特集:福祉における「経営」を考える



小規模作業所を前身とする通所授産施設を中心に事業を展開していた社会福祉法人けやきの杜は、この6年間、矢継ぎ早に新しい拠点を設けてきました(表参照)。それは、入所施設に頼らざるを得なかった知的障害者が、地域で幸せに暮らし続けていけるように、その受け皿を整備するためです。

大きな転機となったのは、平成11年に始めた会員制サービス「オアシス」。養護学校などへの送迎や、親が留守をする間の一時預かり、自宅でパニック状態になった知的障害者への対応などを24時間365日行っています。 当初は年会費をわずか1050円(利用料は別途)に抑えていたものの、十分な信頼感が得られず利用者が少なかったのですが、その後、「Noと言わないサービス」を徹底してから軌道に乗っていきます。

同事業のテコ入れを推進した大竹眞澄理事・ワークセンターさくら施設長は、「それまでは職員の都合や力量によって、支援ができる・できないを決めていたのです。それを利用者本位に切り替え、あらゆる要望を受け止めるようにして、支持を得てきました」と説明します。

テコ入れと同時に年会費を最大6万3000円に大幅アップさせましたが、懸念された会員数の減少はさほどなく、「さまざまな要望に応えてくれる。 月5000円の安心料と考えれば安いもの」と会員は定着しています。提供されるサービスが金額に見合うのか否か、評価にさらされる機会となったことも意義深いものでした。利用者への支援やサービスのあり方を根本的に問い直す土台が、ここで築かれました。…」と言います。
ここで吉野園長は福祉経営塾の参加を契機に、今までの、園長一人で経営を考えていこうとする姿勢から、職員の納得性を高め、みんなで経営、さらには保育所の将来について考えて行こうとする道を探り始めたのでした。