(1)世界人権宣言と国際人権規約
21世紀は「人権の世紀」といわれています。20世紀に、人類は二度にわたって世界大戦を経験しました。第二次世界大戦後、多くの尊い生命を奪い、悲劇と破壊をもたらした戦争への反省から、世界の人々の間に平和と人権の尊重を求める動きが高まりました。
そして、国際連合は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である。」とうたった世界人権宣言を採択したのです。この宣言を実現するために拘束力をもつ条約として定められたのが国際人権規約で、社会権などのA規約と自由権などのB規約の二種類があります。1966年、国際連合総会で採択され、その後10年を経て発効しました。わが国は1979年にいずれも批准しています。
(2)「人権教育のための国連10年」と我が国における取組み
21世紀を前にして、国際連合は、1995年から2004年の10年間を「人権教育のための国連10年」と位置づけ、各国に国内行動計画を定めることを要請しました。我が国では、1997年に国内行動計画を定め、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人の人権問題を重要課題として、教育、啓発に取り組むこととしました。
日本国憲法では、人種・信条・性別・社会的身分・門地などによって差別されないとする法の下の平等、思想及び良心の自由、生存権、教育を受ける権利など、多くの種類の人権を基本的人権として保障しています。
人権とは、誰もが生まれながらに持っている、人間が人間らしく生きていくための権利、今までの歴史の中で人類が築いてきた財産なのです。
(3)人権擁護法案のゆくえ
政府は、人権擁護推進審議会答申「人権救済制度の在り方について」(平成13年5月) を受けて、人権擁護法案を国会へ提出しました(平成14年3月)。この法案は、人権を護るために人権侵害に関する相談や人権侵害の被害者の援助に関する仕組みとしての人権救済手続、その担い手として人権擁護のための組織体制を整備することなどを目的としていました。しかし、必要な救済措置の範囲や人権救済機関(人権委員会)のあり方等をめぐり、国会内外で様々な議論がなされたものの、平成15年10月に廃案となって現在に至っており、今後の動向が注目されています。
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