東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

ホームページやパンフレットへの記載、玄関や保育室への掲示などのより、当園の保育が「子どもに本来備わっている、人間としての可能性を引き出すこと」を「生命の援助」とする教育理念に基づくものであることを明示している。その上で、職員に対しては、年度当初のオリエンテーション、園内研修、日常の実践などを通して、理念に対する深い理解やそれに基づく行動を促している。保護者に対しては、入園説明会やオリエンテーションなどでの説明、懇談会や日々のコミュニケーションなどを通して、発信している。

カウンセラーでもある園長を中心に、傾聴や受容の姿勢を大事にする「カウンセリングマインド」をもって、「生きる」ことの援助を実践している。その実践は、日頃の保育はもとより、保護者とのかかわりや職員の姿勢にも表れている。自立に向けて様々な能力を獲得し成長していく子どもの姿、園の取り組みに対する保護者の理解や共感、職員の高い専門性と向上意欲など、随所に表れる園の特徴の根底は、確固たる理念に貫かれている。

モンテッソーリ教育に携わる者としての心得（教師の心得12か条）により、子どもに関わる姿勢や配慮について明示している。また、これとは別に、園として行動指針を定めている。理念を理解した行動、子どもへの対応、保護者への対応などのほか、規則や諸規定の遵守・社会人としての責任ある行動などを内容とする「規律」、相手を尊重した身だしなみや立ち振る舞いなどの「マナー」、モンテッソーリ教育法の理解、それに基づく子どもとの関わりなどについて、職員が踏まえるべき事柄について明確に定めている。

透明性の確保という点では、定期的に東京都の第三者評価を受審し、インターネットや掲示板を活用して結果を公表している。また、パンフレットや食育に関する取り組みをまとめた冊子を関係機関に提供している。専門性の還元という観点からは、地域の方々を対象とした公開フォトギャラリー展やファミリーコンサート、子育て講演会、異文化（宮廷舞踊）を体験するワークショップなどを実施している。そのほか、在園児の保護者に限らず、子育て相談にも応じるなど、地域の子育て支援につなげている。

苦情解決体制などを明示している苦情対応規程を完備している。苦情解決責任者を明示し、「苦情申出内容の原因、解決方策の検討」「苦情解決のための申出人との話し合い」など、具体的な職務を規定している。また、苦情受付担当者も定め、利用者からの苦情受付の体制を確立している。さらに、アンケートボックスの設置、「意見・要望等の受付書」の活用など、広く声を収集し、受け止め、活かしていくための仕組みを整えている。

傾聴や受容の姿勢を大事にする「カウンセリングマインド」をもって、「生きる」ことの援助を実践している。その実践は、日頃の保育や職員間の協力などに加え、保護者への対応場面でもその力を発揮している。保護者アンケートにおいても、日常的なコミュニケーションや行事に際して実施されるアンケート、懇談会など、様々な機会を通して保護者の思いを汲み取ろうとする園の姿勢に感謝する声が寄せられるなど、意向をサービスの向上につなげる取り組みが実際に機能し、保護者にも浸透していることがうかがえる。

園として定めた手順に従い、年度末に職員会議を開き、全体で協議し、翌年度の事業計画を策定している。作成にあたっては、定員数の増加と必要な職員の確保、職員負担の軽減などを考慮して、無理のない内容にしている。その上で、組織図や職員職務分担表などに基づき、園長以下それぞれの職務を明確にし、着実な計画の実行を図っている。

室内での安全管理、散歩時の安全確認、外遊びの安全習慣、避難訓練、プール前安全教育、安全な生活態度の習慣化などについて、年間を通して安全管理を推進している。また、不審者侵入対処、戸締り、地震時および火災時の対処、散歩時の危機管理などについて、対応マニュアルを完備している。さらに、震災を想定し、避難ルートや避難場所、避難グッズの再確認を行っている。消防署とも連携し、避難訓練を含め対応方法の充実を図っている。そのほか、施設の安全管理という面では、正面玄関の鍵をオートロック式に変更している。

「子どもを愛し、天職とされている方」「親切・尊重・協調性という社会性のある保育士であり、できればモンテッソーリ資格を有する方」「常に学び、自己を向上させようという意欲のある方」などを理想の職員像として、採用にあたっている。その上で、モンテッソーリ教育やカウンセリングマインドをテーマとした園内研修を実施している。確固たる理論の学習、講師による実践的な指導、園長による職員に対するカウンセリングマインドの実践など、育成の面でも理念に基づく一貫した取り組みを行っている。

モンテッソーリ教育の講師の協力を得て、モンテッソーリ教育の一層の浸透・深化を図るべく、園内研修を充実させている。経験などを踏まえて4グループを編成して個々の育成を図り、またクラス別で行うことで学びをクラス全体で分かち合うなど、園の保育・教育方針を深く理解し、保育実践につなげていくための独自の研修を実施している。子どもを内面から理解し、発達や姿に対する観察眼を養い、自己に対する内省をも促す、真に職員一人ひとりの自主性・専門性を高める取り組みをさらに深めている。

園として個人情報保護方針を策定している。これは、職員会議などで話し合った上で策定した独自のものである。リスクマネジメントの観点からも的確な対応をしており、この個人情報保護方針はホームページ上も掲載し、重要事項の説明の際にも用いている。

ホームページやパンフレットでは、当園の保育が「子どもに本来備わっている、人間としての可能性を引き出すこと」を「生命の援助」とする教育理念に基づくことを明確に謳っている。そして、発達にあった環境を準備し、保護者と共に子どもの成長を手伝っていく姿勢を明確にしている。その上で、日常生活の練習や英会話教育、デイリープログラムの概要と各活動のねらい、保育室の状況や職員構成、定員および利用料などについて説明・紹介している。外国籍の利用者を想定し、英語版の案内も設けている。

年間を通して、8回、見学者を対象とした園の説明会（見学会）を開催している。園での子どもの様子をフォトギャラリーで見て頂き、子どもと保育士との関わりを含む保育環境を見て頂くようにしている。高いニーズを踏まえ、現在では、より多くの方々が見学の機会を得られるように、見学会1回あたりの予約人数を以前の倍にしている。見学会の際は、常勤職員が全員出席し、ゆっくりと丁寧な対応を心がけることで、園の雰囲気に触れ、理念や取り組みに対する理解を深めて頂いている。

見学会の段階で、理念や日々の保育の意図、援助に対する当園の考え方や具体的な実践について説明している。そして、入園後の年度初めには、新入園児および進級園児の保護者を対象に、オリエンテーションを実施している。この機会に、1年の行事予定や保護者の協力が必要な点について説明している。また、年間指導計画に加え、当園の特徴である①モンテッソーリ教育、②カウンセリングマインド、③食育などについて、重点的に説明している。各クラスごとの懇談会では、質問や要望に応えている。

入園直後は、家庭と連携して生活リズムを把握し、一人ひとりの家庭での生活リズムを引き継ぎつつ、特定の保育者が一対一で関わることで、安定して過ごすことが出来るようにしている。抱っこしたり、スキンシップを図ったり、言葉かけをするなど、子どもの思いを受け入れ、笑顔で温かく接することで、安心して過ごせるようにしている。保護者とは、健康状態や家庭と園での様子などを伝え合い、共通認識を持ち、相談にも応じながら安心につなげている。

保育所保育指針などに基づいて、保育の全体計画である保育課程を編成し、それに則って年間その他の諸指導計画を各クラスで作成している。また、それぞれの子どもの発達状況や保護者の意向を尊重し、個別指導計画を作成している。保護者に対しては、個人面談や連絡帳で指導計画をお伝えし、同意を得ている。作成した計画については、期ごとにカリキュラム会議で見直すほか、週・月ごとに週案・月案の評価・見直しを行っている。学期毎にも、園内研修の中で各職員が自己の保育に関する振り返りを行っている。

健康診断記録、健康管理カード、非常災害時引渡しカード、児童票、連絡帳等を保護者に記入して頂いている。また、発達経過記録には個人別に発達状況を記録するなど、一人ひとりの情報を過不足なく記載する仕組みがある。さらに、クラスごとに、月案・週案の中で「こどもの評価」を記入している。個別の状態については、発達経過記録に詳細に記録している。これらの記録物の活用、会議での検討、連絡ノートの活用などを通して支援に必要な情報を職員全体で共有し、日頃の保育実践や保護者対応につなげている。

どの部屋も、淡いモスグリーン系のカーテンを用い、仕切りなどに活用することで、子どもに不要な刺激を与えないよう配慮している。高い戸棚など、威圧感を与えるものはなく、部屋全体の色合いとの調和もあり、清々しい雰囲気を作り出している。玩具や教具は、子どもの手の届く範囲に綺麗に収めている。職員も、清潔感や温かみのある身だしなみで、移動する姿も決して保育の妨げにならず、職員同士の声かけ、子どもへの声かけは、相手のそばにより、程よい音声と笑顔で会話している。全体として、整えられた環境の中で子どもの活動が展開されている。

1部屋を可動式家具で仕切り、1歳児、2歳児の保育室にしている。教具・玩具は、全て子どもが自ら出し入れすることが出来る位置に設定されている。1つのテーブルに、1～4名程が座り、自分で選んだ教具を用いて「お仕事」に集中し、最後までやり遂げ、満足げな表情で定位置に戻し、次の教具を選んでいる。教具の交換時、限られたスペースの中で数名の子どもの行き来があるにも関わらず、互いに接触することなく、適度な距離感をとっている。互いに干渉することなく、各自がそれぞれ思い思いの「お仕事」に満足そうに取り組んでいる。

連絡帳や送迎時のコミュニケーションにより、日々、園と家庭での情報共有を図っている。登園時には一人ひとりに声をかけ、食事、睡眠、排便など、健康状態や家庭での様子などについて、聞き取り・観察などを通して確認している。降園時には、担任がいる時間帯であれば担任から、当番の時間帯であれば担任から引き継いだ事柄を、伝えている。個々の職員のみならず、園全体として保護者の思いを受け止める姿勢の実践が、保護者の安心や信頼につながっている。

食事については、実物の食べ物を見せる、食べこぼしの処理方法を伝える、食べ物のカードを使用することなどを通して、あるいは、挨拶や食具の持ち方などのマナーが身に付くよう、必要に応じて声をかけている。また、排泄の方法や衣服の前後の認識・着脱など、年齢や個人の発達に応じて少しずつできるようになるよう援助している。食事の際には、当番による配膳をはじめ、他の子どもからの「ありがとうございました」、当番の子どもからの「どういたしまして」、エプロンをたたむ・拭く・拭いた布巾を洗って干すといった一連のお仕事が実践されている。

子どもの活動を「お仕事」と捉え、一人ひとりの自己実現や活動とはどんなものなのかしっかりと観察し、そのための準備や誘導を行っている。また、教具については、心理運動の発達段階に応じた教具や活動を一覧にした「発達年表」を基に一人ひとりの発達状況を観察し、個々の発達過程にあったものを提供している。さらに、研修を通して、声のトーンや話し方、動き、身につける色など、雰囲気作りにつながる全ての要素に配慮している。人的・物的な配慮を背景に、声や物音の目立たない穏やかな環境の中で、子どもが各自の活動に集中している姿がある。

自ら手を使い、身体を動かすことの積み重ねを通して、学び取る能力を育んでいけるよう、発達に応じた適切な教具を準備している。0歳児には、目と手の協応性や追視のための道具類を、1歳児には、スプーンでの移し替えなど3本指の強化のための道具、型はめ・切る・貼る・紐通しなどを導入している。2歳児では、雑巾やタオルを絞る・室内を掃く・水を注ぐなどの日常生活の活動、色板などの感覚教具の活用などの様々な活動に取り組んでいる。活動の繰り返しを通して、達成感や自信を抱き、さらなる自発性・積極性を発揮し、活発に活動する姿がある。

年長である２歳児クラスでは、クッキングやゲーム、植物栽培など、全員の子どもが参加して達成感を味わうことができる機会を多く設けている。行事を組み立てていく過程では、子どもが興味を持ち、成長にあった製作を準備し、行事への期待につなげられるようにしている。また、ファミリーコンサートでは、子どもがともに歌を披露する経験をし、保護者にとっても成長を実感する機会となった。

長時間保育年間計画を立て、期ごとにねらい、子どもの姿、配慮事項、家庭との連携など、必要な対応方法を定めている。その上で、人的環境に合わせて、物的環境の大切さを重視し、特に保育室内の整理整頓・教具や用具は美しく、子どもたちにとっても使いやすい配置を心がけている。また、花や緑を室内に飾って魅力的な室内作りを心がけている。職員も人的環境として、魅力的な職員になるために園内研修を行っている。モンテッソーリ教育の教具棚で仕切りを作り、子どもが怪我なく、集中して活動が出来るよう、効果的な配置を行っている。

栄養士を中心に、「まごわやさしい」（まめ・ごま・わかめ・やさい・さかな・しいたけ・いも）を取り入れた献立を作成している。また、子どもが季節感を感じられるよう、日頃から旬の食材を多く用いている。塩分にも配慮し、薄味で栄養バランスの良い安心・安全な食事を提供している。クリスマスやハロウィンなどに合わせて工夫を凝らすなど、食べることを楽しむことができる工夫を日々行っている。そのほか、子ども自身が参加する「作る」活動を1歳児から設定し、普段の活動の中で育んできた手先の力でクッキーの型抜きなども体験している。

穏やかな雰囲気の中で快適に向かえるよう、食事の前にお話や歌で心を落ち着ける工夫をしたり、花を飾ってテーブルセッティングをしたり、食事の前に、どんな食材が入っているか、どんなメニューかなどお話をして楽しい食事になるよう配慮している。また、食事の前には、年齢によっては絵本を用いたりしながら、どんな食材が使われているか、「分かる人？」との問いに元気よく答え、分からなければ調理担当の職員に聞き、食材の正しい名称を皆で確認しあっている。

年間保健計画表に基づき、毎月の健康管理上の取り組みを定め、成長・発育の援助と病気の早期発見に取り組んでいる。登園時には必ず様子を観察し、特に0歳児は必ず健康状態を保護者に確認している。連絡帳には、毎日熱を測って結果を記入して頂いている。毎月の身体測定に加え、0歳児は月に2回の嘱託医師による検診、1・2歳児は春・秋の2回の内科検診を行っている。年1回、全園児を対象にぎょう虫検査を実施している。

0歳児クラスでは、睡眠時には定期的に呼吸チェックを行い、呼吸や顔色、寝方などを確認し対応している。また、感染症予防マニュアルに従い、日々の清掃を始め、手洗いやうがいの実施、アルコール消毒など、衛生管理に努めている。保護者に対しては、園だよりの配布やポスターの掲示により、子どもの病気や健康に関する情報について発信している。区発信の感染症情報についてもその都度掲示し、園内で感染者が発生した場合は、発生状況を直ちに掲示して知らせしている。

カウンセラーでもある園長を中心に、傾聴や受容の姿勢を大事にする「カウンセリング・マインド」をもって、子ども、保護者、職員を問わず、「人」に接している。相手の気持ちを受け止めて心に寄り添っていくという「カウンセリング・マインド」の実践は、保護者に対する関わりにも活かされており、一人ひとりの思いを受け止め、しっかりと思いを聞き、必要であれば助言を行っている。温かく穏やかな対応は、保護者の安心につながっている。

保護者会の場を活用して、子どもの成長や職員が日頃学び実践しているモンテッソーリ教育の理論について、発表している。保護者にとっては、成長を実感したり、成長の見通しを持てたりと、安心につながっている。また、園での取り組みの一つひとつにどんな意味があり、子どもがどんな能力を獲得しそれを伸ばして自立に向かって成長しているのか、専門的な内容を分かりやすく具体的に説明している。年1回の保育参観と合わせ、子どもの成長してゆく姿をよりよく理解して頂く取り組みを行っている。

園内で行うファミリーコンサートでは、地域の方や卒園児などをお誘いした上で開催している。ハロウィンパレードでは、普段の散歩でもよく行く近隣の八百屋や花屋、ペットショップなどに立ち寄ったり、クッキングに際しての材料の買い出しに子どもと八百屋に行ったりすることなどを通して、地域の方々と触れ合っている。そのほか、散歩先の公園では、馬やモルモットの姿に触れる機会もある。また、近隣の公立保育園の園庭開放に参加し、同園児とかかわりながら遊ぶ機会もある。さらに、高齢者施設との交流も始まっている。

個別の発達経過記録や個人の指導計画などには、一人ひとりの保育への配慮を取り入れている。日常の保育生活でも、「子どもが自分でできるように環境を整える」ことを職員全体で共有し、一人ひとりの自立を援助するという理念を実践している。子どもに対する理解と明確な意図に裏付けられた一つひとつの生活場面、それらで構成される一日の生活、その中でのものや人との関わりの積み重ねを通して、子どもは「自分でやる」「一人でやる」意思と能力を伸ばしている。常に、「一人でできるように」なるための大人の関わり方を考え、実践している。

保護者との関わりとしては、働きながら子育てを行う苦労を受け入れ、共感し、家庭での子育てで不安な点や心配な点などを聞き、園と家庭で子育ての協力体制を作り、前向きに進んでいけるように取り組んでいる。また、保護者の子育て支援を基本方針とし、子ども一人ひとりを尊重するという理念を実現するために、「子ども一人ひとり家庭環境や発達が異なる中で、各々の状況を正確に観察するために必要な情報を得ながら判断し、対応すること」を職員一人ひとりが最重要のテーマとのひとつであると認識し、日々の保育に取り組んでいる。

園長による面接のほか、日常的にも相談できる体制にある。リーダー（主任）などによる的確な声かけや指導方法の助言などに加え、保育の実際の様子を講師が観察し、クラス運営のより良いあり方などについて振り返る機会を設けている。高い水準を維持していくべく、不断に取り組んでいる。これらの取り組みは、技術レベルにとどまらず、子どもを内面から理解し、発達や姿に対する観察眼を養い、日々の保育のあり方を自己反省するなど、職員一人ひとりの内面に働きかける有効なものとなっている。

モンテッソーリ教育の講師の協力を得て、保育・教育の専門性の一層の浸透・深化を図るべく、園内研修を充実させている。経験などを踏まえて4グループを編成して個々の育成を図り、またクラス別で行うことで学びをクラス全体で分かち合うなど、園の保育・教育方針を深く理解し、保育実践につなげていくための独自の研修を実施している。