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福祉用具の利用と地域包括支援センター 福祉用具と地域包括ケアシステム 3

(2)地域ケアシステムとケアマネジメント

 要介護高齢者が適切に地域の社会資源を活用できるようにケアマネジメントの手法を使って直接支援するのが介護支援専門員(ケアマネジャー)です。いわゆる地域包括ケア提供の最前線にいるといえます。介護保険制度では、保険給付の対象者である要介護者等に対し、介護支援専門員が中心となってケアマネジメントが行われることになっています。このケアマネジメントで重要なのは、個々の要介護者等の解決すべき課題や状態に即した「利用者本位の介護サービス」が適切かつ効果的に提供されるよう調整を行うことであり、その責任を担っているのが介護支援専門員です。介護支援専門員には、高齢者が本人の有する能力や機能を最大限生かし得るその人らしい生活を主体的に継続することができるように、あらゆる社会資源を自己決定に基づきコーディネートし、本人が生活していくうえで、社会資源が必要なときに切れ目なく活用できるように支援することです。
 介護支援専門員の多くは、「居宅介護支援事業所」に所属しています。
 居宅介護支援事業所は介護保険制度に位置づけられたサービス事業所の一つであり、居宅において受けられる介護サービスなどの紹介、ケアプランの作成とサービスの調整、サービス給付費の計算や請求などを利用者に代わって行います。これらの業務を実際に手がけるのが介護支援専門員です。その中に、高齢者の自立支援、介護者の負担軽減を図る観点から、「住宅改修」はじめ「福祉用具の貸与」「特定福祉用具販売(購入)」「介護予防福祉用具貸与」「介護予防福祉用具販売(購入)」が給付対象として位置づけられています。また、施設に入所している利用者についても、ニーズに応じて施設サービスが適切に提供される必要があります。そこで、介護保険施設でもケアマネジメントが行われ、それを担う立場として介護支援専門員の配置が義務づけられています

(3)地域包括ケアシステムと福祉用具専門相談員

 介護保険制度では、高齢者の自立支援、介護者の負担軽減を図る観点から、「福祉用具の貸与」「特定福祉用具販売(購入)」「介護予防福祉用具貸与」「介護予防福祉用具販売(購入)」が給付対象として位置づけられており、介護支援専門員がケアマネジメントを行い、在宅介護を行っていくうえで、福祉用具の活用、生活環境の整備の一環として重要な役割を担っています。これを支援していくのが福祉用具専門相談員です。
 地域包括ケアシステムの基本となる、2013(平成25)年の「地域包括ケア研究報告会」においても「それぞれの生活ニーズに合った住まいが提供され、そのなかで、生活支援サービスを利用しながら、個人の尊厳が確保された生活が実現されること」が地域包括ケアシステムの前提条件であるとされています。こうした地域包括ケアシステムにおける「住まい・住まい方」としては、進みなれた地域(自宅)でできる限り自立して住み続けることができ、介護等も受けやすい環境を整えていくために、住まう場所としての住宅の確保(サービス付き高齢者向け住宅等)の確保に加え、住宅改修や福祉用具の活用といった居住環境整備が重要になってきています。
 こうした方向性を踏まえ、介護保険制度は、2012(平成24)年に福祉用具専門相談員が利用者ごとに「福祉用具サービス計画」を作成することが義務づけされました。さらに、福祉用具専門相談員の資質向上と専門性向上の観点から、社会保障審議会、介護保険部会は、2013(平成25)年12月20日において、「福祉用具貸与事業所に配置されている福祉用具専門相談員の一部について、より専門的な知識及び経験を有する者の配置を促進していくことについて検討する必要がある」とされました。それを受けて、2015(平成27)年度より、指定講習カリキュラムが見直されるとともに、福祉用具貸与・販売に関する必要な知識の習得及び能力の向上に努めなければならないとする自己研鑽の努力義務の規定が設けられました。
 2018(平成30)年度より、介護サービスの適正化、重点化を通じた制度の安定性、持続可能性の確保の観点から、全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定が適用されることや、福祉用具専門相談員に対して、貸与しようとする商品の特徴や貸与価格に加え、機能や価格帯の違う複数の商品を利用者に提示することなどが規定されました。
 福祉用具の適切な利用のためには、福祉用具専門相談員が専門的な知識に基づき、介護支援専門員等の専門職と協働して、利用者やその家族に対して助言をし、利用者の状態を考慮した定期的なマネジメントを適切に行っていく必要があります。そのためには、定期的なモニタリングが重要になります。