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介護保険法の改正後の動向について 第6回 平成25年度の介護保険制度の動向~全国厚生労働関係部局長会議から~

1 地域包括ケアシステムの構築に向けて

  1 地域包括ケアシステム創設の背景

 地域包括ケアシステムが構想された背景には、

  1. 入院・入所について今後、現在以上の制約がかかる(入りにくくなる)こと
  2. 後期高齢者の絶対数が前期高齢者を逆転して多くなる(要介護認定のリスクが上昇、前期高齢者の要介護等認定率は4%弱、後期高齢者は30%程度)こと

 などがあり、この結果、在宅で暮らす高齢者、医療が必要な高齢者、重度の高齢者、男女それぞれの一人暮らしの高齢者(生涯未婚率も上昇し、男性の一人暮らしも増加)等が増加すると想定される。
 このような将来見通しに対して、表1のような制度の創設や改正等が行われた。


 表1
高齢者の状態 24年度の制度改正等
一人暮らし・
老々夫婦等
在宅で暮らす
高齢者
施設に代わる住まいの確保
・サービス付き高齢者住宅の創設
・複合型サービスの創設
・グループホーム等の設置の促進
サービス提供方法として
「自立支援型マネジメント」
医療が必要な
高齢者
医療と介護の連携強化
・24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の創設
重度の高齢者 高齢者向けの住宅の整備や在宅系入所施設の整備
・医療と介護の連携 等
一人暮らしの
高齢者
状態の維持・改善等に向けた取り組み
・介護予防の推進
・「介護予防・日常生活支援総合事業」の創設

 また、これらの制度等を運用するしくみとして、「地域包括ケアシステム」の構築が政策目標として掲げられた。

  2 地域包括ケアシステムのエッセンス

 おさらいをすると、そのエッセンスは大きく次の5つが挙げられる。

在宅で暮らす高齢者、医療が必要な高齢者、重度の高齢者、一人暮らし高齢者等が今後増加する。その受け皿となるしくみが必要。
  →ノーマライゼーション理念の推進
介護保険等の公的サービスのみで在宅生活を支えるには限界がある。表1のような制度改正も行ったが、それでも限界がある。これから公私それぞれが役割を踏まえて取り組んでいくために「自助・互助・共助・公助の役割分担」の明確化と、特に近隣の助け合いによる「互助」の推進が必要。
  →ソーシャルインクルージョンの推進
介護保険法の理念に立ち戻ったサービスの提供。要支援・介護状態の改善・維持等の重要性。
  →自立支援型ケアマネジメント(自立支援型サービス)の推進
それらの実践・研修・課題把握の場ともなるしくみ。
  →地域ケア会議
それら全体をマネジメントする役割としての保険者。
  →保険者機能の強化

 これらを進めていくことにより、在宅での生活継続の限界点を高め、結果として施設利用者の重点化が実現でき、「社会保障制度・税一体改革」(介護保険費用の効率化)につながるということから「地域包括ケアシステム」の構築が求められているといえる。



  3 現状

 このようなしくみが効果的に実施されている保険者は全国的には少数と思われる。それゆえに、24年度改正事項であるにもかかわらず、25年度に向けた全国会議において重点事項として説明をしたわけである。
 今、実際に地域で「地域包括ケアシステム」の構築を図ろうとすると、その地域(日常生活圏域)に合った、具体的実施計画を作らねばならない。今回の会議でいくつかの市の事例が取り上げられているが、あくまでも事例に過ぎない。地域の実態に合った実施プランを関係者が共有を図りながら作ることが必要である。また、やっかいな点は、同一市内といえども地域差があるというところで、その地域によって人間関係や高齢化率、暮らし方に違いがある場合も多い。「互助」も含む取組みであるから、そのあたりも押さえる必要がある。
 また、保険者の役割としてこれらを調整する力が求められており、直接保険者が実施するのか、どこかと連携して実施するかとは別に、保険者のコーディネート力が問われている。その具体的内容を例示すると表2の通りである。    
 これらを現に出来ているものとそうでないもの、必要なものと必要でないもの、あるいは地域特性から、欠けているもの等に分類し、この地域包括ケアシステムの実現に向けた作業を実施することが必要となってくる。    
 もちろん、地域性その他の要素もあり、正解はなく、地域の実態や保険者の力量にあわせた創意工夫・想像力が問われている。なお、地域の生活の主体はそこで暮らす住民であり、住民の声に耳を傾けることは必須なことである。


 表2 地域包括ケアシステム構築のための確認事項 例示
  対応すべき課題 対応等/関係者
全体 地域包括ケアシステムの趣旨の共有 *関係者(保険者、事業者、その他)
地域包括ケアシステムの構成要素の共有
地域ケア会議の趣旨の共有
地域の介護サービス事業所の現状
社会資源の確認
地域の人間関係等の傾向の確認
  当該圏域の課題の抽出  
  介護サービスの提供方法 *事業所間連携、
 自立支援型サービス提供、
 自立支援型マネジメント等

必要時の提供方法ブラッシュアップ
医療・介護の連携 *具体的な連携方法の確立
試行実施・修正等
地域の社会資源の確認 *質・量等の使い勝手の確認
社会資源の創造も視野に
 (コミュニテイワークの実践)
市民・住民の「互助」関係の確認 *住民同士の支え合いの濃淡
*地域の支え合いNPO等の有無
* 民生委員活動の現状

市民助け合い活動の創出
介護サービスの種類の確認 *必要なサービスがなかった場合
必要な事業所の誘導
第6期介護保険事業計画への組込等
施設待機者の状況の確認 *個別の対応等の検討とニーズ把握
地域ケア会議等の活用
住宅、在宅系入所施設への確認
その他 地域の特性によるもの  
  全体のマネジメント *保険者(区市町村)
地域ケア会議の活用等
  その他