有している。放課後等デイサービスの子どもを学校に迎えに行った送迎車の添乗スタッフが担任教員から申し送りを受けた場合は、連絡漏れのないよう、付箋等に記して担当職員に伝えている。

    定期面談では事前に把握した保護者からの意見や要望等を職員間で検討し、回答している

    利用開始時及び新年度前に、事業所に対する意見や要望、子どもの療育についての相談等を記入してもらう用紙を保護者に配布・回収し、職員間で検討した結果を個別面談の際に回答している。また、必要に応じて随時面談を行い、保護者の悩みや相談に専門職が連携して対応している。家庭の状況を把握し、日中一時保護の利用等にも迅速に対応できるようにしている。普段のサービス利用時に保護者が子どものきょうだいを連れて通園している場合は、担当以外の職員がきょうだいを別室で保育し、保護者が安心して療育に参加できるように配慮している。

    保護者の信頼感を高め、子どもの発達をともに支え合う関係性の強化に取り組んでいる

    保護者会を年2回開催し、事業所から前年度の事業報告や当年度の事業計画の内容等について説明を行い、運営の透明性を図ることで保護者の信頼感の向上に努めている。事業所の遠足やおまつり等のイベント開催の際、児童発達支援では保護者の協力を必須とし、一方、放課後等デイサービスでは可能な範囲で保護者の協力を依頼している。イベント等の機会を通じて、保護者同士、また職員との交流を図り、子どもの発達をともに支え合う関係性を深めるようにしている。事業所では、事業間で保護者会の参加状況に隔たりが生じていることを課題と認識している。

      評価項目7 地域との連携のもとに利用者の生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
      標準項目1 地域の情報を収集し、利用者の状況に応じて提供している
      標準項目2 必要に応じて、利用者が地域の資源を利用し、多様な体験や交流ができるよう支援を行っている
      標準項目3 【児童発達支援センター】 地域全体の在宅障害児や関係機関等を対象に、施設・設備や人材・プログラムを有効に活用した支援を実施している -
    講評
    日中活動の中で地域の資源を活用し、子どもたちに多様な体験の機会を提供している

    行政からの情報で子どもが楽しめそうなイベントや講演会等の開催の案内があると、チラシを家庭に配布したり、施設内に掲示している。放課後等デイサービスでは日中活動の中で近隣のスーパーに出かけ、お店の人とのやりとりを通して買い物をする体験をしている。また、桜の時期には全員でお花見に出かけ、天候の良い日は近隣の公園に散歩に出かけている。公園の遊具で遊ぶ子どもの姿もあり、地域の資源を活かして子どもたちに多様な体験の機会を提供し、活動の幅を広げている。

    事業所のおまつり等を通じて地域住民やボランティアと交流する機会を設けている

    年1回の事業所のおまつりを開催している。親子が楽しめるように職員が手作りの企画を工夫している。子どもの安全を確保するために一般開放はされていないが、隣接する学童保育の利用児童がアトラクションとして歌やダンスを披露し、会場を盛り上げているほか、隣接の通所施設の利用者と職員が参加して交流を図っている。当日は大学生のボランティアの手伝いもあり、大勢の参加者で賑わっている。そのほか、戸外活動をきっかけに知り合った近隣の自立訓練施設の利用者が年数回ボランティアとして事業所を訪れ、子どもたちに影絵を披露している。


      サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
      評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
      標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者等の同意を得るようにしている
      標準項目2 日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
      標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
      評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
      標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
      標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
      標準項目3 施設内の利用者間の暴力・いじめ等が行われることのないよう組織的に予防・再発防止を徹底している
    講評
    個人情報の使用について保護者の同意をとるとともにプライバシーへの配慮に努めている

    法人の個人情報保護規程に基づき、サービス提供に当たり提供を受ける個人情報の使用目的を明示するとともに、支援上の必要から外部の関係機関に提供する場合があることについて、書面への署名により保護者の同意を受けている。保護者が来園して個人や家庭内のプライバシーに関わる相談を職員が受ける場合は独立した相談室を使用し、安心感につなげている。サービス利用の際は必要に応じて各家庭が子どもの昼食やおやつを用意しており、子ども同士が互いに比較することで傷ついたりトラブルにならないよう、声掛けや見守りに配慮している。

    個々の特性に応じたコミュニケーション方法を工夫して支援に当たっている

    意思疎通や感情表出に制約や特徴のある子どもが多いため、職員は子どもの表情やバイタルの変化、微細なしぐさ等からサインを読み取り、職員間で共有している。家庭や学校でのコミュニケーション方法を参考にしながら、写真や絵カードのほか、簡単な手話に似たツールを使用して子どもと意思疎通を図る取り組みもある。一行為ごとに表情豊かな励ましや誉め言葉で視覚と聴覚に訴えるとともに、体をさする、手を添えるなどのスキンシップを通じて子どもの安心感につなげている。経管栄養の注入やたん吸引等のタイミングは、基本的に家庭に合わせている。

    子どもの羞恥心に対する配慮はあるものの、同性介助に関してはさらなる検討が望まれる

    子どもの羞恥心に配慮し、可能な限り活動室内での排泄、更衣は避け、トイレや個別空間が取れる場所へ誘導して介助している。移動困難な場合は目隠し用の衝立を置くなど、周囲の視線に触れないよう配慮している。また、可能な限り同性介助に努めているものの、特に放課後等デイサービスではなかなか難しい現状があり、事業所ではその点について保護者から了承をとっている。しかし、それで良しとすることなく、特に高年齢児に対する身体介助の際は、本人の羞恥心に配慮し、介助の方法等に関して、よりきめ細かい検討が期待される。


      サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
      評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
      標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
      標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
      標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している ×
      評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
      標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
      標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
    講評
    法人理念のもと、子どもの健康と安全の確保に向けた業務マニュアルの整備を進めている

    当事業所を運営する法人は、「最も弱いものをひとりももれなく守る」という基本理念に基づき、重症心身障害児(者)施設及び在宅生活の充実を進めるともに、親に対する啓発と連携を目指して全国規模の活動を展開している。法人として重症心身障害児(者)の医療と介護に関する支援者向けの教材ビデオを監修し、販売している。当事業所も法人の理念に基づき、子どもの健康を守り安全を確保するために、個別の医療的ケアや発作、アレルギー反応への対応、感染症対策、水療育(プール)、送迎業務、災害対応等のマニュアルを作成し、標準化に努めている。

    新任職員を育成する責任体制を整え、職務の標準化を目指す取り組みを進めている

    新任職員に対しては原則として採用後1年間、指導役のリーダー層が実際の職務を通じて教育訓練に当たる仕組みを整えている。所定のチェックリストに基づき、指導内容の定着度合いを3か月ごとに評価し、専門職としての成長と職務の標準化の実現に取り組んでいる。チェックリストには指導の基準となる規程やマニュアル類が示されているが、療育に関する具体的な指導内容については対応するマニュアル類の設定がない。今後、指導方法の統一化を図るためにもマニュアルの整備を進め、新任職員に対する指導のテキストとして活用することが期待される。

    より高いレベルで専門職としてのスキルを平準化するための取り組みが期待される

    重症心身障害児の命と健康を支える療育の現場において、職員に対する個別指導や日常的なミーティング等での研修等を通じて、必要とされる水準の業務の標準化は図られていると言える。しかし、比較的短い期間で職員の一部の入れ替わりが続き、定着率の向上が課題となっている中で、保護者からも職員のスキルの平準化を求める声が寄せられている。職員それぞれが専門職として療育の現場で子どもと向き合いつつ、成熟の度合いには当然ながら差があり、法人の資源も活用しながらそれをどのように補っていくのか、今後検討を深めていくことが期待される。