現在位置 : 福ナビホーム > 特集記事 > 「介護保険法の改正」について > 第5回 1 利用者への影響 / 地域包括ケアシステム下の生活について

「介護保険法の改正」について 第5回 介護保険制度改正と利用者及び事業者への影響について

1 利用者への影響

段落「地域包括ケアシステム」下の生活について

先に述べたとおり、「地域包括ケアシステム」下の生活は、地域の人たちに支えられ、施設に入所しなくても(あるいはできなくても)、サービス付きの住宅や、24時間の訪問介護・介護サービスがあり、介護保険だけでなく、その他のサービスの積極的活用も図られて、安心・安全の生活ができることとなっています。

従って、そこではこれまでサービスの不足や施設の不足に悩まされ、介護問題が顕在化する中で、その問題の解消もイメージしています。

「地域包括ケアシステム」の絵に描かれたような環境が実現できるとすれば、安心・安全の暮らしが実現できる可能性があります。

「地域包括ケアシステム」を考えるとき、地域の有り様は多彩です。高度経済成長以降、人口の大都市集中という形での人口移動が進み、首都圏には全人口の約3割が居住し、その他地方の中心都市圏を核にした人口集中が進んでいます。近年、限界集落という言葉で表わされる「集落としての機能を果たし得ない」集落も全国に多数生まれています。従って、都市部と町村部という形式的な区分では実態を示し得ないと思われますが、考え方の整理のためにあえて使うと、図3-1のような形になります。日本の特徴として、人口移動があり、その上で都市集中があります。都市は「人間を自由にする」という言葉がありますが、一種匿名性=地域の絆の希薄化が特徴です。ただ、地域の絆の希薄化は、高度経済成長期には、終身雇用と年功序列型給与体系=日本型経営により、企業を核とした絆により代替されてきたといえます。しかし、バブル崩壊以降は日本型経営自体がネガティブなものとして、企業の絆も失われつつあります。地域の絆も企業の絆も絆が保ちにくい社会(NHKは無縁社会と形容)が現れつつあります。そのような状況下での「相互の助け合い」を基礎とする「地域包括ケアシステム」の構築は、理念的にはそうだとして、難易度は高いと思われます。
図3-1
現在の地域の特性が、ABCDのどこに入るのかによって、暮らしぶりは変わって来ます。やや強引ですが、あえて特性を示せば、以下のとおりとなります。

A = 人間関係が疎遠で、介護サービスも少ない。
B = 人間関係は疎遠であるが、介護サービスも必要最低量以上に供給されていて、かつその他のサービスも揃っている。
C = 良好な近隣・地域の関係が残っていて、サービス量の小ささを補っているので、生活はできる。
D = 良好な近隣・地域の関係が残っていて、介護サービスも必要最低量以上に供給されていて、かつその他のサービスも揃っている。

この状態では、B、C、Dであれば何とかなる状態と思われますが、Aは厳しい状態にあると思います。
住民同士の関係がフェイストゥーフェイスの地域では、自然と助け合いもあり、サービス量が(多少)少なくても、地域で暮らしていくことは、そうでない地域と比較して容易でしょう。

概ね、このようなイメージで考えると、地域包括ケアシステムがめざすものは、C+Aの合成、下図の赤の実線で囲んでいるレベルではないでしょうか。
図3-2
地域包括は、地域の人間関係の再生であり、コミュニティーの再生です。団塊世代が65歳を超え、75歳を超える頃には、会社人間からリタイアした団塊世代が、数多く地域に戻って来るので、そこで助け合いのコミュニティーを作り上げ、そこで支え合う地域社会を作り上げられるとの認識があると思われます。