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福祉用具の利用と地域包括支援センター 福祉用具と地域包括支援センター

2.福祉用具と福祉用具専門相談員

 我が国では、今後さらに、要介護高齢者の増加、社会的な介護力の低下、介護ニーズの多様化が進み、介護に関する課題の急増が予測されており、要介護者の自立や介護従事者の負担軽減が求められています。2013年6月に厚生労働省より、「職場における腰痛予防対策指針」の改定が出されました。それによると「福祉・医療分野等における介護・看護作業」の作業管理では、以下のことがあげられています。


  1.  自動化、省力化
    腰部に負担のかかる重量物を取り扱う作業、人を抱え上げる作業、不自然な姿勢を伴う作業では、作業の全部又は一部を自動化することが望ましい。それが困難な場合には、負担を減らす台車等の適切な補助機器や道具、介護・看護等においては福祉用具を導入するなどの省力化を行い、労働者の腰部への負担を軽減すること。
  2.  作業姿勢、動作
    労働者に対し、次の事項に留意させること。
    イ 前屈、中腰、ひねり、後屈ねん転等の不自然な姿勢を取らないようにすること。適宜、前屈や中腰姿勢は膝を着いた姿勢に置き換え、ひねりや後屈ねんてんは体ごと向きを変え、正面を向いて作業することで不自然な姿勢を避けるように心がける。また、作業時は、作業対象にできるだけ身体を近づけて作業すること

 介護現場での腰痛の労働災害が多発していることから、介護事業者向けの対策を大幅に加え、人力による人の抱き上げを原則禁止しています。介護負担の軽減や支援の効率化の視点から、福祉用具の積極的及び効果的な活用が求められています。福祉用具の利用とサービスの質の向上への期待が高まっています。中でも利用者の状況に応じた福祉用具の選定、適合が重要となっています。それを担うのが福祉用具専門相談員と介護支援専門員です。より専門的に対応しようとして2012年4月より福祉用具専門相談員による「福祉用具サービスの計画」の作成が義務づけられました。
 福祉用具サービス計画については、「東京都指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準に関する条例」において以下のように示されています。


(福祉用具貸与計画の作成)
  1. 福祉用具専門相談員は、利用者の心身の状況、希望及び置かれている環境を踏まえ、指定福祉用具貸与の目標、当該目標を達成するための具体的な指定福祉用具貸与の内容等を記載した福祉用具貸与計画を作成しなければならない。
  2. 福祉用具貸与計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該居宅サービス計画の内容に沿って作成しなければならない。
  3. 福祉用具専門相談員は、福祉用具貸与計画の作成に当たっては、当該福祉用具貸与計画の内容について利用者又はその家族に対して説明し、当該利用者の同意を得なければならない。
  4. 福祉用具専門相談員は、福祉用具貸与計画を作成した際には、当該福祉用具貸与計画を利用者及び当該利用者に係る介護支援専門員に交付しなければならない。
  5. 福祉用具専門相談員は、福祉用具貸与計画の作成後、当該福祉用具貸与計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該福祉用具貸与計画の変更を行うものとする。

※一部引用


 すなわち、「利用者の希望、心身の状況及びその置かれている環境を踏まえ指定福祉用具の貸与の目標、当該目標を達成するための具体的なサービス内容を記載したもの」となっています。また、「既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該居宅サービス計画の内容に沿って作成しなければならない」と記されています。これは介護支援専門員との連携を前提としており、ケアプランに沿った福祉用具サービス計画を作成することが義務づけられ、福祉用具専門相談員は、介護支援専門員と連携を図り、アセスメントや福祉用具サービス計画の作成を行うことです。
 アセスメントにおいては、利用者の希望、心身の状況及びそのおかれている環境を確認しながら生活上の課題解決に向けて福祉用具の情報収集と選択・プランニングを行います。その時の選択・プランニングをおこなう上での情報収集としては、


  1.  利用者本人の状況と家族の同意
    福祉用具を選択するにあたっては、利用者本人の身体状況の把握や本人の意思の尊重を考えて、家族や同居者の同意を得ます。すなわち、本人や家族の思い、使おうとしている目的と合っているかどうかを確認し、福祉用具の導入によって家族の生活の快適さが失われることのないように注意します。
  2.  使用条件と生活条件との整合性
    使用する用具の具体的な特徴を踏まえ、利用者本人の身体機能だけ考えるのではなく生 活をどのように組み立てていくのかを本人の能力と照らし合わせながら考えていきます。その基本は、安全性の配慮が十分行き届いているかを確認して、適切な福祉用具を選択します。介助者についても、介助者の能力と福祉用具の使い方の整合性が大切です。また、住環境についても考慮が必要です。住宅改修を行うことで使いやすくなる福祉用具や既存の住宅に合わせた福祉用具もあります 。
  3.  試用
    福祉用具は使用する場所、利用者本人の生活環境に左右されます。自立支援の観点から日々の生活をしている環境の中で実際に試すことによって、適合がはかられます。使い方を習熟してもらい福祉用具の効果と限界を知ってもらう必要があります。
  4.  社会資源と費用負担
    地域の施設や人的資源についても調べておく必要があります。

 以上を踏まえて、福祉用具サービスを提供することで、利用者の日常生活に対する意欲が向上し、利用者の主体性が尊重されエンパワメントの向上につながることが期待されます。これらを通しての視点は、あくまでも自立支援であり自己決定の支援です。
福祉用具専門相談員は、(1)情報提供はわかりやすく。(2)利用者が望まないサービスへの確認。(3)介護保険以外の社会資源の可能性。などを専門的立場から助言を通していくことが福祉用具サービス計画をより実効性のあるものにしていくと考えます。
 また、福祉用具専門相談員は、「常に自己研鑽に励み、指定福祉用具貸与の目的を達成するために必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならない」としています。