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「介護保険法の改正」について 第5回 介護保険制度改正と利用者及び事業者への影響について

2 事業者への影響

介護保険法改正案が国会に提出されてなく、それを踏まえた「事業者の指定基準」が示されていない中で、その影響を推測するのは困難なのが事実です。ただ、今ある情報で想定するとすれば、事業者にとっても大きな影響が出ると思われます。
1 介護報酬の引き上げについて
社会保障制度についての基本的考え方が、前政権とほぼ同様ということから、基本的には総事業費の抑制のベクトルが働いていると思われます。とすれば、引き上げはあっても小幅と思われます。抑制路線の中で、処遇改善を図るためのひとつの手法として、地域包括ケアシステムの構築がオーソライズされ、そこで相互扶助、他のサービスの利用、家族や近隣の見守り等介護保険以外のサービスを入れることで処遇を確保しようとしています。それに加えて、他に財政出動が必要な喫緊の事態が発生したので、この考え方は、よりシビアに踏襲されると思われます。
2 運営について
事業運営については、地域包括ケアシステムの構築に向けて、事業によっては一層の質の向上に向けた取組みが求められるものと思われます。独断での想定結果は、次のとおりです。
事業名 求められる内容等
居宅介護支援
  • 地域包括ケアの要であり、医療連携や介護保険サービス以外の地域の社会資源、サービスのケアプランへの位置付け等がより一層求められる可能性
  • 医療連携がより強く求められる。
  • 「区分支給限度基準額に関する調査結果」を踏まえた、指定基準の改正等業務の大幅変更の可能性  等
訪問介護
  • 人手不足の解消ができるかは、全体の雇用情勢の影響を受けるので微妙
  • 新規指定が、従前のように「要件を満たせば指定」から、必要な場合は区市町村との協議が必要となり、申請却下も起こりうる。
  生活援助分
  • 生活援助は、一部地域支援事業に移行
  • その場合の、市場の縮小
24時間訪問介護・看護サービス
  • 新サービスとして、地域包括ケアシステムの在宅生活支援の中核となるサービス、現在モデル事業等が行われているが、夜間巡回型サービス同様、事業として収支が成立するかの課題
  • しかし、積極的に展開するためには、介護報酬面での優遇、あるいは乱暴であるが、24時間サービスの普及のために、訪問介護の指定の抑制等も考えられる。
  • 包括報酬としたときのレベルの問題
訪問看護
  • 医療連携や複合型サービス事業所との連携等により、一層のニーズが生じると思われるが、量の確保ができるかの課題
通所介護
  • 通所介護の内容についての一層の質の向上が求められる可能性
  • それとのリンクで、訪問介護や通所介護の利用についての「ケアプラン点検」が強化される可能性
  • 認知症高齢者に対する処遇の向上
    一般の通所介護での認知症高齢者ケア
    認知症通所介護での認知症高齢者ケア
  • いわゆる「お泊まりデイ」
    東京都はお泊まりについても規制する意思を表明している。夜間のサービスの質の確保と、入所施設不足による「大きな需要」との綱引きが続くと思われる。
  • 東京都のモデル事業の緊急ショート付き認知症通所介護について、仮に国の基準に示されることになるとすれば、この緊急ショート+通所介護のバリエーションではないかと思われる。(お泊まりであれば、制度としては「小規模多機能」での対応が既にあるため。)
小規模多機能
  • 複合型サービス事業所としての機能強化が求められる。
  • デイ、ショート、医療連携、ホームヘルパーとフル装備に近い事業の展開を想定、次の施策の目玉の一つになる可能性
  • 複合型事業所の報酬体系の水準
認知症グループホーム
  • 日用品費や入居一時金の規制のより明確化
  • グループホームケアについてのミニ特養ホーム的ケアの修正の可能性(認知症ケアの充実を実体化するためには必要と思うが、関係職員の力量も必要であり、かつミニ特養的ケアが多くある実態から改善に取り組めるか。)
  • 看取り介護の推進
  • 一部複合型サービス事業所となる可能性
特別養護老人ホーム
  • 施設不足が継続する中で、ユニット型特養ホームの介護報酬改善あるいは多床室特養ホームの報酬のあり方
サービス付き高齢者住宅
  • サービス付き高齢者住宅モデルの多様な展開
    例:24時間巡回型訪問介護看護のみではなく、他の手法による入居者支援の可能性
全体
  • 労働基準法の遵守、罰金刑以上を受けた事業所の指定取消
  • 入所施設の逼迫等の背景により、多彩な事業者の多彩な事業展開が想定される。それは一部は「安かろう、悪かろう」であったり、「高かろう、悪かろう」の場合も想定される。
  • 人材確保の課題
    新サービスや既存サービスの見直しに当たっては、それに対応できる人材を確保できるか。
  • 指定基準上はハイレベルな要求となっていて、現実とギャップが大きい場合もある。その事実を踏まえずできているという前提で、その上に新たな質を載せようとすると、「砂上の楼閣」となる危険性もある。
以上のように、小幅といわれている24年度の介護保険制度の改正も、考え方の転換やサービス提供の仕組みの変更、新サービスの創設等、質的には相当大きな変更といえると思われます。