特集:福祉における「経営」を考える



社会福祉法人武蔵村山育成会・育成会めぐみ保育園(以下、めぐみ保育園)は、武蔵村山市内に11園ある保育所のなかでは中規模程度の定員150名。法人としては同じ市内にもう1園、ひまわり保育園を設けています。
めぐみ保育園に現在の吉野久園長が着任したのは平成15(2003)年4月のことです。 社会福祉法人の経営改革が叫ばれ始めた時期で、補助金の見直しなど保育所をめぐる経営環境が厳しさを増すことを知った吉野園長は、経営を安定させていくには経費の大きな割合を占める人件費の見直しが必要と考えました。 同年の秋以降、将来的な財政状況のシミュレーションを示して職員の理解を求め、さっそく就任1年後の翌平成16(2004)年度から給与制度の改革に踏み出しました。
吉野園長としては十分な説明機会を設けたつもりでしたが、実はすべての職員が納得したわけではありませんでした。 社会福祉法人のなかでも保育所の経営改革は先行事例が少なく、「他の保育所では何も変わっていないのに、どうしてウチだけが?」と職員のなかに戸惑いが広がりました。園児を紫外線から守り、雨の日でも外で遊べるようにと、前年度の予算で大屋根を設置しましたが、「私たちの給料が設備に化けた……」という、あらぬ誤解も生じました。
吉野園長は、「今振り返ってみると、給与改定の着手は性急な判断でした。やはり職員の理解と納得が十分に得られないままのスタートは危険が大きすぎたと思います。確かに、経営改革の重い腰を上げるきっかけとなったのは事実ですが……」と言います。
ここで吉野園長は福祉経営塾の参加を契機に、今までの、園長一人で経営を考えていこうとする姿勢から、職員の納得性を高め、みんなで経営、さらには保育所の将来について考えて行こうとする道を探り始めたのでした。