東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 平成29年度
サービス名称 就労継続支援B型
法人名称 社会福祉法人おあしす福祉会
事業所名称 オアシス・プラス
評価機関名称 一般社団法人 地域ケア総合評価機構(令和4年3月31日までの評価機関)

コメント

第三者評価を行うにあたり、自己評価や利用者アンケート調査の結果のほか、事前資料や訪問調査当日の書類確認など、多角的な情報収集を行いました。訪問調査には障がい者福祉サービスの調査経験が豊富な評価者を派遣し、経営層ヒアリング、書類確認などを実施しました。利用者アンケート調査と職員自己評価の集計は、評価者が分担して担当し、自由意見は個人が特定されないように注意して加工しました。報告書の内容については、客観性を確保するため事務局内で校正を行いました。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)障害があっても無くても、一人一人が社会の一員として認められ、かけがえのない役割を持ち、自己実現できる地域社会を目指す。(ソーシャルインクルージョン)。そのために、医療・福祉関係分野を超えて、広く多くの市民、団体、機関等と連携・協働していく。  2)利用者を一人の人間として尊重し、多面的・包括的に見つめ、利用者の障害だけでなく、ストレングスに着目した支援・事業を実施する。  3)医療モデルから脱却し、利用者本人の真のニーズ・希望に基づいた、リカバリー・エンパワメントモデルを実践し、利用者のリカバリー促進に寄与する。その支援は、利用者が自分の権利・人生・生活は自ら自分の手で守り、そのコントロールの主体は自分自身であるという意識を取り戻せるように行なっていく。  4)利用者にとっては、当事業所を利用することで、地域の中で生きていくたくましさを獲得していただくとともに、共に幸せを希求する当事者同士の支え合い・育みあい・労りあいを大切にしていけるような支援、事業、関わりを行う。  5)職員も、地域の中で共に幸せを希求する者として、利用者、職員との支え合い・育みあい・労りあいを大切にする。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

○利用者の真のニーズや興味・関心、志向する生活に耳と目と心を傾け、自分の主観やエゴを利用者に押しつけない職員 ○ソーシャルインクルージョンの理念を理解し、実践できる職員 ○自分の考えや思いを、正確かつ簡潔に記録、発言でき、状況報告等の再現性が確実にできる職員 ○利用者の世話をするのでなく、代行するのでもなく、利用者や集団のストレングスが発揮できるように関わることができる職員 ○自分自身をきちんと見つめ、自己に向き合っていく努力ができる職員 ○同僚や利用者と協力・共同し、支え合い、共に働き、その成長や発展を共に喜び合うことができる職員

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

○職員は利用者が当事業所を利用するにあたり、まず信頼される存在であってほしい。 ○職員は、利用者が安心でき、自分自身を信頼することができるために、どのような支援を必要とするのかを常に考え続けてほしい。 ○職員は何事も自ら一人で解決する事を目指すのでなく、同僚の職員と共に考え、共に悩みながら、様々なことを解決する力を培ってもらいたい。 ○職員は利用者のストレングスに着目するべきで、できないこと、気づかないことを指摘するのが仕事ではないことに気づけるようになってほしい。 ○利用者の工賃アップの為にもっと具体化を図ってほしい。 ○法人内研修以外に、自ら、自発的・主体的に研修や勉強をもっと積極的ににして、自己研鑚に励んでほしい。 ○他障害と違う、精神に障害を持つことについて、利用者、家族、地域、社会に対し、自分自身がどう考え、どうあるべきかについて、問題意識を持ち、もっと議論や考察をし、地域に対して具体的なアクションを起こせるようになってほしい。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 全職員が利用者のリカバリーを信じることを大前提として、支援を行っている

利用者の中には、自分がリカバリーできることに対して自信を持っていない方がいる。それは、この人は病気だからできない、障がい者だから仕方ないという見方による影響であると考えている。オアシス・プラスの職員は、全員が利用者のリカバリーを信じている。職員が信じることで、利用者が自分自身のリカバリーを信じることができるようになると考えている。今、力を発揮できないのは何か阻害する要因があるからであると考え、阻害因子を無くし、促進因子を探す支援を行っている。
2 今利用者が必要としている支援を、多面的で包括的におこなっている

就労支援に限らず、家族を含めた利用者の生活を多面的にとらえ、今利用者に必要な支援を包括的におこなうことに力を入れている。例えば、親の介護や育児、住居探しなど、生活上の様々な困難に関しても、相談にのったり、一緒に動いたり、関係機関とつなげたりなど、さまざまなアプローチをしている。また、健康管理の面においても、精神疾患以外の病気についても意識を持ち、トータル的な支援に取り組んでいる。
3 一緒に考える支援をおこない、職員も利用者も共に支え合いながら、仲間・集団づくりをしている

職員集団として、「利用者を一人の人間として尊重し、利用者の自立を支援していく」という理念に基づいた実践をおこなっている。職員も利用者も共に弁当の製造・販売に関わり、協力・協働・支え合いを大事にしている。就労支援についても単なる指導ではなく、利用者と一緒に考える支援を心がけている。そのために、日頃から職員同士で気軽に意見を出し合える雰囲気づくりを心がけており、情報を共有し、チームワークのいい職場づくりができている。

さらなる改善が望まれる点
1 職員の増員と事務のIT化により、さらなる効率化を図ることが期待される

現在の人員体制は、配置基準を満たしている。しかし、就労支援として企業への同行が必要なこともある。また、新規利用者の受け入れの際には、1か月に一人の受け入れが適度であると思うほど、丁寧な対応をしている。したがって、より積極的な就労支援や新規利用者の受け入れのためには、現在の人員体制では十分な対応ができない。来年度に職員増員の予定があることと、記録の整備とIT化により、さらなる業務の効率化を図ることを期待する。
2 利用者数を増やし、一人当たりの労働時間を増加し、工賃アップと売上を向上する課題

営業努力により、弁当の売り上げが向上し収入増となっているが、利用者数や給付費収入は伸び悩んでいる。また、利用者一人当たりの平均労働時間が短く、平均労働日数も少ないため、工賃アップもなかなかできない状況となっている。利用者の受け入れは丁寧な対応をしており、関係機関との連携も重視しているので、急な利用者の増加は無理であるが、利用者数を増やす取り組みの強化が望まれる。また、一人当たりの労働時間の増加についても利用者との丁寧な話し合いやニーズの把握を進め、工賃アップにつながる取り組みを期待したい。
3 企業内就労も含めた施設外就労の模索を含め、中長期計画を策定する課題

現在の場所で給食事業を開始して10年になる。弁当の売り上げも伸ばしてきているため、大規模改修か移転による給食事業の設備の整備が必要となってきている。また、現在の就労支援事業は、施設内でおこなわれているが、企業内就労を含めた施設外就労も模索し、全体としてこの地域で求められる就労支援事業のあり方について検討が必要となってきている。現在法人で新規事業プロジェクトを立ち上げ検討中とのことであるが、法人の方針とあわせて、中長期計画を策定して取り組んでいくことを期待する。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 職員が共通認識をもって利用者の支援をおこなう職場づくりができている

職員も利用者も共に弁当の製造・販売に関わり協力・協働・支え合いを大事にし、仲間・集団づくりをしている。利用者がサービスや支援の受け手となるばかりでなく、誰かの役に立ったり、助けたり、支えたりできる側にもなれると思えるような支援、取り組みを職員全員で確認し、実践している。少人数の職員集団であり、職員は専門職らしくというより、まず人としてごく普通の感覚を大事にして利用者に関わるという文化が根付いている。
関連評価項目(職員一人ひとりの主体的な判断・行動と組織としての学びに取り組んでいる)
2 ★ 困難を抱えた利用者も積極的に受け入れ、地域の中で頼れる事業所になっている

利用者の中には、複雑で大きな困難を抱え、サービスの利用が継続できなかったり、本人に合うサービス事業所を探すのが難しい人もいる。昔からどのような困難を抱えた利用者であっても、可能な限りの支援を行ってきたこともあり、現在もさまざまな機関から困難事例といわれる利用者を紹介されることも多い。誰も排除しないことをモットーに、今までに経験した事がない疾病や障害などの状況を抱えた人であっても受け入れ、受け付けた一人で悩んだり判断せず、必ず会議においてその利用者に必要な受け入れ態勢を組むことにしている。
関連評価項目(サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている)
3 ★ 自己選択や自己決定ができるような支援をしている

病気や障害を抱えているために、自己選択や自己決定の機会が少なく、家族や保護者から本人の代わりにすべてを決められてしまうような経験をしてきた人もいるので、利用者が自分の権利を認識し、自己決定できるようになるための支援をおこなっている。日々の関わりや各種の行事、面談時など、日常の関わりにおいて、人生の主人公は利用者本人であることを伝え、自己否定感を薄め、自己肯定感を強く持てるように支援している。実際に選択する場面においては、複数の選択肢を提示し、自分で選ぶことができるようにし、必要に応じて話し合いで促している。
関連評価項目(サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:調査日現在の利用者29名全員を調査対象とした。基本的には本人からの回答とし、自らの回答が難しい利用者については、家族や介助者と相談しながら回答してもらうことにした。(本人:21名、家族や介助者と相談:1名、無表記:4名)

調査方法:アンケート方式  
事業所よりアンケート用紙を配布してもらい、記入後には各自が返信用封筒を用いて当評価機関宛に直接郵送してもらうことで、個人が特定できないように配慮した。

利用者総数 29人
アンケートや聞き取りを行った人数 29人
有効回答者数 26人
回答者割合(%) 89.7%

総括
多くの項目で概ね肯定的な回答が得られている。7割強の回答者が、個別計画に関する説明について理解しているし、計画時に要望を聞いてもらえているとし、また、病気やけがをした際の対応についても信頼できると答えている。一方、活動が就労に向けた知識の習得や能力の向上に役に立つと思うかの質問については、否定的な答えをした利用者が2割で、困った時に第三者に相談できることへの説明が分かりにくかったという回答者も2割であった。 利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいかという項目について「はい」との回答者は50%で、約半数の回答者が「どちらともいえない」と回答している。  総合的な評価として、19.2%が「大変満足」、46.2%が「満足」と7割弱の回答者が満足していると答えている。「どちらともいえない」は23.1%で、大変不満と回答した利用者も2名いた。

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 17人  どちらともいえない 8人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
利用者の65.4%が「はい」と回答しています。「どちらともいえない」が30.8%。「いいえ」と回答した利用者は1名。自由意見の中には、職員が忙しい中でもメンバーのことを気にかけているとの意見があった。
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 15人  どちらともいえない 7人  いいえ 2人  無回答・非該当 2人 
利用者の57.7%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が26.9%。「いいえ」と回答した利用者は2名だった。包丁などがあるけど、安全であるという自由意見があった。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 13人  どちらともいえない 11人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
利用者の50.0%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が42.3%で、「いいえ」と回答した利用者は2名だった。自由意見は特になし。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 9人  どちらともいえない 9人  いいえ 5人  無回答・非該当 3人 
利用者の34.6%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が34.6%で、「いいえ」と回答した利用者は19.2%だった。非該当と回答した利用者は11.5%。自由意見の中には、どのように就労するのかわからないとの意見があった。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 14人  どちらともいえない 9人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
利用者の53.8%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が34.6%で、「いいえ」と回答した利用者は2名だった。非該当と回答した利用者は1名。もっと工賃が上がってもほしいという自由意見があった。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 17人  どちらともいえない 7人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
利用者の65.4%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が26.9%で、「いいえ」と回答した利用者は2名だった。良い環境として満足であるとの自由意見があった。
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 20人  どちらともいえない 2人  いいえ 3人  無回答・非該当 1人 
利用者の76.9%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が7.7%で、「いいえ」と回答した利用者は11.5%だった。非該当と回答した利用者は1名。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 19人  どちらともいえない 3人  いいえ 3人  無回答・非該当 1人 
利用者の73.1%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が11.5%で、「いいえ」と回答した利用者は11.5%だった。非該当と回答した利用者は1名。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 13人  どちらともいえない 4人  いいえ 3人  無回答・非該当 6人 
利用者の50.0%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が15.4%で、「いいえ」と回答した利用者は11.5%だった。非該当と回答した利用者は23.1%。すぐに対応してもらったこと、自分が言えない相手への不満を代弁してもらえたことなど、信頼している様子が自由意見から読み取れた。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 18人  どちらともいえない 4人  いいえ 3人  無回答・非該当 1人 
利用者の69.2%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が15.4%で、「いいえ」と回答した利用者は11.5%だった。非該当と回答した利用者は1名。
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 17人  どちらともいえない 6人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
利用者の65.4%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が23.1%。「いいえ」と回答した利用者は2名だった。非該当と回答した利用者は1名。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 19人  どちらともいえない 2人  いいえ 3人  無回答・非該当 2人 
利用者の73.1%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が7.7%で、「いいえ」と回答した利用者は3名だった。非該当と回答した利用者は2名。共通している目標としては、一般就労が挙げられているという自由意見があった。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 22人  どちらともいえない 2人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
利用者の84.6%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が7.7%であった。「いいえ」と回答した利用者は2名。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 17人  どちらともいえない 4人  いいえ 3人  無回答・非該当 2人 
利用者の65.4%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が15.4%だった。「いいえ」と回答した利用者は11.5%で、非該当と回答した利用者は2名だった。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 9人  どちらともいえない 7人  いいえ 5人  無回答・非該当 5人 
利用者の34.6%が「はい」と回答している。「どちらともいえない」が26.9%でした。「いいえ」と回答した利用者は19.2%で、非該当と回答した利用者は19.2%だった。掲示板には電話番号もあるとの自由意見から、第三者委員の紹介ポスターを目にしていることが分かる。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念、基本方針)を明確化・周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を明示している
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目3 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目4 重要な意思決定や判断に迷ったときに、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を思い起こすことができる取り組みを行っている(会議中に確認できるなど)
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、自らの役割と責任に基づいて行動している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件を検討し、決定する手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
常に理念に立ち返り、職員の理解が深まる取り組みをおこなっている

すべての人が人としての尊厳を有し、価値ある存在で、かけがえのない役割をもち、自己実現を目指すことを、基本理念としてかかげている。基本理念は毎年度、事業計画の中に「事業運営の基本方針」として記載、事業所内に掲示し、常に理念に立ち返るようにしている。また、3年前には①人間の尊重、②自己決定の尊重、③プライバシーの尊重、④誠実の4点にまとめた職員倫理綱領を作成し、各種会議や職員研修などで活用、理解が深まる取り組みをおこなっている。利用者や家族などに対しては、契約時に重要事項説明書を用いながら説明している。

毎週管理職会議を開催し、課題に対してきめ細かく検討し、事業所をリードしている

毎週、法人内の関連事業所の管理者で構成する管理職会議を開催し、事業運営の状況報告や関連情報収集、ヒヤリハット報告、困難ケースの検討など、きめ細かく課題を検討している。また、事業所の規模が小さいため、事業運営は法人全体で業務分担表を作成し、職員が任務分担しておこなっている。管理職会議で協議して決定した内容は、事業所内会議で報告し、全職員で確認、共有している。

毎月事業所内会議を開催し、実情を踏まえて意思決定し、関係者に周知している

事業計画などは、毎月おこなわれる事業所内会議での検討を踏まえ、管理職会議、理事会、評議員会で討議し決定するという仕組みができている。管理職だけで作成するのではなく、事業所内会議や半年ごとに開かれる総括研究会を通して、全職員で検討を重ねて作成している。利用者等に対しては、月例ミーティングで給食事業の状況や今後の展望について報告し、意見を求める機会を設けている。旅行などの行事や事業所の休業日程など、重要な案件については必要に応じてお知らせや通信を配布し、周知している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知している 実施状況
  標準項目1 福祉サービスに従事する者として、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳)などを明示している
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳)などの理解が深まるように取り組んでいる
  評価項目2 第三者による評価の結果公表、情報開示などにより、地域社会に対し、透明性の高い組織となっている 実施状況
  標準項目1 第三者による評価の結果公表、情報開示など外部の導入を図り、開かれた組織となるように取り組んでいる
  標準項目2 透明性を高めるために、地域の人の目にふれやすい方法(事業者便り・会報など)で地域社会に事業所に関する情報を開示している
  サブカテゴリー2  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 事業所の機能や福祉の専門性をいかした取り組みがある 実施状況
  標準項目1 事業所の機能や専門性は、利用者に支障のない範囲で地域の人に還元している(施設・備品等の開放、個別相談など)
  標準項目2 地域の人や関係機関を対象に、事業所の機能や専門性をいかした企画・啓発活動(研修会の開催、講師派遣など)を行っている
  評価項目2 ボランティア受け入れに関する基本姿勢を明確にし、体制を確立している 実施状況
  標準項目1 ボランティアの受け入れに対する基本姿勢を明示している
  標準項目2 ボランティアの受け入れ体制を整備している(担当者の配置、手引き書の作成など)
  標準項目3 ボランティアに利用者のプライバシーの尊重やその他の留意事項などを伝えている
  評価項目3 地域の関係機関との連携を図っている 実施状況
  標準項目1 地域の関係機関のネットワーク(事業者連絡会など)に参画している
  標準項目2 地域ネットワーク内での共通課題について、協働して取り組めるような体制を整えている
講評
権利擁護虐待防止に関しては、委員会の活動を通して取り組んでいる

法令や規範、倫理については、採用時に職員倫理綱領や諸規程を配布し、職員研修等で理解を深めている。また、法改正時には勉強会や検討会を実施している。毎年、東京都が実施する権利擁護研修には必ず参加し、資料や報告書を基に事業所内で情報を共有している。更に法人で3ヶ月に1回開催している権利擁護虐待防止委員会で検討した内容を日々の指導や事業所内会議で確認し、虐待防止に努めている。

見学の受け入れや関係機関との交流を通じて、地域社会との連携を強化している

利用希望者だけでなく、区内の4か所の保健相談所からの見学を受け入れている。また、法人として中小企業家同友会へ加入し、企業家との交流を通じて、企業実習の受け入れ先が広がるなどの効果が出てきている。また、経年的に学生の実習を受け入れており、事業所の機能について学ぶ機会を提供している。ボランティア規程は作成しているが、調理や配達も利用者がおこなっており、ボランティアを希望する人のニーズを満たしづらいため、ボランティアの受け入れはほとんど無い。事業者とボランティアとのニーズの調整が必要と思われる。

区の事業者連絡会などに参加し、地域の関係機関のネットワーク化に貢献している

区の事業者連絡会や自立支援協議会の精神部会、また、社会福祉士会にも参加している。事業者連絡会では、地域ニーズの実現に向けて事業計画を作成し取り組んでいる。精神部会では、ハローワークや福祉事務所からの参加もあり、困難事例の検討や制度の学習を通して、行政と事業者の認識を共有し、共同の取り組みを検討している。個別支援の中では、必ず関係機関から照会状を求め、事業所利用開始以降も連絡を取り合うようにし、連携している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  利用者意向や地域・事業環境の把握と活用
  サブカテゴリー1  利用者意向や地域・事業環境に関する情報を収集・活用している
  評価項目1 利用者一人ひとりの意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応している(苦情解決制度を含む) 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者一人ひとりの意見・要望・苦情に対する解決に取り組んでいる
  評価項目2 利用者意向の集約・分析とサービス向上への活用に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向を把握することに取り組んでいる
  標準項目2 事業者が把握している利用者の意向を取りまとめ、利用者から見たサービスの現状・問題を把握している
  標準項目3 利用者の意向をサービス向上につなげることに取り組んでいる
  評価項目3 地域・事業環境に関する情報を収集し、状況を把握・分析している 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズの収集(地域での聞き取り、地域懇談会など)に取り組んでいる
  標準項目2 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)の収集に取り組んでいる
  標準項目3 事業所としての今後のあり方の参考になるように、地域の福祉ニーズや福祉事業全体の動向を整理・分析している
講評
意見箱の設置など、多様な方法で利用者の意向把握に努めている

利用者の意向把握については、苦情対応規程や権利擁護虐待防止規程を整備し対応している。苦情解決制度の利用については、利用契約時に説明し、事業所内に苦情解決規程を掲示している。その他、意見箱を設置し、利用者がいつでも意見や苦情を伝えることができるようにしている。また、利用者のニーズ調査においても、一人ひとりの要望を把握している。

毎年、就労に関する意向調査を実施し、サービス向上につなげている

毎年の春先に就労に関する意向調査を実施し、利用者と家族の就労に関する意向の把握に努めている。また、利用者を対象にした月例ミーティングで意見交換するなど、様々な機会を利用し利用者の意向を把握している。利用者の意向は個別支援計画に反映させるほか、企業開拓にもつなげている。家族に対しては、利用開始時点と年1~2回の家族個別面談会をおこない、家族の意向やニーズを伺う機会を設けている。

区の障害福祉計画策定委員会の報告を受け、地域・事業環境に関する情報を収集している

地域の福祉ニーズについては、区の障害福祉計画策定委員会の議事録を参照したり、社会福祉士会での学習交流を通して情報収集に努めている。福祉事業全体の動向については、業界のメーリングリストへの加入している他、全国の事業者連絡協議会への加入などを通して情報の収集に取り組んでいる。ただ、福祉事業全体の動向や制度の理解については、職員間で個人差が大きく、より一層理解を深める取り組みや工夫が必要である。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  計画の策定と着実な実行
  サブカテゴリー1  実践的な課題・計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 取り組み期間に応じた課題・計画を策定している 実施状況
  標準項目1 理念・ビジョンの実現に向けた中・長期計画を策定している ×
  標準項目2 年度単位の計画を策定している
  標準項目3 短期の活動についても、計画的(担当者・スケジュールの設定など)に取り組んでいる
  評価項目2 多角的な視点から課題を把握し、計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題の明確化、計画策定の時期や手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 課題の明確化、計画の策定にあたり、現場の意向を反映できるようにしている
  標準項目3 計画は、サービスの現状(利用者意向、地域の福祉ニーズや事業環境など)を踏まえて策定している
  標準項目4 計画は、想定されるリスク(利用者への影響、職員への業務負担、必要経費の増大など)を踏まえて策定している
  評価項目3 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 計画推進の方法(体制、職員の役割や活動内容など)を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、より高い成果が得られるように事業所内外の先進事例・失敗事例を参考にするなどの取り組みを行っている
  標準項目3 計画推進にあたり、目指す目標と達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目4 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
  サブカテゴリー2  利用者の安全の確保・向上に計画的に取り組んでいる
  評価項目1 利用者の安全の確保・向上に計画的に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 利用者の安全の確保・向上を図るため、関係機関との連携や事業所内の役割分担を明示している
  標準項目2 事故、感染症、侵入、災害などの事例や情報を組織として収集し、予防対策を策定している
  標準項目3 事故、感染症、侵入、災害などの発生時でもサービス提供が継続できるよう、職員、利用者、関係機関などに具体的な活動内容が伝わっている
  標準項目4 事故、感染症、侵入などの被害が発生したときは、要因を分析し、再発防止に取り組んでいる
講評
スケジュールとして具体化した年度単位の事業計画書を策定している

中長期計画はまだ策定していないが、年度単位の事業計画は策定している。現在法人で新規事業プロジェクトを立ち上げ、今後の経営について検討中である。事業計画は、各種企画書や年間スケジュールとして具体化し、月間単位の活動についても月間スケジュールを設定して取り組んでいる。

現場の意向を踏まえて計画を策定し、各種会議で進捗状況を確認している

計画は、毎日おこなわれている申し送りやミーティングを踏まえ、事業所内会議、合同職員会議、管理職会議、半期振り返り、年度末総括研究会、計画作成という流れをつくって策定している。計画の推進にあたっては、取り組み課題ごとに担当者を配置し、個々の職員が責任を持って実行するしくみとなっている。職員は自己目標管理シートを活用し、目標と達成度合いを測る指標を明示し取り組んでいる。進捗状況は毎月の事業所内会議で確認し、半期ごとに法人全体で確認している。

リスクマネジメント委員会を開催するなど、利用者の安全の確保や向上に取り組んでいる

消防計画、緊急時連絡網、災害時対応マニュアル、事故防止マニュアル、リスクマネジメント規程などを作成、整備している。3ヶ月に1回リスクマネジャーと管理者によるリスクマネジメント委員会を開催し、事故報告書やヒヤリハット報告書を集約、分析と対策を協議している。毎年職員と利用者の合同避難訓練を実施している。現在防犯マニュアルを作成中であるが、事業所はゼロメートル地帯で川にはさまれている地形のため、水害対策マニュアルも必要であると考えている。マニュアルの整備と併せて確実に活用するための学習と訓練が課題となっている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成に取り組んでいる
  評価項目1 事業所にとって必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所の人事制度に関する方針(人材像、職員育成・評価の考え方)を明示している
  標準項目2 事業所が必要とする人材を踏まえた採用を行っている
  標準項目3 適材適所の人員配置に取り組んでいる
  評価項目2 職員の質の向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりの能力向上に関する希望を把握している
  標準項目2 事業所の人材育成計画と職員一人ひとりの意向に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 個人別の育成(研修)計画は、職員の技術水準、知識、専門資格の習得(取得)などの視点を入れて策定している
  標準項目4 職員一人ひとりの個人別の育成(研修)計画に基づいて、必要な支援をしている
  標準項目5 職員の研修成果を確認し(研修時・研修直後・研修数ヶ月後など)、研修が本人の育成に役立ったかを確認している
  サブカテゴリー2  職員一人ひとりと組織力の発揮に取り組んでいる
  評価項目1 職員一人ひとりの主体的な判断・行動と組織としての学びに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員の判断で実施可能な範囲と、それを超えた場合の対応方法を明示している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに学ぶことに取り組んでいる
  標準項目3 職員一人ひとりの研修成果を、レポートや発表等で共有化に取り組んでいる
  評価項目2 職員のやる気向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価・報酬(賃金、昇進・昇格、賞賛など)が連動した人材マネジメントを行っている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、疲労・ストレスなど)を把握し、改善に取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、やる気と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 福利厚生制度の充実に取り組んでいる
講評
自己評価シートや人事考課制度を活用し、必要な人材構成にしている

年度ごとに職員の自己目標管理シートを活用し、職員の研修希望やスキルアップの目標などを記入している。個別面接の中で希望や要望を聞き、毎年の人事配置を検討している。年度末の面接で自己評価シートを活用し、目標の達成度を評価、人事考課規程に基づき次年度の昇給に反映するとともに、必要な人材構成にしている。職員を採用する場合は、その都度全職員に伝え、意見を聞いている。 

自己目標管理シートや個人面接を踏まえ、職員の育成、質の向上に取り組んでいる

自己目標管理シートと個人面接を踏まえ、個々の職員の研修計画を立てて質の向上に取り組んでいる。法人内研修では、新人研修、リカヴァリー・エンパワメント研修、カンファレンスである支援検討会議、スーパーバイズ、面接技術やグループワークに関する連続講座、事業所連絡会など多岐にわたり、すべての職員がそれぞれの職位や段階に応じた研修に参加するしくみができている。外部研修では、支援や援助技術向上に関するもののほか、人権に関する研修や食品衛生や調理に関する研修など、職員で分担して可能な限り参加するようにしている。

日々の業務の中で、気づきや工夫について互いに学ぶ風土がある

職員数が少ないため、日々の業務の中で、一人ひとりの希望や適性、状況の把握に努めており、意見を言いやすい雰囲気作りを心がけている。日常の対話をつうじて、利用者の状況など職員で共有し、気づきや工夫について互いに学ぶ風土ができている。このことが職員のやる気向上にもつながっている。職員アンケートでも、様々な研修の機会がある、アットホームで明るい、職員のチームワークがいいなどの意見が多くみられた。今後は職務権限表の具体化や福利厚生制度の充実が課題である。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  情報の保護・共有
  サブカテゴリー1  情報の保護・共有に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が蓄積している経営に関する情報の保護・共有に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定している
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・保管している
  標準項目3 保管している情報の状況を把握し、使いやすいように更新している
  評価項目2 個人情報は、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえて保護・共有している 実施状況
  標準項目1 事業所で扱っている個人情報の利用目的を明示している
  標準項目2 個人情報の保護に関する規定を明示している
  標準項目3 開示請求に対する対応方法を明示している
  標準項目4 個人情報の保護について職員(実習生やボランティアを含む)が理解し行動できるための取り組みを行っている
講評
経営に関する情報のアクセス権限は経営層のみに限定し、情報を保護している。

事業所が保管している経営に関する情報は、パソコンに保管し、グループウェアのシステムで法人内で共有している。重要なデーターやシステムへのアクセス権限は管理職のみに限定し、情報の保護に努めている。また、必要に応じて収集した情報をファイルに保管し、必要なときに活用できるようにしている。法人の規程集や職員が届出で必要な様式などはグループウェアのパソコンで入手しやすくなり、使いやすいように更新している。

個人情報は利用目的を明示し、契約書と同意書を交わし、情報を保護、共有している

利用者には個人情報の利用目的を明らかにし、契約書と同意書を交わしている。また、職員以外の実習生やボランティアなど利用者と関わるすべての人に対しても、個人情報の保護の必要性について十分説明し、誓約書を交わしている。特に最近はSNSというソーシャルネットワーキングサービスが普及しており、気軽に映像などが使われる危険性も増しているので、SNSの利用に関するモラル研修や電子媒体の情報管理についての規程整備も必要になってきている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー8  カテゴリー1~7に関する活動成果
  サブカテゴリー1  前年度と比べ、事業所の方向性の明確化や関係者への周知、地域・社会への責任の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー1:「リーダーシップと意思決定」
・カテゴリー2:「経営における社会的責任」
・カテゴリー4:「計画の策定と着実な実行」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
職員倫理綱領の制定やホームページの開設など、理念の実現と情報の開示が進んだ
職員倫理綱領を定め、研修に取り入れるなどして、すべての職員が理念を理解し、実践できるように取り組んだ。その結果、倫理綱領に基づき「ソーシャルインクルージョン」の考え方が職員に周知され定着してきている。また、一昨年、ホームページを開設して情報開示に取り組み、事業所活動の情報を発信、幅広く知ってもらえるようになった。ホームページを見た一般市民からの問い合わせがあったり、遠く海外から取材の申し込みが来るようにもなっている。3年に1回第三者評価を受審しており、3年ごとに努力と改善点を振り返ることができ、課題を明確にすることができている。リスク管理に関しても取り組みを強化し、リスクマネジメント規程を定め、定期的にリスクマネジメント委員会を開いて対応を協議している。このことにより、ささいなことでもヒヤリハット報告をおこなうことが定着してきており、リスク管理に関して職員の意識が向上している。 
  サブカテゴリー2  前年度と比べ、職員と組織の能力の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー5:「職員と組織の能力向上」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
他の就労支援事業の見学や研修に参加し、職員のやる気向上につながった
弁当の調理、配達を中心にした給食事業が主な事業であるが、配達人員の確保が課題であった。昨年、配達専従職員を雇用することができ、弁当の配達先や配達ルートを拡大することができた。また、全国の進んだ実践を学ぶため、給食事業で中核を担う職員が、熊本や新潟などの就労支援事業施設の見学や研修に参加することで、就労支援事業の採算や工賃アップに関する職員の意識とモチベーションが向上した。また、法人全体で権利擁護虐待防止委員会をはじめ、各種委員会を設置し、事業所やキャリアを超えて職員が分担して担当し、様々な検討を重ね、事業を推進してきた。これらの取り組みにより、職員の意識が向上し、管理職からの指示待ち傾向なども少しずつ変化し、各担当からの発信や提案が増えてきている。職員の気づきや責任感がやる気向上につながっている。 
  サブカテゴリー3  前年度と比べ、福祉サービス提供プロセスや情報保護・共有の面において向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー6:「サービス提供のプロセス」
・カテゴリー7:「情報の保護・共有」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
サービス利用開始までのプロセスが改善され、利用しやすい環境が整った
利用希望者がスムーズにサービス利用ができるように、利用開始までのプロセス改善に取り組んだ。利用希望者への受付表を整備し、職員間や他機関で情報を共有し、何度も同じようなことを聞かれることがないように努めた。利用の給付申請から利用開始までのプロセスや説明がスムーズにおこなえるようになってきている。サービス利用の前に、計画相談支援事業よる利用計画を経てから当事業所の利用開始になるという、計画相談のしくみの理解が定着してきている。サービス利用が以前よりスムーズにおこなえるようになった。情報の保護や共有の取り組みでは、グループウェアの使用権限を広げ、データでの管理を進めた。その結果必要なデータや文書を以前よりも入手しやすくなり、業務の効率化につながっている。 
  サブカテゴリー4  事業所の財政等において向上している
  評価項目1 財政状態や収支バランスの改善へ向けた計画的かつ主体的な取り組みにより成果が上がっている
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われているが、成果としては現れていない
事業収入と、給付費が連動して増加し、全体的な収入増につなげる課題
目標工賃達成加算を取得するため、土日や休日の弁当注文を積極的に受け、開所日を増やすなど、弁当の売り上げアップに向けて様々努力をしている。今年度は大きな官公需を受けることができた。実際、売上も昨年より増えているが、利用者一人当たりの労働時間が短い人や労働日数が少ない人が多いため、平均工賃はなかなか上がらないという現状である。また、就労移行支援体制加算を取得するため、就労支援担当の職員の業務内容や動きやすさを配慮している。委託訓練やトライアル雇用などにつながった人は4人だった。全体として、加算が非該当になったり、利用者数の伸び悩みにより、収入が伸び悩んでおり、収支面での成果は現れていない。弁当売上の給食事業収入と、訓練等給付費収入が連動して増加し、全体的な収入増につなげるのが課題である。 
  サブカテゴリー5  前年度と比べ、利用者満足や利用者意向の把握等の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、利用者満足や以下のカテゴリーで評価される部分において改善傾向を示している
・カテゴリー3:「利用者意向や地域・事業環境などの把握と活用」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
利用者とのミーティング回数を増やし、利用者意向の把握に取り組んだ
利用者の意向把握とコミュニケーションを図るため、いままで月1回おこなっていた利用者とのミーティングを月3回に増やした。月1回だと参加できない利用者もいたが、月3回に増やし、各回で目的を分けて実施した結果、全体として参加者が増え、意見も出されるようになってきている。3回のうち1回は販売促進会議として位置づけ、利用者に売上状況も説明し、事業の主体者として考えられるように取り組んでいる。また、1回は利用者が主体的に自由に意見を出し合える場として位置づけ、以前より意見が出されるようになってきている。また、事業環境の改善にも取り組み、販売時の防寒や熱中症対策に必要な衣服や備品の買い換え、相談室兼休憩スペースのソファやベンチの買い換え等をおこない、利用者の過ごす環境整備に努めた。環境改善については利用者から概ね好評を得ている。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
精神障害サービスに特化した情報誌への掲載で、最新のサービス情報を発信している

精神障害者の地域生活を支援する団体で発行している情報誌に、写真付きでわかりやすい事業所紹介を載せている。その情報誌を、利用可能性の高い精神障害者が通うクリニックや病院、行政機関や相談援助事業所などの場所に配置している。他にも、行政の福祉サービスの紹介サイトや法人のホームページから事業所情報へのアクセスが可能であり、最新の情報を盛り込んだ手作りのパンフレットも配布している。

ホームページの作成後に増えた見学希望や問い合わせに対して、迅速に対応している

ホームページの開設後に、さまざまな所から見学希望や問い合わせが来ている。相談支援事業所や保健所はもちろん、海外からも見学希望の問い合わせがあり、迅速で丁寧な対応をしている。利用希望者に対しても、個別に時間と担当者を決めて見学などに対応している。

利用希望者等の利用相談は、当事者が二度手間にならないよう、丁寧に対応している

利用希望者等の問い合わせには、常に受け入れ担当者が対応している。利用希望受付表を活用して情報を収集することで、当事者が同じことを何度も聞かれないように配慮している。利用希望者や家族が事業所のサービス内容等をより的確に理解するために、見学や体験利用の対応においては、指定相談支援事業所と連携している。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
利用希望者の個別状況に応じて、重要事項説明書でサービス内容を丁寧に伝えている

事業所のサービス内容や利用時のルール等について、利用希望者の個別状況にも配慮しながら分かりやすい説明をするよう努力している。利用契約を行う前に、重要事項説明書に基づいて説明し、利用希望者の納得と同意を得てから契約を行っている。利用申し込みから利用までの経過や利用開始時の状況については、利用相談記録等にまとめて管理している。

本人の意向把握とともに、家族の照会状と家族面談により、家族の意向も把握している。

本人が記入する利用申込書には、本人の就労に対する想いや就労に当たり不安に思っていることを書く欄がある。また、家族に記入を依頼している照会状には、家族が困っていることや本人に対して望んでいることを書く欄がある。利用者の支援において、家族は大事な支援者であると考えているので、本人の生活のみならず家族の生活も踏まえ、できる限り対面による意向や状況把握を行っている。

利用者が安心してサービスを利用できるよう、収集したさまざまな情報を活用している

本人が記入した利用申込書、家族、紹介者、主治医が作成した照会状などから、利用者の病歴や障害状況のみならず、今までの生活歴、利用前の生活状況や意向の把握に努め、利用者が安心してサービスを利用できるように配慮している。さまざまな情報源による情報を活用し、利用者の全体像と個別性の把握に努め、職員全員が共通認識を持って利用者を支援している。今まで受け入れの経験のない疾病や障害など、さまざまな状況にある利用者に対しても、決して拒むことなく、一人ひとりに必要な受け入れ態勢を会議を通して決めている。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
基本情報シートにより、利用者に関するすべての情報を把握し、計画作成に活かしている

利用申込書、インテイク記録、相談記録などから、生育歴、病歴、生活歴、意向など利用者に関する情報を把握し、基本情報シートに集約している。これらの情報を活用してアセスメントを行い、個別支援計画を策定し、利用者への提示と同意を得たうえで計画による支援の開始となる。しかし、利用者の障害特性上、変更の希望が頻繁に出されることもあり、日常の活動状況の把握を踏まえて随時変更をしている。日頃の支援の中で聞かれる本人の希望についても耳を傾け、常に意向の把握に努めており、それを計画に反映する流れになっている。

支援計画の見直しは、定期と随時で実施している

支援計画の見直しは半年に一回のペースで定期的に実施するとともに、利用者の状況に合わせて適宜点検している。利用者等の意向は体調によって変化が多いが、臨機応変に個別支援計画に反映している。モニタリングも定期的に実施しているが、毎日の話し合いが毎日のモニタリングでもあり、常に情報の共有が行われている。一部の利用者については、見直しの時期が過ぎていることがあり、管理の徹底が求められる。

日々の情報は利用者の個人別ファイルにまとめられ、職員間で共有している

利用者の個人ファイルには、基本情報シート、アセスメントシート、個別支援計画、モニタリングシート、カンファレンス記録、日常の経過記録など、利用者に関するすべての情報がまとめられている。利用者の日々の様子が日々の記録として書かれ、一定期間の内容が経過記録としてまとめて記録される。今後は記録のIT化を図り、業務の効率化を図る予定である。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
利用者の個別性に応じて、個別支援計画の書式を変更している

支援計画は個々人の理解度や状況に応じて、書式の変更を行っている。例えば、3か月の委託訓練を希望する利用者のために、3か月だけの個別支援計画を作成したり、加齢により視力が低下した利用者には、大きい紙に大きな文字で印刷したものを用いて説明している。他にも外国籍を持っている利用者で日本語よりも英語が分かる方には、英単語を用いて本人に伝わるような工夫をしている。

利用者が必要としてる情報を、伝わる方法で提供している

全体的な情報提供としては、口頭でインフォメーションを行い、ポスターなどを掲示板に掲示する。その後、個別にお知らせを配布し、必要に応じて個別に声かけを行っている。全体の情報提供だけで情報を活用できる利用者には、全体的な情報提供だけで良いが、それだけでは伝わらず活用に至らない利用者に対しては、必ず個別の情報提供を行っている。提供する情報内容においても個別性を重視し、一人ひとりの生活に必要な情報を提供している。

集団作りや集団の中でのストレスマネジメントとエンパワメントにも重きを置いている

人間は集団の中で生きており、利用者も集団の中で自分の生活をしていくすべを身につけることが必要である。利用者同士の関係性づくりへの支援として、他者の気持ちを考えられるよう促したり、自分の気持ちを他のメンバーに伝えるための支援をおこなっている。利用者同士のトラブルは問題ではなく、対人関係に関する対応方法を身につけるチャンスであると考え、トラブルの当事者をいきなりその場から連れ出すようなことはあまりせず、個々人に応じた支援を心がけている。また、必要に応じて個別支援計画にも明記し、全職員による支援を行っている。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している -
講評
日々の活動において、利用者の力を引き出している。

あらゆる場面において利用者の主体性を引き出す支援をおこなっている。例えば、お弁当作りの役割分担においても、業務内容を列挙し、その中から希望する役割を選ぶようにし、話し合いの中で役割を分担する。日々の様々なことに関しても、みんなで話し合い、利用者のアイディアによって改善を講じたりしている。年に1回実施しているお弁当の顧客アンケートの設問を一緒に考えるなど、日々の活動において利用者の力を発揮できるよう支援している。

清掃業務の委託と安全点検をおこない、安全な作業環境になるよう努めている

清掃業務は法人内の他事業所に委託しており、利用者がくつろぐ際に活用する空間や給食づくりの厨房など、事業所全体の清潔保持ができている。特に、給食づくりの厨房については、清潔な設備環境の維持が重要なため、毎日の作業後に清掃をおこない、最後には厨房作業後点検表を用いてガスや厨房機器などの安全点検もおこなっている。

利用者の特性に応じた役割分担で、利用者の安全を確保している

包丁の扱いが不安定でけがの回数が多い利用者に対しては、本人との話し合いでどうすればけがをせず安全に作業ができるかを相談し、道具の工夫や作業手順の工夫、役割の交代などによって安全確保に努めている。障害の特性により、集中力が影響する場合もあるので、個々人の特性を踏まえた安全対策を実施している。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている -
講評
精神疾患以外の病気についても視野を広げ、利用者の健康管理に取り組んでいる

年に1回の健康診断で健康状態の確認をしている。また、日々の変調についても気づいた時点で職員間で情報を共有し、早期対応になるよう心がけている。近年、精神疾患以外の病気についても治療を必要とするケースも少なくなく、幅広く本人の健康管理に努めている。中には、新しい医療機関に対する不安や経済面の心配で受診を拒む利用者もいるので、手遅れにならないよう状況に応じた支援を展開する予定である。

服薬や健康管理において、利用者の自己管理力の向上を目指している

服薬の内容に関する情報は把握しているが、基本的に服薬管理は本人であり、本人や家族に対する確認で服薬状況を把握している。ひとり暮らしで服薬の自己管理が難しい利用者がいる場合は、お薬カレンダーを活用し、自己管理ができるように支援をおこなっている。また、セカンドオピニオンの提案を利用者本人におこなうことで、利用者の自己決定をさらに促すことにつなげている。

症状や薬について自己コントロールができるようになるための学習会を実施している

利用者を対象に、症状や薬について自己コントロールできるようになるための学習会をおこない、自身の病気や症状、薬の副作用などに関する理解を深める支援をしている。自分の症状と薬について認識することから、治療や服薬について自己決定できるように助言、支援している。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
家族は一番の支援者として考え、一緒に本人の支援について協力していただいている

本人と一緒に暮らしている家族の影響は大きい。家族の関わり方で利用者が不安になることもあるので、利用者に対して効果的な関わり方ができるように、協力していただいている。家族の中には、利用者の障害について自分のせいであると自分を責める方もいるので、家族に対する精神面のケアも必要である。本人の回復のためにできるだけ家族の面談をおこなっており、年に1回の面談を実施できるよう努めている。

家族のニーズに合った家族会の運営が求められる

法人全体で、利用者の家族会が運営されており、毎月定例会を開催し、家族がリフレッシュできるように日頃の悩みや愚痴など何でも語り合える場として機能している。また、会報の発行や、学習会を開催するなどの取り組みもおこなっており、事業所として担当職員を配置して活動を支援している。近年、家族の年齢層やニーズも多様化してきており、家族会への参加が限られてしまう傾向もあり、家族に対しても個別のニーズに合った家族会の運営が求められていると考えられる。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
就労関連の関わりとして、中小企業家同友会との交流会を毎年実施している

法人が会員であるので、利用者とともに交流会に参加している。一般企業の方々が会員なので、その交流を通して社会参加の機会としている。中には、利用者の模擬面接の際に面接官として立会い、企業側が求めている事を踏まえた就労指導の協力をいただいている会員もいる。

お弁当屋さんとして、地域内のさまざまな企業や団体と交流している

お弁当作りと販売を通して地域内の企業や、さまざまな団体とつながりを作っている。最近は、お弁当の配達先が増え、つながりを持つ企業や団体も増加中である。近年の課題として、津波や川の氾濫という水害対策が求められており、対策のためには地域の助けが欠かせない。これから、避難先探しを含め、助け合う関係づくりが求められる。

  評価項目12 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
利用者の要望に応じた役割分担で、働きたい意欲の向上につなげている

弁当づくりの各段階の作業に対して、利用者の要望に応じた役割分担を実施している。安全面への配慮をしながら、可能な限り本人の要望に沿うことで働きたいという意欲が向上するように支援している。集団の中で自分の要望を言えない利用者に対しては、どのようにすれば言えるようになるかを一緒に考え、自ら言えるような支援をしている。社会の一員として生活できるよう、代弁ではなく自発的な意見表明を支援している。そのような支援により、次は自己決定による意思表示ができ、就労の意欲にもつながると考えている。

販売促進会議を通して利用者の主体性とやる気を引き出している

工賃アップを目指した販売促進会議をおこなっている。利用者と一緒に収支の状況、注文の現状、営業についてなど、すべてに関して話し合いで決めている。顧客アンケートの設問として、顧客に何を聞きたいかを話し合ったり、お弁当の値段として今の金額は適切であるかを話し合ったり、売上アップで工賃アップにつなげるよう取り組んでいる。

工賃アップに関する研修に職員を派遣し、意識改革をおこなっている

工賃アップに関する研修に職員を派遣した。熊本、新潟、宮城、富山など全国各地の先進的な取り組みを見学し、工賃アップに関する知識を持ち帰った。その職員から伝達研修を受け、職員全体で工賃アップに関する意識を新たにし、共通認識を持つことができた。大量の注文は確実に売り上げアップにつながるが、利用者も職員も多忙に因る疲弊が生じるので、ジレンマを感じている。今後は研修内容を踏まえ、無理のない体制による工賃アップの計画を立てて実行することを期待する。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目3 虐待被害にあった利用者がいる場合には、関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  標準項目4 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
利用契約時に個人情報取り扱いについて説明し、同意を得ている

サービスの利用開始時には、個人情報の取り扱いについて説明し、同意書をいただいている。さらに、利用者の個人情報を利用する際は、事前に目的等を説明し利用の同意を確認している。障害の特性に対する配慮にも力を入れ、個人情報やプライバシーに関する内容に関して、全職員で保護に徹している。

虐待につながることではないかと、常に振り返りをおこなっている

うちの事業所は虐待はやっていないという認識が危ないと考えている。どのような些細な事であっても、利用者にとっては人権を無視したことに受け止められることではないか、これは一種の虐待ではないかなどを、常に振り返るようにしている。例えば、あらかじめ約束していた面接の時間に、職員が遅れることや、利用者に対する声掛けの仕方などについても、虐待に当てはまるかもしれないという、利用者の立場で疑いの目を持って、振り返ることに力を入れている。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
  標準項目3 職員一人ひとりが工夫・改善したサービス事例などをもとに、基本事項や手順等の改善に取り組んでいる
  評価項目3 さまざまな取り組みにより、業務の一定水準を確保している 実施状況
  標準項目1 打ち合わせや会議等の機会を通じて、サービスの基本事項や手順等が職員全体に行き渡るようにしている
  標準項目2 職員が一定レベルの知識や技術を学べるような機会を提供している
  標準項目3 職員全員が、利用者の安全性に配慮した支援ができるようにしている
  標準項目4 職員一人ひとりのサービス提供の方法について、指導者が助言・指導している
  標準項目5 職員は、わからないことが起きた際に、指導者や先輩等に相談し、助言を受けている
講評
運営規程、重要事項説明書を活用し、事業所業務の標準化を図っている

 職員は重要事項説明書や事業所運営規程にそって定められたサービスの提供をおこなっている。ただ、利用者に対する対人援助に関してはマニュアル化をしていない。一人ひとりの異なる状況に対して、すべてを盛り込むマニュアルの作成は困難であり、マニュアル化することによる間違った対応の危険性が大きいということも考えている。職員の共通認識のために、記録の書き方に関するマニュアルがあり、改訂作業も行われている。また、給食事業に関するマニュアルとしては、顧客管理ファイル、会計事務ファイル等を整えて活用している。

全職員参加の総括研究会を活用し、業務水準の見直しをおこなっている

年2回の総括研究会を通して、利用者へのよりふさわしいサービス提供の在り方について検討している。全職員が参加する総括研究会では、困難事例の報告と討議をおこなったり、事業所全体の振り返りや課題を報告し、日々提供しているサービスに関する見直しをおこなっている。ヒヤリハットは事故を防げる宝物と認識し、隠すことなく報告することが定着してきている。集まったヒヤリハット事例を活用し、リスクマネジメントに努めている。

日々のOJTやスーパービジョンでスキルアップにつなげている

事業所では日々の記録や所内会議などをOJTとして活用している。キャリアの短い職員が書いた日々の記録に対して、先輩職員が赤ペンで助言やアドバイスを書いている。事業所内会議においても、自分の支援について思っている疑問や不安、困難に思っていることなどについて報告し、全職員から指導や助言を受けることができる。小人数の職員集団の特徴を生かし、全職員の活発な意見交換とさまざまな場面におけるスーパービジョンで職員全体のスキルアップを目指している。