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苦情対応の事例 苦情対応

苦情事例4ショートステイ(介護保険)の際に預けた貴重品が紛失した
(福祉オンブズマン型)

相談内容

申出者 ---- 本人
サービス種別 ---- 短期入所生活介護(ショートステイ)
本人状況 ---- 70代の男性、要介護4

本件施設にショートステイした際に、バッグの中に現金5万円、同じバッグの別の場所に1万数千円を入れたまま本件施設に預けた。その時は預かり証も発行されず退所時は手荷物チェックもなかった。帰宅してからバッグを開けたところ5万円がなくなっていた。別の場所に入れておいた1万数千円はあった。帰宅当日、翌日、及び翌々日に本件施設に5万円の紛失について問い合わせたが、誠意ある対応はなかった。そのため、保健福祉オンブズマンに苦情を申し出た。

対応

面談室に来所した申立人に保健福祉オンブズマン及び事務局職員が事情聴取をした。そして、本人了解のうえショートステイ事業者に調査に赴く旨の了解をとった。
後日、保健福祉オンブズマン及び事務局職員が事業所(ショートステイ先)に赴き事情聴取をした。 事業者の説明では、申立人から現金紛失の苦情があった時に「現金の持ち込みは禁止しており保管もしないことになっている」ことを説明し、したがって預かり証も発行していないと説明したとのことだった。しかし、現実に現金を貴重品として預かっている実態があることを認め、今後の対応を検討したいとした。
後日、保健福祉オンブズマンから本件施設に対して貴重品を預かった際のシステム及び管理体制に問題があるとして「是正勧告」がなされた。その主な内容は、以下のとおり。
(1)預かったバッグの中に5万円が入っていたことについての確認はとれておらず、唯一の根拠が申立人の主張であり、オンブズマンとして事実を確定し得る状況にはない。
(2)一方、同じバッグの別の場所に1万数千円の現金が入っていた事実については施設担当者もこれを認めており、本件施設では申立人の入所時に一応バッグの中身をチェックした事実が認められる。この点、本件施設担当者は現金等・貴重品の持ち込みは禁止されている旨主張するが、事実上は一定の現金を本件施設で保管していたことは否定し難い。それにもかかわらず、施設には預かり品等の記録もなく、預かり証の発行もないことから、その取扱いがずさんであったことは否定し難い
(3)とくに本件施設のように高齢者の宿泊を伴う施設の揚合には、高齢者は年齢とともに、記憶力・判断能力・管理能力が低下するものであるから一層、貴重品、現金等を預かった揚合の保管するシステムが必要といえる。今後のトラブルの防止という観点から見ても、本件施設において上記貴重品の記録、預かり証の交付等、責任ある保管体制を構築する必要がある。
これに対し、本件施設から、今後は現金・貴重品の持ち込みは遠慮していただくよう「重要事項説明書」にも明記したうえで徹底する。やむをえず現金・貴重品を預かる場合には、預かり証の発行(上司の再確認も位置づける)・本人署名・職員の押印等ダブルチェックをして対応する、との改善報告を受けた。

対応のポイント

その1 事象の背景にあるシステムの問題にも焦点をあてる
閉ざされた空間で発生することの多い苦情の原因事実は、後からそれを第三者が客観的に確認することは難しいことが普通である。たとえば警察の捜査や裁判であれば、根拠や証拠となる事実の確認ができなければ、それ以上の対応は基本的にあり得ない。しかし、苦情対応においては、原因事実が確認できなかった場合でも、利用者等が苦情を申し立てるにいたった背景や、それを誘発した事業所のシステムの不備にも着目し、改善を促すことが重要である。