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  4. 機器の導入による悪影響
特集記事

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

介護ロボット等の施設導入から生じた好影響と悪影響
介護ロボット等の施設導入に係る課題と今後の展開について

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

3 機器の導入による悪影響

 介護ロボット等の導入による悪影響(リスク)について、特に気を付けたい点を5つ挙げてみます。軽視していると大きな問題に発展する可能性がありますので、活用中はもちろん導入前から丁寧に検討するようにします。

1)安全面のリスク

 安全面では、まず機器の誤使用や不使用による事故のリスクが考えられます。誤使用は、使用する職員に対して重要な観察ポイントを含め使用方法を教育し徹底することによって回避します。自分流が独り歩きして事故につながらないよう、技術確認は導入時だけでなく組織全体で定期的に繰り返し行います。他方、不使用は、特に見守りロボットの場合には深刻な事態を招く場合があります。使用することを忘れない工夫、忘れても気が付くことができる工夫が必要です。また、活用中に機器との接触や装着等により、利用者や職員に危害を及ぼすリスクが生じた場合には、活用を中止することも念頭に置いておきます。

2)衛生面のリスク

 昨今の新型コロナウイルス感染予防対策として「3密」を避けることは、withコロナ時代のニューノーマルとして生活の中に定着が進んでいると思います。コミュニケーションロボットのうち直接触れることで効果を発揮するタイプは、機器を介した他利用者との「密接」に、レクリエーションなどで利用者を集めて効果を発揮するタイプは、利用者同士の「密集」や環境の「密閉」にそれぞれ気を付けます。また、複数の職員が使用する介護ロボットでは、感染防止を含め衛生面への対策も欠かせません。職員の活用意欲が損なわれないよう、気持ち良く共用するための工夫が必要になります。


写真2:外出自粛中のパロ

【写真2:外出自粛中のパロ】

3)倫理面のリスク

 排泄支援ロボットや見守りロボットを活用する際には、特に利用者のプライバシーへの配慮が求められます。使用時に配慮することは勿論ですが、事前に利用者側への説明と同意が必要です。機器の使用をケアプランに落とし込み、根拠をもった説明と適切な同意に基づき、ルールに則りながら計画的に活用することが望まれます。

4)運用面のリスク

 Wi-Fi環境を構築することで施設内のICT化が進み、複数の機器を一つの端末で一元管理することが可能になってきました。しかし、ひとたび通信環境がダウンすれば、これに依拠したシステム自体活用できなくなってしまいます。業務が効率化し便利になる一方で、万が一の故障やトラブルへの対策や対応についても考えておくことが大切です。

5)コスト面のリスク

 介護ロボットは高価なものが多く、補助金などが利用できても導入コストはそれなりにかかります。導入後に有料のメンテナンスが定期的に必要となる機器もあるでしょうし、使い捨ての備品を必要とする場合には活用そのものにコストがかかります。これらは機器の効果を得るために必要なコストですが、コストをかければ必ずしも効果が得られるわけではありません。費用対効果の “費用” と “効果” の関係は、単純にイコールで結ばれていないのです。このことは第2回(後半)で詳しく説明しますが、 “費用” の後ろで “活用” が掛け算のごとく影響してくるのです。上手に “活用” できなければ “効果” は生まれませんが、反対に、上手に “活用” できれば想定以上の “効果” も期待できます。 “活用” の仕方次第で、コストは好影響にも悪影響にも成り得るのです。

 今回は、「介護ロボット等の施設導入から生じた好影響と悪影響」をテーマに事例を踏まえ、その概要を解説しました。悪影響を恐れていては、好影響は得られません。むしろ悪影響に積極的に向き合うことで、好影響の価値を際立たせることができるのです。次回は、「介護ロボット等の施設導入に係る課題と今後の展開について」をテーマに執筆します。