東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 平成26年度
サービス名称 多機能型事業所(生活介護、就労移行支援、就労継続支援B型)
法人名称 社会福祉法人正夢の会
事業所名称 中野区立弥生福祉作業所
評価機関名称 合同会社 フェアリンク

コメント

・利用者調査では、知的障害に対する経験的理解のある調査員による一対一の聞き取り調査を実施した。調査内容に関し、利用者が普段説明を受けている用語等を事前に職員に確認し、質問の中で使用することで利用者の理解の一助とした。聞き取りと併せ、給食の試食を兼ねて、利用者と一緒に食堂で昼食を食べながら食事風景の場面観察を行った。また、利用者調査の補完として、独自の家族アンケートを実施した。
・職員自己評価では、事業所が独自に設定した項目を共通評価項目に加えて自己評価用のシートを作成し、職層ごとに集計した結果を報告した。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)法人の理念と基本方針 2)こころに添い、一人ひとりの人生を見つめた支援(支援の個別化) 3)工賃のアップ 4)根拠のある支援(専門知識の習得) 5)職員の成長

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

①法人及び各事業所が求める自己の役割を認識し、法人の理念を実践できる職員 ②法人の研修制度の活用及び、今後導入する目標管理制度を使い、自己の能力を高める意欲のある職員 ③職務遂行にあたりチームワークを持ち、同じ目標に向かう事ができる職員 ④創造的で自分の考えを持ち、他者に向けて表現できる職員 ⑤ソーシャルワーカーとしての姿勢を持ち広い視野で福祉を捉えられる職員 ⑥自分や家族を大切にできる職員

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

①ソーシャルワーカーとしての使命感 ②障害特性に応じた支援専門性 ③支援者としての倫理観 ④権利擁護意識 ⑤地域づくりの視点

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 利用者・家族に法人の考え方等をていねいに説明し、民間法人による新たな運営に対する不安の軽減に心を砕いている

今年度より、区の直営から指定管理者である民間の社会福祉法人に運営主体が切り替わった。事業所は4月からの運営委託に先立ち、法人の考え方や支援の提供体制等について、利用者及びその家族への説明をていねいに行い、民間法人による新たな運営に対する不安の軽減に心を砕いている。今回、利用者調査の一環として実施した家族アンケートには、そうした事前説明の取り組みに対して、家族が高く評価している結果が示されている。
2 法人の基本方針として、利用者の尊厳を守り、その心に添った支援を行うことを掲げ、事業所における日々の実践の中に活かしている

当法人では、利用者の人としての尊厳を守り、その心に添った支援を実践することを基本方針に掲げている。職員による虐待をはじめ利用者に対する権利侵害を“起こり得るもの”と捉え、法人の権利擁護委員会を中心に、日常の支援の現場に存在する虐待につながりかねない「グレーゾーン」の事例を集めて、法人全体の研修の場で共有するといった取り組みを継続している。当事業所における日々の実践の中でもそうした法人の考え方が活かされており、今回の利用者調査や家族アンケートには職員の丁寧な対応を評価する声が多数寄せられている。
3 利用者が自分の課題を自ら導き出し、それに主体的に取り組む中で自己実現を図ることを支援する取り組みを始めている

個別支援のねらいを定めるためのアセスメントや支援計画の様式について、3つの事業のうち生活介護と就労継続支援B型では利用者の混乱を避けるために従前のものを継続して使用しているが、就労移行支援においては自己アセスメントに基づく独自の手法を採用し、職員との個別面談により、長期及び短期の目標と利用者自身の行動計画、また、それを実現するための職員による支援方法を話し合い、本人の同意のうえ決定している。利用者が自分の課題を自ら導き出し、それに主体的に取り組む中で自己実現を図ることを支援する取り組みとして評価できる。

さらなる改善が望まれる点
1 個別支援計画の職員間の共有を図り、日々の支援記録を計画のモニタリングの材料として活用できるものにしていくことが期待される

支援員は日々の支援の具体的な内容と利用者の変化等を所定の様式に記録している。当事業所では支援員の3分の1が新規学卒者という構成になっており、すべての利用者の支援記録を管理職が時間をかけて確認し、必要な指導を行っている。そうした地道な取り組みの中で、記録の質は徐々に上がっていくことが期待されるものの、記録の際の基本的な視点となる個別支援計画の職員間の共有については職員の自己評価において必ずしも十分でないという認識が示されている。日々の記録が計画のモニタリングの材料として活用できるよう、今後の改善が期待される。
2 職員主体の内部研修を計画的に実施し、支援の質の向上に活かしていくことが期待される

法人として学びに価値を置き、職員の研修や自己啓発を積極的に支援する仕組みを整えている。現在、法人全体の研修体系の再構築を進めており、その中で法人の求める人材像を明らかにしようとしている。今後は求める人材像を踏まえた能力やスキルのアセスメントに基づく個別の育成計画を策定し、事業所の育成責任を明らかにするとともに、職員主体の内部研修を計画的に実施し、組織的な支援の質の向上に活かしていくことが望まれる。また、そうした取り組みを通じて職員間の連携強化を図り、人数に見合ったパフォーマンスを高めていくことが期待される。
3 自分の感情や考えを伝えにくい利用者の意思を確認する場面の確保やコミュニケーションを図る方法のさらなる検討が期待される

事業所での生活や活動に関する利用者の要望等の把握は、個別支援計画に関する定期的な面談等を通じて行っている。利用者の状況によっては、家族からの聞き取りが中心とならざるを得ない場合があるものの、利用者本人の意思を確認をして了解を得る取り組みは必ずしも十分とは言えない。利用者と家族の間には肉親ならではの愛情や信頼関係のほか、様々な思いがあり、本人の権利擁護の視点から、感情や考えを伝えにくい利用者の自立した大人としての思いをくみ取る場面の確保や意思疎通の方法をさらに検討することが期待される。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 利用者の自己アセスメントを踏まえて支援計画が作成されている

就労移行支援においては3カ月毎に利用者が自己アセスメントを行い、これに基づいて支援計画書が作成されている。施設独自のシートを使用し日常生活、対人関係、働く場での行動・態度の各項目について利用者自身がアセスメントし、出来ている事柄、課題となっている事柄が抽出されるようになっている。これを基に支援者との面談が行われ長期・短期目標と利用者自身の行動計画、支援者の支援方法が策定される。これは利用者自身の主体性を尊重し自身の課題を自ら導き出す支援の一環であり、利用者の自己実現に向けた施設独自の取り組みである。
関連評価項目(利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:原則として対象は調査実施時点での登録者全数。ただし、利用者本人より調査に対する拒否の意思表示のあった場合は対象から除外した。

調査方法:聞き取り方式  
利用者本人に対する個別の聞き取り調査を基本とした。ただし、調査当日、実習等で不在だった方については、事業所との協議のうえ、アンケート形式の調査を依頼した。事業所に利用者の属性や特性等を簡単に書面にまとめていただき、調査当日の参考とした。

利用者総数 60人
アンケートや聞き取りを行った人数 56人
有効回答者数 49人
回答者割合(%) 81.7%
生活介護 利用者総数: 15人
共通評価項目による調査対象者数: 13人
共通評価項目による調査の有効回答者数: 9人
利用者総数に対する回答者割合(%): 60.0%
就労移行支援 利用者総数: 3人 (アンケート方式1人 聞き取り方式2人)
共通評価項目による調査対象者数: 3人
共通評価項目による調査の有効回答者数: 3人 (アンケート方式1人 聞き取り方式2人)
利用者総数に対する回答者割合(%): 100.0%
就労継続支援B型 利用者総数: 42人
共通評価項目による調査対象者数: 40人
共通評価項目による調査の有効回答者数: 37人
利用者総数に対する回答者割合(%): 88.1%

総括
・共通評価項目に加えて、作業所の活動や生活全体に対する評価を5段階の選択肢を示して尋ねたところ、回答者の約3分の1は、質問の意図が伝わらなかった等の理由で無回答にカウントされているものの、「とても満足」「満足」の回答がそれぞれ3割前後を占め、その一方で「不満」「大変不満」と答えた方は一人もいなかった。問1の「何か困ったことがあった時の職員の対応」に関する設問では、回答者の約4分の3が「助けてくれる」と回答している。今年度から運営法人が変わったことにともなう職員の全面的な入れ替えに際して、10か月が経過した現在、利用者は職員に対し一定の信頼感を寄せている様子が覗える。 ・共通評価項目で「いいえ」の回答がやや目立ったのは、就労継続支援B型の問19(工賃の支払い方法の説明)と種別共通の問27(外部の相談窓口に関する説明)。全般に無回答に集計された人数の割合が2割~5割近くに上っている。 ・利用者本人に対する調査を補完する目的で、家族に対して行ったアンケート方式による全数調査(回収率58.3%)では、事業所のサービスに対する総合的な評価として、「大変満足」「やや満足」の回答が合わせて9割以上に達している。

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 37人  どちらともいえない 0人  いいえ 2人  無回答・非該当 10人 
質問文(聞き取りの場合、利用者の状況に応じて、聞き方を変えている。以下同):事業所で、あなたが何か困ったことがあったときに、職員は助けてくれますか
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 31人  どちらともいえない 4人  いいえ 1人  無回答・非該当 13人 
事業所の普段の生活や活動であなたが使っている設備は、安心して使えますか
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 34人  どちらともいえない 0人  いいえ 2人  無回答・非該当 13人 
事業所に通う利用者同士で交流する機会や時間は楽しいですか
4.【生活介護】
事業所での活動は楽しいか
はい 7人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
質問文(聞き取りの場合、利用者の状況に応じて、聞き方を変えている。):作業所での活動(作業やレクリエーション)は楽しいですか
7.【就労移行支援】
事業所での活動が就労に向けた知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 3人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
質問文(聞き取りの場合、利用者の状況に応じて、聞き方を変えている。以下同):ここでの活動は、あなたが働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っていますか
8.【就労移行支援】
職場見学・職場実習等の、事業所外での体験は充実しているか
はい 3人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
職場見学・職場実習等の、事業所外での体験は充実していますか
9.【就労移行支援】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 2人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されていますか
12.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 19人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 17人 
質問文(聞き取りの場合、利用者の状況に応じて、聞き方を変えている。以下同):ここでの活動は、あなたが働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っていますか
13.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 16人  どちらともいえない 1人  いいえ 7人  無回答・非該当 13人 
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されていますか
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 33人  どちらともいえない 3人  いいえ 2人  無回答・非該当 11人 
事業所で皆で一緒に使う場所(作業室や食堂、トイレ)は、いつもきれいに片付いていると思いますか
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 33人  どちらともいえない 3人  いいえ 2人  無回答・非該当 11人 
職員の言葉づかいや態度、身だしなみなどで、いやな思いをしたことはないですか
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 32人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 15人 
事業所にいる間に、ケガをしたり体調が悪くなったときは、職員に安心して任せられますか
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 23人  どちらともいえない 0人  いいえ 2人  無回答・非該当 24人 
利用者同士のけんかやいじめがあったときに、職員はそうしたことが起こらないように、利用者が納得のいく方法で解決してくれますか
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 33人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 13人 
職員はあなたの気持ちを大切にしてくれていると思いますか
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 30人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 19人 
あなたの個人的なことで、他の人に知られたくないと思っていることを、職員は他の利用者に知られないように、秘密にしてくれていますか
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 23人  どちらともいえない 0人  いいえ 5人  無回答・非該当 21人 
あなたの事業所での活動についての目標や計画を作ったり、それを見直すときに、職員はあなたの今の生活の様子や希望をよく聞いてくれましたか
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 20人  どちらともいえない 0人  いいえ 5人  無回答・非該当 24人 
あなたの事業所での活動についての目標や計画に対して、職員はどういう支援をしてくれるのか、わかりやすく説明してくれましたか
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 27人  どちらともいえない 1人  いいえ 2人  無回答・非該当 19人 
職員に対して、いやなことやしてほしいことを言ったり書いたりして伝えると、職員はちゃんと対応してくれますか
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 10人  どちらともいえない 1人  いいえ 14人  無回答・非該当 24人 
職員には言いにくい困りごとがあったときに、職員ではない人が話を聞いてくれる外部の相談窓口があるのですが、職員はそのことをわかりやすく教えてくれましたか

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念、基本方針)を明確化・周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を明示している
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目3 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目4 重要な意思決定や判断に迷ったときに、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を思い起こすことができる取り組みを行っている(会議中に確認できるなど)
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、自らの役割と責任に基づいて行動している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件を検討し、決定する手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
4月からの運営委託に際し、利用者・家族に法人の考え方等をていねいに説明した

今年度より、区の直営から指定管理者である民間の社会福祉法人に運営主体が切り替わった。事業所は4月からの運営委託に先立ち、法人の考え方や支援の提供体制等について、利用者及びその家族への説明をていねいに行い、民間法人による新たな運営に対する不安の軽減に心を砕いている。今回、利用者調査の一環として実施した家族アンケートには、そうした事前説明の取り組みに対して、家族が高く評価している結果が示されている。

運営初年度にあたり、施設長は利用者家族との関係調整や職員集団の統合に努めている

運営委託の初年度にあたり、施設長はサービスの提供方法については基本的に現状を維持しながら利用者家族との関係調整を図り、また利用者の状況や地域の事業環境、職員集団の力量等をじっくりと見極めながら、さらなる向上を目指すうえでの課題を探っている。法人役員としての職務も兼ねていることから、副施設長を置いて、施設長業務をカバーする体制を整えている。事業所内の意思決定については、会議による話し合いのプロセスを重視し、その中で職員間の相互理解と職員の意見や提案の反映に努めている。

職員参画の議論を通じて事業所が目指す支援の意味の理解を深めることが期待される

施設長は事業の究極の目的を「地域づくり」と捉え、利用者が地域の社会資源に支えられながら自分らしい豊かな生活を便利に営めるようにという視点から事業所における支援を組み立てようとしている。そうした意図が職員全体の共有認識となるには、しばらくの時間を要する状況にある。現在、法人が策定を進めている次期の中期経営計画を踏まえつつ、事業所としての中期ビジョンを職員参画の議論を通じて明らかにする中で、事業所が目指す支援の意味についての職員の理解をさらに深めていくことが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知している 実施状況
  標準項目1 福祉サービスに従事する者として、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳)などを明示している
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳)などの理解が深まるように取り組んでいる
  評価項目2 第三者による評価の結果公表、情報開示などにより、地域社会に対し、透明性の高い組織となっている 実施状況
  標準項目1 第三者による評価の結果公表、情報開示など外部の導入を図り、開かれた組織となるように取り組んでいる
  標準項目2 透明性を高めるために、地域の人の目にふれやすい方法(事業者便り・会報など)で地域社会に事業所に関する情報を開示している
  サブカテゴリー2  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 事業所の機能や福祉の専門性をいかした取り組みがある 実施状況
  標準項目1 事業所の機能や専門性は、利用者に支障のない範囲で地域の人に還元している(施設・備品等の開放、個別相談など)
  標準項目2 地域の人や関係機関を対象に、事業所の機能や専門性をいかした企画・啓発活動(研修会の開催、講師派遣など)を行っている
  評価項目2 ボランティア受け入れに関する基本姿勢を明確にし、体制を確立している 実施状況
  標準項目1 ボランティアの受け入れに対する基本姿勢を明示している
  標準項目2 ボランティアの受け入れ体制を整備している(担当者の配置、手引き書の作成など)
  標準項目3 ボランティアに利用者のプライバシーの尊重やその他の留意事項などを伝えている
  評価項目3 地域の関係機関との連携を図っている 実施状況
  標準項目1 地域の関係機関のネットワーク(事業者連絡会など)に参画している
  標準項目2 地域ネットワーク内での共通課題について、協働して取り組めるような体制を整えている
講評
利用者に対する権利侵害を“起こり得るもの”と捉え、その防止策を徹底している

利用者の尊厳を守り、心に添った支援を実践することを法人の基本的な方針に掲げている。法人の権利擁護委員会を中心に、職員による虐待をはじめ利用者に対する権利侵害を起こさないために、日常の支援の現場に存在する虐待につながりかねない「グレーゾーン」の事例を集め、法人全体の研修の場で共有する取り組みを継続している。

外部の目の活用による透明性の確保と、地域に対する事業所機能の周知に取り組んでいる

法人として第三者評価を利用者の権利擁護の仕組みと位置づけ、毎年計画的に実施している。また、第三者委員を置き、利用者・家族からの苦情とその解決に向けた取り組みを定期的に報告するなど、運営の透明性の確保に力を入れて取り組んでいる。法人の広報紙を地域の関係機関に配付するとともに、併設の児童館との合同イベントである秋のおまつりを地域連携をテーマに掲げて開催し、事業所の役割や機能についての周知に努めている。今後、地域との懸け橋と位置づけるボランティアについて、行事以外の日常的な場面における活動の広がりが期待される。

地域の関係機関のつながりの中で、障害者の地域生活の向上に共に取り組んでいる

区内の障害児・者が利用する事業所によるネットワークの一員として地域の障害者福祉の向上に取り組んでいる。また、近隣の特別支援学校と地域の事業所が卒後の進路先での活動状況について情報を交換し、課題を共有する機会を設けている。法人として地元行政や関係機関と連携して地域福祉の推進に寄与することを基本方針の一つに謳い、事業所も地域との連携強化を重点的なテーマに掲げており、今後、事業所全体で地域活動の積極的な展開をさらに推進することが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  利用者意向や地域・事業環境の把握と活用
  サブカテゴリー1  利用者意向や地域・事業環境に関する情報を収集・活用している
  評価項目1 利用者一人ひとりの意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応している(苦情解決制度を含む) 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者一人ひとりの意見・要望・苦情に対する解決に取り組んでいる
  評価項目2 利用者意向の集約・分析とサービス向上への活用に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向を把握することに取り組んでいる
  標準項目2 事業者が把握している利用者の意向を取りまとめ、利用者から見たサービスの現状・問題を把握している
  標準項目3 利用者の意向をサービス向上につなげることに取り組んでいる
  評価項目3 地域・事業環境に関する情報を収集し、状況を把握・分析している 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズの収集(地域での聞き取り、地域懇談会など)に取り組んでいる
  標準項目2 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)の収集に取り組んでいる
  標準項目3 事業所としての今後のあり方の参考になるように、地域の福祉ニーズや福祉事業全体の動向を整理・分析している
講評
施設内外の苦情相談窓口について、利用契約時に書面で利用者、家族に説明している

施設内の苦情相談の受付担当者及び法人が委嘱した第三者委員、区の苦情調整委員に関し、利用契約時に書面で説明している。第三者委員は法人の苦情解決委員会に出席するだけではなく、事業所の行事や家族会に出席して、利用者・家族と顔見知りの関係を築く努力を行っている。苦情解決における第三者委員制度は法人としてはサブシステムとしての位置付であり、職員との日常の関係の中で解決が図れるよう、信頼関係のさらなる強化と利用者の訴えに対する感度を高める努力の積み重ねが期待される。

利用者の自治会活動を活用して、利用者の目線に立った意向の把握を行っている

利用者による自治会活動の支援を通して、利用者の主体性を引き出し、自己決定を促している。今年度から提供が始まった給食のメニューに利用者の希望を反映しようと栄養士がアンケート調査を行った際、利用者にとって答えやすい調査票となるよう、その作成について自治会に協力を依頼した。調査の結果は栄養士が集約し、その結果を実際の献立に活かしている。

毎月の法人代表者会議で事業や地域に関する情報に基づく情勢の分析が行われている

法人の理事長及び法人内の各事業所の管理者が月2回集まり、運営上の問題把握と課題に向けた検討を行う会議の場で、都内の福祉施設の会員組織における部会役員や都及び市の自立支援協議会委員等を務める総合施設長をはじめ、各参加者からもたらされる福祉事業や地域に関する情報に基づく情勢の分析が行われている。今後、そうした議論を踏まえて法人の中期経営計画の見直しを図り、その中で、当事業所が目指すビジョンとそれを実現するための道筋を計画に落とし込むことが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  計画の策定と着実な実行
  サブカテゴリー1  実践的な課題・計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 取り組み期間に応じた課題・計画を策定している 実施状況
  標準項目1 理念・ビジョンの実現に向けた中・長期計画を策定している ×
  標準項目2 年度単位の計画を策定している
  標準項目3 短期の活動についても、計画的(担当者・スケジュールの設定など)に取り組んでいる
  評価項目2 多角的な視点から課題を把握し、計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題の明確化、計画策定の時期や手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 課題の明確化、計画の策定にあたり、現場の意向を反映できるようにしている
  標準項目3 計画は、サービスの現状(利用者意向、地域の福祉ニーズや事業環境など)を踏まえて策定している
  標準項目4 計画は、想定されるリスク(利用者への影響、職員への業務負担、必要経費の増大など)を踏まえて策定している
  評価項目3 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 計画推進の方法(体制、職員の役割や活動内容など)を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、より高い成果が得られるように事業所内外の先進事例・失敗事例を参考にするなどの取り組みを行っている
  標準項目3 計画推進にあたり、目指す目標と達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目4 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
  サブカテゴリー2  利用者の安全の確保・向上に計画的に取り組んでいる
  評価項目1 利用者の安全の確保・向上に計画的に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 利用者の安全の確保・向上を図るため、関係機関との連携や事業所内の役割分担を明示している
  標準項目2 事故、感染症、侵入、災害などの事例や情報を組織として収集し、予防対策を策定している
  標準項目3 事故、感染症、侵入、災害などの発生時でもサービス提供が継続できるよう、職員、利用者、関係機関などに具体的な活動内容が伝わっている ×
  標準項目4 事故、感染症、侵入などの被害が発生したときは、要因を分析し、再発防止に取り組んでいる
講評
職員会議や家族アンケートを通じて関係者の意向を反映した事業計画を策定している

年度の事業計画は、役職者及び各現場の責任者が作成した案を職員会議で議論し確認したうえで策定している。また、利用者家族の意見や要望を把握するためのアンケートを実施し、次年度の事業計画に反映している。計画の実行にあたり、あらかじめ定めた方法等の変更が必要な状況が生じた場合は、職員から所定の様式の起案文書が上がり、管理職の決裁を受けたものを全体で確認する仕組みを整えている。事業所では、一定期間後における変更の妥当性の検証に課題が残るとしており、中期計画の策定と併せ、今後の検討が期待される。

事業計画の実行計画化と進捗に基づく柔軟なプラン変更の仕組みの整備が望まれる

事業計画における重点課題に関しては、年度における達成基準となる具体的な指標を設定し、それを実現するために具体的な道筋が描いたうえで、それに基づく進捗管理を行うことが重要となる。事業計画書に関しては、方針(考え方)の部分と、それを踏まえて誰(どの部署)が、何を、どのような方法で、いつまでに、どの程度やるのかを具体化した実行計画に切り分け、実行計画の部分は予算と同様、進捗状況によって随時見直し、柔軟に変更する仕組みの構築に向けて、法人全体で議論を進めることが期待される。

事故に関連する情報の集約と全体化を通じて再発防止に組織的に取り組んでいる

支援中の事故や作業ミス、または事故やミスにつながる恐れのある事態に直面した職員から、所定の報告書を通じて、その状況や原因についての情報を集約し、全体化する仕組みを整え、再発防止に活用している。施設長は、リスクに対する職員の感度を上げることを課題と認識しており、今後は感度の高いアンテナを持った職員の視点を全体化する取り組みが期待される。また、大規模災害の発生に備え、関係者及び関係機関との連携を視野に入れながら、サービスの継続に必要な条件や範囲等を想定した具体的な事業継続計画を策定することが望まれる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成に取り組んでいる
  評価項目1 事業所にとって必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所の人事制度に関する方針(人材像、職員育成・評価の考え方)を明示している
  標準項目2 事業所が必要とする人材を踏まえた採用を行っている
  標準項目3 適材適所の人員配置に取り組んでいる
  評価項目2 職員の質の向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりの能力向上に関する希望を把握している
  標準項目2 事業所の人材育成計画と職員一人ひとりの意向に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している ×
  標準項目3 個人別の育成(研修)計画は、職員の技術水準、知識、専門資格の習得(取得)などの視点を入れて策定している ×
  標準項目4 職員一人ひとりの個人別の育成(研修)計画に基づいて、必要な支援をしている ×
  標準項目5 職員の研修成果を確認し(研修時・研修直後・研修数ヶ月後など)、研修が本人の育成に役立ったかを確認している ×
  サブカテゴリー2  職員一人ひとりと組織力の発揮に取り組んでいる
  評価項目1 職員一人ひとりの主体的な判断・行動と組織としての学びに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員の判断で実施可能な範囲と、それを超えた場合の対応方法を明示している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに学ぶことに取り組んでいる
  標準項目3 職員一人ひとりの研修成果を、レポートや発表等で共有化に取り組んでいる
  評価項目2 職員のやる気向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価・報酬(賃金、昇進・昇格、賞賛など)が連動した人材マネジメントを行っている ×
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、疲労・ストレスなど)を把握し、改善に取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、やる気と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 福利厚生制度の充実に取り組んでいる
講評
職員の半数以上が新規採用者であり、組織内の連携強化に取り組んでいる

今年度より区の直営から指定管理者である当法人による運営に変わったことにともない、職員も全面的に入れ替えとなった。中途採用を含めると職員の半数以上が新規採用者であり、支援員の3分の1は新規学卒者という構成になっている。区の基準により、常勤支援員は福祉等に関する国家資格保有者が一定以上の割合を占めている。サービス種別に対応して3課体制を敷き、各課長(補佐を含む)のもとにリーダーを配置している。施設長は課長、リーダーを中心とした組織内の連携強化を課題とし、人数に見合ったパフォーマンスを生み出す方策を検討している。

法人として学びに価値を置き、職員の研修や自己啓発を積極的に促す仕組みを整えている

法人として学びに価値を置き、職員の研修や自己啓発を積極的に支援する仕組みを整えている。現在、法人全体の研修体系の再構築を進めており、その中で法人の求める人材像を明らかにすることに取り組んでいる。また、都内に分散した事業所を通信事業者の公衆回線を経由して構築された仮想的な組織内ネットワークで結んでおり、オンラインでの学習システムの運用に向けた準備を同時に進めている。今後は法人の求める人材像を踏まえた能力やスキルのアセスメントに基づく個別の育成計画の策定により、事業所の育成責任を明らかにすることが期待される。

職員主体の内部研修を計画的に実施し、支援の質の向上に活かしていくことが期待される

法人全体として人材育成を重点課題に据え、支援の柱に位置づけられた専門的な援助技術等に関する職員研修を計画的に実施している。事業所でも今後、職員の学びに対する本来的な意欲を引き出しながら、職員主体の内部研修を計画的に実施し、組織的な支援の質の向上に活かしていくことが期待される。法人で引き続き導入に向けた検討を進めている人事考課制度については、目的に照らし、継続的な運用が可能なシンプルな仕組みを構築していくことが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  情報の保護・共有
  サブカテゴリー1  情報の保護・共有に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が蓄積している経営に関する情報の保護・共有に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定している
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・保管している
  標準項目3 保管している情報の状況を把握し、使いやすいように更新している
  評価項目2 個人情報は、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえて保護・共有している 実施状況
  標準項目1 事業所で扱っている個人情報の利用目的を明示している
  標準項目2 個人情報の保護に関する規定を明示している
  標準項目3 開示請求に対する対応方法を明示している
  標準項目4 個人情報の保護について職員(実習生やボランティアを含む)が理解し行動できるための取り組みを行っている
講評
パソコン等を活用しながら職員の判断の基となる情報の共有化に取り組んでいる

事務室内に置かれたパソコンを活用しながら職員の判断の基となる情報の共有化を進めている。支援記録や予定などの情報は基本的にパソコンの所定のファイルに入力され、職員は画面上で必要な情報にアクセスできるようになっている。ネットワーク化されたパソコンの中に共有ファイルの保存場所を設け、タイトルの付いたフォルダによって分類・整理されている。また、文書で蓄積された情報はファイルごとに整理され、事務所内の所定の場所に保管されているほか、必要に応じて事務所内や事務所前の廊下の壁に掲示し、周知を図っている。

ネットワークの管理やファイリングシステムを法人全体で整備することが期待される

事務室内のパソコンには起動を制限するパスワードが設定されており、会計ソフトには担当者以外アクセスできないよう、専用のパスワードを設けている。また、共有フォルダ内の電子ファイルのうち、利用者の個人情報が含まれるものについては、開くときにパスワードが要求されるように保存されている。今後、情報の効率的な共有と機密性の確保を同時に実現するために、ネットワークの管理やファイリングのシステムを区の管理方法に準拠しながら整備していくことが期待される。

利用契約時に個人情報の利用目的を謳った使用同意文書を提示し、署名を求めている

利用契約締結の際、利用者・家族から、個人情報の利用目的を謳った使用同意文書を提示し、署名を求めている。また、個人情報の開示請求を利用者本人または家族から受けた場合の対応方法については、契約時に交付する重要事項説明書に簡単に示している。職員からは雇用契約締結時に、退職後も守秘義務を負うことを謳った誓約書を徴取し、実習生についても職員に準じた取り扱いをしている。現状では、利用者・家族に提示して使用の同意を得る個人情報の利用目的の中に、第三者評価機関への情報提供が含まれておらず、今後の改善が期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー8  カテゴリー1~7に関する活動成果
  サブカテゴリー1  前年度と比べ、事業所の方向性の明確化や関係者への周知、地域・社会への責任の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー1:「リーダーシップと意思決定」
・カテゴリー2:「経営における社会的責任」
・カテゴリー4:「計画の策定と着実な実行」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
4月からの運営に際し、利用者家族に法人の考え方等をていねいに説明し、評価を得た
今年度より、区の直営から指定管理者である民間の社会福祉法人に運営主体が切り替わった。法人は4月からの運営委託に先立ち、法人の考え方や支援の提供体制等について、利用者及びその家族への説明をていねいに行い、民間法人による新たな運営に対する不安の軽減に心を砕いている。今回、利用者調査の一環として実施した家族アンケートには、そうした事前説明の取り組みに対して、家族が高く評価している結果が示されている。 
  サブカテゴリー2  前年度と比べ、職員と組織の能力の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー5:「職員と組織の能力向上」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われているが、成果としては現れていない
新しい職員集団の組織能力を高めるため、法人の仕組みを活かした取り組みを進めている
今年度より区の直営から指定管理者である当法人による運営に変わったことにともない、職員も全面的に入れ替えとなった。中途採用を含めると職員の半数以上が新規採用者であり、支援員の3分の1は新規学卒者という構成になっている。サービス種別に対応して3課体制を敷き、各課長(補佐を含む)のもとにリーダーを配置している。施設長は課長、リーダーを中心とした組織内の連携強化を課題とし、人数に見合ったパフォーマンスを生み出す方策を検討している。また、法人として職員の研修や自己啓発を積極的に支援する仕組みを整えており、現在、法人全体の研修体系を再構築を進める中で、法人の求める人材像を明らかにすることに取り組んでいる。さらに、都内各所に分散した法人内の事業所を通信事業者の公衆回線を経由して仮想的な組織内ネットワークで結んでおり、オンラインでの学習システムの運用に向けた準備を進めている。 
  サブカテゴリー3  前年度と比べ、福祉サービス提供プロセスや情報保護・共有の面において向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、以下のカテゴリーで評価される部分について、改善を行い成果が上がっている
・カテゴリー6:「サービス提供のプロセス」
・カテゴリー7:「情報の保護・共有」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
ていねいな個別支援や給食サービスの開始により、利用者の通所率が上がっている
利用者一人ひとりを尊重し、心に添った支援を行うとの基本方針のもとに、3つのサービス種別における事業目的をそれぞれ明確にし、個別支援計画に基づくていねいなサービス提供に努めた結果、それまであまり通えていなかった利用者が毎日通えるようになるなど、各事業とも利用者の通所率が4月当初と比べて上がっている。今年度より提供を開始した給食サービスについては、利用者本人と家族の双方から高い評価が示されており、通所率の向上に一定の寄与をしているものと推察される。 
  サブカテゴリー4  事業所の財政等において向上している
  評価項目1 財政状態や収支バランスの改善へ向けた計画的かつ主体的な取り組みにより成果が上がっている
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
通所率の上昇と基本報酬にプラスされる取り組みにより、事業収入が増加している
利用者の通所率は年間を通して多少の浮き沈みはあっても上昇傾向にあり、単純に4月と2月を比較すると事業全体で約5ポイント上がっている。その結果、当然のことながら事業収入が増加している。中でも注目すべきは、利用者一人一日あたりの事業収入が同じ2地点間で約11%増加している点で、基本報酬にプラスされる取り組みが積極的に展開され、それが収入に反映している様子が覗える。 
  サブカテゴリー5  前年度と比べ、利用者満足や利用者意向の把握等の面で向上している
  評価項目1 前年度(比較困難な場合は可能な期間で)と比べて、利用者満足や以下のカテゴリーで評価される部分において改善傾向を示している
・カテゴリー3:「利用者意向や地域・事業環境などの把握と活用」
評価結果 改善に向けた計画的な取り組みが行われており、成果として現れている
利用者の目線に立った意向の把握を行い、その結果をサービスの向上につなげている
利用者による自治会活動の支援を通して、利用者の主体性を引き出し、自己決定を促している。今年度から提供が始まった給食のメニューに利用者の希望を反映しようと栄養士がアンケート調査を行った際、利用者にとって答えやすい調査票となるよう、その作成について自治会に協力を依頼した。調査の結果は栄養士が集約し、その結果を実際の献立に活かしている。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている ×
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
運営の移行にあたっては個別に丁寧な対応が行われた

当事業所は本年度(平成26年度)より区直営から運営委託により変更された事情があり、利用者の多数が移行による継続利用となっている。運営の引き継ぎにあたっては利用者の混乱を避けるために、家族はもちろん利用者本人にも分かりやすい文章表記にて丁寧な説明がなされ、個人ごとの意向や問い合わせに対応し不安の解消に努めてきた。この取り組みにより、対応者の変更にデリケートな利用者や家族が安心してサービスの利用を継続できていることがアンケート調査の結果においても示されている。

区役所内には販売所が設置され、事業所を広く区民に知っていただく場となっている

区役所内には福祉売店が常設されており、当事業所を含めた区内の障害者施設にて生産・製造されたカードケースや刺子布巾などの自主生産品が展示販売されている。この取り組みは単に利用者の作業工賃につながるのみでなく、広く区民に障害者施設の取り組みを知っていただくアンテナショップの役割を担っており、障害者就労のネットワーク作りや仕事発注の広報の役割も果たしている。

利用者の特性に合わせた、さらなる情報提供の工夫が期待される

施設の情報は法人ホームページに加えて区のホームページやパンフレットにて提供され、パンフレットは区の関係機関窓口や区内の特別支援学校・ハローワークにも置かせていただいている。事業者は利用者の特性に配慮した情報提供について課題があると認識しており、写真等を活用したわかりやすい内容説明書の作成を検討している。利用希望者が自身の選択によりサービスを希望するに資する情報提供となるよう、今後のさらなる取り組みが期待される。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
利用希望者には、すべての方に体験利用を実施している

本年度は運営受託者の変更に伴い利用者が移行された事情があり、移行された利用者に対しては分かりやすい文章表記での丁寧な説明とともに、個別に意向調査や問い合わせに対応し、前職員との連携・情報の共有のもと環境の変化による利用者の不安の軽減を図りながらサービスの開始が行われてきた。また新規の利用希望者には原則として全員に3日~5日間の体験利用を実施し、利用者の支援に必要な情報を収集とともに、利用者の不安軽減に努めている。

利用者用の利用契約書を作成し契約支援を行っている

利用契約は数日間の体験利用の後、利用者およびご家族に対して契約書・重要事項説明書にて説明がなされている。当事業所では通常の利用契約書の他に利用者に解りやすい表現に変更された利用者用の契約書が用意されており、利用者本人にも説明がなされている。これは利用者本人の理解と納得を引きしたうえで契約を行う契約支援の取り組みであり、法人の基本方針にある『一人ひとりの気持ちを尊重したサービスの提供』に通じる事業者の姿勢が伺える取り組みである。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する情報を過不足なく記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
利用者の自己アセスメントを踏まえて支援計画が作成されている

就労移行支援においては3カ月毎に自己アセスメントを行っていただき、これに基づいて支援計画書が作成されている。施設独自のアセスメントシートを使用し利用者自身が自己アセスメントを行う事により、出来ている事柄、課題となっている事柄が抽出されるようになっており、自己を認識した上で支援者との面談により意向を踏まえて支援計画書が作成されている。これは利用者自身の主体性を尊重し、自身の課題を自ら導き出す支援の一環であり利用者の自己実現に向けた取り組みがなされている。

個別支援計画に沿って行った支援についての記録と検証が行われている

実際に行われた支援についてはその過程と具体的な内容・利用者の変化等を担当職員が支援記録に記載している。当事業所ではすべての利用者の支援記録を管理職が確認し必要に応じてコメントをする取り組みがなされており、個別支援計画に沿った支援が行われているか、またその記録がなされているかの検証と共に支援が利用者にどのような変化をもたらしているかの振り返りが連続されて行われている。管理職からの第三者的な視点を得る事により、より適切な支援につなげる事ができ、常によい緊張感の中で支援をすることができるというメリットがある。

個人の意向を汲み取り、支援につなげるさらなる仕組みづくりが期待される

生活介護、就労継続支援B型においては6カ月毎に利用者・家族との面談を行いその意向を確認しながら個別の状況に合わせた支援計画が作成されている。アセスメントや支援計画の各種様式は利用者の混乱を避けるために区直営時の様式を継続してきた事情があり、事業所はより具体的な個別支援計画の作成に向けて法人全体で勉強会を行い取り組んでいる。施設の中にとどまらず自宅での過ごし方にも連続性を持ち、課題達成の積み重ねにより本人の自信を引き出し、暮らしを豊かにする支援方法に着眼されており、今後の取り組みが期待される。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
より適切な利用者とのコミュニケーションのとり方を模索し、支援に生かそうとしている

より適切な利用者とのコミュニケーションのとり方を模索する一つの方法として、次年度より臨床心理士を雇用して、コミュニケーションのとり方の専門性を追求する姿勢が見られる。臨床心理士という第三者的立場からの提言によって、チームアプローチをさらに強固にしていくこととなり、これまで行ってきた支援を、より良いものにしていく一つの道筋をつけることが可能となると期待される。

休日の過ごし方を含めて、利用者支援を幅広くとらえている。

利用者支援を、自立課題の提供を通して、通所時間だけではなく、土日の過ごし方にまで目を配り、必要な情報の提供を行うことで、就労を含めた生活支援全般にわたって、利用者を幅広くとらえている。グループホームに関しては、自立した生活の一環としてとらえており、利用者が置かれている生活環境に配慮した支援を目指していると言える。余暇活動に関しては、区内のイベントや青年学級、善意銀行からのお知らせなど、様々なルートを駆使しながら、情報収集と提供を行っている。

個々の利用者支援について、その必要性と方法を追求している

なぜその支援が必要なのか、その支援を行とどのような効果が得られるのかを意識して、利用者が周囲との関係を考慮しながら、活動しやすい環境整備を積極的に行っている。特に作業活動については、位置関係に配慮し、スペースを分けるなどの調整を行うことで、安心して活動できるように配慮している。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している
講評
自治会活動を通して利用者の主体的な取り組みをサポートしている

自治会活動を通して、利用者の主体性を引き出し、自己決定を促している。そのために、職員側が後方からサポートし、必要に応じて自治会主催の会議にも入るなどしている。積極的に施設での活動を自分たちで組み立てようとする取り組みとして、献立のリクエストメニューが挙げられ、集計は栄養士が行うものの、用紙は自治会で作成するなど、積極的に関わっている。一方、自治会に関わっている利用者が固定化されており、より多くの利用者が関わり、特に、自分の意思を表現することが難しいとされる利用者の活動への参加をサポートする体制が望まれる。

利用者が充実した時間を過ごせるための支援を積極的に行っている

建物の築年数はある程度経過しているが、施設内の清掃が概ね行き届いており、清潔を保っている。利用者の状態に配慮して、過ごしやすい環境の構築を進めている。特に、気温の変化に配慮して、場合によっては個別に扇風機などで対応するなど、一人ひとりの状況に配慮している。その際には個別支援記録に記載するとともに、職員間の周知徹底が図られている

利用者が安心して過ごすことのできる環境づくりを積極的に行っている

周囲からの影響に配慮しつつ、目で見てわかるように物事を伝えたり、刺激を整理して注意が散乱しないようしたり、やるべきことの手順を明確にして習慣化する手助けをするために、ご家族に対する説明を行ったうえで、環境の構造化を図り、落ち着いて過ごせるように配慮している。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている
講評
職種間の連携により、利用者の健康状態の把握と支援が充実している

利用者が通所した時点で、健康状態のチェックを欠かさず行っており、それを職種間で共有し、緊急時対応については、フローチャートに沿って敏速な対応を可能にしている。また、てんかん発作の有無を記録する表や服薬チェック表を用いて、状況の把握に努めている。健康状態について、支援記録と業務日誌に記載し、職種間で情報漏れのないようにすることで、その後の対応等についての指針としている。看護師が交代で常駐することにより、現場での対応についての助言を求めることが出来る体制がある。

家族、医療機関との連携により、情報収集、提供、支援が充実している

連絡帳という手段を用いて情報収取及び提供をすることにより、家族との連携を強化することが可能である。また、連絡帳への記載については、以前にはなかった書式を用いることで、家族の負担軽減と情報の視覚化が可能となっている。また、必要に応じて通院に同行するなど、医療機関を経由しての情報収集も勧めており、利用者の健康状態を、トータル的に把握するように努めている。

医療機関と協力して利用者の健康保持に積極的に取り組んでいる

内科と精神科の嘱託医と連携し、利用者の健康保持について、専門的立場からのアプローチを行うことにより、健康保持を行っている。その際には個別相談も実施できる体制にするなどの配慮も行っている。健康診断を実施することにより、実施期間における長期的な視野に立って、利用者の健康状態の把握とサポートも行っている。行政との連携により、利用者が負担金なしに健康診断を受診することが出来る一方、検査内容の充実を求める声もあることから、検査内容の充実を図ることが望まれる。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
家族を含めた利用者の支援体制の構築に積極的に取り組んでいる

利用者の支援に関する話し合いを家族と積極的に行っており、家族の協力の重要性を強く認識していことが伺える。その際には、現場において受け止められた利用者の意向を踏まえたうえで行っている。家族と職員が支援に対する共通認識を持つことが出来るように、お互いの情報のやりとりを積極的に行っている。話し合いを円滑に進めるために、利用者の日々の様子を、連絡帳を使って逐一報告し、家庭での様子を情報収集したり、施設の現状等を全体に周知させるために、作業所連絡会を開催している。

作業所連絡会の在り方の再確認が望まれる

毎月保護者を対象にした作業所連絡会を開催して、利用者の様子や施設の現況の報告を行っている。作業所連絡会の位置づけの重要性を認識している一方、作業所連絡会の在り方については、両者の間で再確認し、共通認識を持つことが望まれる。職員側の作業所連絡会の内容について、伝達だけではなく、意見交換を目的とした作業所連絡会に変えていきたいという方向性を、どのように実現していくか、検討することが望まれる。

家族と職員との関係強化に積極的に取り組んでいる

連絡帳での年1回の家族と職員との交流会を実施することにより、両者とのパートナーシップに基づく関係強化を目指している。そして、利用者支援について、お互いの立場からの議論が可能となり、利用者の意向を踏まえた、クオリティの高い支援を目指している。交流会への多くの参加者を募るためにも、開催日を土曜日に設定するなど、職員側からの積極的なアプローチを行っている。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
利用者に対する情報提供を積極的に行っている

地域の情報を、区報を出入り口に置いたり、エリア情報を事務所のパソコンで収集するといった方法を駆使して情報を収集し、それを必要としている利用者に積極的に提供しており、地域で充実した生活をおくるという意識付けを行っている。また、地域で孤立しないように、区内のイベント等へ足を運ぶきっかけになることを目指している。一方、提供された情報を確実に利用者が理解できるように、さらなる配慮が望まれる。

利用者が地域社会に積極的に出向くための支援が充実している。

利用者の地域貢献の場の設定の必要性を感じており、その取り組みを進めようとしている。その一環としてあがっているのが、環境美化活動となっている。必要に応じて、新たな活動の場を設けようとする積極的な姿勢がある。就労移行は就労後の生活にまで視点が及んでおり、その一環として、忘年会を地域内の居酒屋にて実施し、直接顔を合わせる機会を作るなど、地域に溶け込もうとしている。

地域資源の活用を積極的に進めている

通所時間における作業活動以外にの、利用者が「自分の生活の幅を広げる」ために、地域にある資源を積極的に活用し、より充実した生活を送ることが出来るようにサポートしている。そのためにも、積極的に地域資源とのつながりを持てるようにアプローチし、特に移動支援を積極的に取り入れて、地域生活のサポートに取り組んでいる。

  評価項目6 【生活介護】日常生活上の支援や生活する力の維持・向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 一人ひとりの目的に応じた創作的活動、生産活動やその他の活動の支援を行っている
  標準項目2 自分でできることは自分で行えるよう働きかけている
  標準項目3 食事、入浴、排泄等の支援は、利用者の状況やペースに合わせて行っている
  標準項目4 【工賃を支払っている事業所のみ】 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している ×
講評
利用者に対し、可能な限り自分のことは自分で行うことを徹底している

可能な限り自分で出来ることは行い、困難な部分についてはサポートするという姿勢が、徹底されている。また、それを実現するために、作業活動においては、一人ひとりの能力に合わせて、どの部分をサポートすれば、より円滑に作業活動に取り組めるかを考えてる。その一環として、自助具の開発を行い、作業活動で能力の差による孤立の解消と、利用者の自信にもつながる取り組みをしている。

利用者のペースに合わせて職員が支援を行うことを徹底している

食事や排せつについては、利用者の動きに合わせて、タイミングを見計らいながらアプローチしており、その結果として、利用者がパニックに陥ることなく、スムーズに動くことが出来ている。また、食事や排せつ以外にも、その姿勢は一貫しており、それが、職員間で共通認識として徹底されている。職員が利用者のペースに合わせるという姿勢が、利用者の安心感につながり、両者との間の信頼関係の構築にもつながるものと期待される

現状の問題点の改善に積極的に動いている

工賃の仕組みが分かりにくいため、利用者や家族に対する説明が難しい、という問題点を認識したうえで、工賃等の仕組みについての再検討と、利用者の障害特性に応じて、支援の個別化を目指すために、臨床心理士の雇用を予定するなど、現状の問題点をどのように改善していくかを、検討を予定している。

  評価項目9 【就労移行支援】就労に向けて、必要な知識の習得や能力向上のための訓練等の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が働く意欲を持てるような取り組みを行っている
  標準項目2 サービス期間内に就労に結びつくことができるよう工夫している
  標準項目3 生活リズムや社会人としてのマナーの習得等の就労に向けた支援を行っている
  標準項目4 就労に向けた職場見学や実習等、実際に職場にふれる機会をとりいれた支援を行っている
  標準項目5 就労支援機関と密接な連携をとり、利用者が力を発揮できる就労先に結びつくよう支援を行っている
  標準項目6 就労後も利用者一人ひとりに応じて職場定着等の支援を行っている
講評
就労に対する明確な姿勢をもって支援している

施設内での活動において、就労に対する意識付けを行うための取り組みを積極的に行っている。2:職員との関わりは、挨拶の励行や言葉遣いなど、他事業所の利用者とは区別し、社会人としてのマナーを身に付けることを念頭に置いている。服装においても、就労を意識して、週のうち2日はスーツ、3日はオフィスカジュアルでの通所を実施し、社会に出るという意味を理解する取り組みをしている。他事業所と同じ作業活動に入る際であっても、他事業所の利用者とは違うプログラムが用意されており、就労に向けての訓練が可能となっている。

外部との連携により、利用者の就労支援、職場見学や実習の充実につながっている

近隣の高齢者施設やハローワーク、区内の就労支援センターとの連携が充実しており、施設だけではなく外部からの視点を得ることで、より多角的に就労に向けての支援が可能になる。実習の際には実習奨励金を支給することで、実習に対する経済的な不安の解消に、積極的に取り組んでいる。実習は個々の状況に応じて行われているが、ファーストステップ実習は、近隣の高齢者福祉施設で全員が実習を受けることになっており、何らかの形で必ず実習が受けられるようにプログラムされており、就労への意識付けを行うようにしている。

就労後の職場定着を視野に幅広い視点で個々の支援を行っている

今年度は初年度であるが、就職者が2名という実績が、就労支援に対する姿勢の高さと、支援プログラムの充実さを物語っていると言える。そして、就労後のアフターフォローを継続して行っていることから、就労支援を就労と定着という2本柱でとらえていることが伺える。

  評価項目11 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している ×
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
利用者の作業活動への導入に細心に注意を払っている

作業工程を分析して、利用者が作業活動にスムーズに入ることが出来るにはどうすればいいのかを考えている利用者一人一人の得意分野や特性を考慮して、一人一人に合わせた方法を編み出し、それを提案している。一見難しそうな作業でも、その作業がどのような工程を経て行われるかという視点に立って、必要に応じてより細かく作業工程を分割することによって、利用者の作業活動への参加を容易にしている。4;利用者の成功体験を多くすることとなり、作業活動に自信を持って入っていくきっかけとなっている。

安定的な作業活動の確保に積極的に取り組んでいる

現在では出来るだけ受注を受ける姿勢を持ち、継続的に業者にコンタクトをとるなど利用者の方の活動がマンネリにならないようにしている。安定的な作業活動の確保を目指すことで、利用者の作業活動の機会が途絶えることを防止し、安心して利用者が作業活動に取り組めるように配慮している。

工賃について利用者に対する分かりやすい説明が望まれる

工賃に関する仕組みや規程について、利用者の理解度は低いことから、工賃に関する説明を、どのような表現で行えば、利用者の理解が深まるかを、検討することが望まれる。これまでの工賃に関する仕組みや規程が分かりにくく、その改善に向けて次年度にプロジェクトチームを発足させ、平成28年度には工賃アップに向けた新しい作業がスタートできるように動き出そうとしていることから、現状の問題点の把握とそれに対する対策を講じていく姿勢を感じる。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、放任、虐待、無視等が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に予防・再発防止を徹底している
  標準項目3 虐待被害にあった利用者がいる場合には、関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  標準項目4 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
事業所独自のオンブズマン制度を設けている

事業所は区の福祉オンブズマン制度と併せて施設独自の第三者委員を委嘱し、利用者の権利擁護に取り組んでいる。本年度は設置一年目でもあり、苦情相談を受け付ける土台作りとして行事参加や利用者・家族交流の機会を通じて関係性の構築に努めているところであるが、今回実施した利用者調査及び家族アンケートの結果からは、その認知度が低いことが伺える。今後はより積極的な働きかけにより、この第三者委員が利用者・家族に認知され、利用者の権利擁護に資するとともに、事業者のサービスの向上に役立つ機関となることが期待される。

権利侵害について振り返る機会を設けている

事業所ではマニュアル内に障害者施設における『グレーゾーン集』を盛り込み、職員会議等で権利侵害を振り返る機会を設けている。支援の過程にある権利侵害や虐待について場面ごとに設定された例示集を基に、職員が自ら考え振り返りを行う機会となっている。また現在、法人内の権利擁護委員会を中心として、支援マニュアルの改定作業を進めている。法人が掲げる『心に寄り添う支援』を実現し、日常の支援の中で利用者のプライバシーの取り扱いが職員個人の判断によるものにならないよう、今後のさらなる取り組みに期待したい。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている ×
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている ×
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
  標準項目3 職員一人ひとりが工夫・改善したサービス事例などをもとに、基本事項や手順等の改善に取り組んでいる
  評価項目3 さまざまな取り組みにより、業務の一定水準を確保している 実施状況
  標準項目1 打ち合わせや会議等の機会を通じて、サービスの基本事項や手順等が職員全体に行き渡るようにしている
  標準項目2 職員が一定レベルの知識や技術を学べるような機会を提供している
  標準項目3 職員全員が、利用者の安全性に配慮した支援ができるようにしている
  標準項目4 職員一人ひとりのサービス提供の方法について、指導者が助言・指導している
  標準項目5 職員は、わからないことが起きた際に、指導者や先輩等に相談し、助言を受けている
講評
管理職員が支援経過記録を確認しアドバイスを行っている

当事業所では運営一年目ということもあり、支援スタッフの3分の1が新卒者であり、他法人からの入職者を合わせると半数以上が法人の新規採用者となる。事業所では、すべての利用者の個別支援記録は管理職が目を通し、必要に応じてメモや面談を通してアドバイスが行われている。価値観を共有し支援のあり方を伝えるべく力が注がれており、新しいスタッフとともに強い組織となるべく管理職が指導にあたっている。こういった取り組みを通じて法人が目指す理念の実現に向けて職員が一丸となってサービスの提供にあたる組織になることが期待される。

作業グループの活動単位において職員が自発的に作成したマニュアルがある

事業所では、職員が必要に応じて自発的に作成されたマニュアルも存在する。これは小グループの活動単位で必要と思われる事柄に関して起案者が作成し協議・回覧を経てマニュアル化されたものであり、職員のサービス向上に向けた意識の高さが伺える。このような取り組みが組織全体の取り組みとなり、職員全体が一定のサービス水準を確保する取り組みとなるような組織としての仕組みづくりが期待される。

手引書等の充実と仕組みづくりにより、業務の標準化を進めることが期待される

事業所の運営一年目ということもあり、マニュアルは仕事としての業務の手順に関するものに偏りがみられる。また、基本事項や手順等の点検・見直しのしくみが確立されておらず、定期的な見直しの時期が定められていない。事業所は支援者としてのあり方の共有や業務の標準化のためにマニュアルの改訂の必要を感じており、法人体制での取り組みが進められている。今後は法人がめざす理念を共有し、一定水準のサービスが提供できる組織つくりのために手引書等の充実とその仕組みづくりが期待される。